Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ゴキブリ以下にはなりたくない
私は、たいへん器の小さな男です。

義母が、糖尿病療養の目的で我が家にやってきて、2ヶ月近くが立つ。
義母が来るに当たって、私は糖尿病に関して、ネットで細かく調べた。
食事療法に関しても、詳しく調べた。

適度なカロリーコントロールと栄養バランス。
それを実践した。
しかし、義母は毎日毎日「肉が食べたい」「うなぎが食べたい」「とんかつが食べたい」「とにかく脂っこいものが食べたい」と駄々をこねるのである。

あろうことか、「私は、週に1〜2回は、必ずうなぎを食べてましたよ。とんかつもです」と威張るのだ。
糖尿病は、規則正しい生活と食事、定期的な薬の服用が大事である。
それは、確実に守るべきものだ。

だが、義母は、こう言うのだ。
「三食たべるの、面倒くさいのよね〜」
「薬飲むのも、面倒くさくて〜」

本当に、あなた、糖尿病ですか?

もちろん、彼女は、本当に糖尿病です。
12月はじめ、義母はインフルエンザに罹って5日間入院したが、そのとき私は医師から義母の検査数値を聞かされて、釘を刺された。
「本当だったら、もっと入院して規則正しい食事をし、それを習慣化したほうがいいですね。そうしないと、大変なことになりますよ」

だが、入院は嫌だと、断固として拒否。義母は、また我が家に舞い戻ってきた。
私は以前にも増して、食事に気を配った。
しかし、義母には危機感がない。そして、実の娘であるヨメにも、まったく危機感がないのである。

ヨメの親戚筋での私の評価が最悪なことは、以前ブログに書いたことがある(こちら)。
私は、ゴキブリ並みの評価しかされていないのだ。
ここでもし、義母の糖尿病が悪化したら、私の評価はゴキブリ以下になる。それは、避けたい。

私がそう言うと、ヨメは「バッカばかしい!」と笑う。
彼女は、いつまでたっても、他人事なんですよ。

だから、私が打ち合わせなどで家を空けるとき、私が義母のために作ったヘルシー弁当を必ず食べさせるように、という忠告をヨメは完全に無視して、二人してチャーシューメンなどを食っているのである。
義母のために、糖尿病のヘルシー弁当を10数回作りましたが、いつも手付かずですよ。
その手付かずの弁当は、高校3年の息子の夜メシになるのだが、毎回「うめーなー」と言って食ってくれる息子のなんと可愛いこと!

私は器の小さな男です。心が狭いと言ってもいい。

この程度のできごとでも、腹が立つのだ。
しかも、追い打ちをかけるように、私の心を狭くするできごとが発覚したのである。

義母の次男が、私がいないときに、宅急便を送ってきたらしいのだ。
ある日、義母の部屋を掃除していたヨメが、それを見つけた。
中をのぞくと、レトルト食品が呆れるほど、その存在を主張していた。

牛丼、豚丼、中華丼、お肉タップリのカレー、高級牛を使ったハヤシライス。
肉・肉・肉・肉・・・・・・・・。
おまえは、実の母親の病状が、どれだけ危機的状況なのか、わからないのか!

義母は、私が営業に行っている間に、これを昼ご飯にして舌鼓を打っていたわけだ。
俺の今までの努力は、一体なんだったんだ!

我ながら、心が狭いと思いますよ。
もう、ほっとけばいいのに・・・・・ねえ?

でも、頭にくるんですよ、俺は!

だから、心の狭い私は、強硬手段に出たのだ。
義母のお小遣いを取り上げて、買い食いをしないようにした。
そして、レトルト食品を全部隠した。

ヨメは、そこまでやらなくても、と言うが、私は怒ったのだ。
糖尿病を馬鹿にするな!
糖尿病は、あんたらが考えている以上に怖い病気なんだよ!

そして、義母は、すぐに音を上げて、自分の息子たちに助けを求めた。
私がレトルトを隠した翌日の夜、次兄から電話がかかってきた。
ヨメが電話を取ったが、ヨメは最初から次兄を説得しようという気がない。
私に助けを求める強い目線を送ってきたので、私がすぐに電話を変わった。

心の狭い私は、珍しく怒りが持続して、最近ずっと怒りっぱなしだった。
私は、次兄に有無を言わさず、今までの経過を述べ、義母の医学的データと医師の見解を告げ、「ふざけんなよ!」と言った。

営業出身の口達者の次兄は、最初こそ力んでいたが、途中からは、私の気迫に口を挟むことができず、「ああ」と言うだけだった。
約10分間の独演会。
次兄は、最後は、小さな声で、「ああ・・・・・、よろしく・・・お願いします」と言うしかなかった。

やった! 勝った! フン、ざまあみろ!

・・・・・・・・・・・・・。

しかし、勝ったと思ったのは、5秒くらいだった。

頼りになる息子が、私をコテンパンにやっつけてくれることを期待していた義母は、見るからに意気消沈。
その姿を見て、私は自分の器の小ささを思い知ったのだ。

そこまでしなくても、よかったのではないか・・・・・。
自己嫌悪の渦が私をグルグル巻きにする。

それからは、できる限り、義母の好きな肉を以前コメント欄でMeguriさんが教えてくださったように、鶏肉を中心にして、レシピを組むようにした。
義母は、鶏肉が嫌いだが、ひき肉にして豚や牛と混ぜれば、何とでも誤魔化せることがわかったのだ。

ヘルシー弁当は、いまだに手付かずだが、これは徐々に洗脳していくことにしよう。
まだまだ先は長い。
私にとっても、糖尿病の食事療法というのは、興味深いものがある。

これからは、小さな器を少しだけ大きくして、私も糖尿病と向き合っていこうと思っている。

と、そんな事件があった12月下旬。
私にとって、最大の嬉しいできことがあった。

中学1年の娘のことだ。

娘には、仲のいい友だちが5人いる。
そして、その5人は全員が、塾に通っている。

そこで、ヨメと義母は、「みんなが行ってるんだから、あんたも塾に行ったら」と娘に言う。

みんなが行ってるんだから、塾に行く? なんで?

娘と私は、その考え方が気に食わないのである。
授業を聞いて理解してるんだから、いいじゃないか。
なんで、塾に行く必要がある?

