Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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カミナリは人を悩ませる
ここ二日は、まったく平穏な日を過ごしていた。
だから、ブログネタがない。

仕方ないので、初めてのことだが、何ごともない日を過ごしました、ということを書こうとした。
しかし、朗報(?)が飛び込んできた。

得意先のS課長が、一身上の都合で退職したというのだ。
本来なら、退職したからといって、何を書いてもいいということにはならない。
しかし、書くネタがない。

だから、S課長のことを書くことにした。
素人ブロガーは、モラルが低いのです(開き直り)。

7月はじめに、東京のイベント会社から、ほぼ2年ぶりに仕事をいただいて、2種類の仕事を仕上げた。
両方とも9月に行うイベントのチケットだった。
いずれも枚数が千枚だったので、A3に10面付けして、レーザープリンタでプリントした。

それを印刷会社に持ち込んで断裁してもらい、ミシン目を入れてもらった。
そして、8月のはじめにそれを納品した。
そのときのことである。

納品したのは、午後5時過ぎだったが、事務所内にはS課長しかいなかった。
そこで、S課長に「できましたので、置いていきます」と言って、帰ろうとした。
雲行きが怪しかったので、早めに帰ろうとしたのだ。

しかし、S課長は暇を持て余していたらしく、近くのカフェからコーヒーをわざわざ取ってくれて、応接セットに私を誘った。

S課長は、いい男である。
42歳。
男として、魅力全開の年齢だろう。

オールバックに整えた髪は艶やかに光り、陽に焼けた顔は血色がいい。
眉が太く、口元も引き締まっている。
友人の京橋のウチダ氏は、爽やかなイケメンだが、S課長は、少し「ワルの入った」イケメンである。

六本木あたりのバーでもてるタイプ、と言ったらわかりやすいかもしれない(わかりにくい?)。
自信たっぷりで、すべてのことを自分のペースでやらないと気がすまない感じの人だ。

そのS課長が、タメ口でこう言う。
「オレ、早めの夏休みを取って、マカオに行ったんだよ。カジノに行ったらさ。大きく当てちゃって、ホテルは普通の部屋を頼んでいたんだけど、スイートにしてもらったよ。スイートに泊まって、毎日5、6人の女の子を呼んで、夜は騒ぎまくったね。リムジンも借りて豪遊さ。楽しかったよ! 嫁さんと行ったんだけど、ほったらかしにして、遊びまくったね。俺、バツ2なんだけどね。バツ3になってもいいって気分だったね。ああ、今年の夏休みは、本当に楽しかったなぁ!」

人間は、見た目と性格がまったく違うという人もいるが、まったく同じという人もいる。
S課長は、同じ、というタイプの人である。
だから、そんな話を聞いても、まったく違和感がなかった。
カジノで大もうけをして豪遊する様が浮かぶような、少し崩れた感じのする人だった。

出前で頼んだコーヒーは、美味かった。
「このコーヒー、美味いですね」と私が言うと、「むかし、パリのカフェテラスで飲んだコーヒーの方が、はるかに美味いよ」と、胸を反らしながら言う。
そんな姿も、似合っているのである。

そんなとき、雷鳴が・・・。

遠くから聞こえる雷鳴だが、窓の外は確実に暗くなっていた。
雨は降っていない。
しかし、それも時間の問題だろう。
雷が近くを通過する可能性は、かなり高い。

早く帰るべきだったか・・・・・。
そう思いながら、S課長の顔を見ると、端正なS課長の顔が歪んでいた。
目が、あちこち泳いで、血色のいい顔は、徐々に白くなっていった。

沈黙の時間。

そして、雷鳴が一気に近づいてきた。
ゴロゴロゴロ、ではない。
ガラッ、ガッシャーン! である。
かなり、近い。雨も激しく降ってきた。

S課長のきりっとしていた眉が八の字になって、目は、絶えず瞬きを繰りかえしている。
そして、ゴロッ、ガッシャーン!
窓ガラスが震える。
続いて、ガラガラッ、ドッシーン! という腹に堪える音と稲光。

「ギャァーーーーーーーー!!」
S課長が、両耳を塞いで、テーブルに顔を伏せた。
S課長の上半身全体が震えていた。
特に首が、まるで別の生き物のように激しく震えていた。

雷は誰だって嫌いだ。
稀に好きな人はいるかもしれないが、好きだと嘯(うそぶ)いていても、好きこのんで雷の中に飛び込む人はいない。

20年以上前、日光の霧降高原に行ったとき、2百メートル先に雷が落ちた。
その衝撃のすさまじさに、立ちつくした。体がしびれた。ヨメは、泣き出した。腰が抜けた。
雷の怖さは、身をもって知っている。
だから、雷を怖がる人を笑えない。
怖くて、当たり前なのだ。

S課長は、10分以上同じ姿勢で震えていた。
少しずつ雷は遠ざかっていっているように思えたが、まだ音は止まず、頻繁に光っている。
12階建てビルの10階から見る空は、暗い。そして、雨が窓ガラスを激しく叩いている。
ビルの上階から見る稲妻は、見とれるほど綺麗だったが、感心している場合ではない。

雷が去ったあとのことが心配だ。
異様に恐がる姿を晒したS課長に対して、私はどんな態度をとったらいいかと考えたのだ。

通常なら、「ああ、雷は去りましたね。すごかったですね」で、済む話である。
しかし、これほどの強面(こわもて)イケメンが蒼くなってブルブルと震えたのだ。
それも、「ギャー!」という叫び声を発して・・・。

私は何も見ませんでした、という態度は、あまりにも白々しすぎるだろう。
「私も実は、雷は大の苦手なんですよ」というのも、取って付けた言葉のような気がする。気を遣っているのが、見え見えだ。
雷の話題に触れずに、「じゃあ、急ぎの用があるので、また」というのも、何か変だ。

どうすればいい?

冷めたコーヒーを口に運びながら、断続的に光る空を見ながら、私は途方に暮れていた。
俺は、つくづく不器用で応用の利かない男だな、と自分を罵ってもいた。

そんなとき電話が鳴った。
S課長の携帯電話だ。
S課長は、体を震わせたまま、ポケットの携帯電話を取り出した。

そして、「アサミ〜!」と叫んだ。
次には、S課長は、顔を伏せたまま立ち上がって、「わかった。すぐ降りていく。目隠しと耳栓は持ってきたな!」と言いながら、腰をかがめるようにして、ドアに向かってダッシュした。
S課長の姿が、瞬く間に、目の前から消えた。それは、ウサイン・ボルトも驚くほどの見事なダッシュだった。

おそらく、奥さんが目隠しと耳栓を持って、車で迎えに来たのだろう。
S課長の3人目の奥さんは、よくできた人のようである。
バツ3にならないことを祈る。

S課長が帰ってくれたので、先ほどまでの悩みは消えた。

誰もいない他人の会社で、ソファに座って、一人雷鳴を聞きながら、稲光を見る。
冷えたコーヒーを一口すすろうとした。
しかし、コーヒーは、もう残っていなかった。

少し目線を動かすと、そこにはもう一つのコーヒーカップがあった。
8分目まで注がれた褐色の液体。
私の記憶に間違いがなければ、S課長は、このコーヒーに口を付けていなかったと思う。

のどが渇いている。
コーヒーが飲みたい。しかし、このコーヒーは他人のコーヒーである。
今は、風のようにいなくなってしまった人だが、間違いなくこのコーヒーはS課長のものだった。
それを飲んでいいわけがない。

悩んだ。
悩みまくった。

そんなとき、ズン、ドッドーン! という音。
それとほぼ同時に、事務所の電気がすべて落ちた。
停電だ。

稲光があるので、真っ暗ではない。
暗いが、妖しくて綺麗な闇だ。
その妖しく綺麗な闇が、私の理性を奪った。

私は、反射的に、S課長の残したコーヒーを一気飲みしたのだ。

冷えてはいたが、渇いた喉にコーヒーが心地よかった。
そして、明かりがついた。
我に返った。

会社に、ただひとり。
それも、他人の会社。

私の頭に、もう一つ新しい悩みが浮かんできた。

俺は、もう帰っていいのだろうか。
誰もいないまま、このまま帰っていいのだろうか。
誰かが帰ってくるまで、待っているべきではないのか。

稲光を見ながら、私は30分以上、同じことを考えていた。



★カミナリ嫌いの人は、CG「暴走三輪車」



28日の関東地方は、集中豪雨を受けた場所がかなりあったようです。

大宮駅から少し離れた得意先に行った帰りのことです。
不意打ちのように、激しい雨が降ってきました。
傘は持っていましたが、ほとんど傘が役に立たないような視界を塞ぐほどの雨です。

大宮駅まで歩きで20分程度かかる距離。
その間に、店があったら入ろうと思って、早足で歩いていましたが、雨のカーテンが厚くて、店が見つかりません。

暴力的に落ちてくる雨の圧力。
傘をさしていても、全身は、もうびしょ濡れです。
そんなとき、電話ボックスを見つけました。

携帯電話に押されて、今では激減した電話ボックスですが、雨宿りには最適です。
中に入りました。
びしょ濡れの全身と湿気で生暖かいボックス内は気持ち悪かったですが、贅沢は言えません。
雨がしのげるだけでも、ありがたいと思わなければ。

電話ボックスの外を、まるで生き物のように激しくつたう強烈な水の流れ。
外の景色は、まったく見えません。

まるで、自分ひとり取り残されたような錯覚。
異次元に拉致されたような感覚。

備え付けのバーに腰掛けながら、目をつぶりました。
そして、眠っていました。
目が覚めると、雨は上がって、人々が行き交っています。

しかし、空はどんよりとして、またいつ降り出してもおかしくない空模様。
慌てて、電話ボックスを飛び出し、駅に向かって早足で歩きました。

その途中で、また大雨。
その結果、また途中で見つけた電話ボックスで雨宿り。

わずかの間に、2回も電話ボックスで雨宿りをした人は、私くらいでしょう。
威張ることではないですが・・・・・。


2008/08/30 AM 06:57:31 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

突然左足をつかまれた。誰もいないのに・・・
何とも言いようのない不思議な体験をした。
それは、まったく説明のつかない出来事だった。

3年前から懇意にしていただいている同業者Hさんの事務所で留守番をしていたときのことだった。
「せっかく来てもらったのに悪いんだけど、得意先からお呼びがかかったんで行って来ますよ。1時間くらいですぐ戻りますから、待っていてくれませんか」と言われ、ひとり彼の事務所に取り残された。

事務所内の広さは、8畳くらいか。
ウインドウズが2台とコピー機兼用のレーザープリンタ。本棚。そして、壁際に横長のソファ。
その横長のソファに座って、私はボーッとしていた。

PCを触ってもいいよ、と言われたが、他人の事務所に来てまで触りたくはない。
むしろ、何も考えず、のんびりしていた方がいい。
Hさんが置いていってくれたサンドイッチをつまみながら、ビールを飲んだ。

本棚を見ると、パソコン関係の本がギッシリと詰まっている。
「勉強家だな」と感心したが、手に取ってみたいとは思わない。
それさえも、面倒だ。

壁にカレンダーが掛かっている。
なぜか、もう8月がめくられていて、9月の面になっていた。
9月の写真は、紅葉の京都だ。
京都の9月は全然紅葉なんかしていないだろう、と心の中で突っ込みながら、私はなぜか仏滅の日を探していた。

そんなとき、左足の腿に違和感を感じた。
足の付け根の部分を手で掴まれたような感覚がしたのだ。

最初は、気のせいかと思った。
事務所には、誰もいないのだ。これは間違いがない。
ソファの座り心地が良すぎるので、体の重心が移動しただけで、体に違う感覚を与えるのかもしれない、と思った。
つまり、錯覚。

それほど、高級そうなソファだった。
色は、渋い茶色。表面はレザー。座ったときの感触は堅いが、全身にかかる負荷は、適度な弾力があって、腰が安定する。

腿に、手の感触は残っていたが、錯覚と決めつけて、残りのサンドイッチを食った。
レタスが意外なほど美味いな、と思っていたとき、また腿を掴まれた気がした。
いや、気がした、というより、はっきり掴まれた。

思わず、左の腿を叩く。
しかし、そこには私の足があるだけだった。

まわりを見回してみた。
もちろん、誰もいない。
気配もない。
聞こえるのは、ハードディスクの回る音だけだ。

ビールを飲んだが、缶を持った左腕に鳥肌が立っていた。
そして、左腕の毛が逆立っている。
左半身にだけ、何とも言えない不快感があった。

体に変調をきたして、左半身が麻痺したのか。
まさか、脳梗塞? などということを考えたが、指先まで感覚はあるし、左足の指も自由に動く。
体の不調ではないようだ。

ビールを飲んだ。
しかし、左足の腿に残った指の感触は、最初より格段に強くなっている。

私は、まったく霊感のない男である。
それは、断言できる。
鈍感と言っていいくらい、その方面に関しての能力はない。

ただ、不思議体験は、何度かした(そのことに関しては、コチラコチラに書いたことがあります)。
今回のは、不思議体験と言えば、そう言えるだろう。
だが、体で感じる感触が、今までとは全く異なるのだ。

そこに誰もいないのに、腿を掴まれる感触。

自分の頭が、おかしくなったのかもしれない、とも思った。
脳梗塞ではないが、脳のどこか一部分が壊れてしまったのではないか。
そんな小さな恐怖心が、頭に忍び寄ってきた。

今度は、全身に鳥肌が立った。
部屋が、歪んで見えた気がした。
救急車を呼ぼうか、とさえ思った。

30分ほど、恐怖心と闘ってたとき、Hさんが帰ってきた。
「待たせて悪かったね。お詫びに、Mさんの好きなEBISUビール買ってきたよ。スモークチーズも買ってきたから・・・」
Hさんはそう言ったが、私の様子がおかしいのに気づいて、まわりを見回した。
そして、瞬く間に蒼白な顔になって、「ああ、まさか・・・、あれか・・・、あれか・・・、あれか・・・」と呪文を唱えるように、同じことを繰り返した。

