Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ケツのほころびを繕う
ケツが破れた。

営業から帰って、着替えようとした時に、ビリッ!
ズボンを脱いで確かめてみると、ほころびの長さは、10センチ強あった。

困ったぞ。
私は、スーツは、夏冬一着ずつしか持たない主義(?)だ。
だから、替えがない。

思い起こせば、20年以上前になる。
浦和のユザワヤでオーダーメードで作ってもらったこのスーツたち。夏冬一着ずつ。
それをずっと着続けているのだ。

よく今まで破れなかったものだ。
ズボンの膝の部分は、かなりテカッてきているが、ズボンの膝を食い入るように見る人は少ないだろうという確信をもって、今まで着続けてきたのである。
ケツがほころぶなど、思ってみたこともなかった。

困ったぞ。
明日もこのスーツを着て出かけなければならない。
早急に修復しなければならない。
つまり、縫わなければならない。

ヨメに頼めば、簡単にやってくれるだろう。
ヨメは、手先が器用だ。
子どもたちのセーターやマフラーを編んだり、ぬいぐるみを作ったり、ドレスを縫ったりするのは、彼女にとって何の苦労もなくできる作業だ。

しかし、だからこそ頼みたくない。
それほどの腕を持つ彼女に、ケツのほころびなどという簡単な作業を押し付けるのは、失礼にあたるのではないか?
私は、そう思ったのだ。

自分でできることは、自分でする。
これが、人間として、本来あるべき姿のはずだ。
だから、自分で縫うことにした。

おそらく中学時代以来の裁縫。
中学一年の娘の裁縫箱を持ってきて、ふたを開ける。
針と糸。それだけあればいい。

当然そのふたつはあった。
2種類の太さの針。
そして、糸は黒と白、黄色があった。

薄茶のスーツに合う糸はどれか、と思った。
糸を出し、スーツにあてて確かめてみた。
考えるまでもない。どれも合わない。

しかし、他人のケツをまじまじと見るやつは、この世に存在しない、という確信を持つ私は、その日の気分で白を選んだ。
そして、ズボンを裏返し、ほころびを確かめた。
きれいなほころびだ。
迷いのないほころびと言ってもいい。

これを縫えばいいだけだ。
簡単ではないか。
ほころんだ部分を内側に巻き込むように重ねて縫っていけば、立派に修復できるはずだ。

よし、縫っていこう。
では、針に糸を通すか。
ん?

針の穴って、こんなに小さかったか。
これに糸を通すなんて、冬の北海道で満開のハイビスカスを探すより難しいのではないか。
みんな、そんなに目がいいのか?
マサイ族的な視力の持ち主ばかりなのか?

それはありえないと考えて、裁縫箱の中を覗いてみた。
ほとんどが説明のつく道具ばかりだったが、一つだけ見たことのない道具を見つけた。
薄い銀色の怪しい形をした、ペラペラの物体だ。
それは、頭でっかちの宇宙人のような形をした頭の部分に、細いわっかが付いていた。

いととおし?

細胞の死滅が激しい私の脳細胞でも、その道具の使い方は、すぐわかった。
いとも簡単に糸通しができたのだ!
これはすごい! 画期的だ! これを発明した人はエライ!
これがあればマサイ族的な視力がなくても、簡単に糸が通せる。

感動しながら、縫いはじめた。
断言するが、私は不器用である。
だから、丁寧に慎重に縫いはじめた。
ひたすら真っ直ぐきめ細かく縫っていった。

その間に、左手の指が10回以上、針攻撃の犠牲になった。
イテッ、イテテテッ・・・・・・
左手の親指が、まだ痛い(血がプツプツと地味に盛り上がってくる)。

10分以上かかって、縫い終わった。
縫い終わって思った。私は、不器用な人間だ。それを再確認した。

ズボンを元に戻して、縫い口を見てみた。
うまくふさがっていた。

人間、やればできる。しかし、やらなければ、できない。
当たり前のことだが、なんかウレシイ。

はいてみた。
ケツの部分に多少の違和感はあるが、これはすぐに慣れるだろう。
何度も屈伸してみた。
ケツに力を入れて屈伸をしたり椅子に座ってみたりしたが、破れることはなかった。

パーフェクト!
いい気分だ!

しかし、その日の夕方。
ヨメが得意げに、私の前に紙袋を置いたのだ。

「これ、パパのスーツとほとんど同じ色のスラックス(死語?)見つけてきたの。あれ相当くたびれてたみたいだから、これと交換したら?」

袋を開けてみた。
確かに、生地も色もスーツのものと似ているスラックスが入っていた。
スーツの上着と合わせてみても、違和感が全くない。
こんなにも合うスラックスがあったなんて、これは奇跡じゃないか!