しかし、ヨメ・義母連合は、「でも、それではみんなに負けるわよ」と口をとがらす。

そこで、2学期の期末試験の話になる。
今回、娘の主要5教科の合計得点は、5百点満点で457点だった。
これは、塾に行っている娘の友だちの最高点450点を7点上回る点数だった。

この結果を見て、私は娘と二人、ハイタッチを10回以上繰り返しました。
そして、息子は、その横でバンザイをしていた。

しかし、義母とヨメは、苦笑い。

こんなことで喜ぶ私は、間違いなく器の小さい男でしょうが、そんなことは知ったこっちゃない!

嬉しいものは、嬉しいんだ!
ああ、嬉しい!

(え? やっぱり・・・・・小さい? あ、そう・・・)


2008/12/24 AM 11:44:43 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

塾長はキャバクラがお好き
あなたは、運命を信じますか?

私は、信じない。絶対に信じない。
なぜなら、すべてのことは、「必然」だと思っているから。

しかし、時にその信念が揺らぐことがある。
私の古い友人に、ノナカという男がいる。
こいつに関しては、何度か書いたことがある(たとえば、こちらこちら)。

ノナカは、仙台で塾を経営している。
ここ数年、順調に生徒を増やしていたが、昨今の不況のせいなのか、今年は少し減ったという。
そこで、そのことに危機感を覚えたノナカは「ミニパソコン塾」というのを考えて、とりあえず仙台と東京に各1店舗ずつ出すというアイディアをひねり出した。

「おまえも少し出資してくれないか」と言われたので、私は目をつぶって「えい!」と、5万円を差し出した(いい大人が、たったこれだけしか出せないなんて・・・泣)。

しかし、ノナカは電話口で「おお、ありがたい!」と大げさに喜んでくれた。
いいやつなのである。
それが、2ヶ月前のことだった。

そして昨日、ポカポカ陽気の大宮。
納品を終えて、私は大宮ダイエー前の宝くじ売り場で、悩んでいた。

ミニロトを、買おうか、買うまいか・・・・・・・。

昨年、小さな額だったが、ミニロトを当てたことがある(そのことに関してはこちら)。
昨年は、この当選金で、現在高校三年の息子の誕生日プレゼントを買った。
だから、「今年も」と思ったのである。

宝くじは、あれ以来買っていない。
真剣に考えた。
俺に「幸運」は、残っているだろうか。

運から見放されている実感は、絶えず感じている。
いいことなど、ひとつもない。
しかし、気まぐれな「運」が、突然私の頭上に降りてくるという幸運は、零コンマ1パーセントくらいは、まだ残っているのではないだろうか。

もう一度だけ、私に「ささやかな幸運」を!

そう思いながら、私は、宝くじ売り場を見つめていた。

買おうか、買うまいか。

売り場には、列ができていた。
数えると、8人。

そして、9番目に並んだ男。
ヘチマ顔のノナカだった。

仙台にいるはずのノナカが、なぜ大宮に?
しかも、なぜ、宝くじ売り場に並ぶ!

絶望感が、私を包む。
こんな運命なんかいらない!

俺が欲しいのは、「幸運の女神」だ!

バ〜〜〜カ!

悪意の舌打ちをして、私は回れ右をしようとした。
しかし、その「悪意」がノナカのアンテナに触れてしまったようだ。

「おやぁ! なんだぁ! またかよ!」
アホ丸出しの声。でかい声だ。ため息が出る。

「おいおい! 待ってくれ! すぐ終わるから、待ってくれ!」
でかい声が、宝くじ売り場周辺にこだまする。
半径30メートルの群衆が、私を注視している。

私は、恥ずかしさに、全身赤くなって柱の陰に隠れた。
年末、なぜこんなところで赤くならなければならないのか。
結局、今年も、いいことなんか一つもなかった。

赤みが冷めたころ、ノナカがヘチマ顔をのぞかせて「ヘヘヘ」と笑った。
癪にさわった私は、ノナカのほっぺたを強くつねったが、それでもノナカは「ヘヘヘ」と笑う。

私は「あばよ!」と言って、逃げようとしたが、Kirin Cityに拘束されてしまった。
座ってすぐ、私は、言いたいことがたくさんありそうなノナカの顔の前に両手を開いて出した。

いいか! 昔話は厳禁だ。ひとの噂話もダメ! 自慢話もするな! もししたら、俺はすぐ席を立つ!

私の言葉に、ノナカは全身固まって、泣きそうな顔になった。
「じゃあ・・・・、なにを・・・・・・ええ?」

たとえば、おまえがいま入りびたっているキャバクラの話とかなら、いいぞ。

私がそう言うと、ノナカの目が、完全に凍りついた。
そして、かすれた声で、「ど、ど、ど・・・(どうして、知ってる?)」と言った。

何だよ。本当にキャバクラに入りびたってるのかよ(適当に言ったのに)。
おまえ、塾の経営者だろ。教育者の端くれじゃないか。そいつが、キャバクラ?

「だって、いい子がいるから・・・・・」
凍ったままの目を泳がせて、ビールのグラスをもてあそびながら、ノナカは、口をとがらせた。

なにちゃんだ。おまえのお気に入りは?

すると、ノナカは一転して、嬉しそうに、「マキちゃん!」。
凍った目が溶けて、奥に小さな灯がともったようになった。
そして、口元をだらしなく崩して、こう言う。

「女優の松下奈緒に似てるんだよね、マキちゃんは!」
ほー、それは、なかなか興味深い。会ってみたいものだ。

私がそう言うと、ノナカは携帯を取り出して、嬉しそうに(アホ面で)私に画像を見せてくれた。
「これが、マキちゃん!」

(ん? 松下奈緒に似てるんじゃなかったっけ? これは、まるでフランスのサルコジ大統領が、女装をしたような・・・・・)
これは、撮り方が悪かったのかな。他にも、画像はないのか?

ノナカは、嬉々とした表情で新たな画像を見せてくれたが、それもサルコジだった。
(おい! おまえの目の構造は、どうなっている? サルコジのどこが松下奈緒だ!)

「可愛いだろ? 声や仕草も可愛いんだよね。ああ、もちろん性格もね」
一気に冷めた私の関心に気づくことなく、ノナカは目じりを下げて、「デヘヘ」と笑った。

生徒が、この姿を見たら、どう思うだろうか。
キャバクラ通いをする塾経営者を見て、彼らは何を思う?
大人や教育界に失望するんじゃないか?