「あれか」と言うからには、Hさんも同じことを体験したに違いない。

蒼白な顔のHさんに聞いてみると、4年前、この事務所に越してきたとき、一度だけ私と同じような経験をしたらしい。
Hさんも左足だった。
はっきりした感触で、膝の上のあたりを10回くらい掴まれたのだという。
私の場合は2回。掴まれたのも足の付け根という違いはあったが、この現象は全く同じだと言っていいだろう。

この現象があったのは、4年前に一度だけだったし、それ以来、他に何人もがこの事務所に入ったが、同じ現象は起こらなかったという。
だから、Hさんは今日まで、そのことを完全に忘れていた。
しかし、私の表情を見て、すぐに思い出したのだという。

「右手ですよね。右手で掴まれたような感じですよね」
Hさんが、紫色の唇を震わせて言う。
「そうです。間違いなく、あれは右手です」と、震える声で言う私。

EBISUビールを無言で飲む、中年男ふたり。
そして、時々ふたり同時に、あたりを見回し、左の腿をさする。

弱い笑いを浮かべながら、Hさんが言う。
「疲れているんですかねえ」
「そうですねえ、寝不足ですしねえ」
「ああ、あのときの俺も寝不足でしたよ。平均睡眠時間2時間くらいでしたから」
「俺も、昨日1時間くらいしか寝てないんですよ」
「ああ、それはつらいですねえ。きっと寝不足のせいですよ」
「そうですよね。寝不足のせいに決まってます」
「決まってます」

口のまわりを引きつらせながら、ふたりの中年男は、弱いうなずきを繰り返した。



★うなずく人は、CG「徹夜して・・・」



チキンラーメンが世に出てから、50周年だそうです。

昨年の5月、友人から40食分のチキンラーメンをもらったことがあります。
最初の頃は、定番の食べ方・真ん中のくぼみに卵を落として、刻みネギを盛って、食べていました。

「うまいねー、チキンラーメンは!」
家族全員の満足顔。
やはり、チキンラーメンは、この食べ方が一番です。

我が家では他の食べ方として、鍋のあとのスープにチキンラーメンを入れ、卵を落として、さらにご飯を入れて食べることもしました。これも、うまい!
他には、麺を粉々に砕いて、それを丼ご飯の上に卵と一緒にのせ、お湯をかけて食べる方法。
粉々に砕いて、椎茸やタケノコ、油揚げなどと一緒に、炊飯器で炊き込みご飯にする方法。
煮込んだチキンラーメンを細かく切って水気を切り、厚焼き玉子の具にする方法など、色々と試しました。

レトルトカレーの具をかけても美味しいよ、と教えてくれる人がいて、やってみたこともあります。
うちは、チキンラーメンは、スープ感覚で食卓に出すよ。スープとして常備しているよ、という人もいます。
朝、食欲がないときでも、チキンラーメンだけは食えるんだよね、という人もいます。

15年くらい前に、取材でホテルのバーに行ったとき、バーの支配人がオープン前に、事務所でチキンラーメンを食べていました。
「悪いね。早めに食べておかないと、食いっぱぐれるからさ」と言いながら、タキシードの上に大きなエプロンをかけて、美味しそうに食べていたのを今でもよく覚えています。

チキンラーメンを食べると、人は皆いい顔になる。

チキンラーメン、買いに行こうかな?


2008/08/28 AM 07:00:54 | Comment(4) | TrackBack(0) | [怖い話]

ダルマから来たラヴ・レター
手持ちの仕事を順調に終わらせたので、ビールを飲むことにした。

そこで、娘に、銀河高原ビールが入った段ボールを開けるようにお願いした。
この銀河高原ビールは、WEBデザイナーのタカダ(通称ダルマ)が、お中元として送ってくれたものである(そのことに関しては、こちらに書きました)。

だいぶ前に送ってもらったものだが、普段発泡酒を愛飲している私は、大好物の銀河高原ビールを最後まで取っておいたのだ。
私は、食べ物に関しては、好物は最初に食べる方だが、酒に関しては、好物は最後に取ることにしている。

娘が「全く人使いの荒い親父だな」と憎まれ口を叩きながら、ビールを1本持ってきた。
右手にビール、左手に手紙だ。

何? 手紙?

「これ、段ボールの中に入ってたぞ。まさか、LOVE LETTERか?」
LOVE LETTERを正確な発音で言っていた。勉強の成果は、確実に出ているようである。

ダルマから恋文?
それは、あり得ないだろう。
私たちは、そんな仲ではない。

では、何か?
「読めば、わかるだろ!」
娘のツッコミ。

確かにそうだ。
読んでみた。

めでたく結婚が決まったダルマが、10月の披露宴で流す歌の順番が書いてあった。
「披露宴の進行の節目に、浜崎あゆみの曲を流す予定です。これは、その曲順を書いたものですが、もしアドバイスがありましたら、お願いします」

アドバイスかぁ。

まさか、この中にこんな手紙が入っているとは、思わなかったから、この段ボールは3週間以上、ほったらかしだった。
いまさら、返事をしても遅いよな。

それに、ダルマには悪いが、私は浜崎あゆみの歌は、あまり真面目に聞いたことがない。
興味が無いというわけではない。
ダルマとトモちゃんを繋げてくれたのが、あゆの歌である(そのことに関しては、こちら)。
だから、気にはなっている。

ただ・・・・・。

浜崎あゆみは、華のあるアーティストである。
誤解を恐れずに言わせてもらえば、華のある存在感だけで疾走してきたアーティストだと言ってもいい。
こんな歌手は、他にいない。

マドンナ、ジャネット・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、ビヨンセ、アヴリル・ラビーンなど、時代を作った数々の歌い手がいる。
彼女たちはみな、個性と実力を売り物にしているが、華を売り物にはしていない。

浜崎あゆみは、その点で特殊である。
だから、華のなくなった浜崎あゆみを、私は見たくない。
彼女がいつまで華を持ち続けるかわからないが、いつかはその華も枯れるだろう。
私は、それを見たくないのである。

私の高校3年の息子も、浜崎あゆみが好きで、シングル、アルバムのほとんどを持っている。
私が息子にその話をすると、「あゆの華が無くなることは絶対にない!」と力むのだが、咲き続ける華は、むしろ不気味だ。
華は枯れた方がいい。だが、枯れた華は見たくない。

だから、私は浜崎あゆみの歌に近づきたくないのである。

しかし、ダルマやトモちゃんにとっては、そんなことは関係ないだろう。
幸せなふたり。
そして、選ばれた7つの曲。

これは、彼らの軌跡そのものなのかもしれない。
そう思ったら、これを無視するのはいけないのではないかと思った。
時刻は午後9時前。

私は、午後9時を過ぎたら、電話をしないようにしている。
誰だって、夜は自分の時間を持ちたい。
それを無粋で自分勝手な電話に侵入されたくない。
相手が親友であっても、侵されたくない時間というものがある。
私は、それが9時以降だと思っている。
だから、9時を過ぎたら、よほどの緊急事態でない限り、絶対に電話はしない。

だが今は、9時になっていない。
ダルマに電話をした。

ダルマは、すぐに出た。
「師匠、お久しぶりです。夏もそろそろ終わりですね。相変わらず、走ってますか。俺も、トモちゃんと一緒にジョギングを再開しましたよ。おかげで、体調はバッチリです!」
幸せマックスのダルマの上機嫌の声。
それは、たいへん鬱陶しいが、気持ちのいい鬱陶しさでもある。

その鬱陶しい男に、私はこう言った。
「手紙読んだ。なかなかいい選曲だと思うよ。でも、4曲目と5曲目は、逆にした方がいいかもね。その方が、盛り上がるんじゃないか」
(4曲目も5曲目も、私の知らない曲だが、とりあえず言ってみた)

「ああ、さすが、師匠! 俺たちも、そこ悩んだんですよ。トモちゃんも逆がいいかなって言ってたんですけど、俺が、強引に決めたんですよ。そうですかぁ! 師匠も逆がいいんなら、そうしますよ」
(え? ホントにいいの? 適当に言ったんだけど)

適当ついでに・・・、
「1曲目は、君とトモちゃんの出会いを暗示させる歌、そして、最後はこれからの未来を予感させる歌にした方が、いいんじゃないかな。その方が、来てくれた人に伝わりやすいと思うよ」
(そんなに都合いい歌が、あるわけないよな)

「ああ! やっぱり、そうですよねえ! ありますよ! あります! ただ、あまりにそれらしい歌なんで、ふたりとも『露骨だなあ』って思ってしまって」
(あるのかい! そんなに都合のいい歌が)

「いやあ、鋭いご指摘ありがとうございます! 隣でトモちゃんも喜んでいますよ。師匠、銀河高原ビール、もう切らしちゃったんじゃないですかぁ?」

ああ、もうとっくに、飲んじゃったよ(嘘です)。

「じゃあ、明日また送りますので。本当にありがとうございます。参考になりました。助かりました」
(これで、よかったのだろうか?)

ごめんね、タカダ君。
君の師匠は、大嘘つきなんだよ。
幸せボケもいいが、そのことを忘れないように。



★幸せボケの人は、CG「中庭を俯瞰する」



北京オリンピックで、日本が取ったメダルの数は25個。

これが、多いか少ないかは、人それぞれ感じ方が違うでしょう。
私は「金」に関しては妥当ですが、「銀」が少し少なかったな、と感じました(まったく勝手な個人的な感想です)。

「金」は、多ければ多いほどいい、とみんな考えているでしょうが、こんな考え方はどうでしょうか。

各国のオリンピックにかける強化予算と対比して、その国の順位が妥当かどうかを判断するというものです。

たとえば、日本のメダル獲得順位が10位だったとします。
そして、オリンピックの強化予算も10位だったら、日本の選手は「仕事をした」ということになります。

もし予算額が5位で、獲得順位が10位だったら、選手は「金を無駄に使った」ことになります。

このような統計を取っている人はいないのでしょうか。
たいへん興味があります。

私の推測では、アメリカ、ロシア、イギリス、中国は、かなりオリンピック予算を使っているような気がします(これは、偶然にも皆『核保有国』)。

「核保有国は何故オリンピックに強いのか」という本があったら、読んでみたいものです。
(いや、読まないかな・・・・・、馬鹿馬鹿しくて)


2008/08/26 AM 07:00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

夏バテ年齢
ここのところ、涼しい日が続いていますが・・・。
夏バテの同業者をお見舞い。

自宅のベッドで寝ていた、同業者Kさんの顔を見て驚いた。
げっそりと頬がそげて、まるで別人だった。
眼だけがギョロッとして、顎が尖っているから、彼には悪いが、別世界の生物を見ているような気分になった。

「俺、夏に弱いからさ。今までも5キロ近く痩せることはあったけど、今年は9キロ痩せちゃったよ。もう、仕事する気にもならないよ」

中肉中背のKさんの体重は、普段はおそらく60キロ前後。
それが9キロも痩せたということは、50キロそこそこということになる。
それでは、確かにきついだろう。

いくら夏に弱いといっても、それは痩せすぎではないのか?
悪い予感が頭をよぎったが、それを察したのかKさんは、手を顔の前で強く振りながらこう言った。

「家内が心配するから、先々週病院で検査を受けたけど、特に問題はないってさ。ただ極端に食欲が落ちてるから、栄養食品やサプリを意識して摂るように言われたな。カロリーメイトや栄養ゼリー、ビタミン剤は、毎日きっちり摂っているよ。水分や糖分は、梨やスイカ、ブドウ、バナナで摂ってるから、バランスはいいんじゃないかな」

そう言ったあとで、「Mさんも、痩せたんじゃない?」と言われた。

私の場合、数ヶ月の間隔を開けて人に会うと、百パーセントの確率で「痩せたね」と言われる。

もともと貧相な顔立ちで、ゴボウのように痩せているから、以前会ったときの記憶をリセットされると、貧相さだけが目立って、「痩せた」という印象を与えるようである。

そう言われたとき、以前は「いや、痩せてませんよ」と言っていたが、そう答えると、いつも相手が不満そうな顔をするので、最近では「ああ、痩せましたかね」と答えることにしている。
そうすれば、波風が立たないし、その話題がいつまでも尾を引くことはない、ということがわかったからだ。

だから、今回もそう言った。
すると、Kさんは、ベッドの下に格納した段ボールの中から、カロリーメイトや栄養ゼリーを適当に掴んで、レジ袋に入れだした。
そして、パンパンになったレジ袋を私に差し出すのだ。

「これ、あげるよ。まだ、たくさんストックがあるから、遠慮しないでいいよ。夏バテはつらいからね。これで、元気出してよ」

優しいお心遣いである。Kさんは、心底優しい人だ。

私は、威張るほどではないが、夏バテをしたことがない。
以前だったら、こんなとき、確実に「いや、俺、夏バテしないから」と言って断っていたが、最近では、この種の言葉のキャッチボールが面倒くさくなってきたので、「ありがとうございます」と、相手の厚意を素直に受けることにしている。
こうすれば、話は円滑に進む。そして、これ以上、相手に気を遣わせることもない。

限りなくガイ骨に近づいたKさんに、栄養食品をたっぷり貰い、ついでに急ぎの仕事も貰って、Kさんの家をあとにした。
これって、何か変じゃないかい? という思いはあったが、波風が立たなかったんだからいいだろう、と勝手に納得して家に帰った。