しかし、しかしですよ!

この10年間、私はヨメに服を買ってもらったことがない(自分でも買ったことがない)。
それなのに、なぜこんな気分のいい日に、予期せぬことをする?
これは、嫌がらせか?

そこで、心の狭い私は、少々気分を害したのである。
だから、次の日は、自分で修復したズボンをはいて行くことにした。
ケツに、違和感はなかった。

よしよし・・・。

自転車にまたがろうとした。
高く足を上げて、颯爽と早い動作で自転車にまたがった。

その瞬間・・・・・。
ビリッ!
ビリッ、ビリビリビリ!


大惨事だ。

その結果・・・・・、
ヨメの買ってくれたスラックス。

はき心地いいですよ。
ホント。

ああ! クソッ!




2009/01/30 AM 08:05:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

不景気自慢がとまらない
同業者との、盛り上がらない新年会。

私が、「前年と比べて12パーセント減だよ」と言うと、「俺は25パーセント減だよ」「俺は、3分の1減ったぞ」「僕は2割減りましたね」と5人揃って、不景気自慢を繰り広げる。


「前歯が2本欠けたんだけど、歯医者いく余裕ないよ」
「車、使わなくなったね。最近は自転車が多い」
「同じ靴を一年間履きっぱなしなんて、今までなかったよ」
「痔が悪化したんだけど、医者にも行けねえ」
「灯油、高いだろ。ことし生まれて初めて石油ストーブを使わなかったな」
「事務所畳んで、自宅で仕事しようかと本気で考えてるんだ」
「回転寿司、10皿以内で我慢することにした」
「携帯は、自分からはかけないことにした。これ、意外と節約できるもんだよ」

不景気自慢が止まらない。

その不景気自慢の中で、私の「12パーセント減」を「その程度ならいい方じゃないか。羨ましいよ」と、みな口々に責めるのである。
しかし、私の場合、義母という名のモンスターを扶養家族としてエントリーしている。
言いたくないが、これが大きいのだ。

食費はもちろん、医療費などの負担が大きい。
衣服などは、自分の小遣いから出して買っているようだが、それ以外はすべて当方持ちである。

義母がもらっている年金は、義母の長男がすべて握っていて、義母は長男から1週間おきに「お小遣い」という形で、送金を受ける。
義母本人がもらうべきお金を長男が支配し、「お小遣い」として分配するというのは、私としては釈然としないのだが、この件に関しては、長男にも言い分があるようだ。

義母は、今まで何度も財布を失くしてきた。
時に十万円以上の現金が入った財布を落とすこともあったらしい。
その都度、長男が尻拭いをしてきた。そこで、短気な長男は、義母から支出に関する権限をすべて取り上げて、管理することにしたという。

1週間おきに義母に送金される金額が、どの程度のものなのか、私たちは知らない。
義母自身も、自分の通帳に残高がいくらあるのか、全く把握していない。
だから、義母が我が家の家計をサポートすることは、絶対に出来ない。

このような理由で、12パーセント減は、私の感覚としては、大げさではなく3割、4割減にも感じられるのだ。

「最近、もやしが出てくる回数が、増えたよね」
高校3年の息子が、鋭く指摘する。

その話をすると、「ああ、俺んちも増えた。肉の量も少なくなったしね」と賛同する貧しい民びと。

居酒屋のテーブルを見ると、昨年までは所狭しと料理がその存在を主張していたものだが、今年は、ひとり2品程度しか頼まないから、スカスカに見える。
いつも頼んでいた「刺身の盛り合わせ」も今年はない。
そして、挨拶がわりの中ジョッキを飲み終わったあとの追加の酒が、各人2杯程度である。
メニューの金額の部分を食い入るように見てから、みな慎重に注文しているのだ。

一番年の若い一流デザイナーのニシダ君が、「僕、お小遣い2万円減らされちゃいました」と、ため息交じりに言った。
すると、「俺も1万円減らされた」「俺は半分に減らされたよ」「俺は2万円ポッキリ。だから、タバコやめた」と、また不景気自慢。

だが、一呼吸おいて、みなの視線が、私の顔の方にゆっくりと向けられたのである。
そして、含み笑いを顔に貼り付けて、頷きながらこう言うのだ。

「ああ、Mさんはもともとお小遣いゼロだから、関係ないよね。ハハハハ」

安心したような、勝ち誇ったような4つの顔。

ひとは、自分より劣った人間の存在を見ると、安心する(らしい)。


2009/01/27 AM 08:13:11 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ワインは旨いのか不味いのか
朝からワイン。