私は、ノナカの目を覚まそうと思って、身を乗り出した。

おまえ、フランスのサルコジ大統領を知っているか?
「ああ、もちろん知ってるさ」
じゃあ、そのサルコジ氏の女装姿を想像してみろ。
「なんで、そんな気持ち悪いことを?」
いいから、想像してみろ。
「・・・・・・・・・・」
どうだ?
「気持ち悪いな」
だろ? で、もっと他に何か感じることはないか?
「なにかって・・・・・、う〜ん、気持ち悪いだけだな」
何かを思い出さないか?
「・・・・・べつに、なにも」
携帯の画像を見て、もう一度考えてみろ。
「う〜〜ん、マキちゃん、可愛い! としか感じないな」

塾長は、たいへん幸せな男だった。


2008/12/19 PM 12:19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

師走のドロボウ
またドタキャンですよ。

先週の火曜日もドタキャンされました。
同じ会社、同じ人、同じ理由。

「突然の出張だよ。人員削減の影響がモロ出ちゃってさあ。人使い荒くて困るよ。体がいくつあっても足りないって、このことだな」

相応の理由があるなら、ドタキャンは仕方ないが、事前に連絡するという方法がなぜ取れなかったのか。
こちらが会社に出向いて受付を通すまで、それを知らさないというのは、明らかに誠意がないのではないか。
たった30分間の打ち合わせ時間も取れないというのか!

細かいことを言うようだが、往復で1300円かかっているのだ。
それが、一週間で2回。
無駄な出費だ。そして、時間の無駄。

誰も責任を取ってくれない無駄だから、余計に腹が立つ。
それに、丁寧に謝ってくれるのなら、まだ許せるが、ヘラヘラ笑ってやがるとは・・・。

午前10時過ぎ。
時おり気まぐれに吹く強いビル風に、首を縮め肩をすぼめて歩く。

あの会社からは、今年はもう仕事は来ないな・・・・・。
(呪ってやる)
気が滅入る。

あまり早く家に帰ると、一時同居中の義母(モンスター)から、「あら、短い散歩だね」と、嫌味を言われる。
その確率は、クリスマスの東京に雪が降らない確率より間違いなく高いはずだ。

暇になったぞ。
しかし、俺は、時間をつぶすのが下手な男だ。
パチンコもスロットもしない。カフェで優雅に時を過ごす柄ではないし、余分な金も無い。

立ち読みは、目が疲れるし、腰も疲れて、いいことはない。
近くに東急ハンズがあれば、半日飽きずに過ごせるが、残念ながら八重洲にはないようだ。

金がないときは、マクドナルドでコーヒーというのが、人間本来のあるべき姿である。
そんなことを思いながら、八重洲地下街に潜り込んで貧乏臭く歩いていた。

足早に歩いていく、できるサラリーマン、そして有能なOL。
片や、連続ドタキャンされ男。しかも、財布の中身640円男は、うつむき加減にトボトボと歩く。
師走だからと言って、誰もが忙しいわけではないのですよ。
他の人の半分以下のスピードですね。
ひとりだけ、師走の空気をかき回すことなく、空気に同化するように歩いていた。

そこへ、前から見覚えのある顔が歩いてくる。
それは、師走のスピード以上だった。
友人の京橋のウチダ氏だ。

彼は、八重洲口そばの京橋に事務所を構える社長様なのである。
イベントの企画・出版業・企業のプロデュースのほかに、最近では「犬の結婚式までプロデュースしちまったよ」と得意げに言う男だ。
ウチダ氏は、イケメンである。爽やかだ。そして、金持ちに見える。

その金持ちに見えるウチダ氏と同じスピードで、それ以上に金持ちに見える男が彼の横を並んで歩いていた。
お知り合いと見た。
そこで私もスピードを上げて、さらに気配を消し、他人の振りをして、すれ違おうとした。

しかし・・・・・・・、
「あれ! Mさん、こんなに早く来たの? そうか、年末だから、早めに段取りを済ませないといけないか。さすが、Mさん! じゃあ、行こうか」

はあ?

ウチダ氏に、素早く拉致されてしまったのである。
「えっ」という顔の男を置き去りにして、ウチダ氏が小声で言う。
「あいつ、いろいろと仕事の話を持ってくるんだけど、使えないのばっかりなんだよ。いいタイミングでMさんと出会えて、ラッキーだよ」

で、Mさん、何でここにいるの? と改めて聞かれたので、事情を説明した。
頭のいいウチダ氏は、理解が早い。
彼は、私のブログを読んでくれているから、モンスターの存在もご存じである。

そこで、こんな提案をしてくれたのだ。
俺は、今日は事務所には戻らない。だから、事務所は、あんたが好きに使っていい。UFOカップ焼きそばが箱買いしてあるので、腹が減ったらそれを食え。冷蔵庫にはスーパードライがあるから、飲むのも自由だ。

なんて太っ腹なイケメン社長!
そこで、彼の事務所に侵入することにした。

相変わらず、何もない殺風景な事務所だ。
デスクと小さな応接セットが一対。ほかは本棚と冷蔵庫だけである。
10畳以上ありそうな空間に、たったそれだけ。
テレビもない。オーディオコンポもない。
私には、他人のパソコンをいじったり、本を読んだりする趣味はないので、やることがない。

だから、UFOを食って、ビールを飲んだら、寝るしかない。
幸い、毛布がデスクの下に隠してあったので、それを掛けて寝ることにした。

一度起きて、またUFOを食って、ビールを飲んだ。そして、また寝た。
次に起きたとき、時計の針はちょうど4時を指していた。

帰ろう。
師走の街並みを貧乏くさく歩いて、帰ろう。
事務所の鍵をドアの郵便受けに落とし込んで、街へ出た。

サンタではないが、バッグがはち切れんばかりに膨れあがっている。
そして、重い。
それは、なぜか。

ウチダ氏の事務所から、UFOカップ焼きそば5個と500缶のスーパードライ6本をいただいてきたからである。

ウチダ社長、スマン!

