Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








インスタントコーヒーと仲人
コーヒーを切らした。

コーヒーが切れるということは、数日前からわかっていたが、買いに行く気にはならなかった。
毎年、仕事を頼んでいる印刷会社からお中元が届く。
それが、いつもインスタントコーヒーの詰め合わせなのである。
お歳暮もインスタントコーヒーだ。

6本入りの詰め合わせ。
他からも、たまにもらうことがあるので、インスタントコーヒーはいつも在庫がある状態だった。
私の中では、インスタントコーヒーを買うという発想がない。
インスタントコーヒーは、もらうものだと思っていた。
だから、ここ数年、買ったことがなかった。

いつもは、7月下旬にお中元が届くのだが、今年は今日に至るまで来ない。
当たり前のようにもらっていたので、来ないと不安な気持ちになる。
しかし、いくらなんでもお中元を催促するわけにはいかないだろう。

「あのぉ・・・、お中元がまだなんですけど・・・」なんて聞くやつがいるだろうか。
広い世間、そんな人もいるかもしれないが、私はその種の人間ではない。

とても・・・、そんなことは・・・、聞けない。

コーヒーがない。
無性に飲みたい。
だが、コーヒーを買いに行くのは、嫌だ。

頭を掻きむしりながら、コーヒーの誘惑に耐えた。
午前10時10分。
禁断症状寸前まで悶えながら、仕事をこなしていた。

そんなとき、WEBデザイナーのタカダ(通称ダルマ)から電話がかかってきた。
「師匠! お久しぶりです。遅ればせながら、昨日、銀河高原ビール送りましたから、今日届くと思います」

いつもありがとう、ダルマ。
銀河高原ビールは、美味しいよね。
あれこそ、本当のビールだよ。

でもね、いま私は、コーヒーが飲みたいんだ。
心の底から、コーヒーが飲みたいんだよ。その欲望が足の先から全身を駆けめぐって、脳が破裂しそうなんだ。
全然、仕事にならないんだ。

「師匠、じゃあ、コーヒーを買いに行くか、マクドナルドにコーヒーを飲みに行けばいいじゃないですか」
あまりにも当たり前のことを言うダルマ。

その当たり前さに、理不尽にも腹を立て、私は怒鳴るのだ。

俺は、いまインスタントコーヒーが飲みたいんだよ!

ダルマが、息を飲む気配があった。
(何をわがまま言ってるんだ? このオッサン! バッカじゃないの!)
そう思ったに違いないが、ダルマは優しい男である。
こんなことで師弟関係を断ち切ることはしない、大人の男であった。

「師匠。俺、今日暇なんで、あとですかいらーくに伺いますよ。未開封のインスタントコーヒーが何本かありますから、それを持っていきます」

ダルマの大人の対応に自分を取り戻し、私は深い自己嫌悪に陥るのであった。

「いや、そこまでしてくれなくても・・・、俺が少し我慢すればいいだけのことだし・・・、確かにマックにいくという手もあるし・・・、ロジャースで安いインスタントコーヒーを買ってもいいし・・・」

支離滅裂である。
自分でも、どうしようもない男だと思う。
深く反省の意を表す、中年のオッサン。

「いいですよ。たまには師匠の顔も見たいですから。それに、報告することもありますし・・・。今から出ます。待っていてください」
優しい声をかけて電話を切ったダルマ。
私は受話器に向かって深く頭を下げた。
持つべきものは、弟子と1億円である(1億円は持ったことがないが)。

すかいらーく。

着きましたよ、という電話をもらって、自転車で駆けつけると、ダルマの横には、トモちゃんがいた。
クリーム色のワンピースに身を包んだ笑顔満点のトモちゃんとダルマが立ち上がって、私に頭を下げた。

なぜ、トモちゃんが? と言うほど、私は野暮ではない。
薄々と察することはできた。だが、しかし・・・、と心の中で葛藤した。
あり得ないとは思ったが、一応軽い調子で言ってみた。

「な〜んだ、一緒に暮らしていたのかぁ〜」

二人で顔を見合わせたあとで、ダルマとトモちゃんが同時に頷いた。
その言葉に、固まる中年のオッサン。

「あっ、そう? えっ? ああ、そう?」
そんな言葉しか、出てこない。
呆然として、二人の顔を交互に見る様は、まるで栄養失調のハトのようだったに違いない。

立ち直れないまま、笑顔満点のトモちゃんに聞いてみた。
まさか、結婚するなんてことは?