いい身分である。
朝からワインを飲むなど、私の人生でおそらく・・・、2度目?
しかも、結構いいワインらしいですよ。

千円以上のワインを飲んだことが、数えるほどしかない私は、それ以上の金額のワインを飲むと思考停止することが、今回わかった。
一口飲んで思った。
「これ、うまい・・・・・のか?」

香りは、良かったような気がする。
たまに飲む1本400円程度のものとは、そこだけは、あきらかに違う。
芳醇な、という喩え方があるが、芳醇なものを私は飲んだことがないので、その表現は使えない。

二口、三口飲んでみた。
「うまい・・・のかな?」
うまい、と言っておけば、すべて丸く収まるだろうが、率直なことを言って欲しいといわれたので、「あん?」という反応しかできなかった。

そんな私の反応をもどかしげに見ながら、「で、どうなんだ?」と、ススキダが眉間に皺を寄せて聞く。
新しいワインの宣伝を頼まれたススキダが、コピー(文章)を書くために、何人かにワインを試飲させて、感想を聞いているのだ。

しかし、明らかに、彼は聞く相手を間違えた。

千円以上のワインなんて、みんな一緒だ!

そんな固い信念を持つ私に、高級ワインなど赤い色の水にしか見えない。

「赤い色の水? そのままじゃねえか!」
極道顔のススキダの眉間の皺が、さらに深くなる。

「ワイン飲んだこと、あるだろうが! もっと、気の利いたことを言えよ。仕事なんだからよ!」

仕事だからこそ、率直な意見を言ってるんだ。
ワインは、赤い水だ。そして、何度でも言う。千円以上のワインは、俺にとってみな同じだ。

「要するに、味覚もボキャブラリーも貧しいってことだな」

7年も付き合っていて、やっとわかったのか。俺は、すべてが貧しいんだ!

呆れ顔のススキダ。
極道顔が、少し曇っている。
そして、次は困り顔。
ただ、どちらにしても、怖い顔であることに変わりはない。

そんな怖い顔の男に向かって、私はさらにこう言った。
4千円と言えば、4千円の味だ。
それ以上の値段をつければ、それ以上の味に感じるが、それ以下の値段なら、その程度の味に感じるであろう。

私のそんな意見を聞いてススキダは諦めたのか、ワインを口に含んで目を閉じた。
そして、もっともらしく口を動かして、味わう振りをする。
ソムリエ気取りで、もっともらしい顔をしても、顔の仕上がりが怖いから、説得力がない。

笑うしかない。

だから、笑った。
それが気にさわったのだろうか。
ススキダは、極道顔をさらに険しくして、やけ気味にワイングラスを呷った。

しかし、その姿は、なかなか良かった。
極道顔にふさわしかった。
その顔に敬意を表して、私は拍手をした。

パチパチパチ・・・・・・。

睨まれた。
そして、言われた。

「おまえ、このワイン5本やるから、全部飲んで、レポートを書け。俺を唸らせるような文章を書け。そうしたら、それなりの報酬を払う」
そう言いながら、ススキダは報酬額を紙の端っこに書いた。

おー! 思いがけぬ高額!
その額を見て私はやる気を出した。

そして、いまワインを飲みながら、仕事をしている。

ワインを飲んでみて、私はわかった。

ワインは美味いかどうかわからない。しかし、確実に酔う。
そして、思考停止・・・・・。


2009/01/23 AM 08:09:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

仕事ないですよ
不況だ。

だから末端の三流デザイナーは、暇である。
仕事の総量が減っているから、新規開拓は難しい。
同じ理由で、お得意様の仕事も減っている。
だから、仕事が廻ってこない。

転職でもするか、と悲観的なことを考える。
しかし、冷静に考えてみよう。
何の取り得もないオレ。
どんな使い道がある?

あるわけがない!

やはり、細々と地を這うように、この仕事を続けるしかないのか。
この二ヶ月、仕事を得るために、考え得る限りの方法で仕事漁りに奔走したが、まとまった仕事は手にできなかった。

現実は、厳しい。

そんな悲観的なことを考えていた火曜日。
同業者から仕事の依頼が来た。

「急ぎの仕事だよ。環境団体の小冊子の編集だ。サイズは、A6。文字打ちも含めて36ページ。表紙だけカラー、あとは1色。写真は55点で、画像データは全部そろってる」

おお、待望の仕事? まあ、急ぎと言っても、このボリュームなら最低一週間はくれるよな。

「いや、三日でやって」

え? 三日? このボリュームの仕事を三日?