金儲けしたら、返すから。
(要するに、永久に返すつもりもアテもない)


2008/12/17 PM 12:15:48 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

居酒屋で泣く
夜7時過ぎ。
友人のカネコから電話がかかってきた。

お互い滅多に電話を掛け合わない友だち。メールさえも面倒臭がる友だち。
その男が、私の家の最寄りの駅まで来ていると言う。
それは、「珍しい」という言葉で表現するのが陳腐なほど、奇妙な出来事だった。

だから「奇妙だな」と言った。
カネコは「悪いな」と答えた。

駅前の居酒屋を指定して、自転車を飛ばした。
カネコは、半分ほど埋まった店の真ん中の席で、ウィスキーの水割りを飲んでいた。
店の真ん中は、客の会話が上から降ってきてうるさいので、隅っこの柱の影に移動した。
ここなら、落ち着いて飲める。

私は、カネコの奢りだということを確認してから、大ジョッキと焼きおにぎりを頼んだ。
ジョッキが運ばれてきたが、乾杯はしない。
何を祝っていいか、わからないからだ。

カネコとは、25年以上の長い付き合いだが、まともな会話をした記憶が、ほとんどない。
4年以上音信不通だったこともあるし、5年以上会わなかったこともある。
だが、カネコの娘のショウコとは、たまに会う。電話もする。酒も飲む。

カネコとは、話さないことが当たり前になっていたから、会わなくても疎遠になった気がしない。
たとえ5年ぶりに会っても、昨日の続きを話しているような気がしてくるのだ。
それは、いい関係だと思う。

1年ぶりに会ったカネコは、また少し太ったようだ。
好意的に見れば、貫禄が付いたと言うことか。
少したるんだ顎を震わせて、カネコが口を開いた。

「仕事、順調か」
どん底を這い進んでるよ。
「そうか。よく続いてるな、一人で。感心するよ」
俺もそう思うよ。
人一倍、不器用で世渡り下手で人付き合いの悪い俺が、よく続いていると思う。

そして、思い出したように、カネコが言う。
「ブログ、書いてるんだって」
ああ・・・。ショウコから聞いたんだな。
「おまえのブログなんて、読むやつがいるのか」
ひとり確実に読者がいる。ショウコだ。

カネコは、私のブログを読まないだろう。
私の友人や同業者にもブログを書いているのが何人もいるが、私は読んだことがない。
照れくさいからだ。
だから、カネコも親友のブログは読まないはずだ。
それは、断言できる。

カネコが3杯目の水割りを頼んだ。
今日は、いつもよりペースが早いようだ。
なぜか、ということは聞かないし、推測もしない。
それに意味はあるのだろうが、それはカネコの事情だから、私の方に聞く気はない。

3杯目の水割りを半分ほど飲んだところで、カネコが小さく息を吐くようにして言った。
「犬を飼ってるんだ」
なぜ? ショウコが飼いたいと言ったときは、反対したくせに。

カネコが私の目を見る。
今日はじめて目を合わせた。そして、すぐに目線を下に落とす。
「ショウコは、犬を可愛がるだろう。そして、犬もショウコになつくだろう。でも、ショウコがもし突然いなくなったら、犬は混乱するんじゃないか。あんなにも自分を可愛がってくれたご主人様が、突然、自分の前からいなくなるんだ。犬が可哀そうだろう。俺は、そんな残酷なことはできなかった」
目線を下げたまま、箸でおでんの卵をもてあそんでいた。

つまり、おまえは、ショウコが突然いなくなると思っていたんだな。
「突然かどうかはわからないが、外国の大学に行くかもしれないとは思っていたな。自立心と好奇心の強い子だったからな」
確かにな。
「外国には行かなかったが、まさか18で結婚するとは・・・、驚かせてくれるよ」
卵を箸で崩したあと、箸を置いて、カネコはウィスキーの残りを飲み干した。

4杯目。
目のまわりが、赤くなっている。
そして、もう一度、崩した卵を箸でもてあそぶカネコ。

カネコが、顔を上げて、私を見た。
遠いものを見ているような目。焦点がぼけているような目だった。

「この間、ショウコを抱きしめたんだよ」
カネコは、自分の両手を見ていた。
「久しぶりだった」

子どもができたからか。
「ああ、『よくやった』って、抱きしめた」
両方のこぶしを握るカネコ。その手が震えていた。

ショウコは、泣いたな。
「ああ、泣いた。でも・・・な。亭主のマサのほうがもっと大泣きをしていやがった」
それは、いかにも想像できる、目の前に鮮明に浮かぶ情景だった。

マサは、いいやつだろ。
「ああ、腹が立つくらいに・・・・・な」
ショウコは、幸せだ。
「ああ」
カネコの答えには、迷いがなかった。
しかし、カネコは顔をゆがめて下を向いた。
両手は、まだ震えている。

私は、カネコが残したおでんを食った。
牛タンを食った。ヘルシー・ツナサラダも食った。
2杯目の大ジョッキを飲み干した。
3杯目を注文した。
店内に流れるジャクソン・ファイブの「ママがサンタにキスをした」を聞いた。

そして、あとは、一緒に泣くしかなかった。


2008/12/16 AM 11:21:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

歌舞伎役者は「ブレない」と言った
ほぼ7年ぶり。

7年前、何をしていたか、それを即座に思い出せる人は、かなりの記憶力の持ち主だろう。
私は、当然のことだが、7年前の出来事など、思い出せない。

しかし、仕事のこととなると、別である。
7年ぶりにかかってきた電話。
私は、その声を覚えていた。

一度だけの仕事。
それは、確かB4のチラシだった。

「手書きのチラシを撒いてたんだけど、たまには、まともなものも作ろうと思ってね」
目尻に深いしわを刻んで、50過ぎの工務店の社長は、はにかむように言ったのだった。
その照れた様は、今でも、はっきり覚えている。そして、声も。

その会社は、一軒家の自宅の一角を事務所にして、奥さんと二人で細々と工務店を営んでいた。
「そうだね。年に3棟作る程度かな。いつつぶれてもおかしくない会社だな」
自嘲気味に言っていたが、卑屈な感じのしない夫婦だった。

その7年後。
事務所を訪れてみると、事務所は、場所を変えていて、新しいビルのワンフロアを占領していた。

建築業界が不況の時代に、まさかの躍進!
整然とした事務所の応接室の壁には、ゴッホのレプリカがあった。
ゴッホの自画像だ。
生真面目に斜めを向いて虚空をにらむゴッホ。

何の意味が? と聞いたら、「ゴッホは、時代をにらんでいるんですよ。生前はまともな評価を受けなかったゴッホだけど、時代をにらむことで、彼は自分を見失わずに絵を描き続けることができた。ゴッホは時代の先を行った画家だが、我々もたとえ受け入れられなくても、絶えず時代をにらんでいたいという思いを込めて、これを掲げているんだ」と、7年前からは想像できないほど、力強い表情で社長は私をにらんだ。