すると、二人同時に、「はい! 10月に!」。

二つの明るい笑顔。
しかし、不吉な予感がした。これは、聞かない方がいいのではないかと思った。
私の嫌な予感は当たることが多い。
「当たらないでくれ」と祈りつつ、恐る恐るという感じで、小声で聞いてみた。

まさか、結婚式なんて無駄なことをするわけはないよね?

笑顔満点と禁煙ダルマが、顔を見合わせてから、二人同時に頭を下げた。
「仲人、お願いします!」

そして、顔を上げたダルマは、インスタントコーヒーの入っているらしい箱を滑るように、そして恭しく私の方に差し出した。
「トモちゃんが、中途半端なものを差し上げるのは失礼だからって、最高級のコーヒーを詰め合わせにしてもらいました」

最高級のインスタントコーヒー?

そんなものが、この世の中にあったのか?
長生きはするものである。
世の中には、私の知らないことが、まだたくさんあるようだ。
勉強になった。

そして、最高級のインスタントコーヒーの入った箱を見ながら、私は思った。
おそらく私は、そのコーヒーを飲む度に、ダルマとトモちゃんの顔を思い浮かべるのだろうな。
それは、いいことなのか、悪いことなのか。

いや、迷うことなどない。
いいことに決まっているではないか(仲人は嫌だが・・・)。



★インスタントコーヒーが好きな人は、CG「疲れた〜!」



イチロー選手が、日米通算3000本安打。
素晴らしい!

しかし、ロサンゼルスに住む友人に早速聞いてみたところ、現地ではほとんど話題になっていないということです。
現地では、日本での記録は、参考にしないということでしょうか。

それに、シングルヒットしか打たないイチロー選手に対する米メディアの評価は、あまり高くないとも聞きます。

ドーピング世代の筋肉増強選手が、ホームランを打ちまくり、剛速球を投げる姿を讃えてきた米メディアですから、ドーピングとは無縁のクリーンなイチロー選手を認めることは、メディアの沽券に関わることなのかもしれません。

イチロー選手は、選手間では人気があるようです。
つまり、生身のアスリートは、ドーピングにまみれていないイチロー選手の実力を素直に認めているということでしょう。

メジャーだけの3000本安打は、さすがの「天才イチロー」でもかなり難しいことだとは思いますが、たとえ3000本に到達できなかったとしても、純粋な肉体を持つアスリートとしての価値は、下がるものではありません。

イチロー選手は、「アンチドーピング」の旗手として、いつか必ず米国でも評価されることでしょう。
その道のりは、かなり長いかもしれませんが・・・。



2008/07/31 AM 06:41:25 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

大人げない、大人げない、大人げない
ドタキャンが、続けて2件。

これは、一度書くのをためらったのだが、腹立ちが収まらないので、大人げないと思いつつも書くことにした。
彼に関しては、以前このブログに書いた。
そして、このとき、彼は私のブログを読んで、あとで抗議をしてきたのである。

「こんなことを書かれて、俺、恥をかかされましたよ!」

当然のように、その後、彼から2年近く連絡がなかった。
もう来ないだろうな、と諦めていたら、それから6回仕事がまわってきた。
ただ、そのうちの4回をドタキャンされた。3分の2の確率である(もしかして、嫌がらせ?)。

その4回のうちの2回が今回続いた。
まずは6月のはじめ。
ある教育評論家が、業界紙に書いた文章をまとめて1冊の本にしたいと言い出した。
本文のテキストデータはすでにある。これは文字を流し込むだけだから、簡単な作業である。
多少手間がかかるのは、巻末に付ける「各国の教育事情」を写真と図表付きで紹介する20頁ほどの部分だった。
そして、装丁のデザイン。
校了予定は、7月19日。

「Mさん、6月末は1週間くらい空けておいてくださいよ。一気に仕上げたいですからね」

最初の打ち合わせで、担当者のタマキさんは、はっきりとそう言ったのだった。
次の週、装丁のデザインを4パターン、タマキさんに提示した。
巻末のラフ・レイアウトも見せた。
タマキさんは、「じゃあ、これを先方に見せて反応を見ますから」と言うと同時に、テキストデータと画像データを私にくれたのだった。