「いやなの!」

嫌なんて言ってないだろ。

「じゃあ、できるよな!」

何だか今日は随分と強気だな。いつもなら少しオドオドした感じなのに、こちらが暇だと思ってなめているのかな。
しかし、アホな同業者とはいえ、客は客。
相手を立てないといけないだろう。

よくこんないい仕事が取れたねえ。この不況の時代に、たいしたもんだ。
Kさんも、やるときは、やるねえ。

「そりゃそうさ。この仕事、十年以上やってるんだからね。この程度の仕事を取るのは、わけないさ」

たいしたもんだねえ。本当に、たいしたもんだ。いやあ、・・・たいしたもんだ。

「言っとくけど、偶然舞い込んできた仕事じゃないんだよ。何度も足を運んで、もぎ取ったんだ。今の時代、座っているだけで仕事が来るなんてことはありえないからね。苦労したんだよ、ホント・・・(言葉に詰まる)」
興奮して一気に喋ったから、息が荒くなったようだ。
息を吐き出す音が、受話器を通して鮮明に聞こえてくる。

「もう・・・、本当に仕事なくってさ。どうしようかと思っていたんだよ(まだ息が荒い)。これが取れなかったら、大事なバイク2台売り払うしかないかって・・・(涙声)」
鼻をすする音が聞こえる。それに続いて、大きな鼻息。
「ゴォー!」

わかった! 三日でやる! 絶対に間に合わせるから! まかせとけ!
いやあ、あんたはエライ!

「頼んだよ・・・(涙声)」

深刻な不況。
これは、他人事ではない。
私もこの2ヶ月ほど、得意先で頭を下げるのが当たり前の日々を送っている。

私の記憶の中で、短期間に、これほど人に対して頭を下げたことは、かつてなかった。
胃がキリリと締め付けられるほどの危機感。
ただ、胃が痛いのは、こちらだけではないようだ。

得意先の担当者も、胃を患ったような顔で「仕事ないんだよね。本当に」と力なく笑う。
お互い病んだような笑いしか作れないのだ。

他人事ではない。

しかし、この日本国のどこかに、他人事の様な顔で不毛な言葉のキャッチボールを続けている場所が存在する。
そして、不思議なことに、その場所にだけ「危機感」が存在しない。

たとえ、国民が「危機感」というグループを作って、「危機感」という歌を歌ったとしても、おそらく彼らにはその歌声は届かないだろう。

こんなに危機的なのに・・・・・。


2009/01/21 AM 08:00:17 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ロマンスカーで行く1泊2日箱根の旅
池袋のインターネットカフェ。

インターネットカフェに入るのは、3度目だ。
だから、まだ雰囲気に馴染まない。
落ち着かない。

暗いし、静かすぎる。

なぜ、こんなところに入ってしまったのか?
「3時間パック980円を今なら780円で!」の看板に釣られたこともある。
しかし、ことの発端は、池袋の得意先でのやり取りだった。

4年の付き合いのイベント企画会社。
その会社から受ける私の評価は、最低ランクである。
デザイン料が、安い。悲しいほど、安い。

しかし、仕事をいただけるだけでもありがたい。
どんな仕事でも、いただけるなら喜んでもらう。
そのつもりで、打ち合わせに行った。

新しいレストランのメニューが4点。
急ぎの仕事だが、それほど難易度は高くない。
だから、その仕事は私に回ってきたのだろう。自分の実力と評価は、自分が一番よく知っているのだ。

4年の付き合いのある担当者は、いきなりこう言った。
「今回、少し単価を安くしてもらえませんか」

少しとは、どれくらい?
もう少し具体的に言っていただけませんか?

「まあ、3割くらい安くしてもらえたら・・・」

3割は、少しとは言いませんね。
即座に交渉決裂。

私の場合、いつも最低限の単価で仕事を請け負っている。
これは、私のプライドが維持できるギリギリの範囲の単価である。

たとえば、世間のデザイン事務所が今回の仕事を請け負うと、おそらく「新幹線で行く京都豪華冬の旅3泊4日」の旅行が楽に行けるだろう。
しかし、私の場合は、「ロマンスカーで行く1泊2日箱根の旅」が、かろうじて行けるくらいか。

それを今回は「はとバスツアー横浜中華街日帰りの旅」にしろ、と担当者は言うのである。
それはないですよ、ヒグチさん。

それでは、私のプライドは保てません。
私は、せめて一泊旅行がしたいのです。

「しかしね、Mさん」とヒグチさんは、少々凄みのきいた声を出す。
「今の時代、仕事がもらえるだけでありがたいと思わなくちゃ。みんな、仕事を貰おうと苦労してるんだ。だから、ないよりはいいんじゃないの」
そして、低い声で「ねえ」と念を押す。