Kさんから貰った仕事をしている夜11時。
同業者のOさんから電話があった。

「Mさん、夏バテだって! Mさん、夏は好きだって言っていたのに、とうとう夏バテですかぁ! いやあ、今年の夏は特別暑いからねえ。夏バテにもなるよねえ! Mさん、細すぎるから、俺、心配してたんだよね。
俺は夏に強いっていつも言っていたけど、あれ、やせ我慢だったんじゃないの。そんなに細くて、夏に強いわけないじゃん! 無理しちゃダメだよ。栄養のあるもの食って、適当に休まないと。
夜、眠れる? 痩せてる人は神経質だから、夜寝られないんじゃないの? 安眠には、氷枕がいいらしいよ。俺、毎晩氷枕して寝てるけど、眠りが深くなって目覚めがいいんだよ。あれ、やってみなよ! 夏バテ解消には、睡眠。睡眠が一番!
こんな夜遅く仕事なんかしていないで、早く寝た方がいいよ。お互い無理のきく年じゃないんだからね」


ここまで言われたら、昔だったら、「夏バテなんかしてねえよ! 昨日も、15キロ走ったばかりだ。夜もよく眠れる。それに、今年の夏は特別暑いって言うが、去年の方が殺人的に暑かったぞ。もう去年の最高気温狂想曲を忘れちまったのか、あんた! 脳が夏バテしてるんじゃないか!」と、喧嘩を売っていたところだ。

しかし、私も今や、大人の仲間入りだ。

「ああ、ご心配ありがとうございます。夏バテしてますけど、昨日15キロ走ってきました。夏バテしてますけど、夜はよく眠れます。夏バテしてますけど、さっきカレーライスを2杯食いました。夏バテしてますけど、Kさんの仕事を徹夜でこなす予定です。ありがとうございました」

そう言って、電話を切った。

夏バテはしないが、性格は年ごとに悪くなっていくようだ。



★夏バテの人は、CG「体育館前で注射?」



北京オリンピックの野球で日本がメダルを取れなかったことで、非難する論調があるようです。

好き嫌いで言えば、強面(こわもて)の星野監督は、私の嫌いなタイプです。
力や言葉で押さえつける印象のある星野氏は、私には有能な指導者には見えません。

今回、選手の人選も妥当だとは思えないところもあります。
特に投手は、中日の選手にこだわりすぎたのではないか、という思いはあります。
ただ、それは結果論です。

勝負事は何ごとも、正に振れるときもあれば負に振れるときもあります。
彼らが、百パーセントの力を出していれば、勝てたでしょう。
しかし、今回は出せなかった。

それを監督やコーチの責任だというのは、正しい指摘ではあります。
いつだって、勝敗の責任は、監督やコーチが負うべきものです。
その点では、彼らは責められるべきです。負けたことに対する検証も必要でしょう。
今回でオリンピックの野球が最後だとしても、その検証はなされるべきでしょう。

オリンピックに限らず勝負事は、いつだって、結果がすべて。

ただ、それでも、私は勝負は「時の運」だと思うのです。
端的なのは、今回の陸上男子・4百メートルリレーです。
金メダル候補のアメリカ・イギリスが、アクシデントで決勝に進めなかったために、日本はメダルを手にしました。

時が味方をしたのです。

今回の陸上競技で驚異的な記録を残したウサイン・ボルトも、オリンピックが一年早かったら、おそらくメダルは取れなかったでしょう。

これも、時が味方をした、といっていいと思います。

では、日本野球は?
時が見放したのか? それとも、これが実力だったのか?

それは、誰にもわかりません。

ただ、どんなときでも私は、勢いにまかせた個人攻撃だけは、したくないと思っています。
責任論と個人攻撃は、別ものですから。


2008/08/24 AM 08:21:23 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

友とふたり横浜の空を見る
古い話になる。
と言っても、この間の日曜日のことだ。

今年の夏は、7月の終わりに家族で一度、東武動物公園のプールに行ったが、それ以外家族サービスをしていない。
それが、すごく気にかかっていた。

家族サービスをしなければいけない、とずっと思っていた。
そんなときに、大学時代の友人シバタから電話がかかってきた。

シバタに関しては、こちらのブログに書いた。
私は、今まで彼のことを「○○」という差別用語で呼んでいた。
それは、髪の毛が頭から消失した人のことを指すのだが、あまりその言葉を多用すると、シバタの人権を大きく損ねるので、今回は「シバタ」と表現することにした。

シバタは、電話でこう言ってくれた。
「たまには、家族引き連れて、俺んちに遊びに来ないか。和室が空いてるから、何泊してもいいぞ。俺は、お盆過ぎに有休を取ったから、車で横浜近辺を案内してやるよ」

我が家族にそのことを伝えると、「よし! その話、乗ったぁ!」と全員が叫んだので、シバタのお誘いに甘えることにした。

横浜駅まで電車で行き、そこから車で拾ってもらった。
横浜三ツ沢公園近くのオール電化の家。
立派な家である。
車も3台ある。
ハイラックスサーフとステップワゴン、マーチ。

「無駄に多いな」という私の悪態にも、シバタは「デヘヘヘヘ」と笑うだけだ。
そんな余裕ある笑いで受け止められると、こちらが惨めになる。

その日は、私のリクエストで「野毛山動物園」に連れて行ってもらった。
ここは、市営であるが、入場料無料で敷地も広く、見所満載の動物園だ。
横浜の日吉に住んでいたころ、ヨメと頻繁に通ったものである。

久しぶりの野毛山動物園。
我々夫婦は、動物園オタク、水族館オタクなので、何度行っても何時間いても飽きない。
夏休みなので、混雑していたが、我々にとっては、その混雑も甘い思い出の中の一部分になる。

子どもたちも動物が好きなので、レッサーパンダやペンギンの姿に癒されていたようだ。
シバタの家族は、横浜市に住んで10年以上たつのに、この動物園には来たことがなかったという。
「こんなに動物がいるのに、ただ!」と、シバタの奥さんのリエさんは、主婦らしい驚き方をしていた。
ビジュアル系バンド好きのシバタの息子は、私の子どもたちと意気投合して、ソフトクリームをなめながら、一緒にはしゃいでいた。

夕メシは、事前の打ち合わせで、ピザにした。
シバタの息子は、宅配のピザを頼もう、と言ったのだが、「ピザは自分で作るものだ」と言う私の意見が通って、私がピザ生地を作って、我が家から持参した。
発泡スチロールの保冷箱に、直径30センチのピザ生地を3枚入れてきたのである。

具材は、あらかじめ、こちらのリクエストに応じて、シバタリエさんが買っておいてくれた。
アンチョビやツナ、コーン、サラミ、オイルサーディン、トマト、ピーマン、タマネギ、バジル、そしてモッツァレラチーズ。

ピザソースを作るところから始めると、シバタの息子が「えー、そこまでやるの?」と驚いていた。

ピザは、自家製が基本。
宅配ピザなんてのは、上流階級のぜいたく品だよ、と私が言うと、「うっそー!」とのけぞって、叫んだ。

ピザ(気取った人は、ピッツァと言うらしいが、ピザはピザだよ)を3枚と、ペペロンチーノを10人前。レタスの上にオイルサーディンを載せただけのシンプルなサラダ。

「自家製のピザ、初めて食ったぁー! うますぎるー!」というシバタの息子の絶叫で始まったピザパーティは、ほとんどシバタの息子の独演会だった。
ビジュアル系バンドの歌マネを全身を使って表現するのだが、それを見て、我が息子と娘は、何度も手を叩きながら喜んでいた。

その後、風呂に入った子どもたちは、広くてきれいな風呂に大喜びで、息子などは、翌日の朝も入っていた。
風呂に入りたいという理由で、1泊の予定を2泊に延ばしたほどの気に入りようだ。
そして、「風呂だけでも、持って帰りたい!」と、帰り際に叫んだ。

気分がハイになった子どもたちは、疲れも見せずに、夜2時まで酒を飲んでいた我々2組の夫婦の横で、シバタの息子お気に入りのGacktやJanne Da ArcのDVDを見て盛り上がっていた。

私は、シバタの大学時代の悲しい話の数々をしたくてウズウズしていたが、シバタが私に向かって懸命に目配せをするので、泊めてもらう義理もあって、それは我慢した。
その代わり、昨年シバタがナンバーズ3を当てて、その当選金で頭皮マッサージを数回受けたことだけは、ばらした。

それを聞いて、奥さんのリエさんが、シバタの頭をパタパタと何度も叩くので、シバタのテンションが急降下した。
それをきっかけに、我々は寝ることにした。

翌日は、八景島シーパラダイスに行こう、という我々夫婦の希望は、子どもたちに簡単に却下され、横浜をドライブすることになった。

山下公園大桟橋コスモワールド港が見える丘公園元町中華街
まるで、はとバスツアーが行きそうなところばかりだが、子どもたちは目を輝かせて喜んでいた。
特に息子は、シバタが奢ってくれた中華街のレストランで食った堅焼きそばが気に入って、最初は普通盛り、2回目は大盛りをリクエストしていた。
そのほかに、ジャンボ餃子(1個で普通餃子の10個分以上)を2個食い、フカヒレスープを飲んだから、シバタ夫婦は、軽いめまいを感じたのか、倒れ込みそうになった。

港が見える丘公園で、シバタと並んで、ベンチに座った。
暑い日射しが、シバタの頭皮を照らしている。
帽子かぶればいいのに・・・、と思ったが、それは余計なお世話だろう。

頭皮から大量の汗をしたたらせるシバタ。
その汗が、顔のしわに沿って流れ落ちている。
その様は、少しも美しくない。

それは、エキゾチックな横浜には、全く似合わない光景だったが、今日はそれも言わないことにした。

「悪かったな、気を遣わせて」
私が言うと、シバタは「お互いの家族が、こんなにも近くにいて、みんなが笑い合っている。こんなこと、昔は想像できたか、おまえ」と聞いてきた。

「想像できるわけがないだろう。いつもみんなの後ろをついてきただけの優柔不断のおまえが、今では会社ではそこそこの地位にいる。そして、でっかい家を建てた。年月の重みは、俺の想像を超えているよ」
「重いよな。そして、家族って、何よりも重いもんだよな」
シバタが、無防備な頭皮を手で撫でながら、大きく息を吐いて、私を見た。

シバタの「今」は、年齢相応の歴史を感じさせたが、眼の奥には、30年前に私が見続けていたシバタの素の部分が確実に見えた。

日射しが強い。
風もない。
しかし、景色はいい。
絵葉書のような景色が、眼前に広がって、異次元の空間にいるような気分になった。

そんなとき、
「おまえ、幸せか」と、突然シバタが言った。
そして、顔をゆっくりと私の方に回し、遠くを見るような眼で、私を見た。

「当たり前だろ」
シバタの眼をまっすぐに見て、私は言った。

シバタが、大きくうなずく。

そして、二人同時に、空を見上げた。

暑い横浜の空が、そこにあった。



★空を見上げた人は、CG「手乗りオッサン」



日本女子ソフトボールが金メダル。
逆境に強い大和撫子は、諦めることを知りません。大したものです。快挙です。

しかし、その中で気になることが一つ。
エースの上野選手が1日に一人で318球も投げたということです。
そして、驚いたことに、翌日も先発して7回を完投。

私の偏見では、ソフトボールは、野球と同じで、投手と捕手だけに重い比重がかかっている競技です。
これは、あり得ないシチュエーションだということは承知していますが、ソフトボールや野球では、投手が打者全員を三振に取ってしまえば、味方の最少得点で勝てる競技です。
たとえば、投手か捕手がホームランを打って点を取れば、たった2人だけで勝てるのです。

他の団体競技では、これほど極端に一部の選手に負担がかかることはありません。
だからこそ、私は、投手を大事にすべきだと思うのです。

私は、彼女を「剛腕」というきれい事で讃えたいとは思いません。
たとえ彼女が、自分から志願して投げたとしても、指導者は止めるべきです。
彼女が天性の強い体を持っていたとしても、それは偶然に過ぎません。

アスリートをもっと大事にして欲しい。

アスリートは、消耗品ではないのですよ(盛り上がったところに、水を差して申し訳ありませんが)。


2008/08/22 AM 07:02:20 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

黒いトンボは幸せのトンボなのか?
どんな不幸な出来事があったのか、テクニカルイラストの達人・イナバが奢ってくれるという。

いつも奢ってくれるのだが、今回は「ご家族も呼んで、すかいらーくで食べまくりましょうよ」と言うのだ。

イナバに一体何があったのか?