しかし、その後2週間以上たっても、タマキさんから連絡はこなかった。
6月25日。しびれを切らしてタマキさんに電話をしたら、タマキさんは休みを取っていた。
電話に出た人に、「急ぎの仕事があるはずなんですが」と遠慮がちに聞いてみたら、「ああ、あの仕事は、金額が合わなくてボツになったはずだよ。タマキは何も言ってなかった?」と、なぜか含み笑いのような声で言われた。

仕事がボツになるのは、ある程度仕方がない。
しかし、こちらはラフデザインを提示しているのだ。
それを連絡してこないというのは、明らかにモラルから外れている。
つまり、誠意がない。

腹が立って当然だと思う。
ただ、クライアントはお客様である(当たり前)。
お客様がいなければ、私の仕事は成り立たない。だから、我慢をした。

そして、7月2日。
また、タマキさんから電話があった。
最初に「この間の件では、失礼しました」と言われたから、笑って済ませた。

それから仕事の話になった。
ボランティア紀行を自費出版した人の仕事だった。
その人は、自費出版した500部のうちの100部をお世話になった人に贈呈したいと考えていた。
そして、本だけでなく、自分で作った趣味の焼き物を洒落たケースに入れたものを添えて送りたい意向をタマキさんに示した。

そこで、タマキさんは、私にケースのデザインを頼みたいと言ってきたのである。
ケースは厚紙で作る。
無地では味気ないので、洒落た意匠にしたい。最低3パターン作ってみてくれないかと、タマキさんは言った。

7月8日。
3パターンを考え、厚紙にプリントして、ケースの形に組んでタマキさんに見せた。
それを見て、タマキさんは喜んでくれた。
「先方に選んでもらいます。また連絡しますから」と言われた。

しかし、いつまでたっても連絡は来なかった。

そして、昨日。
タマキさんの会社の近くに行く用事があったので、夕方寄ってみた。
「あれは、どうなりましたか」

私がそう言うと、タマキさんは、指でテーブルを軽く叩きながら少しイライラした様子で、こう言った。
「あれは、ボツ! 連絡しなかったんだから、わかりそうなもんでしょ! いきなり、こんな時間に押し掛けられても困りますよ!」
鼻の穴をふくらませ、唇を震わせながら、タマキさんは私を睨んだ。

こんな時間と言っても、夕方の5時を過ぎたばかりである。
これが、夜の8時や9時なら、非常識だと怒られても仕方がないが、就業時間内に訪問して怒られるとは、心外である。
アポなしで訪問したことは、多少咎められても仕方がないが、ボツになった仕事を連絡しないお前の態度は、一体どうなんだ、とこちらも言いたくなる。

だから、条件反射的に「いい加減にしろよ、小僧!」と、私は怒鳴っていた。
相手は、大事なクライアントである。
怒鳴ってはいけないことは承知していたが、2度続けての知らんぷりは、私の中では許し難いルール違反だ。

「連絡しますと言って、連絡できなかった理由を言ってみろ!」と、私はまた怒鳴った。
その怒鳴り声を聞いて、社内の空気が一瞬固まったが、その中で、固まった空気を溶かすような笑顔を向けながら、私に近づいて来た人がいた。
タマキさんの上司のスズキ課長だった。

課長は、タマキさんの腕を取って立たせると、タマキさんの背中をドシン!と叩いた。
「彼は、まだ半人前でして、人様にご迷惑ばかりかけているんですよ。また、Mさんにご迷惑をおかけしたようですね。彼のミスは、私のミスです。申し訳ありません」
スズキ課長は、腰を90度に折って、深く頭を下げた。

だが、タマキさんは、頭を下げなかった。
見るからに、不貞腐れていた。
上司に頭を下げてもらっても、当人が不貞腐れていたのでは、意味がない。

「課長、わかりました。もういいです」
私は、そう言って、彼らに背を向けた。
大人げないと思ったが、私はタマキさんを許すつもりはなかった。
得意先を出るとき、心の中でサヨナラを言った。

また1社、得意先が減った。
憂鬱である。
ただ、現実的な数字が、危機を告げていないことだけが救いだった。
タマキさんの会社からは、今年の請負代金はゼロ円。去年は、2万1千円。それ以前の2年間は、ゼロ円。4年前は5万円弱だった。
交通費、通信費を考えると、儲けは驚くほど少ない。だから、無くなっても損害は少ない。
これは、不幸中の幸い、と考えればいいのかもしれない。

今回また、鬱憤晴らしに、すべてをこのブログに書いてしまった。
だが、この間のように、タマキさんから文句を言われることはないだろう。
あったとしても、私は「うるせえよ!」で、済ませようと思っている(心の中では、文句を言ってくることを期待している)。

こんな私の態度に対して、もちろん異論はあるでしょう。
自分でも大人げないのは、わかっている。
腹を立てた時点で、タマキさんと同じレベルに成り下がったのは、自分でも強く実感している。

しかし、大人げなくても、これが俺だ!