ヒグチさんの言っていることは、もちろん正しいご意見だが、それはまともな単価で仕事を請け負っている人にのみ当てはまることだ。
私の場合、これ以上単価を下げることは、プライドの崩壊につながる。
残念ながら、そのご意見は、受け入れられません。

そんなやり取りがあって、私はインターネットカフェに逃げてきたのだが、ただ逃げてきたわけではない。
おそらく、また依頼の電話がかかってくると予測したのである。

ヒグチさんが他を当たっても、私と同じ単価で、同じように確かな仕事をする業者はいない、と私は自惚れたのだ。

おそらく3時間以内に、彼はもう一度電話をしてくるに違いない。
私は、そう思って彼の会社のそばで待機することにしたのだ。

しかし、インターネットカフェに入っても、何もやることがない。
今さらインターネットでもないだろうし、漫画も読みたいものがない。
映画も面倒くさい。ゲームは苦手だ。

見事にすることがない。

そこで、受付で毛布を借りて、「15分前になったら、起こしてください」と言って、横になった。

眠った。
頭を揺さぶられて、目が覚めた。

え? 普通、起こすとき頭を揺さぶるか? 肩じゃないのか、と思ったが、そんな小さなことで怒っても仕方がないので、機嫌よく目覚めた。
インターネットカフェは、意外と寝心地がいい。
新たな発見である。

インターネットカフェを出て、すぐ仕事場に電話をかけ、留守録を聞いた。
「Mさん、至急連絡ください。仕事お願いします」というヒグチさんの声が聞こえてきた。

電話をかけてきた時刻は、11時6分だった。
交渉決裂したのが、10時10分過ぎだから、思ったより早く敵は降参したようである。

今の時刻は、午後1時20分過ぎ。
再び訪問するには、いい時間である。

本日2度目の訪問。
先ほどの交渉決裂にはお互い触れずに、1時間弱で打ち合わせを済ませた。
単価の話は、一切なし。

どうやら、「ロマンスカーで行く1泊2日箱根の旅」は、確保できたようである。


2009/01/19 PM 01:49:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

榮倉奈々的美少女
朝早く、宇都宮の同業者の助っ人に行くことになった。

とにかく、「早ければ早いほど助かる」と言うので、6時過ぎの宇都宮線に乗ることにした。
もちろん、乗るのは、各駅停車。

最寄り駅のホームは、上りは人がチラホラいるが、下りを待っている人はいない。
閑散とした風景。そして、腹が立つくらい寒い。
目の前にソーリ大臣がいたら、殴ってやりたいと思うほどの寒さだ(?)。

景気も大事だが、この寒さと眠気を何とかしろ!

両手を握りしめ、身体に力を入れて、寒さと闘う。
筋肉が熱くなれば、寒さも幾分緩和されるだろう。
実際はまったく意味がなかったが・・・。

そんなカッチカチになった筋肉を人に自慢したくなった時、下りのホームに人影を見た。
女だ。
こちらに近づいてくる。

身長は低い。
まるで小学校高学年並みだ。

まさか、本当に小学生・・・? と目を凝らした。
2メートル以内の距離に近づいてきたので、何となくイメージはつかめた。

小学生では、なかった。
中学生でもないだろう。
高校生とも言えないかもしれない。
じゃあ、大学生か? いや、社会人?

よくわからない。
小さいから若く見えるが、小ささに騙されるほど、私も初(うぶ)ではない。
私は、もう汚れきったオッサンなのだ。

失礼かと思ったが、年齢確認の義務感に燃えて、女の顔をまじまじと見させてもらった。
それで少しでも寒さが和らげば、と思ったのだ(ウソ)。

食い入るように、穴があくほど、視線を突き刺すほど眺めてみてわかった。

美人だ。
いや、可愛い!

それは、眠気と寒さが一遍に吹き飛ぶほどの、榮倉奈々的な美少女だった。

黒のコート、白いミニスカート、白のブーツ。
白地に黒い筋の入ったミニボストンバッグを手に提げた榮倉奈々的美少女は、電車には数多く出入口があるにもかかわらず、私と同じ入口から乗り込んだ。

そして、誰も乗っておらず、席は選び放題にもかかわらず、榮倉奈々的美少女は、私の斜め向かいに座ったのである。

寒さは、感じない。
眠気は去った。

では、食い気は・・・・・・・・・・、ありますよ!