暑さに負けて、思考回路がショートしたか。
それとも、脳が溶けるようなものでも食って、気持ちが大きくなったか。
あるいは、道で大金でも拾ったか。

お言葉に甘えて、家族4人で、すかいらーくに「わーい!」と言いながら行った(本当に『わーい!』と言ったのだから、我が家族はすごい)。

久しぶりに見るイナバは、陽に焼けていた。
「ハワイにでも行って来たのか」と、冗談っぽく聞いたら、「行った」と、本気で答えやがった。
そして、おみやげにアロハシャツを4着もらった。

高校3年の息子は、新しもの好きなので、早速トイレで着替えてきた。
息子は、弱々しい松坂大輔という感じだが、アロハを着ても、違和感はなかった。
その弱々しい松坂大輔の食欲の火が、「遠慮しないで食べていいんだよ」というアホのイナバの言葉で、盛大に点った。

まず「ミックスグリル」を注文した。
それを瞬く間に平らげると、次は「大海老フライ&ハンバーグステーキ」だ。
肉ばかりだとバランスが悪いので、「10種の野菜の摂れるサラダ」も頼んだ。
そして、「オニオングラタンスープ」。
見事な食欲である。
だが、それで終わりではない。
「やわらかマンゴープリン」と「クラシックショコラ」「アイスの盛り合わせ」も食べたのである。

イナバが、アホ丸出しの顔で、我が息子の食いっぷりを見ている。
そのイナバの脇に、いつも持っているシルバーのショルダーバッグが置いてある。
高価なブランド品だということだが、ブランド名に興味のない私は、その名を忘れた。
かなり有名なものらしいが、少なくともイナバには、似合っていない。だから、私にとっては、どうでもいいものである。

ただ、今回は、そのバッグに黒いトンボのブローチが付いていたので、興味を持った。
「ハワイ土産かもしれない」と思った。
胴体も羽も黒で、特に羽が大きくて光沢もあり、綺麗だった。
イナバにしては、なかなか洒落たものを買ったではないか、と感心した。

そのイナバに、なぜ貧乏家族に奢ろうという気になったかを聞いてみた。
すると、イナバは、私が初めて見る照れた顔を作って、小さな声で私に耳打ちをした。

初めて聞くのだが、イナバの奥さんの父親は、某有名メーカーの創業時の社員だったという。
その会社が大きくなって、奥さんの父親は、会社の株を一部保有することになった。
父親が死んで、その株式のほとんどを娘である奥さんが保有することになった。
相続税はかなり取られたが、残った財産価値は、まだ大きい。

そして、この6月。会社から、奥さん保有の株をすべて買い取りたいという申し出があった。
奥さんは、株に対して全く執着がないので、それを会社に譲ったのだという。
その価格を耳打ちされたのだが、それが、信じられないくらい非常識な額だった。

その額を聞いたら、我がヨメだったら、失神しただろう。
我が息子だったら、心臓が止まったに違いない。
娘だったら、「それは『うまい棒』何本分だ?」と言っただろう。
そして、私だったら、確実に人間としての道を踏み外す金額だった。

だが、イナバの奥さんはしっかり者なので、道を踏み外すことはないだろう。
その点で、イナバは幸せ者である。

イナバは、その幸運を手にしたとき、「誰か恵まれない人に、この幸運を分かち与えたい」と思ったそうである。
そして、そのとき、真っ先に思い浮かんだのが、私の顔だったという。

アホのイナバは、アホなりに、お金の使い方を心得ているようだ。
それを聞いて、私は心おきなく、家族に向かって、こう叫んだ。

「すかいらーくのメニューにあるもの、全部食っちまおうぜ! 今日は、遠慮はいらないぞ!」

そう叫んだとき、黒いトンボの羽が少し動いた気がした。

まさかね?

ヨメが食いまくっている。
娘は、サラダとドリンクバーだ。
「もっと、腹にたまるもの食えよ。ハンバーグ好きだろ。ハンバーグを食え」と言うと、「おまえが作るハンバーグより美味かったら嫌だろ」と言う娘。

「馬鹿だな。うちのより美味いわけないだろ」
「よし! じゃあ、食ってみるか!」

ハンバーグを食いながら、娘がVサイン。
「間違いなく勝ったぞ! おまえの方が美味い!」
親父の威厳をかろうじて保ったようである。

そう思ったときに、私の視界に入った黒いトンボの羽。
また、動いた気がした。

まさかね?

すかいらーくでは、お持ち帰りもできるというので、「ハンバーグ&シュリンプフライ弁当」2つ、「お月見ハンバーグ」2つ、「ライス」4つ、「チーズタルト」3つ、「 クラシック・ショコラ」3つをお持ち帰りにしてもらった。

これで、夕メシの心配もなくなった。
満足、満足と思っていたとき、明らかに、黒いトンボが動いた、羽が盛大に動いたのだ。
それに、娘も気づいた。

「えー! 本物かよ」

我々が指さした方を見て、イナバも自分のバッグに視線を移した。
羽を動かす黒いトンボ。

「ギャーーーーーーーーーー!」

「なんすか! これぇ! これって、トンボ? えー! 俺、虫ダメなんですよぉ! なんで、ここにトンボがいるんすかぁ〜〜〜!」

まわりが振り返るほどの、絶叫だ。

このトンボは、イナバがすかいらーくに来る前から、バッグに張り付いていたのだろう。
しかし、1時間以上も同じ位置にいるとは、何と非活動的なやつだろう。
トンボは飛び回るのが仕事なのだから、こいつは、よほど怠け者に違いない。

感心していると、後ろの座席に座っていた60年輩の男の人が、手を伸ばしてきた。
羽の部分を持ちながら宙にかざし、「珍しいな、真っ黒いトンボかぁ」と言った後で、「あ〜あ〜、しあわせのトンボがぁ〜」と歌い出した。
私の記憶に間違いがなければ、それは長渕剛の歌だった。

娘と顔を見合わせて、二人して腕を胸の前で組んで「寒いポーズ」。
我々二人は、長渕剛の歌を聴くと、鳥肌が立つ体質なのである(ファンの方、ごめんなさい)。

しかし、それを聴いたイナバは、しみじみとこう言うのだ。
「ああ、オレ、最近幸せ続きだから・・・・・、だからトンボが寄ってきたのかなあ!」

この言葉を聞いて、私は、このときほど、イナバをグーで殴りたいと思ったことはなかった。
娘を見ると、娘も右のコブシを握りしめていた。

ヨメと息子は、単純に「ああ、これは、私たちに幸せを運んできたのかも〜」と喜んでいた。
この温度差は、一体何なんだ!

温度差を感じつつも、お持ち帰り弁当を大量に抱えながら家に帰ると、留守番電話がピカピカ光っていた。
聞いてみると・・・・・、

「ススキダだぁ! 懸賞で地中海旅行が当たったぞぉー! 初めてだよ! 懸賞に当たるなんて! キタ〜〜〜! 生きていてよかったぁー!」

どうやら、幸せのトンボは、違う方向に飛んでいったようである。



★トンボが逃げた人は、CG「森のバス停」



オリンピックネタ。

北京オリンピックの女子マラソンでメダルを取れなかったことに対して、色々な人が色々なことを言っています。
検証することは大事でしょうが、私には騒ぎすぎに思えます。

今までが、良すぎた。
それが、今回たまたま選手の調子が悪かったから、メダルが取れなかっただけ。
私は、単純にそう考えています。

マラソンは、人間の体を極限まで追い込んで走る種目です。
誰もが百パーセントの状態で走れる競技ではありません。
圧倒的な世界記録を持つラドクリフでさえ、オリンピックではメダルが取れません。

調整の難しいマラソンで、たった1回メダルを逃したからって何を騒いでいるんだ、というのが、今回の私の感想です。
男子柔道も、2個も金メダルを取って、なんで非難されなきゃいけないんだ、と私は思っています。

ただ、こんなことを言うと、どこでも「非国民」を見るような目で見られましたが・・・。


2008/08/20 AM 08:08:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

苦笑いで終わった私のお盆
お盆は、酸素カプセル

酸素カプセルを2台設置している店のチラシを頼まれた。
最初、オーナーが自分でチラシを作り、それをインクジェットプリンタで5千部プリントして、近所にポスティングする予定でいた。

しかし、経験者ならおわかりかと思うが、インクジェットプリンタで百部プリントするだけでも大変だ。
かかる時間はそれほどでもないが、インクの消耗が激しいのだ。
どれくらいのコストがかかるかわからない。

それで、酸素カプセル店オーナーのキジマさんは、挫折してしまったのである。
その結果、私のところにWORDで作ったプリントを持ってきて、「これを5千部、お願い!」と言ったのだ。

「これを」と差し出されたプリントを見て、私は驚いた。

キャッチコピーが、「夏バテには、コレ!!!」だった。
しかも、その下に、うなぎの蒲焼きの画像があって、その上にバッテンが付いていた。
そして、小さい字で「ウナギより酸素カプセル」。
さらに、上半身バスタオルをまいた女性の画像(見るからに品がない!)の横に、「5キロ痩せました」の文字。

裏面を見ると、文字だらけ。しかし、なぜか右隅に、裸の女性の後ろ姿が。
それに、インクジェットプリンタで両面プリントをしているから、所々インクが滲んでいて、文字がぼやけていた。
そのぼやけた文字で、商品の説明が紙面全体に充満しているから、読みとるのに大変神経を使った。

一目見て、これが健康器具のチラシだとは、誰も思わないだろう。
これが郵便受けに入っていたら、私なら間違いなく、即座にゴミ箱に捨てる。

私は、クライアントに対して無神経なことを言わないように気をつけているのだが、このときは、「これは、ひどい!」と呟いてしまった。

キジマさんは、「ハハ、そりゃそうだよね。俺、素人だもん」と開き直ったあとで、「じゃあ、プロの仕事見せてよ」と、腕を組んで私を睨みつけた。

チラシの情報量からすると、両面は必要ないので、片面だけにしましょう、片面で十分、と私が言うと、「片面だけだと、貧乏くさいだろ。それに、説得力がない。裏面がもったいない」と大声で話しだした。
困ったことに、キジマさんは、人の話を聞かないひとだったのである。

モデルに使う女の人は、もう少し上品な感じの人を捜してきますから、この写真はやめましょう、と言うと、「上品な女の写真なんか、誰も見ないよ。少し色っぽいくらいがいいんだよ」と、また大声。

確かに、少しくらい色っぽい方がいいでしょうが、この写真では逆効果でしょう。
健康的な酸素カプセルをアピールしたいなら、健康的な女性の絵を載せるべきだ。

「いいんだよ! 俺はこういう女が好きなんだから!」
あなたが好きでも、一般の人が健康器具から思い浮かべるイメージは、「健康美」の方でしょう。

「ああ、やだなあ! だから、人にまかせるのは、嫌なんだよ! 俺は思い通りにやりたいのに、すぐ反対するんだから!」
反対しているわけではなくて、これは、できるだけいいものを作るための話し合いです。
だから、私は、あなたの作ったチラシを全部否定するつもりはありません。

すると、キジマさんは、いきなり「酸素カプセルの仕組みって知ってる?」と、メーカーのカタログを手に取り、演説を始めたのである。
私は、人の話は最後まで聞く主義なので、30分近い「酸素カプセル演説」を口を挟まずに聞いた。

酸素カプセルが、体にいいことは理解した。
それをチラシで大きくアピールしたいというのは、私も同意見だ。
しかし、チラシを無闇に言葉で埋め、安っぽい写真で人の目を惹くやり方には賛成できない。
キャッチコピーは、一つでいいし、説明は、要点だけで十分である。
画像は、イメージ主体の方が、健康をアピールしやすい。どぎつい絵は、逆効果になる。

私は、これらの意見を簡潔に伝えようとした。
しかし、私のこの意見の間に、キジマさんは「いや、これは」とか「そんなこと言ったって」とか「そんなことないよ」「ちょっと待ちなよ」と、頻繁に口を挟むから、私の意見は、細切れになって、まったく形をなさないのである。

面倒くさくなった私は、キジマさんに「あなたとはご意見が違うようなので、私は、この仕事を受けられません。でも、それではそちらが困るでしょうから、同業者を紹介しましょう」と言って、逃げることにした。

「仕事、回してよ」と、会うごとに言われ、「いまどき、回す仕事なんか、ないですよ。Oさんこそ回してくださいよ」と、いつも言い合っていたOさんに、この仕事を回した。

2日後。
Oさんから、抗議の電話が入ってきた。
「Mさん、なんだよ、あれ! 人の話聞かないじゃないの! 自分の意見ばっかり遠そうとしてさ。まともに話なんかできやしないよ。悪いけど、『こんな仕事、できねえ!』って、追い返したからね。もう少し、まともな客紹介してよ。頼みますよ」

仕事が、舞い戻ってきてしまった。

しかし、キジマさんは、たくましい人だ。
Oさんに強く拒絶されても、私にチラシを酷評されても、自分の意志をまったく曲げなかった。

あっぱれである。

そのあっぱれさに感心して、私はキジマさんの言うとおりにチラシを作ることにした(本当は、面倒くさくなったから)。
そして、近所の印刷会社に無理を言って、先週の土曜日に、5千部印刷してもらった。

印刷会社の社長は、仕上がりを見て「なんだ! Mさん、ピンクチラシもやるの? そんなに困ってるの?」と言った。

苦笑いをするしかなかった。

結局、私のお盆は、苦笑いで終わった。



★お盆には、CG「のんびり妊婦」



北京オリンピックでの男子柔道の成績に関してマスゾエ厚労相が、「情けない」と言ったとか。

私は、大臣が、いくら記者から聞かれたとしても、これは公の席で言うほどの問題ではないと思うのですが、マスゾエ氏と同じように思っている人は、意外と多いようです。

今や国際的なスポーツである柔道は、日本ではいまだに「武道」扱いですが、外国では「JUDO」です。
「JUDO」をやっている以上、同じ思考方法で畳に上がらないと、違和感を残したまま試合をすることになります。
その違和感を取り除くのは、本来、監督やコーチの役目ですが、すべての試合が終わったあと、強化部長は、こんなことを言いました。

「監督とコーチは、一生懸命やったんだが・・・」

私は、むしろこの責任者の方が「情けない」のではないかと思っているのです。

最近、相撲の理事長や食肉偽装の経営者に見られるように、責任を取ろうとしないトップが増えているように感じるのは、私だけでしょうか。



2008/08/18 AM 08:09:37 | Comment(7) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

お盆・演歌に呪われた私
Mac出張講習というのをしている。

3年前までは、年に10回前後あったが、去年は5回。今年は、先日まで3回。
以前は、何度か講習会の様子をブログに書いたことがある。
講習会は、キャラの宝庫だ。信じられない人がいる。
たとえば、この人は、秀逸だった。

しかし、最近は常識的な人ばかりだったので、ブログの主役に抜擢できる人が出てこなかった。
「主役よ、出よ!」と思っていたときに、最強のキャラに遭遇した。

今年3回目の出張講習。
2時間の講習の間、私は体の奥深くから沸き上がってくる恐ろしい戦慄に、全身の震えを抑えることができなかった。

メールをもらって、日時、場所を決めて伺うと、そこは有名なウィークリーマンションの一室だった。
インターフォンを押して出てきたのは、67歳(自称)のおじさん(実際は、10歳くらい若く見える)。
推定身長159センチ。推定体重90キロのメタボさん。
髪はフサフサだが、85パーセントが白髪だ。

顔を見て、誰かに強烈に似ていると思った。
すぐに名前が浮かんだ。
せんだみつお」だった。

玄関を抜けると、ワンルームの部屋(この日本語おかしいような?)。
まず驚いたのは、部屋中がコックピットのようだったこと。

パソコンが1台。液晶モニター。プリンター。スキャナー。そして、本格的なステレオコンポが、中央に位置していて、50インチクラスの液晶テレビもある。
スピーカーは、タンノイ製の年季の入ったもの。アンプはラックスマンテクニクスのターンテーブルもある。そして、驚くべきことに、ティアック製のオープンリールのテープデッキまであった。

アンプには、ボーズのヘッドフォンが繋がれている。近所迷惑を考えて、普段はそれで音楽を聴いているのだろう。
しかし、それでは、タンノイのスピーカーが可哀想だ。
「これでは、宝の持ち腐れではないか」そんな目で見ていたのがわかったのか、センダミツオが、頭をかきながら言った。

「これ、でかいからさ。家に置けないんだよね。俺んち、このすぐそばの一軒家なんだけど、娘夫婦が先月から同居しはじめたもんだから、俺の行き場が無くなっちゃってさ。機械と一緒に引っ越してきたんだよ。一軒家の時は、でっかい音で音楽聞けたけど、今はヘッドフォン生活だよ。肩身狭いねえ」

こう言った後で、大きな屁をした(本当にしたんですよ。信じられます? 初対面の人間の前で『ブッフォー!』ですよ)。

しかし、このコックピットはすごい。
配線が大変だったでしょう?