その社長の隣には、社長の息子がいる。
歳は、28歳だという。
彼は、歌舞伎役者のように、代々受け継がれた品のよさを漂わせて、姿勢よく社長の隣に座っていた。

その彼が言う。
「Mさんに仕事を頼んだのが、およそ7年前。そのときのチラシを見ると、僕の考えている住宅イメージと一致しているんで、びっくりしたんですよ」

7年前のチラシは、「なんか、品がよすぎて、ピンとこねえな!」と社長に言われ、仕事はそれっきりだった。
そのデータは、ハードディスクの中に残っているが、「その他」のフォルダの中に、いつでも捨てられる状態で残してあった。

「僕、このチラシ、いいと思いますよ。うちの会社のポリシーに近いと思います」
そう言って、息子が取り出したのが、B3のチラシの印刷物だった。
1カ月おきに出すチラシは、淡い色調のおとなしめなもので、インパクトは感じられない。
しかし、安心感はある。

そのチラシは、彼が父親の仕事を手伝う前に勤めていたマーケティング会社の系列デザイナーに頼んで作らせたものだという。

「お客様にとって、会社の方針がブレることは、とても居心地の悪いものです。だから、5年間ブレないチラシを発信してきました」
歌舞伎役者が見得を切るように、目を一点に捉えたまま、彼は胸を張った。

チラシを見てみると、確かに、見事なほどブレていない。
奇をてらわずに、正攻法で、自分の主張を押し通している様子が、紙面からにじみ出ているのだ。

「地味な手法だとしても、自分の信念を貫いていけば、必ずユーザーは評価してくれるんです」
そう言いながら「これは、僕の宝物なんです」と言って、歌舞伎役者は、分厚いクリアファイルを私に見せてくれた。

そこには、建物の概観写真とユーザーの写真、ユーザーの感想が書かれたA4のファイルが100枚以上綴られていた。
読んでみると、感謝の言葉のほかに、クレームもあった。

「クレームは、生きた教科書ですよね」と、歌舞伎役者が爽やかに言う。
その爽やかな笑顔を、隣で満足そうな笑みを浮かべて、社長(親父)が見ている。

それを見ただけで、こちらも幸せな気分になる。

世の中、不況である。
未曾有のリストラ嵐が吹き荒れている。
私の取引先にも、この1年で傾いて沈没したものが、いくつかある。

しかし、今回訪問した会社のように、業績を伸ばしている会社もある。
それは、歌舞伎役者風の息子が言ったように「ブレない」ということが、大きなヒントになるのではないだろうか。

ユーザーは気まぐれだが、敏感でもある。
私たちは、素人なりに、企業の姿勢を独自のアンテナでキャッチしているのではないだろうか。

ブレた時の不快感。

それをユーザーは、「なんとなく」というかたちで、キャッチするのだ。
その「なんとなく不快」という感性。
それが「ブレ」ということではないだろうか。

「ブレないチラシを、ちょっと考えてみてくれませんかね。サイズはB4。とりあえず、7年前の感性のままで、イメージを作り上げてみてください」
歌舞伎役者は、薄く微笑んで、「Mさんに、お任せしますから」と、見得を切った。

歌舞伎役者風の息子のそんな言葉に、私は緊張しつつ頷いた。

人一倍ブレてる俺が、ブレないチラシを作る。

う〜ん、実に、面白い(古い?)


2008/12/12 PM 02:35:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

勘違いのレッドカーペット その2(悪意のストーリー)
インフルエンザも完治したので、前回に続いて、勘違いの話。

我が家に一時同居中の義母は、テレビを独占することによって、心の平静をやや取り戻したように見える。
ただ、「食卓に肉が少ない」と、毎回のように文句を言うことだけは忘れない。
しかし、糖尿病患者に高カロリーのものを与えないのは、家族の愛情である(?)。

義母は、一日中テレビを見ているが、飽きると一日に数回私の仕事部屋を覗きに来る。

「こいつ、本当に仕事してるのか?」

それは、心が平静になってみて、自分の役割がスパイだったことを思い出したからだろう。
私の評判は、ヨメ側の親戚筋では、最悪である。
そのことに関しては、一度コチラに書いたことがある。

義母は、ヨメの長兄・次兄に頼まれて、糖尿病治療を名目に、我が家にやってきたスパイだった。

糖尿病治療が目的なら、広い一軒屋に暮らす長兄・次兄の家のほうが、義母が暮らすスペースは確実に取れるはずだ。
また、立派な総合病院も彼らの家のそばにあるというから、我が家よりも環境は格段にいい。
今回の場合、狭い我が家を選ぶ特別な理由は、ほとんどないと言っていい。

この話を友人にすると、「それって、お前の被害妄想だろ」と言われた。
しかし、ここに、幸運にもヨメ側で、唯一私の理解者が存在するのだ。
彼は、長兄の2番目の子で、高校時代、悪さをするたびに我が家に逃げてきた前科を持つ男だ。
彼は、私のことを「アニィ」と呼ぶ。

その彼が、電話でこう言うのだ。
「アニィ。大変ですよ。バアちゃんがアニィの家に行ってから、俺んちでは、毎日アニィの悪口が飛びかってますよ。俺、フォローした方がいいですか?」
「ほっときなさい」

スパイに目覚めた老人がひとり。

たとえば、私が朝から得意先を数件回って、打ち合わせなどをしたとする。帰宅は夜になることもある。
そんなとき、義母は、ヨメにこんなことを言うらしいのだ。

「ムコさん、どこで暇をつぶしてるんだろうね。映画館かね。それともカラオケボックスかね。まさか、公園じゃないだろうね。今時分、公園なんか寒くて10分もいられないからね」

私が、外で仕事をしていることを、頭から疑ってかかっているのである。
そして、私がMacに向かって仕事をしている光景を見て、こんなことを言うらしい。

「毎日あんだけ長い時間インターネットをやっていて、飽きないのかねえ。いい大人が・・・」

「パソコンは、仕事もできる機械だ」ということが、義母には理解できないようだ。
義母に正確なことを説明しない、ヨメもヨメだが・・・。

昨日の午後、義母がまた、仕事部屋に顔を出した。
「不況っていっても、働くところはいくらでもあるんだけどねえ。Y(ヨメ)の稼ぎだけでは、一家四人つらいだろうに・・・」(この話、何度も聞かされましたよ)