俺は、俺を変えられない(開き直り)。

・・・・・以上、夏の「腹立ち日記」でした。



★腹が立つ人は、CG「飛びます」



家族でよく行くファミレス(すかいらーくではありません)。

先週から、軒並み値段が上がっていました。
なぜか、ラーメンだけは据え置き。
しかし、他は30円から90円の値上げです(3の倍数?)。

焼きそば、たこ焼き、ホットケーキ、お好み焼きが30円の値上げ。
小麦粉の価格高騰が影響しているのでしょう。

ハンバーグが、60円の値上げ。
パン粉のコストが上がったからでしょうね。

コーヒーが30円の値上げ。
コーヒー豆は、上がったんでしたっけ?

仕入れ価格が上がれば、末端価格も上がる。
これは、ある程度仕方がないことです。
我慢しなければいけません。

しかし、なぜコーラやウーロン茶、クリームソーダまで、30円値上がりしたのでしょうか。
かき氷も、150円が180円になってるし。氷も値上がりした? あるいは、シロップが?

不思議なのは、おにぎりセットが90円も値上がりしたこと。
3個260円だったのが、350円になっていました。
具は、梅、オカカ、昆布です。これらすべてが、大幅に仕入れ価格が上がったのでしょうか。
まさか、3切れほど添えられた、たくあんが値上がりしたとか?
米も値上がりしましたっけ? 米の価格は安定しているような気がしますが・・・。

納得いきませんでした。
これ、便乗値上げではないですよね?


2008/07/29 AM 07:01:08 | Comment(5) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

暑い日のできごと。「お名前は?」
その人は、畑に倒れていた。

うつ伏せになって、顔を右に向けて倒れていた。
70歳前後の男性だった。
農作業の途中だったのだろう。倒れた拍子に麦わら帽子が飛んだらしく、頭から斜め右50センチほどのところに、それはお椀を伏せたような格好で転がっていた。

陽に焼けた顔からは、苦痛は窺えない。顔色が悪いかも判断できない。
ただ、昼寝をしているのでないことだけは、わかる。
体を揺するのは良くないと思ったので、まず声をかけてみた。
何度も「もしもし」と声をかけた。
しかし、男は、目を開けなかった。

ただ、呼吸をしているのはわかったし、首筋に手を当てて脈を診てみたが、鼓動ははっきりと感じられた。
汗はかなり出ているが、熱中症までは、いっていないのではないかと判断した。
しかし、このまま放置していたら危険だ。
男がどれくらいの時間、倒れていたかもわからない。

炎天下の午前11時半。
周りを見回してみた。
車道の両側が一面の畑だ。
車道を200メートルほど行けば、アパートや民家のある区間に到達できるが、大声で誰かを呼んだとしても、声は届かないだろう。

携帯電話は、持っていない。
公衆電話も見あたらない。
通りかかった車を止めようか。
しかし、まずこの日射しを何とかしようと思った。

見回すと、畑と畑の間に幅45センチ長さ90センチくらいのベニヤ板が2枚あるのが見えた。
おそらく畑と畑の橋渡し用に置かれていたものだと思う。
泥だらけで四隅がギザギザになっていたから、棘が刺さるのが怖かったが、躊躇している暇はない。
構わず、2枚をつかんで、男の頭の近くの土に2本を突き刺した。

そのままでは、ほぼ真上にある太陽を遮ることはできなかったので、少し斜めに突き刺した。
それで、上半身を陽光から遮ることができた。
さあ、これからどうするか、だ。

男の首にタオルが巻いてあったので、それをほどいた。
シャツのボタンを外して、風通しをよくした。
そして、靴を脱がし、靴下も脱がした。

今日は、500ミリリットルのペットボトルを2本持ってきていた。
2本とも、浄水ポットで濾過した水を冷やしたものである。
1本は中身が全部残っていたし、もう1本も半分以上残っていた。

男の首に巻いてあったタオルを水で濡らした。
そして、それを首の後ろに当てた。
冷たさに目を覚ますかと思ったが、男は目を閉じたままだった。
もう1本のペットボトルを男の足首に当ててみた。
しかし、目を覚まさなかった。

