Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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塾長はキャバクラがお好き
あなたは、運命を信じますか?

私は、信じない。絶対に信じない。
なぜなら、すべてのことは、「必然」だと思っているから。

しかし、時にその信念が揺らぐことがある。
私の古い友人に、ノナカという男がいる。
こいつに関しては、何度か書いたことがある(たとえば、こちらこちら)。

ノナカは、仙台で塾を経営している。
ここ数年、順調に生徒を増やしていたが、昨今の不況のせいなのか、今年は少し減ったという。
そこで、そのことに危機感を覚えたノナカは「ミニパソコン塾」というのを考えて、とりあえず仙台と東京に各1店舗ずつ出すというアイディアをひねり出した。

「おまえも少し出資してくれないか」と言われたので、私は目をつぶって「えい!」と、5万円を差し出した(いい大人が、たったこれだけしか出せないなんて・・・泣)。

しかし、ノナカは電話口で「おお、ありがたい!」と大げさに喜んでくれた。
いいやつなのである。
それが、2ヶ月前のことだった。

そして昨日、ポカポカ陽気の大宮。
納品を終えて、私は大宮ダイエー前の宝くじ売り場で、悩んでいた。

ミニロトを、買おうか、買うまいか・・・・・・・。

昨年、小さな額だったが、ミニロトを当てたことがある(そのことに関してはこちら)。
昨年は、この当選金で、現在高校三年の息子の誕生日プレゼントを買った。
だから、「今年も」と思ったのである。

宝くじは、あれ以来買っていない。
真剣に考えた。
俺に「幸運」は、残っているだろうか。

運から見放されている実感は、絶えず感じている。
いいことなど、ひとつもない。
しかし、気まぐれな「運」が、突然私の頭上に降りてくるという幸運は、零コンマ1パーセントくらいは、まだ残っているのではないだろうか。

もう一度だけ、私に「ささやかな幸運」を!

そう思いながら、私は、宝くじ売り場を見つめていた。

買おうか、買うまいか。

売り場には、列ができていた。
数えると、8人。

そして、9番目に並んだ男。
ヘチマ顔のノナカだった。

仙台にいるはずのノナカが、なぜ大宮に?
しかも、なぜ、宝くじ売り場に並ぶ!

絶望感が、私を包む。
こんな運命なんかいらない!

俺が欲しいのは、「幸運の女神」だ!

バ〜〜〜カ!

悪意の舌打ちをして、私は回れ右をしようとした。
しかし、その「悪意」がノナカのアンテナに触れてしまったようだ。

「おやぁ! なんだぁ! またかよ!」
アホ丸出しの声。でかい声だ。ため息が出る。

「おいおい! 待ってくれ! すぐ終わるから、待ってくれ!」
でかい声が、宝くじ売り場周辺にこだまする。
半径30メートルの群衆が、私を注視している。

私は、恥ずかしさに、全身赤くなって柱の陰に隠れた。
年末、なぜこんなところで赤くならなければならないのか。
結局、今年も、いいことなんか一つもなかった。

赤みが冷めたころ、ノナカがヘチマ顔をのぞかせて「ヘヘヘ」と笑った。
癪にさわった私は、ノナカのほっぺたを強くつねったが、それでもノナカは「ヘヘヘ」と笑う。

私は「あばよ!」と言って、逃げようとしたが、Kirin Cityに拘束されてしまった。
座ってすぐ、私は、言いたいことがたくさんありそうなノナカの顔の前に両手を開いて出した。

いいか! 昔話は厳禁だ。ひとの噂話もダメ! 自慢話もするな! もししたら、俺はすぐ席を立つ!

私の言葉に、ノナカは全身固まって、泣きそうな顔になった。
「じゃあ・・・・、なにを・・・・・・ええ?」

たとえば、おまえがいま入りびたっているキャバクラの話とかなら、いいぞ。

私がそう言うと、ノナカの目が、完全に凍りついた。
そして、かすれた声で、「ど、ど、ど・・・(どうして、知ってる?)」と言った。

何だよ。本当にキャバクラに入りびたってるのかよ(適当に言ったのに)。
おまえ、塾の経営者だろ。教育者の端くれじゃないか。そいつが、キャバクラ?

「だって、いい子がいるから・・・・・」
凍ったままの目を泳がせて、ビールのグラスをもてあそびながら、ノナカは、口をとがらせた。

なにちゃんだ。おまえのお気に入りは?

すると、ノナカは一転して、嬉しそうに、「マキちゃん!」。
凍った目が溶けて、奥に小さな灯がともったようになった。
そして、口元をだらしなく崩して、こう言う。

「女優の松下奈緒に似てるんだよね、マキちゃんは!」
ほー、それは、なかなか興味深い。会ってみたいものだ。

私がそう言うと、ノナカは携帯を取り出して、嬉しそうに(アホ面で)私に画像を見せてくれた。
「これが、マキちゃん!」

(ん? 松下奈緒に似てるんじゃなかったっけ? これは、まるでフランスのサルコジ大統領が、女装をしたような・・・・・)
これは、撮り方が悪かったのかな。他にも、画像はないのか?

ノナカは、嬉々とした表情で新たな画像を見せてくれたが、それもサルコジだった。
(おい! おまえの目の構造は、どうなっている? サルコジのどこが松下奈緒だ!)

「可愛いだろ? 声や仕草も可愛いんだよね。ああ、もちろん性格もね」
一気に冷めた私の関心に気づくことなく、ノナカは目じりを下げて、「デヘヘ」と笑った。

生徒が、この姿を見たら、どう思うだろうか。
キャバクラ通いをする塾経営者を見て、彼らは何を思う?
大人や教育界に失望するんじゃないか?

私は、ノナカの目を覚まそうと思って、身を乗り出した。

おまえ、フランスのサルコジ大統領を知っているか?
「ああ、もちろん知ってるさ」
じゃあ、そのサルコジ氏の女装姿を想像してみろ。
「なんで、そんな気持ち悪いことを?」
いいから、想像してみろ。
「・・・・・・・・・・」
どうだ?
「気持ち悪いな」
だろ? で、もっと他に何か感じることはないか?
「なにかって・・・・・、う〜ん、気持ち悪いだけだな」
何かを思い出さないか?
「・・・・・べつに、なにも」
携帯の画像を見て、もう一度考えてみろ。
「う〜〜ん、マキちゃん、可愛い! としか感じないな」

塾長は、たいへん幸せな男だった。


2008/12/19 PM 12:19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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