無視。

冷静に考えてみましょう。
ヨメが花屋のパートで得る報酬は、年間80万円弱。
この収入で、高い公団の家賃を払い、光熱費や税金、子どもの教育費などを賄うことは、どんなマジックを使っても不可能だ。

そこで、話の辻褄を合わせるために、ヨメの親戚筋は、義母が脚本の「悪意のストーリー」を作り上げることになる。

ヨメは、花屋のパートから帰ると昼メシを食ってから、ほとんど毎日近所のお友達の家を回って、情報交換という名目のお喋りをする習慣がある。
それは、だいたい、2時から5時の間である。

つまり、その3時間、ヨメが働いているというストーリー。
3時間で、どれほど稼げるか知らないが、「悪意のストーリー」の辻褄を合わせるためには、この3時間は有効なようである。

ある日、いつもの情報交換から帰ってくると、義母がヨメに言う。
「大変だねえ、人の文句ばっかり聞くってのは」
はあ?
「理屈の通じない人間ってのは、どこにでもいるからね」
ん?
「まあ、仕事なんだから、あんたも頑張りなよ!」
・・・・・・・。

ヨメは、結婚する前、客からのクレームに対処するセクションにいたことがある。
義母は、そのことを言っていて、今もヨメがそこで働いていると思っているのである。

そこで、完璧に出来上がったストーリーがこれだ。

私は、ヨメを朝と昼働かせて、自分は仕事もせず、ブラブラと映画館やカラオケボックスで暇をつぶし、毎日パソコンに向かって、インターネット三昧の生活をしている性根の腐りきった男。

最初から悪意を持って物ごとを見たら、すべての結論が、悪意で歪む。

私はいま、「悪意のゆがみ」の中で生きているんですよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

ああ、暗い! 文章が暗い! CRY!

オチのないブログは、書いていても楽しくない。

Superflyの迫力あるヴォーカルを聴いて、気分を晴らそうか。
圧倒的な声量で押しまくる越智志帆の疾走する声。
心に響く、重量級のパンチ。

「うん、いいよぉ、いいよー!」
と、ハートを揺さぶられていた時、いつの間に忍び寄ってきたのか、老人スパイ。

「安室奈美恵は、もう消えたね!」

え! な、なっ、なんのことぉ!


2008/12/11 AM 10:12:38 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

勘違いのレッドカーペット その1

インフルエンザは、我が肉体から消えつつある。

それとともに、数日前に、義母が5日間の入院生活から帰ってきた。
しかし、入院前のように、事件の数々は勘弁願いたい。
私は熱にうなされながら、そのことを真剣に考えた。

そして、考えながら、突然あることを思い出したのだ。
それは、義母が我が家にやってきた日のことである。

「わたし、欠かさず見ているテレビがあるのよ!」

義母は、その番組名を暗唱するように、我々の前で得意げに披露した。
それは、ほとんどがゴールデンタイムに放映されるNHKの番組だった。
たとえば、「篤姫」や「ためしてガッテン」、ほかに朝の連続ドラマなど。
民放では、日本テレビの朝のワイドショーやTBSの「不思議発見」(?)、「笑点」や「渡る世間は〜」などだった。

我が家では、テレビは大きなウエートを占めていない。
以前は、3台あったテレビも、子どもたちがテレビゲームに関心を持たなくなったこともあり、1台減り1台減りして、今はリビングに1台を残すだけとなった。

しかし、そうは言っても、テレビは見る。
そして、義母が好んで見るテレビ番組を我々は見たことがない。

だから、我々は、義母の言葉を無視した形になった。
義母が見たいテレビ番組を我々は、見なかったのだ。

そのことで、義母はストレスが溜まったのかもしれない。
たかが、テレビ番組で・・・、と思うが、テレビは老人にとって我々が思う以上に大事なものかもしれない。

そのことに気付いて上げられなかった。
それは、我々に思いやりがなかったからだ、とインフルエンザに冒されながら、遅ればせながら気付いた。

そこで、義母が退院してから、我々は、テレビの最前列を義母に譲ることにした。
ドラマ好きの中学一年の娘は、最初は渋ったが、娘所有のパソコンにテレビのチューナーを取り付けることで、簡単に納得してくれた。

その効果は、絶大だった。
それからは、義母が事件を起こさなくなったのである。

なんて、単純なことだったのだろう。
テレビの重大性を軽んじた私のミスだった。
テレビの持つ力は、想像以上に大きいということだ。

ゴールデンタイム。
義母はリビングに置いてあるテレビを占拠して、ご機嫌である。
食事も一人でとる。

我々の夕食は、和室で和気あいあいととる。
これで、上手くバランスが取れるのだ。
そして、たまに義母が我々の夕食風景に顔を出す。

そこで、朝のワイドショーの受け売りを語るのだが、これが楽しいのだ。

娘は、「おばあちゃんの話は『勘違いのレッドカーペット』だね。オチが読めなくて、楽しいよ」と喜んでいる。

たとえば・・・・・、「ヤマシタヒトシが、オノダユージロウのものまねを禁止されたらしいわよ」
おそらく、ヤマシタヒトシは、山本高弘のことで、オノダユージロウは、織田裕二のことだと思うが、本人は大真面目なのだ。
「羞恥心とセザンヌが紅白歌合戦で、解散宣言をするんだってさ」
(これって、本当ですか?)

他に、女優の水川あさみが出ているCMを見て・・・、
「あら、きれいな子ね」と義母。
「水川あさみって言うんだよ」と娘が答える。
「ああ、この子、私の友だちの娘だよ」
「えー!」と家族一同驚きのリアクション。

しかし、よく聞いてみると、義母の知り合いに水川さんがいて、娘さんは「あさみ」という名だが、年は47歳だという。
つまり、義母の頭の中では、水川さんの娘は「あさみ」さんに間違いないのだから、女優の水川あさみは、私の知り合いの娘だ、ということになる。
その場で、ヨメが「それは違うよ」と説明して、義母は一旦納得したが、それ以降、水川あさみが出るたびに、「ああ、この子、私の友だちの娘なんだよね」と義母は繰り返すようになった。