「俺、電気屋だからさ。今は、娘夫婦に店譲って楽隠居だけど、機械には、強いんだよ。この程度は、昼メシ前だよ(本気で、こう言ったんです)。いや、ほんと、俺、まだ昼メシ食ってねえんだ。最近、メシ食うの面倒くさくなってね」

午後2時。
いいんですか? 食事しなくても。何か食べてくださいよ。何か食べないと、頭に血が回らなくて、理解力も落ちますよ。

「いいんだよ。もともと、理解力なんかないんだから。俺、機械いじりにしか、頭が回らなくてね。かあちゃんからも、『あんたは、ホントにバカだよね』って、毎日言われてるんだ。一緒に暮らしている人間が言うんだから、間違いはねえ!」

しかし、これだけ複雑な配線をできるんですから、バカとは言えないでしょう。
私がそう言うと、延々と自分のバカ自慢が始まった。
10分以上バカ自慢をするので、「まあ、最近はおバカが流行っていますから、それもいいんじゃないですか」と、適当に話を切り上げようとしたら、本気で怒られた。

「あのねえ! あいつらは、営業用のバカでしょ。俺は、正真正銘のバカなの! 一緒にしないでくれる?」

センダミツオは、バカに誇りを持っているようである。

バカ談義をしていても話が先に進まないので、講義をはじめることにした。

MacはOSテン・レパード。評判のOSである。
私も何度か動かしたことがある。動かしてみて、かなり完成度の高いOSという感じがした。
ただ、初心者には、どうかな? と思った。
そこで、「基本的なことは、おわかりですか」と聞いてみた。

すると、センダミツオは私の問いを無視して、突然「俺、作曲がしたいんだよね」と言いだした。

作曲? 確かに、音楽好きなのは、部屋を見れば想像がつく。
これだけの装置を持っているのだから、毎日音楽にドップリ浸かっているのは、間違いがないだろう。

ただ、この部屋に入ったときから、私はずっと嫌な予感がしていたのだ。
センダミツオが、鼻歌を絶えず歌っているのだが、それが演歌らしいのだ(演歌好きの人には申し訳ないが、私は演歌を聴くと鳥肌が立つ)。
そして、CDラックには、200枚以上のCDが陳列されているが、背表紙を見ると、見慣れない日本の歌手の名前だらけだった。

もしかして、これって、全部演歌?
ラックスマンのアンプとタンノイのスピーカーで演歌を聴く?

私は、怖くて、とても本当のことが聞けなかった。

それでは、まるで帝国ホテル内のフレンチレストランで、卵かけご飯を食べるようなものではないか。
いや、それは、まだ「おしゃれ」と認めていいシチュエーションかもしれない。
帝国ホテルで、卵かけご飯は、まだ許せる。

しかし・・・・・、

タンノイのスピーカーから、演歌。
私は、その現実から、逃げようとした。
それだけは、絶対に認めたくなかった。

だが、センダミツオは、あっけらかんと言うのだ。
「センセイ、すみません。俺、音楽がないと、何もできない人なんで、音楽聞きながら、話を聞いてもいいですか」

駄目です!
そう言うべきだった、と後悔したが、私は「ああ・・・、いいですよ」と言ってしまったのだ。

後悔先に立たず。
先人は、いいことを言った。
確かに、いつだって、後悔は後からやってくる。

約1時間半。
わけのわからない歌を聴かされ、そのすべての歌をセンダミツオが熱唱するのだ。
講習など、できるわけがない。

それは、地獄のカラオケボックス。
そして、その地獄からは、決して逃げることができない。
なぜなら、逃げたら、講習料が貰えないから・・・。

ウィークリーマンションの関係者のかた。
お願いがあります。
誰にでも部屋を貸すという善意は、素晴らしいと認めますが、67歳のセンダミツオ似の機械オタク、演歌オタクには、絶対に部屋を貸さないでください!

あれから、まるで墓場から浮かび上がってきたような演歌が、私の脳細胞から消えてくれません。

脳細胞が・・・・・、お盆を迎えたようになっています。



★お盆には、CG「怒られた」



講習会の帰りに、マクドナルドでマックベーカリーを食べながら、コーヒーを飲んでいたときのこと。

後ろの席から、外人らしき女の人たちの会話が聞こえてきました。

「日本人は、オリンピックになると愛国心丸出しになって『ニッポン、ニッポン』て騒ぐけど、あれって気持ち悪いよね」
「いつもは、無関心なのにね」

そのご意見は、多少は頷けるものがあります。

しかし、日常生活で、愛国心をすべてに優先すると、「世界は俺たちを中心に回っている」「国民の命や生活より、国家利益が優先だ」「どんなに国民が飢えていても、ミサイル1本の方が価値がある」という、どこかの国のようになってしまいます。

私は、4年に1回だけ、自分の中の愛国心を再確認する国民がいてもいいのではないかと、不謹慎ながら、思っています。


2008/08/16 AM 08:11:30 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

モンスターからデーモンへ?
トンデモ110番。

深夜、インターネットを検索していたら、なぜかそんなニュースが表示された。

非常識な苦情を110番通報する人が、最近増えてきているらしい、という記事だ。

「彼女に捨てられた。どうしたらいいか」
「自販機のお釣りが少ない」
「アイスクリームが溶けた」
・・・などという、どうでもいい平和な話をわざわざ110番通報するらしい。

110番を受けた通信指令課では、その都度、状況を聞いて丁寧に対応するというから、この姿勢には頭が下がる。
電話をかける側は、自己中心的な思いに凝り固まっているから、電話の向こう側で、係員がどれだけ真剣に対応しているか想像ができない。
その結果、その要求は、エスカレートする。
本当に、たちの悪い人種だと思う。

そのニュースでは、こんな警察関係者の談話も載っていた。

「20年ほど前にも通信指令室で担当したが、当時もとんでもない通報はあるにはあった。しかし、今ほどひどくなかったですね。これは110番に限った話でなく、119番でも同じようなことが起こっている。やはりモラルの問題なんじゃないでしょうか」

この警察関係者の話では、こういった非常識な通報が、以前と比べて目に見えて増えたとは言っていない。
ただ、「一人の関係者の感想」として、通報の内容がひどくなったと言っているだけである。

とんでもない通報は、昔もあった。
しかし、それは記事にはならなかった。
だが、今は、記事になる。
それは、メディアが最近、非常識な通報を「モンスター」と表現すれば、人の目を惹くと、安易に考え始めたせいではないか、と私は思っている。

私の友人は、15年ほど前、2年近く警察官をやっていたことがある。
私は、彼から飽きるほど、その種の信じがたい話を聞いていた。
だから、この種の話を聞いても、今さら何を、としか思わない。

「盗まれた自転車を見つけたから、一緒に行って取り返して欲しいと言われて、相手の家に行くと、それは同じ型、同じ色の自転車だったが、正規の自転車登録をした違う人のものだった。すると、通報した人は、『そんなことないわよ! 絶対この自転車なんだから』と、その自転車に乗って帰ろうとした。慌てて彼が止めると、『警察が泥棒の味方をするわけ!』と、思い切り蹴飛ばされた」

「家に帰ると、テーブルの上に置いたティッシュの箱が消えていた。きっと泥棒が入ったに違いない。ティッシュの他に盗まれたものがないか探してみたら、牛乳パックの中身が減っている気がする。きっと泥棒が飲んだに違いない。気味が悪いので、牛乳は捨てた。絶対に泥棒が入ったんだ! 盗まれたティッシュを探してくれ、と言われてよく調べたら、会社でティッシュを切らしたので、自分で会社に持っていって使っていただけだった。牛乳は、朝出がけに自分が飲んでいた」

「財布を落としたので、家に帰れない。終電が行ってしまったので、タクシーで帰るしかない。だから、タクシー代として、5千円貸して欲しい。しかし、住所を聞いてみると、交番から5百メートルも離れていないところだった。給料日までお金が足りなくなったので、タクシー代を口実に生活費を借りようとしたらしい」

「隣の騒音がひどいという通報で駆けつけると、通報した本人は、寒い真冬に窓を全部開け放していた。なぜ開け放しているのか聞いたら、昨晩焼き肉パーティをしたときの臭いが部屋中にこもっていたので、臭いがとれるまで開けているのだという。騒音は、赤ん坊の泣き声だった。しかし、試しに全部の窓を閉めてみたら、それほど泣き声は気にならなくなった。窓を閉めれば、静かになりますよ、と言ったら、『俺に、焼き肉の臭いを我慢しろ、と言うのか!』と、怒鳴られた」

「深夜、鍵を落としたので家に入れないから何とかして欲しいと、交番に若い男がやってきた。住所を聞くと、すぐそばのアパートだった。一緒に行ってみると、確かに鍵がかかっている。管理人と連絡を取ろうと思ったが、管理人の連絡先がわからない。ドアノブをガチャガチャと動かしながら、どうしようかと考えていたときに、突然内側からドアが開いた。女の人が、鬼のような形相で、二人を睨んでいた。要するに、深夜帰宅したときの奥さんの反応がいつも怖かったので、旦那が一人で帰れなかっただけだった」


おそらく、この種の話は、昔も今も変わらずあるのではないだろうか。
ニュースとしては、少しも面白くないから、報道されなかった。
ただ、この種の話の前に「モンスター」をつけて形容すると、最近では、何か意図的で特別な記事になる。

いつの時代にも、世間の枠から大きく外れた非常識な人は、いたと思う。
「モンスター」という安易な言葉で、表現されなかっただけだ。

そう考えると、「モンスター」というのは、楽な言葉である。
つまらない内容でも、「モンスター」とつければ、読んだ人は「まったくなあ!」と怒ってくれる。
「そんなに怒るほどのものか」という反応しかしない私のような人間は、変人扱いになる。

そうして、私も、めでたく「変人モンスター」の称号を得ることになる。

そして、「モンスター」が、メディアから飽きられたとき、モンスターの称号は剥奪されて、ただの「変人」に格下げ。

あるいは、「モンスター」の次は、「デーモン」に昇格?

いや、それでは、デーモン小暮閣下に失礼か・・・。



★モンスターじゃない人は、CG「避難する?」



野口みずき選手が、マラソンの出場を断念しました。

前回のブログで、アスリートの生きざまに関して、勝手なことを書きました。
無責任な第三者は、今回の超一流のアスリートの判断を尊重したいと思います。

野口選手は、まだ30歳。
あと一回、大きな頂上を極める時間は、たっぷり残っています。

あとはただひたすら、世間も静かに、メディアも静かに彼女を見守ってあげること。

特に、この国のメディアは、成功者をいとも簡単に突き落とすのが好きなようですから、要注意です。


2008/08/14 AM 07:57:21 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

無駄なものなんてないんだ!
昨日、得意先に集金に行くと、経理担当の女性から頭を下げられた。

「すみません。3週間ほど、お支払いを延ばしていただけると、助かるのですが」
その女性は、緊張して、鼻の頭に汗を浮かべていた。
いつもは、笑うと目がスマイルマークになって、人懐っこい雰囲気を撒き散らす人だが、今回は可哀想なくらい肩に力が入って、恐縮していた。

ないものは、払えない。
これは、当たり前のことである。
私は、悪徳業者ではないし、お金がないときの惨めさを知っているから、「はい」とだけ言って、得意先をあとにした。

さて、貧乏な夏の始まりだ(もう半分以上過ぎているが)。

一昨年も、昨年も、大口の入金が滞って、たいへん寒い夏を過ごした。
夏が嫌いになりそうである。

ただ、今年の6月は、レギュラーのドラッグストアのチラシが、普段は月に1回か2回のところを3回入ってきた。
その報酬が、昨日入金されていた。
そこが、昨年と違うところである。
これがなかったら、と思うとゾッとする。

ゾッとしながら、「無駄」ということについて考えてみた。
私は、普段それについて考えたことがない。

きれいごとを言わせてもらえば、この世に無駄な人などいないし、無駄なものなどない、と私は思っている。
どんなものでも、必ず何かの役には立っている。
だから、「無駄」を真面目に見つめようとは思わなかったのだ。

いま、冷静に考えてみて、やはり「無駄」はない、と思った。
ただ、使わないもの、あるいは使わなかったものはある。
これらが、はたして無用なものであったのか、という検証をしてみたい。