朝メシと昼メシを作ってきましたからね。

私は、バッグの中からサンドイッチを取り出した。
チーズとシャキシャキのレタスをはさんだだけのシンプルなサンドイッチだ。
そして、温かいコーヒー。

まずコーヒーをふた口飲んでから、サンドイッチを優雅に口に入れた。
うまい!

目の前2メートルには、榮倉奈々的美少女。
まずいわけがない。

良い朝を迎えられたことに、私は感謝した。

ふた切れ目のサンドイッチも美味しくいただいた。
コーヒーも、やはり上手い。

目の前の榮倉奈々的美少女を見る。
眠そうである。
目を細め、口に手を当てて、小さなあくびをしていた。
そんな姿も、美少女的で、オッサンは満足したのである。

そして、4切れ目のサンドイッチを食っている最中に、榮倉奈々的美少女が、眠り始めた。
美少女は、眠っても美少女である。

いい寝顔だ。
癒される。幸福感で心が満たされる。

いい一日になりそうだ。
私は、それを確信した。

しかし、大きな異音が、そんな私の幻想を吹き飛ばした。

グゴォー!

電車がすれ違う音。いや、違うな。
すれ違ってないぞ。

まさか、いびき?

え?

周りを見回したが、車両には我々二人だけ。
私は、眠ってませんよ。
美少女を前にして、眠るなんて、そんなモッタイナイ!

じゃあ、誰が?

そして、今度は、グヒッ!

間違いなく、斜め前から聞こえてきましたね。
しかも、脚ひらいて寝てるし・・・・・・・。

あーあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・落胆。

もういいや! 俺も、寝ちまおう!

熟睡。爆睡。貪睡。

よだれが垂れる気配で目覚めた時、宇都宮駅に着く寸前だった。

榮倉奈々的美少女は、まだ私の斜め前にいた。
彼女は、すでに目覚めていて、楚々とした雰囲気が戻っている。

間違いなく、美少女だ。

私は、榮倉奈々的美少女の前で、垂れたよだれを高速で拭いた。
その姿を見て、眉をひそめる美少女。

榮倉奈々的美少女は、他人には厳しいようである。


2009/01/12 AM 11:08:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

思い出を飲み乾す男
ヨメの長兄・次兄の家族が車4台を連ねて年始の挨拶に来たことは、前回書いた。

そして、自治会長から「非常識でしょ、Mさん!」と叱責を受けたことも書いた。
ただ、この件に関しては、私が全面的に悪かった。
私が彼らに、団地の来客用の駐車スペースを教えなかったのが悪いのだ。

しかし、その駐車スペースにしても、一世帯に割り当てられた台数は1台。
他の3台はコインパーキングに入れるしかないから、私が長兄たちから「新年の挨拶に来て、なんで金払わされるんだよ!」と罵声を受けることは間違いがない。
つまり、いずれにしても、私にとって、いいことは一つもない。

さらに、自治会長からのクレームは、もう一件あった。
「なんで、あんな大きな音で音楽聞くの? それも、演歌だよ。Mさん、演歌きらいじゃなかったの!」

リビングにおいてあるミニコンポは、いまや義母の独占状態になっている。
そして、聞くのは演歌だけ。
ヨメ一族は、ヨメ以外は、演歌にドップリ浸かった人種だったのです。

演歌一族が、大音量で音楽を垂れ流していると、20分ほどで両隣の奥さんが直接苦情を言いに来たので、長兄が仏頂面で謝ったらしい。
「妹夫婦が、親をほったらかしにして遊びに行っちゃったんですよ。だから、わけがわからなくて」

はいはい。
すべては、わたしのせいです。
申し訳ございません。

最近の私の心には、怒りの炎が、いつも小さく灯っている。
そんな炎を消すには、ジョギングが最適だ。
何と言っても、金がかからないのがいい。

自由業の私にとって、ジョギングは、一番手ごろなスポーツである。
空いた時間を有効に使えるし、何と言っても、金がかからないのがいい。

私の場合、走る曜日も走る時間帯も決まっていない。
走るのは、適度に天気がよく、一時間以上の自由時間があって、体調がそれなりにいいときだ。

そして、何と言っても、ジョギングは金がかからないのがいい(しつこい?)。

天気のいい水曜午後2時。
快調なペースで、団地の外回り7キロを走った。
足は痛くない。息も上がっていない。不調なところはない。ただ、心はボロボロに傷んでいるが・・・・・。