だが、そのことに関して、我々はノーリアクションである。

勘違いのレッドカーペット

「アソウ総理は、フクダシゲルの孫なんだって?」
「ヒガシコクバル都知事は、テレビに出すぎだね」
「横綱・大関がモルガン人ばっかりじゃ、つまらないよ」
「篤姫役のヤマザキヤヨイ、私は好きだね」
「イチローは可哀そうだね。外国にトレードされたまんまで」
「コムロテツヤって、金八先生のことかい?」
「最近のスマップは、新しいグループが多くて、わからないね」
「とんねるずによく似た外国人のグループが歌うたっていたけど、女だったよ。気持ち悪いね」
「『トンカツラーメン』って言っても、トンカツは入っていないんだね」
「オグリシュンは、いい役者だったけど、ドラマ撮り終わって、すぐ亡くなったんだね」
「タモリは、フジテレビの人なのに、他のテレビに出てもいいのかい?」

さあ、この勘違いの数々、正解を見つけることができたでしょうか。

これは、楽しいですよ。
毎日が、新しい発見に溢れています。
幸せなことだ。

ただ、もちろん、笑い話になることもあれば、ならないこともあります。
次回は、傍から見れば笑い話でも、当人(私)にとっては笑い話にはならない、というお話をしたいと思います。

ご期待せずに、お待ちください。



2008/12/05 PM 02:26:15 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

ハッポーシュウおやじ
恥ずかしながら、インフルエンザに罹ったことは、前回書きました。

当たり前のことだが、これは自業自得。
ワクチン代をケチった私が悪い。
だから、つらくても、我慢するしかない。

インフルエンザに罹ったのが、おそらく木曜日あたり。
そして、高熱が出たのが、金曜日。土曜日も高熱。日曜日は、少し熱が下がった。
いまは、37度前後だ。
この熱も、いつか下がるだろう。

関節が痛いが、「痛い」と言っても仕方が無い。
これも、いつか消える痛みだ。
つまり、これらの症状は、消えていくものだから、休んでいても意味は無い。
休みは「自由業の死」を意味する。

これが、「フリーランスの理屈」だ!

火曜日。
前回急ぎの仕事をいただいた桶川の得意先から、お迎えが来た。
女優の麻生久美子似の運転で、事務所へ。
まるでVIP待遇ではないか。

熱が少々下がったとは言え、まだウィルスは元気満々だろう。
だから、前回と同じように、不織布のマスクを2枚重ね、フリースの手袋の下にポリエチレンの手袋を付けた状態でフクシマさんとご対面をした。

それに対して、フクシマさんは、大型の空気清浄機らしきものを応接セットの脇に置き、両手を広げて得意げに、「さあ、これで大丈夫ですよ。この機械は、ウィルスさえも吸い取ってしまうんです」と、鼻の穴を広げて私を見た。
「鬱陶しいでしょうから、マスクも手袋も取ったらどうでしょう?」と、麻生久美子似も言う。

本当ですか? 伝染っても知りませんよ。
マスクを取った。

マスクを取った私の顔を見て、フクシマさんが言う。
「アレレレ、Mさん、やつれましたねえ」

(当たり前だろうが! インフルエンザに罹ったというのに、急ぎの仕事なんか出しやがって、しかも、いつもより、量が多いじゃねえか!)

・・・・・・・・・・。

「Mさん、怒ってます?」
「怒ってませんよ!」

険悪な雰囲気の中で、フクシマさんに初稿を渡そうとしたときに、カレーの匂いが、インフルエンザに冒された鼻に入ってきた。
時刻は、3時過ぎ。
随分と遅い昼飯だなあ、と匂いのほうを振り返ると、社長の姿があった。

カレーライスにかぶりつく中小企業の親父。
似合っているといえば、似合っているか・・・。

しかし、それは、味わうという概念からは程遠い光景であった。
大型犬の食事風景のようだ。
社長は、カレーを食すると、いかにもせっかちな様子で立ち上がり、私の姿を認めると「ああ、Mさん、インフルエンザなんだって? 俺は逃げるけど、さっさと帰ってね」と、早足で事務所から逃げていった。

冷ややかに社長の姿を見送る3人。

口元に冷ややかさを残しつつ、フクシマさんが言う。
「今の、お昼ご飯じゃないんですよ。おやつです。3時のおやつ」
フクシマさんは呆れ顔で、さらに言葉を続ける。

「よく行く飲み屋のママに、『社長さん、最近、臭うわね』って言われて、ショックだったらしいんですよ。つまり、加齢臭ですね。お気に入りのママにズバリ言われたもんだから、社長しょげちゃって。それから、どうしたと思います? 俺はカレーで加齢臭を消すんだって、真面目な顔で宣言したんですよ。それからは毎日朝昼晩カレー。おやつもカレー。時には夜食もカレーらしいですね。どう思います、これ? Mさん、率直なご意見をお願いします」

それは、素晴らしい!
この未曾有(みぞう)の不況の時代に、闇雲に常識を踏襲(とうしゅう)することなく、頻繁(ひんぱん)にカレーを食べ続けるということは、どんな詳細(しょうさい)な思惑があるか知らないが、素晴らしいことだと思う。
カレーで加齢臭をなくす。これほど柔軟で確固たる信念を持った中小企業の社長にこそ、金融機関はこぞって融資すべきだ。
日本の未来は、明るい。
私は、久しぶりに勘当(かんどう)した!

そんな私の戯言(ざれごと)を簡単に受け流して・・・・・。
「そう言えば、Mさんは、オヤジ臭がないですよね。うちの会社の男たちは、30歳半ばになると、みんな臭いますけど」と、麻生久美子似が、クールに言う。

確かに、私は、「臭う」と言われたことがない。
それは、食生活が貧しいからだろうと思っている。
私の場合、肉・魚などの高級食材の摂取が、一般人の10パーセント以下である。
空気と水だけで生きている私のような人間は、体臭が出ないのだと思う。

「友だちのお父さんの枕は臭いって言うが、おまえのは、ちっとも臭わないな」と、娘にもたまに言われる。
つまり、枯れ木は、におわないってことですね(後は朽ち果てるだけですから)。

ただ、たまに「あれ? 昼間っから酒かい?」と言われることがある。
それは、近所の印刷会社の社長に言われることが多い。
ただし、この社長は、妄想癖があるので、どこか信用しがたい。

しかし、先日電車で隣に座った60年配の男から、「昼間っから酒かよ。いいご身分だねえ」と言われたことがある。
そのときは、まったく飲んでいなかった。
前夜に、発泡酒を3本飲んだが、15時間以上たっていても、アルコールの臭いって、残るものだろうか?