まず、8年前、ヨメが息子のために買った50万円近くした教材セット。
これは今、ほとんど使われずに、クローゼットの奥深くに格納されている。
勉強より遊びにエネルギーを使っている息子のために、ヨメが何とかして勉強に目を向けさせようと、独断で(つまり私や息子に相談せずに)ローン(24回払い)で買った最新式の教材セット。

しかし、最新式であっても、本人に使う意欲がなければ、ただ段ボールの中に眠るしかない悲しい運命を背負った「かたまり」に過ぎない。
私は、息子がこれを使うのを5回程度しか見たことがない。

そもそも私は、子どもは遊びの中から何かを学ぶべきであって、強制の中から何かを学ぶものではないと思っている。
だから、高価な教材セットがあったとしても、それを息子に無理強いすることはしなかった。
ヨメは、「使え使え! もったいない!」と言ったが、私が無関心だったので、息子も無関心で通した。

これは、無駄なのか。
ヨメが息子を思う気持ちを考えれば、これは無駄ではないと私は思う。
ただ、息子が使いたがらなかった。それだけのことである。

次は、仏壇。
これは、大きい。そして、立派だ。

4年前、仕事をしていたら、突然運送屋が来て、「お届け物です」と言ったのである。
緩衝材にくるまれたそれを見たとき、箪笥か、と思った。
しかし、箪笥を買った覚えは、私にはない。
キャビネットや本棚も買った覚えはない。

何ですか、それ? と聞いてみた。
作業員は、「仏壇です」と誇らしげに答えた。

仏壇? 聞いてないぞ!
しかし、聞いていなくても、配送先は明らかに我が家になっている。
そして、宛先は、ヨメに。

もしかして、悪い霊感商法にでも引っかかったか? と思った。
そこで、近所のお友達の家にお邪魔しているヨメに電話をかけてみた。
「ああ、和室の角に置いてもらって」とアッサリと言われたので、霊感商法でないことだけはわかった。

梱包を解かれた仏壇は、輝かしいくらい立派だった。
電気仕掛けの部分が何か所かあって、それは仏壇と言うより、メカニカルな家具という感じがした。
仏壇に見とれていたときに、ヨメが帰ってきたが、値段のことは聞けなかった。
ただ、とてつもなく高価なものだということだけはわかった。

この仏壇は、無駄なのか?
義父が亡くなって、2ヶ月後に届けられた仏壇。
ヨメがこの仏壇を見たときのキラキラ光る、ウットリとした目を見たら、「無駄」などと言えるわけがない。

今もこの仏壇は、燦然とその存在を和室で主張している。中央で義父が微笑んでいる。
光り輝いている。
だから、これは、無駄ではない。

ゲーム機が、たくさんある。
スーパーファミコン1台。NINTENDO64 2台(息子と娘に1台ずつ。親バカ?)。ゲームボーイ4台。ゲームボーイアドバンス2台。プレイステーション2 2台。ゲームキューブ2台。ニンテンドーDS 2台。
そして、ゲームソフト200本以上。

これは、無駄なのか?
スーパーファミコンは、私が「ファミスタ」で使っている。
プレステ2も、私が時々「ぼくの夏休み」と「ぼくの夏休み2」をするために使っている。
ゲームキューブは、息子がたまに使っている(スマッシュブラザース)。
ゲームボーイでは、ヨメが時々オセロをしている。
だから、無駄ではないのだろう。

我が家に、無駄なものなどないのだ。

しかし、先日、ヨメがボソッと呟いた。
「うち、パソコン多すぎない? あれ無駄でしょ? 場所もとるし」

何をおっしゃいます!
Mac3台。Win4台。
どこが無駄なんですか!
パソコンは、私の仕事道具ですよ!

Macは私が使い、WInは家族が1台ずつ使っているではないですか。
それぞれ有効に使っているはずですよ!
どこにも無駄はありません。

「でも、電気代がかかるのよ。あれって、無駄でしょ。エコじゃないし」

ああ、それは、ごもっともですね・・・・・、たしかに。



★無駄のない人は、CG「ちょっと一休み」



野口みずき選手のオリンピック出場が、危ぶまれています。

脚の故障。
それが、危機的な状況かどうかは、冷静な第三者が見れば、一目瞭然だと思います。
ただ、本人は「やれる」と思っているでしょうから、本人が出る気になったら、誰もそれを止められないでしょう。

きれいごとを言うなら、「オリンピックのために将来を棒に振ることはない。チャンスはいくらでもある。次を目指せばいい」ということになりますが、(金儲け主義ではない)真のアスリートが見ているのは、常に「現在(いま)」しかないはずです。

冷静な第三者が危ないと見たら止めるべきだ、というのは正論です。
外国の選手だったら、将来のことを考えて、間違いなく辞退させるでしょう。

ただ、アスリートの本能(レースこそが、自己表現の場である)がそれを拒んだら、そして、もし野口選手が、そんな強い本能の持ち主だったら、それを受け入れてあげるべきだと、私は思います。

たとえ、つぶれても・・・。

不調であっても、野口選手は、あの大きなストライドで北京の街を躍動するでしょう。

そして、彼女は、勝つつもりで走るでしょう。

勝ちたいという思いを全身にみなぎらせた、野口選手の躍動感を見たいという私の思いは、身勝手なものかもしれません。

ただ、その手にメダルはなくとも、私は、そんなアスリートの生きざまが好きです。
はなはだ、勝手な意見ですが・・・。


2008/08/12 AM 08:05:46 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

誇り高きエアコン
エアコンの調子が悪くなった。
それは、夕方に激しい雷雨のあった7月20日過ぎのことだった。

我が家のエアコンの製造年月日を見ると「1996年製」というシールが貼ってあるから、10年以上使っていることになる。
エアコンの耐用年数が何年かは知らないが、使い込んでいることは、間違いない。

エアコンの電源は入るが、冷房やドライにならず、風だけが送風口から出てくる。そして、ほぼ20分後に止まる。
これは、明らかに故障である、と家族は騒ぐ。
そして、新しいエアコンを買おう、と口々に騒ぐ。

パソコンが壊れたときのために、「パソコン貯金」をしているので、それを使えば新しいエアコンを買うことはできる。
しかし、世間で壊れたと判断されたものでも、「直してやろう」という余計な意欲を燃やす、貧乏性の男がここにいた。

そして、6割くらいの確率で、直してしまうのだ。
その割合が高いか低いかは、人によって評価が違うだろう。
しかし、私は全くの素人である。その素人が6割近い成績を残すというのは、奇跡と言っていいのではないだろうか。

その奇跡の男が言う。
「エアコンは、壊れたわけではない。なぜなら電源は入るではないか。室外機が回っていないだけで、壊れたというのはエアコンが可哀想だ。もう少し、長い目で見てやったらどうか」

当然、家族は、大ブーイング

7月下旬。これからさらに暑くなるのに、エアコンのない生活は耐えられない。
いま注文しないと、設置業者が混み合って、設置が遅くなる。
地獄の夏は、過ごしたくない!
はやく、エアコンを買いに行こう!


ブーイングの大合唱だ。
我が家の人間は、私以外は、暑さに弱い。
エアコンのない生活は、彼らにとって、生き地獄なのだろう。

ただ、もう少し冷静に考えてみたい。
このエアコンは、本当に壊れているのか?
少し休みたいだけではないのか。

誰だって、働きずくめは疲れる。彼(彼女?)だって、たまには休みたいんじゃないか。
それを誰が責めることができようか。
彼(彼女?)に休みを与えなかった人間が、悪いのではないか。
エアコンを責めてはいけない。彼(彼女?)は、精一杯頑張ったのだ。
彼(彼女? しつこい)を責めるな!

「おまえ、アホか! 冷房が使えないエアコンは壊れているに決まってるだろ! さっさと新しいのを買ってこい!」
娘は、珍しく感情的になって激怒していたが、まわりが怒れば怒るほど、私は冷静になる。

このエアコンが壊れていない証拠に、夜中の2時3時にスイッチを入れると、稼働することがあるのである。
昼間は役に立たないが、夜は動く。
つまり、完全に壊れているわけではない。

そこで、エアコン復活隊の隊長である私は、昼間、室外機まわりの外気温を計ってみることにした。
35度。けっこう高い。
そして、夜は26〜28度。
室外機まわりの気温が低いときは、エアコンが作動する確率が高いのだから、この老朽化した室外機は高温に弱いということがわかる。

そんなとき、私はテレビ東京の「ガイヤの夜明け」を見たのである。
省エネの特集をやっていたのだが、その中で、エアコンの室外機にスプリンクラーで水をかけて、無用な熱の放出を防いで、省エネを実践している会社があった。
それを見て、「これだ!」と思った。

我がエアコンの室外機は、オーバーヒートして動かなくなったのではないだろうか。もしかしたら、冷やしてやれば、まだ動くのではないか、と思ったのだ。
そう思った私は、翌日早速、室外機のまわりに水をまいた。
内部に水が入らないように、慎重に水をまいた。
そして、室外機まわりの気温を計ってみた。

水をまく前は、35度。まいた後は、29度。明らかに、温度が下がった。
エアコンのスイッチを入れた。
しかし、送風だけだ。冷房には、ならない。
そこで、室外機のまわりに、氷のかたまりを置いてみた。
それによって、室外機まわりの温度は、28度に下がった。

しかし、室外機は動かなかった。

「無駄だよ! 無駄! 壊れたんだよ。無駄な抵抗はやめて、新しいのに換えようぜ。もう、みっともないことはするなよ!」

そんな娘の罵声に自棄になり、私は室外機全体に水と氷をぶちまけた。
腹立ち紛れに、水をバケツで2杯、ぶっかけた。

すると、ウィー〜ン!
室外機が回り始めたのだ。

冷房のスイッチが、入った!
涼しい風が、送風口から出ているではないか。
娘が喜んだ。ヨメも、ガッツポーズをしている。息子は、踊りだした。

老朽化した室外機は、冷やすことによって、自分がエアコンの室外機であることを思い出したようである。
それからは、室外機を冷やせば冷房が止まることはない、ということがわかったので、一日に3回か4回、子どもたちを当番にして、室外機を冷やすようにした。

よかった、よかった、と大喜びしていたときに、ヨメがインターネットで嫌な記事を見つけた。
「エアコンの室外機を水に濡らすのはよくない。室外機は、水に強い構造にはなっていない。漏電の原因にもなるし、室外機自体が錆びる可能性もある。長持ちをさせたいなら、室外機は、極力濡らさないようにすべきである」
「ビルの屋上の室外機にスプリンクラーをつけて冷やしている光景を見かけるが、あれは業務用の耐水性の室外機である。家庭用の室外機に同じことをしたら、確実に壊れるであろう」
「室外機は日陰に置くべきである。日陰に置けないなら、室外機に陽が当たらないように工夫すればいい。すだれなどで陽を遮るのも効果的である」


そうか、室外機に、乱暴に水をぶっかけるのは故障の原因になるんだな。
陽を遮ればいいのか。そうすれば、室外機の内部が高温になることもないのだな。

早速、すだれを2枚買ってきて、ベランダの天井から吊し、室外機に陽が当たらないようにしてみた。
室外機に陽が当たらない工夫はした。
しかし、温度を測ってみると、室外機まわりの温度は、33度から35度もある。

そして、室外機は止まったままだ。
真夜中だけ、たまに冷房のスイッチが入る。
結局、元に戻ってしまったのである。

「何だよ! 日陰を作ったって、関係ないじゃないか! こいつら、嘘言ってるんじゃないか! もういいよ! 水と氷、ぶっかけようぜ!」

娘のやけっぱちのご意見にしたがって、また室外機を水と氷で冷やすことにした。
すると、ウィー〜ン!
エアコンは、またしても自分がエアコンであることを思い出したのだ。

あれから、2週間。いまも、エアコンは冷たい空気を吐き出している。
ただ、雷が近づくと、時々室外機が回らなくなるときがある。
そのときは、コンセントを抜いて、雷が遠ざかるのをひたすら待つ。
そして、雷が遠ざかったら、コンセントを入れて、また室外機に水と氷をぶっかける。それで正常に作動する。

我々はきっと、エアコンにとって、とても乱暴なことをしているのだろう。
それは、常軌を逸する行為なのかもしれない。
エアコンの室外機は、もっとデリケートなものだと思う。
だから、これは決して真似をしないでいただきたい。

いまは動いているが、このエアコンの寿命が尽きるのは時間の問題だというのは、想像がつく。
ただ、壊れる前の最後のひとときだけ、彼(彼女?)は、懸命に貧乏家族のために尽くしてくれているのだろう。

涙が出る。

私は、こんなエアコンを持ったことを誇りに思いたい(何のこっちゃ)。



★誇らしい人は、CG「プールにて」



北京オリンピックのはじまりはじまり。

開会式は、絢爛豪華。様式美の素晴らしさに、感嘆しました。
歴史のある国は、何をやっても、確固たる様式がありますから、それは「問答無用」の説得力となります。

つまりは、水戸黄門の印籠のようなもの。

ただ、何もかもがあまりにも、綺麗ごと過ぎるので、一時間で飽きてしまいました。
各国の入場行進を見ずに、テレビを消しました。

ニュースでは、ロシアとグルジアの戦闘が激化との報道。
まさに、戦争と平和です。

綺麗ごとで塗り込められた、張りぼての平和は、2週間以上続きますが、よその世界では、その間に何人のひとが死んでいくのか。

そんなことがあっても、別世界のおとぎの国は、閉会式が終わると、「成功だ! このオリンピックは成功した!」と、声高らかに叫ぶことでしょう。

「オリンピックは、そんなもんだよ」と言われてしまえば、それまでですが、何かが違うような・・・。


2008/08/10 AM 08:03:46 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

俺は高校野球が嫌いだ
今年は、ついに堂々と宣言をした。

私は、高校野球が嫌いだ(ブログでは何度か書いているが、人前で宣言したのは、今回がはじめて)。
いや、正確には、甲子園で行われる全国高校野球大会が嫌いだ。

高校生がする野球に関しては、決して嫌いではない。
ただ、日本中が熱に浮かされたように、うっとりと「汗と涙の甲子園」を語るのが気にくわないのだ。
そして、甲子園大会に興味を持つのが国民の義務だ、というような断定的な話題の振り方をされるのが、押しつけがましくて我慢できない。

要するに、変人。

この変人が、得意先に行ったとする。
埼玉の会社だ。
すると、「Mさん、○○高校、どうですかね? 勝てますかね?」と、突然言われる。

「○○高校」と言われて私は、いつも悩むのだ。
俺は、そんな高校知らないぞ。それに、何だ! 勝てますかねって。何に勝つんだ?