このままどこまでも走り続けられると思っていた2週目、9キロあたりだった。
私の前方50メートルをドタバタと不様なフォームで走る男の姿が見えた。

3年くらい前から日曜日に、たまに見かけるジョガーだ。
名前は知らない。どこに住んでいるかも知らない。
年齢は40歳前後だろうか。

おそらく、若い頃まったくスポーツに親しんでこなかったのだろう。
全身の筋肉が弱い人は、足の裏に適度な力が伝わらず、走る足音が異様に大きくなる。
彼は、その典型である。

ドタバタ、ドタバタ・・・・・。
私が見る限り、彼の走りに、この3年間あまり進歩が見られない。
つまり、運動が極端に苦手なタイプと見た。

しかし、よく観察してみると、今日の彼の走りは、さらにお粗末だ。
首を大きく左右に振って、両手は溺れてもがく人のように、リズムが完全に崩れている。
顎も上がって、まるで瀕死のマントヒヒという感じだ。

どうしたのか、と一瞬思った。
これは、明らかに異常ではないか。
具合でも悪いのか。大丈夫か?

しかし、すぐに思いなおした。
他人の走りなんかどうでもいい。
私は、他人のことを心配している場合ではないのだ。

私は、ボロボロに傷んだ心を修復すべく、ドタバタ男を一気に追い抜こうとした。
抜いた時、横目で男の顔を見た。

泣いていた。

顔面を大きく歪めて、声を出さずに泣いていたのである。

こんな時、人がとる態度は、おそらく二つ。

見なかったふりをする。
「どうしたんですか」と聞く。

おそらく、見なかったふりをする人が圧倒的に多いと思うが、私が選んだのは、まったく違ったものだった。

私は、男の走るペースに合わせて、彼の一メートル先を走ったのである。
つまり、先導する形だ。
鬱陶しいと思われるかもしれないが、そのときは彼は走るのを止めるだろう。

むしろ、男にとっては、そのほうがいいのではないか。
彼に何があったか知らないが、真昼の団地の歩道を泣きながら走ることは、彼にとって決していいこととは思えない。
団地はどんなに住みやすいところでも、悪意の視線は、いたるところに張りついているのだ。

約2キロ、その状態で走って、私は公園の方向に足を向けた。
ドタバタ男も私の後ろについて、公園に入った。
私は、ストレッチ。男は、足踏み。

そして、男は、いきなりドスンというかたちで、地面に胡坐をかいた。
顔は伏せていたが、まだ泣いている気配がある。
右手は、ジャージのズボンのすそを強く握っている。そして、左手は、グーの形で額に当てていた。

数分、そんな状態が続いた。

かける言葉は、ない。かけるつもりもない。

ただ、喉が渇いたので、私は公園となりのセブンイレブンに発泡酒の500缶を4本買いに行った。
公園に戻ると、男はまだ同じ姿勢でいた。
しかし、私が戻った気配を感じたのか、男は赤く泣き腫らした目を向けて私を見た。

「さっき・・・・・・」

次の言葉が出ないようなので、私は男のそばに腰を下ろしながら、発泡酒の缶を渡した。
男は、無言で受け取った。

男が、勢いよくプルトップを引く。
少し、泡があふれた。
その泡を見ながら、男が言った。

「さっき、離婚届に判を押したんです」
泡はまだ小さくあふれ続けている。

男の声は小さい。囁くほどの大きさだ。そして、声が震えている。
「11年間・・・・・・・。この泡のように思い出はあふれるけど、もう俺たちの新しい思い出は増えることはないんですよね。あふれて、いつか消えていくんだ」

思い出を飲み乾す男。

2本目を渡した。
涙は、止まったようだ。
しかし、私が男にかける言葉は、やはりない。

汗が引いて寒くなったので、私はウインドブレーカーを羽織った。
男と同じペースで発泡酒を飲む。

男が大きく息を吐いた。酒臭かった。
だが、不快なにおいではなかった。

「女々しいですか、オレ?」
私は、首を横に振った。
人が本当に泣きたい時、女々しいも雄雄しいもない。

「女々しくはないけど、思い出を涙で消すのは無理だ。それは、消しちゃいけない」

・・・・・・・寒い・・・、あまりにも寒すぎる!

