Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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苦笑いで終わった私のお盆
お盆は、酸素カプセル

酸素カプセルを2台設置している店のチラシを頼まれた。
最初、オーナーが自分でチラシを作り、それをインクジェットプリンタで5千部プリントして、近所にポスティングする予定でいた。

しかし、経験者ならおわかりかと思うが、インクジェットプリンタで百部プリントするだけでも大変だ。
かかる時間はそれほどでもないが、インクの消耗が激しいのだ。
どれくらいのコストがかかるかわからない。

それで、酸素カプセル店オーナーのキジマさんは、挫折してしまったのである。
その結果、私のところにWORDで作ったプリントを持ってきて、「これを5千部、お願い!」と言ったのだ。

「これを」と差し出されたプリントを見て、私は驚いた。

キャッチコピーが、「夏バテには、コレ!!!」だった。
しかも、その下に、うなぎの蒲焼きの画像があって、その上にバッテンが付いていた。
そして、小さい字で「ウナギより酸素カプセル」。
さらに、上半身バスタオルをまいた女性の画像(見るからに品がない!)の横に、「5キロ痩せました」の文字。

裏面を見ると、文字だらけ。しかし、なぜか右隅に、裸の女性の後ろ姿が。
それに、インクジェットプリンタで両面プリントをしているから、所々インクが滲んでいて、文字がぼやけていた。
そのぼやけた文字で、商品の説明が紙面全体に充満しているから、読みとるのに大変神経を使った。

一目見て、これが健康器具のチラシだとは、誰も思わないだろう。
これが郵便受けに入っていたら、私なら間違いなく、即座にゴミ箱に捨てる。

私は、クライアントに対して無神経なことを言わないように気をつけているのだが、このときは、「これは、ひどい!」と呟いてしまった。

キジマさんは、「ハハ、そりゃそうだよね。俺、素人だもん」と開き直ったあとで、「じゃあ、プロの仕事見せてよ」と、腕を組んで私を睨みつけた。

チラシの情報量からすると、両面は必要ないので、片面だけにしましょう、片面で十分、と私が言うと、「片面だけだと、貧乏くさいだろ。それに、説得力がない。裏面がもったいない」と大声で話しだした。
困ったことに、キジマさんは、人の話を聞かないひとだったのである。

モデルに使う女の人は、もう少し上品な感じの人を捜してきますから、この写真はやめましょう、と言うと、「上品な女の写真なんか、誰も見ないよ。少し色っぽいくらいがいいんだよ」と、また大声。

確かに、少しくらい色っぽい方がいいでしょうが、この写真では逆効果でしょう。
健康的な酸素カプセルをアピールしたいなら、健康的な女性の絵を載せるべきだ。

「いいんだよ! 俺はこういう女が好きなんだから!」
あなたが好きでも、一般の人が健康器具から思い浮かべるイメージは、「健康美」の方でしょう。

「ああ、やだなあ! だから、人にまかせるのは、嫌なんだよ! 俺は思い通りにやりたいのに、すぐ反対するんだから!」
反対しているわけではなくて、これは、できるだけいいものを作るための話し合いです。
だから、私は、あなたの作ったチラシを全部否定するつもりはありません。

すると、キジマさんは、いきなり「酸素カプセルの仕組みって知ってる?」と、メーカーのカタログを手に取り、演説を始めたのである。
私は、人の話は最後まで聞く主義なので、30分近い「酸素カプセル演説」を口を挟まずに聞いた。

酸素カプセルが、体にいいことは理解した。
それをチラシで大きくアピールしたいというのは、私も同意見だ。
しかし、チラシを無闇に言葉で埋め、安っぽい写真で人の目を惹くやり方には賛成できない。
キャッチコピーは、一つでいいし、説明は、要点だけで十分である。
画像は、イメージ主体の方が、健康をアピールしやすい。どぎつい絵は、逆効果になる。

私は、これらの意見を簡潔に伝えようとした。
しかし、私のこの意見の間に、キジマさんは「いや、これは」とか「そんなこと言ったって」とか「そんなことないよ」「ちょっと待ちなよ」と、頻繁に口を挟むから、私の意見は、細切れになって、まったく形をなさないのである。

面倒くさくなった私は、キジマさんに「あなたとはご意見が違うようなので、私は、この仕事を受けられません。でも、それではそちらが困るでしょうから、同業者を紹介しましょう」と言って、逃げることにした。

「仕事、回してよ」と、会うごとに言われ、「いまどき、回す仕事なんか、ないですよ。Oさんこそ回してくださいよ」と、いつも言い合っていたOさんに、この仕事を回した。

2日後。
Oさんから、抗議の電話が入ってきた。
「Mさん、なんだよ、あれ! 人の話聞かないじゃないの! 自分の意見ばっかり遠そうとしてさ。まともに話なんかできやしないよ。悪いけど、『こんな仕事、できねえ!』って、追い返したからね。もう少し、まともな客紹介してよ。頼みますよ」

仕事が、舞い戻ってきてしまった。

しかし、キジマさんは、たくましい人だ。
Oさんに強く拒絶されても、私にチラシを酷評されても、自分の意志をまったく曲げなかった。

あっぱれである。

そのあっぱれさに感心して、私はキジマさんの言うとおりにチラシを作ることにした(本当は、面倒くさくなったから)。
そして、近所の印刷会社に無理を言って、先週の土曜日に、5千部印刷してもらった。

印刷会社の社長は、仕上がりを見て「なんだ! Mさん、ピンクチラシもやるの? そんなに困ってるの?」と言った。

苦笑いをするしかなかった。

結局、私のお盆は、苦笑いで終わった。



★お盆には、CG「のんびり妊婦」



北京オリンピックでの男子柔道の成績に関してマスゾエ厚労相が、「情けない」と言ったとか。

私は、大臣が、いくら記者から聞かれたとしても、これは公の席で言うほどの問題ではないと思うのですが、マスゾエ氏と同じように思っている人は、意外と多いようです。

今や国際的なスポーツである柔道は、日本ではいまだに「武道」扱いですが、外国では「JUDO」です。
「JUDO」をやっている以上、同じ思考方法で畳に上がらないと、違和感を残したまま試合をすることになります。
その違和感を取り除くのは、本来、監督やコーチの役目ですが、すべての試合が終わったあと、強化部長は、こんなことを言いました。

「監督とコーチは、一生懸命やったんだが・・・」

私は、むしろこの責任者の方が「情けない」のではないかと思っているのです。

最近、相撲の理事長や食肉偽装の経営者に見られるように、責任を取ろうとしないトップが増えているように感じるのは、私だけでしょうか。



2008/08/18 AM 08:09:37 | Comment(7) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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