話の流れで、それが甲子園大会の話だということは数秒後に理解するが、○○高校のことは、私はまったく知らない。
テレビで甲子園関係のニュースは見ないし、インターネットでも甲子園大会の情報は素通りしている。
新聞は、とっていない。
だから、私の脳細胞には、一行たりとも甲子園大会の記事が入ってこないのだ。

そんな変人が、突然「○○高校」と言われて、咄嗟に反応できるわけがない。
だが、相手は「埼玉県人なんだから、それくらい常識だろう」と、確信を持って話しかけてくるのである。

これが、鬱陶しい。

私の反応が鈍いと、相手は、まるで知らないことが悪いことであるかのような目で見てくる。

埼玉県の選手ではなかったと思うが、何年か前、サイトウ選手が活躍していたころ、どこに行っても「サイトウ、サイトウ、サイトウはすごいね」という話を振られたことがある。

世の中にサイトウさんは、たくさんいる。
その、たくさんいるサイトウさんのうち、どのサイトウさんがすごいのか、私にはまったくわからなかった。

昔、印刷ブローカーでサイトウというのがいた。
彼は、ベンツを乗り回し、中野の4LDKのマンションに住んでいた。
アルマーニ(?)のスーツを着て、グッチ(?)の腕時計をはめていた(?のところは、そんなブランドがあるか半信半疑なので)。

私のまわりには、そのサイトウしかいなかったが、まさかそのサイトウのことを言ってるわけがないとは思った。
彼は、そんなに有名人ではない。
有名人には、なりたかったようだが・・・・・。

では、どのサイトウだ?

みんなが、当たり前のように「サイトウ」と言っているのを聞くと、「すみません、どのサイトウですか?」とは、聞けないものだ。

「キタノ監督はすごいよね。まさに世界のキタノだよね」と言われて、近所のサッカーチームの北野一夫監督を思い浮かべる人は、絶対にいない。
「世界のキタノって誰?」とは、とても聞き返せない。

それと同じことである(同じではない?)。

このときは困った。
サイトウ選手が、甲子園を沸かせている人だとわかるのに、かなりの労力を必要とした。

類は友を呼ぶから、私の友人にも甲子園大会に批判的な人が多い。
中学1年の我が娘もそうである。

「クソ暑い中、まともに働いているのは、ピッチャーだけじゃないか! 格差社会の象徴だな!」
「金属バットの『コキン』って音が、軽くて嫌だ」(by 我が娘)
「何で高校野球だけが、いつも汗と涙なんだ! 差別だろう」
「北京オリンピックと開催時期がかぶる『空気読めない感』は、何とかならないか」(by コピーライター・ススキダ)
「みんなNHKと朝日、毎日に洗脳されてるんだよ」
「坊主頭が変だ。軍隊や刑務所じゃないんだから、髪型くらい自由にさせろ」(by テクニカルイラストの達人・イナバ)

友人というのは、同じ思考回路を持っているようである。
だから、この場合は、話が楽だ。
「甲子園大会は、よその世界のできごと」だから、話が盛り上がることはない。

しかし、得意先に行ったら、そうはいかない。
「○○高校、ナントカ選手、感動的な試合、泣けたよ、最高のドラマだ!」というのを予告もなく聞かされるのである。
映画館で、本編が始まる前に、頼みもしないのに、ホラー映画の予告編を何遍も見せられるようなものだ(?)。

これは、ストレスだ。
胃が痛くなることもある。

だから、今年からは、冒頭に書いたように宣言することにしたのである。

「私は、甲子園大会にまったく興味がありません。何が面白いかわかりません。だから、何を言われても私にはわかりません。私に甲子園の話をしないでください!」

そう言うと、ほとんどの人が一瞬、変人を見るような目で見るが、それはすぐに「まあ、広い世間、こんな変人がいてもいいだろう」という悲哀のこもった目に変わる。
大人の反応である。
しかし、一人だけこう言った人がいる。

「ああ、いますよね。そういう人。いいんじゃないですか。それは、人それぞれですから。でも、そういう人って、運動が嫌いで、子どものころ、体育の成績が『1』だった人に多いんじゃないですかね。まあ、気にしない方がいいですよ。スポーツができなくても、何の問題もありませんから。俺も、体育『1』でしたもん!」

甲子園大会に興味がないという話と、このご意見がどう繋がるのか、私はいまだに悩んでいる。



★興味のない人は、CG「もうすぐお盆」



ひまわり畑。

お盆にはまだ早かったのですが、墓参りに行ってきました。
一匹狼で変人の私に、控えめにデザインの極意をアドバイスしてくれた人、ニシグチさん(2年前、こちらのブログに書きました)。

お墓は、緩やかな丘の上にあって、見下ろすとひまわり畑が一面に広がっているのが見えます。
花弁の黄色と、葉の緑。そして、空の青。
鮮やかな色彩が、視界一杯に広がります。

しかし、その空が突然雲に覆われて、突風が吹いてきました。
そして、雨。
逃げる暇もありませんでした。

風雨を遮るものは、何一つありません。
数多くのひまわりが雨に濡れ、葉が大きな雨音をたてます。
逃げるのは諦めて、雨に濡れるのにまかせました。

「Mさん、油断しちゃいけないよ。人生、何が起きるかわからないからね」

豪雨の中で聞く、ニシグチさんの声。

雨が上がるとすぐに、真夏の青空が顔を出します。
ひまわり畑の水滴が、夏の太陽の日射しを照り返して、目を開けていられないほど眩しかった。

全身びしょ濡れになりながら、墓石に向かって、手を合わせる。

「Mさん、その格好、笑っちゃうね」
また、ニシグチさんの声。

笑うしかありません。

「笑いなよ、Mさん、笑いなよ」

笑ってますよ、ニシグチさん。
ひまわり畑も、笑っているし・・・。



2008/08/08 AM 07:36:03 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

マニュアルひとつで23パーセント
また一日だけアルバイトをした。
先月アルバイトをしたのと同じところだ。

一日体が空いたので、家でゴロゴロしているよりはいいかと思って、朝早く家を出た。
出かける前に、家族の朝メシと昼メシの弁当、自分の弁当を作った。
そして、余計なことだとは思ったが、作業用のマニュアルもバッグに入れて、作業時間の20分前にアルバイト先に着いた。

事務所をのぞくと、先月世話をしてくれた班長の姿があったので、声をかけた。
私の顔を見ると、班長は「おお、達人! 久しぶりだな」と、嬉しそうに近づいてきた。

「ずいぶん早く来たな」と言われたので、「作業前にお話が」と、事情を説明した。

ザブングル顔の班長は、「まあ、座ろうぜ」と、事務所の一番隅のテーブルに私を連れて行って、折り畳み式の椅子を私に勧めた。
私は、テーブルの上に、A3のプリント1枚とA4のプリント1枚を置いた。

A3のプリントは、倉庫内の見取り図。A4のプリントは、効率のいい作業工程を書いたものだ。
倉庫内見取り図には、赤い矢印線で、ルートが書いてあって、出版社名も1から42まで丸付きで表示してある。

作業工程は、平易な言葉でワークフローを書いたものだ。
元々の仕事が単純なので、あとは、カートに入れる本の順番を乱さないように気をつけるだけ。
これは、最低限の注意力があれば、カートをひっくり返さない限り、誰にでもできる作業である。
まるでアルバイトを子ども扱いするような文章だが、この程度のマニュアルでも、あるのとないのとでは、能率が大きく変わってくる。

「一度、だまされたと思って、やってみていただけませんか」
アルバイトの分際で出過ぎたことを、と怒られても仕方ない提案ではあるが、班長は快く上司に話を繋げてくれた。

事務所内には、班長の他に女子事務員が4人、そして「部長」と呼ばれている人が1人いた。
班長は、その部長に、私の持ってきたプリントを見せて説明をしている。
部長は、歳は班長と同じくらいだろうか。緊張感のない、ぼやけた顔をした人だった。
班長の方がまだ、仕事に対する緊張感があって、外見からすると、班長の方が上司に見える。

部長は、プラスチックの物差しで背中を掻きながら班長の話を聞いていた。
そして、たまにチラッと、こちらを見るのだが、全体の雰囲気がぼやけているから、まるで暑さにだれた犬が無気力にまわりを見回しているようにしか見えない。

やはり、余計なお世話だったか。

私は社員ではないので、私の意見が採用されなくても、「まあ、いいか!」で済ませることができる。
その点は、気楽である。

そう思っていたら、班長が戻ってきて、「とりあえず、やってみていいってさ」と、サブングル顔で親指を立てた。
部長の方を見ると、もう完全に関心を失った顔で、うちわで顔を扇いでいた。
ゆる〜〜い会社のようである。

夏休み中なので、学生のアルバイトが多い。30人以上いるようだ。
その中で経験者は、4分の1程度だという。
班長が、全員にマニュアルのコピーを手渡していった。

マニュアルがあったからといって、すべての人に効果があるとは限らない。
やる気の問題もあるし、要領の問題もある。
経験者は、さすがにコツをつかむのが早いが、新人でやる気のない人は、結局右往左往するだけだった。
一度だけの説明では、アルバイトの意識を変えるのは、難しいのかもしれない。

しかし、午前中が終わって、弁当を食っている私のところに、嬉しそうな顔の班長がやってきた。
そして、「あげるよ」と言って、ペットボトルのコーラをテーブルの上に置いた。
私はコーラは飲まない主義だが、人の好意を無にするほど野暮ではないので、ありがたくいただいた。

私の弁当を見て、「愛妻弁当?」と言ったので、「愛自分弁当」と答えた。
班長は、「ほえっ?」と首を傾げた。

テーブルを挟んで向かいのテーブルに座った班長は、「午前中は、3割近いアップだね。確実に能率は上がったよ」と嬉しそうに、菓子パンにかじりついた。
3割アップなら、立派なものである。これは、かなりの効率アップと考えていいだろう。

「しかし、何度も言うようだけど、同じ日給しか払えないから、申し訳ねえよ」

それは、決まりですからね。でも、外部の人間が勝手に持ち込んだマニュアルをよく採用してくれましたよ。その柔軟性はすごいです。班長さんの決断力には、頭が下がります。

「いやいや、そんなことは・・・」

午後の作業は5時45分に終わった。
仕上がった箱の量は、昨日が381箱。
そして、今日が469箱。つまり、約23パーセントアップだ。

いつも、これだけ能率が上がるとは限らないが、最低でも15パーセントくらいは上がるのではないだろうか。
15パーセント作業効率が上がるということは、15パーセント人件費が削減できるということである。

「えっ、人件費が減らせるの?」
アルバイトの数を減らせますから、人件費は確実に抑制できますね。

「ということは、その分儲かるってこと?」
まあ、単純に考えれば、そういうことになりますね。

「本当かい? 儲かるのかい?」
いつのまにか、ぼやけた部長がやってきて、班長の隣に立っていた。

「15パーセント儲かるのか? 20パーセントは無理か? 20パーセント儲かる方法はないのかい? 20パーセント儲けが上がったらいいなあ!」
部長と班長が、ウットリした顔で、お互いの顔を見つめ合っていた。

その姿を見て、私は思った。

この会社・・・、大丈夫なのか?



★大丈夫じゃない会社は、CG「ゴミ箱から」



先日、テレビで「どろろ」を観ました。

ずっと観たいと思っていた映画を観ることができて、大変満足でした。
ただ、クルクルと変わる柴咲コウの表情と、脇に抱えた小太鼓を叩くときの可愛い仕草に「萌えて」いたため、話がまったく理解できませんでした。

結局、どういう話だったんでしょうか・・・?