私は、自分の言葉に寒気を感じたので、勢いよく立ち上がった。

そして、空の缶の入ったレジ袋を男に渡した。
「捨てておいてください。俺は、まだ走りたいんで」

男が何か言葉を返したような気がしたが、私は振り返らずに公園を走り出た。

だが、1リットルの発泡酒のダメージは、予想外に大きかった。
早いペースで飲みすぎた、ということもある。

公園から5百メートルほど走った時点で、私は足をもつれさせ、道端に膝をついた。
よろけながら、懸命に立ち上がろうとするが、足はもつれたまま。
そんなとき、目の前に、散歩中の柴犬。
見上げると、リードの先には、飼い主のM氏。

M氏の苦笑い。

なんか、たいへん、格好が悪い・・・・・・。



2009/01/09 PM 12:45:26 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

非常識? 嫌がらせ?
今年も新らしい年が迎えられて、大変めでたいことです。

そして、嬉しいことに正月前に2件の仕事をいただいた。
1件は、毎年正月に来る企業の社内報12ページ。
これは、今回担当者が変わって、格段に仕事がしやすくなった。

去年までだったら、正月はこれにかかりっきりになっていたが、今回の担当者は「お正月は休むもんですよ」というポリシーの持ち主なので、大晦日までに9割方組み終わった。
これは、常識的な仕事の出し方だと思う。

そして、もう1件は、鍼灸院の開院のチラシと利用者カード。
この種の仕事は、何回もこなしているので、これは半日で終わった。

だから、今年の正月は、余裕のある日を過ごすはずだった。

めでたい!

いや、・・・・・・・・・・めでたくない!

ここからは、新年早々、非常識ということに関して問題を提議してみたい。

私は、間違いなく非常識な人間である。
それは、自覚している。
その非常識な人間が、昨日受けた仕打ちに対して、皆さんに問いたいのです。

義母が、一時的に我が家に身を寄せていることは、何度かこのブログに書いた。
そこで、今年の正月、ヨメの長兄、次兄が昨日我が家に大挙して押し掛けたことに関しての問題提議。
その数、10名。

私の「おめでとうございます」という挨拶は、長兄、次兄に見事に無視された。
これは、別にいい。
親しいつき合いをしてこなかったこちらが悪いのだから・・・。

子どもが、親の新年の無事を祝って挨拶をすることは、実に常識的なことである。
それは、あっぱれだ。

しかし・・・・・・・・・・。

長兄には、子どもが3人。次兄には2人。
全員が成人して、5人のうち4人が、職に就いている。
私は、かつてこの5人に何度もお年玉をあげたことがある。

子どもたちだけで我が家に挨拶に来たのだから、大人としてはお年玉をあげなければいけないだろう。
これは、私の中では、常識である。

何年にもわたって、私は彼らにお年玉をあげ続けた。

月日は経ち、彼らは成長し、大人になった。職にも就いた。
そして、私の子どもは、中学生と高校生。

そこで、彼らは大人になった証として、私の子どもたちにお年玉を渡すものだと、私は期待した。
私の子どもたちも、おそらく期待した。

しかし、今回、彼らの手から私の子どもたちにお年玉が渡されることはなかった。

長兄の長男が赤ちゃんを連れてきていたので、私たちは慌ててポチ袋に千円を包んで渡したにも関わらず、彼らは、我が子どもたちに何も与えなかったのである。

断言するが、私の子どもたちは、下品ではない。
お年玉が欲しいという顔もしなかったし、もらえなくてがっかりした表情も浮かべなかった。
そして、彼らが帰った後も義母に遠慮して、その話題は持ち出さなかった。

しかし、私は、はらわたが煮えくりかえったのだ。

何だ! こいつら!

俺は、おまえらに何度もお年玉をやったじゃないか!


こんなことを思う私は、非常識で下品な人間なんでしょうね、おそらく。

彼らは昼飯時にやってきた。
当然、腹が減る。

そこで、長兄が言った。
「俺が払うからさ。寿司でも取ろうよ!」

狭い我が家に集まった総勢15名。
赤ん坊がいるので、対象は14名。

私は、当然14人分寿司を頼むと期待したのだが、頼んだのは10名分。
つまり、我が家の分はないのだ。

それを期待した私は非常識なんでしょうね、おそらく・・・。

居たたまれない表情で私を見つめるヨメ。
その顔を見て、私は、せいぜい明るくこう言うしかなかった。

「すかいらーくでメシ食って、大宮で福袋でも買うか!」

家族全員が、何となく心の奥底にわだかまりを残しながら、昼飯を食い、福袋を買って帰宅した午後7時。
団地の前の道で、自治会の会長に呼び止められた。

「Mさん、困るんだよね。あれ、お宅の身内でしょ。4台で団地の駐車禁止のところに、ずっと車止めてさあ、他の車が出るのに苦労して、俺んところに苦情が来たんだけど、Mさん、電話出ないんだもん。あれ、どういうことよ! 非常識でしょ。勘弁してよ!」

私は、ただ頭を下げるしかなかった。

私は、確かに、非常識な男です。



2009/01/03 AM 11:42:42 | Comment(6) | TrackBack(0) | [日記]



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