「残るかもしれませんねえ」と、麻生久美子似。
「残りますよ。特にMさんみたいに無臭の人は、かえって臭いが残るんじゃないですかね」と、フクシマさん。

つまり、それは発泡酒臭。
ハッポーシュウ、ということか。

ハッポーシュウおやじ。
いいかもしれないな・・・・・。
俺は、ハッポーシュウおやじ。いいキャッチフレーズだ。

「Mさん、インフルエンザ、治ったんじゃないですか? おバカそのものですよ、その発想」

ああ、そうかもしれない。
じゃあ、フクシマさん、快気祝いに、一番絞りをよろしく。

「え? いいんですか、それじゃあイチバンシボリッシュウになっちゃいますよ」

フクシマさん。
おバカは、あんただ。



2008/12/03 AM 09:49:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

インフルエンザとやさしい人たち
インフルエンザA型。

ヨメと高校3年の息子と中学1年の娘は、ワクチンを接種した。
次の日、一時同居中の義母が、ワクチンを打った。

私は、我が家では人間扱いをされていないので、ワクチンの接種はしなかった。
野蛮人が、インフルエンザに罹るわけがないだろ!
(本当はワクチン代をケチっただけですが・・・)

しかし、よくあることだが、ワクチンを打ちに行った義母が、病院でインフルエンザウィルスをもらってきたらしいのである。
突然の高熱。
76歳の義母は、糖尿病の持病があるので、即刻入院させた。

この処置は、素早いものだったと思う。
非の打ち所のないものだったはずだ。
だが、私がインフルエンザに罹るという笑えない現実がふりかかる。

よほど私と義母の相性が良かったのでしょうね。
簡単に伝染ってしまいましたよ。
ワクチン代をケチったばっかりに・・・・・・・・。

先週の金曜日、夜7時過ぎ。
大宮の印刷会社で作業を終えての帰り道。
私は、最寄の駅から自転車を漕いで、家に帰ろうとしていた。

途中の16号を渡ろうと、信号待ちをしていたとき、おカンが襲ってきたのだ(いや、悪寒が襲ってきた)。
インフルエンザもおカンもどちらも怖いが、今回は「悪寒」のほうである。

足元から急激に上ってくる「悪寒」。
私は確信した。
インフルエンザ、間違いなし!

私は、途中にあるドラッグストアに震えながら駆け込んだ。
風邪薬を買おうとしたわけではない。インフルエンザに風邪薬は効かない。
だから、不織布のマスクを50セットとポリエチレン製の使い捨て手袋100セットを購入したのである。

我が家族は、ワクチンのおかげで私のインフルエンザが伝染ることはないだろう(あったとしても、軽くて済むのではないだろうか)。

問題は、他人様の場合である。
人様に伝染しては、申し訳ない。
本当は、私が出歩かないのが一番だが、フリーランスというのは、そうはいかない職業だ。

打ち合わせをキャンセルしたら、「えらそうに、ドタキャンするんじゃねえよ!」という悪意の目で見られる。
これは被害妄想ではなく、本当にそうなのである。
他人様は、自分以外の人間には、とても厳しい人種なのだ。
油断をしていたら、仕事が確実に逃げていく。

翌日の土曜日。
38度を超えるハイテンションな肉体を防寒着で包み、高崎線に乗った。
不織布のマスクを2枚重ね、両手はポリエチレンの手袋をして、さらにフリースの手袋をつけ、首にはマフラーぐるぐる。

大宮駅では座ることができず、目の前に座る30歳前後のサラリーマンを「立てや! おのれ! ホンマにしばいたろか!」という棘のある目線で、思わず見下ろした。

すると、私の眼光に恐れ入ったのか、男は次の宮原で降りていった。
恐るべし、わがメヂカラ!(?)

しかし、一回座って落ち着いてしまうと、立つのが大変だ。
目的の桶川駅に着いても、めまいでヨロけること数度、「オヨ! オヨヨヨ! アララっと・・・」と酔っ払いのように揺れながら、やっと立ち上がることができた。
気がついたら、両手を見知らぬ人に取られて、介護されるように駅のホームに降ろされた。

世の中、意外とやさしい人が多いものです。
感動の涙で、ホームの景色がにじむ。

桶川の得意先。
ここには、「フクシマさん」というおバカさんがいる。
そして、女優の麻生久美子に似たアンニュイな美女。
そのことに関しては、何度か書いたことがある(たとえば、こちら)。

そのほかに、「いきものがかり」のヴォーカルを3回ふり回した顔をした事務員がいるのだが、今回は「インフルエンザ男」が来るというので、どこかに避難しているようである。

フクシマさんは、奥様が妊娠中ということもあり、早々とワクチンを接種したらしい。
「俺は、何があっても、気合で伝染りませんから!」
(それほどの気合があるなら、ワクチンはいらなかったんじゃ?)

「私は、毎年11月の半ばにワクチンを打つことにしています」と麻生久美子似が、けだるく言う。

そうは言うが、万が一ということもあるので、マスクと手袋はそのままにして打ち合わせを始めた。
打ち合わせは、10分程度で終わった。
長居は疲れる。だから、よし、帰ろう! と立ち上がろうとしたが、体に力が入らない。

そんな私の姿を見て、フクシマさんが、「Mさん、タミフロン、飲んでないんですか? あれ効きますよ。最高の特効薬ですから」と、得意げに私を見る。

タミフロン=間違い。
タミフル=正解。

「ああ、タミフロンですか? 飲んだことありませんねえ。ありますかねえ、そんな薬」
「ありますよ! タミフロン。インフルエンザには、タミフロン! 常識ですよ!」

頭が痛くなった。
のども渇いたので、「水を一杯いただけませんか」と麻生久美子似に頼んだ。
すると、麻生久美子似は、平然とした顔で「一番絞り」を持ってくるではないか。

これは・・・・・、嫌がらせ? それとも、ボケ? 無知?

「ああ! これが、泡の出るタミフロン! 一回飲んでみたかったんですよ。ゴクゴクゴク・・・・・、って、普通のビールやないかい!」と、ノリ突っこみをすればいいのか?

そんな気力ありませんよ。

しかし、「ご自宅までお送りしますよ。車内でのんびりお召し上がりください」と麻生久美子似は、涼しげな顔で言う。

「タミフロン、絶対飲むんですよ」と、私を車のバックシートまで押し込んでくれたフクシマさん。
「風邪のときは、やっぱり水分ですよ。ビールだって水分だし・・・」と、無表情に前を見て運転する麻生久美子似。

この人たちって・・・、やっぱり、親切なんですかねえ・・・・・。


2008/12/01 PM 01:21:41 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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