2008/08/06 AM 06:28:25 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

こんなとき、あなたならどうする?
腹が立ったことがある。
そのことに関して、このブログを読んでいる人に、ご意見を伺いたいと思います。

年に1回程度、仕事を出してくれる会社がある。
ここの担当者は、少し変わった人だ(こちらのブログを参照)。

ただ、今回はこの人に関してのことではない。
違う部署の部長のことだ。

営業部の部長、シミズさん。
この会社の営業部からは、一度も仕事をいただいたことはない。つまり、接点がない。
ただ、何度か、社内で話をしたことはある。
「やせたね」とか「忙しいの?」とか、ごく短い会話を交わすだけである。

シミズさんは、おそらく40代半ば。
一番の特徴は声がでかいこと。そして、太鼓腹、坊主頭。
「俺は、できる営業マンなんだ」というのを体全体でアピールしている人だった。

今年の1月、仕事の打ち合わせに行ったとき、突然シミズさんから「なに無視してんだよ! おまえ」と罵られた。
私には、まったく意味が分からなかった。

無視もなにも、私は担当者と仕事の打ち合わせをしていただけである。
怪しい霊感の話を聞き流しながら、無表情に相手の話を聞いていた。
この状態を日本語では「無視」とは言わない。

しかし、営業部のブースから身を乗り出して、シミズさんは顔を赤くして怒鳴っているのである。
私を指さしているのだから、その罵声は、私に向けられていることは間違いがない。
明らかに年上のはずの私に向かって、「おまえ!」と指さしているのである。

担当者が小声で、「Mさん、とりあえず謝っておいたほうがいいですよ。あの人に理屈は通じませんから」と言ったが、罵声の原因がわからないのに謝るのは、どう考えても変だ。

だから、私はシミズさんのブースまで行って、罵声の原因を聞いてみた。

シミズさんによると、数日前、新宿駅のホームで私に声をかけたのだが、私が何の反応も示さずに通り過ぎていったことに腹を立てているのだという。

何の反応も示さなかったのだから、気づかなかったのだろう。
実際、私は全くそのことを覚えていない。
つまり、無視をしたわけではない。

しかし、無視をした、しないで言い争っても何の解決にもならない。
だから、とりあえず私は謝った(大人の対応)。
赤い顔のシミズさんは、「まったくよぉ!」と、怒りっぱなしだったが、一度謝ったのだから、私は、その話は終わりだと判断した。
だから、その後の彼の怒りは、「無視」した。

そして、今年の8月1日のことである。
得意先に行くと、また私はシミズさんに「おい! いい加減にしろよ! また無視しやがって、おまえ!」と罵られたのだ。

また、「おまえ!」だ。
なぜ年下の太鼓腹男に、二度も「おまえ」呼ばわりされなければいけないのか!
私の脳細胞の奥深くに格納した「怒りの炎」が、小さく灯った。

私はまたシミズさんのブースまで行って、聞いてみた。

新宿駅南口の改札口。
私が、外に出ようとしたところに、シミズさんが歩いてきたのだという。
そこで、彼は私に向かって「あんた」と声をかけた。
「おまえ」の次は「あんた」呼ばわりである。

詳しく聞いてみると、シミズさんは、私の右側に位置していたようだ。
私には、精神的な欠陥が数え切れないくらいあるが、肉体的な欠陥も2つある。
まず右耳が聞こえない。そして、右目が弱視である。
このときは、タイミングが悪いことに、眼鏡をかけていなかったから、右側への注意力がゼロに等しかった。
だから、シミズさんの存在がわからなかった。

それをシミズさんは「無視された」と怒っているのである。
私は、人の前で病気自慢をしない。
それに、道行く人に、おれは耳が悪い目が悪いと、ことあるごとにアピールして歩くわけにはいかない。
耳が聞こえないとか視力が悪いというのは、他人からはわかりづらい。そして健常者は、自分が正常だから、他人も正常なんだと思いたがる。

健常者であるシミズさんは、当たり前のように「あんた」と声をかけたが、運悪く私は、彼の存在を感知できなかった。
言いたくはなかったが、私は自分の肉体的な事情を彼に説明した。

すると、シミズさんは熟し切ったトマトのような顔で、怒鳴るのだ。

「そんなに都合よく、耳が聞こえなくなったり、目が見えなくなったりするかよ!」

ここまで言われて、怒らない人はいない(と思う)。
私の「怒りのスイッチ」が、全開になった。

「俺は、都合よく耳が聞こえなくなったり、目が見えなくなったわけじゃない! いつも聞こえない見えない! あなたは、すべての障害者に対して、そんなひどいことが言えるのか! 彼らは、都合よくそんなことになったと思っているのか? なにを考えているんだ! それに、街角で『あんた』と呼ばれて、みんなが自分のことを呼ばれたと感じると思うか? 今度街角であなたにあったら、俺も『あんた』って呼んでみようか? もし、反応がなかったら、俺も『無視した』って、怒っていいんだな!」

熟し切ったトマトは、そんな私の言葉にさらに反応して、怒鳴り散らしたが、言っていることは支離滅裂だった。
だから、私はそれを「無視」して、担当者のいるテーブルに戻って、打ち合わせを再開した。

担当者は、「大丈夫ですかね? あの人、怒ればなんでも通じると思っている人だから、Mさん、えらいことになりますよ」と、蒼白な顔で心配してくれた。

またまた、やっちまったな。

そう思ったが、やっちまったことは、取り返しがつかない。
一応、仕事はもらったので、今それをしているところである。

次に得意先に行くときは、「右耳が聞こえませんよカード」と「右目が弱視ですよカード」をぶら下げていこうと思っているが、それはシミズさんの怒りの火に油を注ぐことになるだろうか。
もちろん、これは冗談だが、やってみたい気もする。

そこで質問です。

今回の悲劇が、あなたの身に降りかかったら、みなさんだったら、どうしましたか?

「お客様は神様なので、とりあえず、謝る。謝りまくる」
「とことん、喧嘩する。その結果、仕事を失っても構わない」
「最初から、無視を貫く。ひたすら、無視する。無視、無視、ムシ!」


私は、最初から無視を貫けばよかったか、といま反省しているところです。



★無視する人は、CG「ひまわり病院」



新内閣の評価が、各新聞ごとに出ていました。

朝日24%、毎日25%、そして読売41%。
共同通信が、31%ですから、讀賣新聞の支持率が突出しています。

共同通信の31%をニュートラル(中立)と捉えると、讀賣は、10%世論誘導をし、毎日は6%、朝日は7%、世論誘導していると推測することもできます。

讀賣新聞の読者の中では、新内閣を5人に2人が支持しているという世論調査。
この微妙な支持率では、解散が遠のいたと言いたいのか、あるいは、人気が持ち直したのだから、解散総選挙に打って出るべきだと言いたいのか、判断しかねます(ナベツネのお友達・妖怪ナカソネは、『総選挙』と毒液を吐いているようですが)。

朝日、毎日の支持率の低さを見ると、解散総選挙はとても無理に思えますが、自民党応援団の讀賣新聞社主の、いつもながらの強引な手法から推測すると、讀賣シナリオの総選挙もあり得るかもしれないと思ったりもします。

世界で最大の発行部数を誇るこのパブリックペーパーは、前回の「郵政選挙」のようなスローガンを探して、日夜、妖怪たちが会談(怪談?)を開いているかもしれません。

あるいは、毎朝、トップページで、「麻生、麻生、麻生太郎は吉田茂の孫。次の総理は麻生で決まり」という呪い唄をばらまいて洗脳するとか・・・。


2008/08/04 AM 07:21:38 | Comment(11) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

深夜の訪問者、警官。
夜の11時35分。
近所の印刷会社で、一人仕事をしていた。

84頁のイベント報告書を100部出力。
100部だと印刷すると高くつく。だから、レーザープリンタで出力したものを製本するのだが、最近の出力機はきめ細かくなっているので、仕上がりを見たら、一般の方には印刷としか思えないだろう。

組み版自体は、校了になっている。
だから、あとはクォークという組み版ソフトに張り付けて、両面でプリントしていく。
我が家のレーザープリンタには両面ユニットがついていないので、両面印刷の時は、いつも印刷会社のプリンターを貸してもらうことにしている。

とりあえず1部プリントしてみた。
ノンブルの位置があっているかどうかを確認して、それを糊付けする。
表紙もプリントして、中身を表紙でくるむ。それを綺麗に断裁する。
そうすると、立派な一冊の本になる。

これをサンプルにして、印刷会社のオペレーターに仕上げてもらうから、このサンプルが間違っていたら、100冊全部がミスということになる。
だから、この作業はいつも慎重にやっている。
何度も頁を確かめ、画像などの抜けや文字化けなどがないかを虫眼鏡で確認していく。

ミスはなかったようなので、部数を「105」と打ち込んで、プリントボタンを押した(5部は予備だ)。
プリントボタンを押したら、もう何もやることはない。

ビールでも飲もうか、と思って立ち上がったそのときである。
窓ガラスをコンコンと叩く音がした。

深夜の訪問者?

全身が緊張した。
窓の外を見てみると、警官が立っていた。
なおさら緊張した。

何で、警官が?
俺は、仕事をしているだけだぞ。咎められることは何もやっていない。
俺は、無実だ!

無実な顔をしながら、窓際に近づいた。
40歳前後の警官が、ドアを開けろと身振りで告げていた。
しかし、警官の格好をしているからといって、彼が本物の警官とは限らない。
コスプレかもしれない。

そこで、「警察手帳を見せてください」と、ドア越しに言った。
コスプレ警官は、最初ムッとした顔をしたが、素直に見せてくれた。
本物だったようである。

ドアを開けた。
「何をしているんですか?」と聞かれた。

私が、プールで泳いでいるように見えるか?
海パンは、はいてないぞ。
だから、仕事をしているに決まっているだろう!

続けて、本物警官は、「こちらにお勤めなんですか?」と、奇妙なことを聞いてきた。
普通、会社で仕事をしている以上、その会社に勤めているに決まっているではないか。
しかし、世間というものは常識通りではない。
しかも、私はオモローが付くくらい正直者である。

だから、「いえ、私はここの社員ではありません。機械を貸してもらっているだけです」と、正直に答えた。
それを聞いて、本物警官の顔色が、少し変わった。

「どういうことですか? 説明してください」と、拳銃を私に突きつけた(嘘です)。
本物警官が、ドアを大きく開けて、中に入ってきた。
恐ろしく真面目な顔をしている。
眉が少しだけ吊り上がっている。
いい遊び相手ができた、と思った(一人で作業していると、退屈なんですよ)。

この会社の社長からは信頼されていて、合い鍵も渡されている。いつでも機械を使っていいことになっている。
今日は、急ぎの仕事があったので、深夜作業をさせてもらっている。
これは、社長も承知のことである、と私は本物警官の目を真正面から見つめながら、力説した。

「では、その社長と連絡を取らせてください」と、本物警官は、胸を反らしながら、さらに玄関口奥深くに進入してきた。

社長の自宅に電話をしたが、出なかった。
携帯に電話をしたが、出なかった。

犯罪者を見る目で、本物警官が私を見ている。
「まあ、上がってくださいよ」と、作業場に本物警官を招じ入れた。

「私の罪は、不法侵入ですかね。そして、勝手に機械を使っているから、これは窃盗になりますね。私はこれから冷蔵庫に入れてあるビールを飲むつもりですから、これも窃盗になりますね」
そう言って、私は、冷蔵庫からビールを取り出し、それを呷った。

本物警官は、まだ眉間に皺を寄せている。
真面目な人のようだ。
絡みにくい、と言ってもいいかもしれない。
「遊び相手には、ならなかったな」と後悔した。

「社長さんと、連絡はつきませんか?」と、少々苛ついた声で、本物警官が私を睨んだ。
その、あまりにも真面目な態度に私も苛つきながら、「電話番号を教えますから、会社の電話でかけてくださいよ。俺は仕事がありますんで」と投げやりに言った。
そして、「不法侵入と窃盗罪、電話を勝手に使うのも窃盗罪ですかね」と、棘(とげ)をむき出しにしながら、私も本物警官を睨んだ。

本物警官は、私の険しい顔にたじろぎながら、電話をかけた。
だが、社長の携帯は、反応しなかったようである。

「社長さんは、こんな時間に、何をしているんでしょうかね?」と、本物警官が遠慮がちに呟く。

「フィリピンパブかカラオケスナック」と、私はまた投げやりに言葉を放り投げた。
気まずい雰囲気が、あたりに漂った。

プリントが終わった。
私は、本物警官の存在を無視して、仕上がったプリントを確認していった。
仕上がりが曲がっていないか、ノンブルの位置がずれていないか、色むらはないか、集中して確かめた。

私の真剣な姿を見て、本物警官は、居住まいを正して、会社の風景を見回していた。
暗い空間。たまにゴキブリが運動会を始める空間。なぜか突然壁が「ミシッ!」という大きな音を立てる空間。
初めての人には、居心地が悪いだろう。
しかし、私はそれを無視して、作業を進めた。

ほぼ全部のプリントを確認し終わりそうになったとき、社長の携帯と繋がった気配があった。
本物警官が、送話口を塞ぎながら、私に子機を差し出した。

「もしもし、なんだね? こんな時間に何か用?」
くつろいだ社長の間抜けな声が、聞こえてきた。

「社長、今どこですか?」
「サウナだよ」

ほーっ、サウナですか。
ということは、全裸ですね。
完璧な全裸ですか?

「ああ、完璧だよ。スッポンポン! 見事なもんさ!」

社長、あなたに逮捕状が出ています。
公然わいせつ罪です。
いま、警官がそちらに向かいますので。

「えっ! なに! Mさん、どういうこと? ちょっと、何言ってんの? なに!?」

私は、社長の訴えを無視し、厳かな顔をして、本物警官に子機を手渡した。

本物警官は、眉間に皺を寄せたまま、「ああ、O警察のGです。ちょっと、お伺いしたいことが・・・」と言った。

きっと、社長は慌てたことだろう。
電話だから、残念ながら、その慌てた様子は見ることができない。
しかし、想像はつく。
社長の頭の中は、真っ白になったに違いない。そして、顔は蒼白に・・・。
やましいことのある人間には、警官の存在は、必要以上に重圧を感じるものである。

深夜の作業は、単調だ。
こんな娯楽がなければ、疲れるばかりである。
今夜は、いい「お遊び」ができた。

大変、面白い夜だった。
フフフフ・・・・・、満足、満足・・・・・。



★満足した人は、CG「いらつく女」



毎度おなじみ「内閣改造ゲーム」。

いい年をした老人たちが、順繰りに大臣の椅子を動かし、陣地を占めるゲーム。
ガソリンがまた上がった日に、脳天気に何をしているのかと思います。

老人の駒が、一つずれたくらいでは、この国は何も変わらないでしょう。

「選挙ゲーム」をしたがっている老人が、ライバルチームにいるようです。
どっちのゲームが楽しいか。
いずれにしても、二つのゲームは老人たちだけのもの。

今の日本は、老人がゲームをしている状況ではないと思うのですが・・・。


2008/08/02 AM 07:26:23 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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