これ以上、私にできることはなかった。
助けを呼ぶしかない。
一番近い民家まで走って電話を借りるしかないだろう。

男の脇の下に少し水をかけて、体を冷やしてから、自転車にまたがった。
少し走ると、前方に2リットルのペットボトルを持った女が早足で歩いてくるのが見えた。
麦わら帽子をかぶっていた。
年齢は、やはり70前後か。

もしかして、男の連れか、と期待を持った。
農作業をしている最中に、飲み物を持ってくるのを忘れたのに気づき、女が家まで戻って取ってきたのではないかと思った。

女に近づいて、「そこの畑で作業をしてるんですか」と、指さして聞いてみた。
女は最初は訝るような目を私に向けたが、私の真剣な口調が伝わったのか、何度か小さく頷いた。

私は、自転車を押しながら引き返して、女に事態を説明した。
「えっ、どうして・・・、どうして?」
女の顔は、明らかに狼狽して、唇が小さく震えていた。

倒れている男を見たとき、女の狼狽はピークに達して、男の横で膝をつくようにして崩れ落ちた。
「おじいさん、おじいさん!」

体を揺さぶろうとしたので、私は慌ててそれを止めた。
そして、「救急車を呼んできます。絶対に動かさないでください。それと、首筋に冷たいタオルを当てていてください。いいですね」と言って、畑と畑の間の道を走り始めた。
自転車で行くよりも、その道を走った方が、民家へは早く行けることに気づいたからだ。

最初に到達した民家の前に、運良く40年輩の女の人がいて、水をまいていた。
事情を手短に言って、救急車を呼ぶように頼んだ。
女の人は、「あら大変」を何度も繰り返して、家の中に入っていった。

女の人がまいた水は、土を湿らせて、微風とともに、しばしの涼気を運んでくれた。
その涼気を感じながら、男のまわりに水をまいてくればよかったか、と後悔した。
水を少しまくだけでも、かなりの効果があるのではないかと、本気で後悔した。

そう思っていたとき、女の人が家から飛び出すように出てきて、「呼んだわよ!」と叫んだ。
礼を言って、私はまた走り出した。
気配から察すると、女の人も走って付いてきているようである。

畑に戻ると、男が座っていた。
その横で、女が扇子で男の顔あたりを扇いでいた。
そして、「ああ、起きましたよ」と、私の顔を仰ぎ見て言った。

男は、事情がよく飲み込めていないようで、眉間にしわを寄せて、胡散臭いものを見るような目で私を見上げた。
しかし、目の焦点が合っていない。
そして、強い日射しが、男の全身を照らしていた。

せっかく日陰を作ったのに、無防備に体を陽にさらすなど、無神経としか思えない。
私は何となく腹が立って、「日陰に入ってください。あなたは倒れていたんですよ」と強い口調で言った。

二人は、私の剣幕に臆したのか、這うようにして、私が作った日陰に上半身を入れた。
言い過ぎたか、と後悔したとき、救急車を呼んでくれた女の人が、追いついてきて、「ヤギさん、大丈夫? 熱中症じゃないの? いま救急車が来るからね。安心してね」と、早口で言った。
知り合いだったようである。

知り合いの顔を見て、女は落ち着いたのか、詳しい事情を男に説明し始めた。
男は、それを神妙な顔をして聞いていた。
そして、首筋に当てられたタオルと、転がったペットボトルを見て、少し事態を把握したようだった。
だが、男の目の焦点は、まだ合っていなかった。

その焦点の合わない目で、男が私の顔を見て、口を動かそうとした。
しかし、そのとき救急車の近づく音が聞こえた。
私が音の方に顔を向けたので、男は言葉をかけるのを止めたようだった。

救急車が止まった。
担架が運ばれてくる。
私は、救急士に細かく事情を説明したあと、彼らの輪から4、5歩下がって、様子をうかがった。

最初、男は担架に乗るのを拒んでいたが、知り合いの女の人の説得で、渋々という感じで担架に横たわった。
救急士は、私の方を振り向いて、「熱中症のおそれがあります。運びますが、よろしいですか」と聞いてきた。
私を男の息子だと思ったのかもしれない。

よろしいですか、と言われても、私はただの通りすがりである。
頷くしかない。

私が頷くと同時に、男は担架で運ばれていった。

私の役目は終わった。
私は、自分の自転車に戻るために、彼らから離れて、畑の間の道を歩き始めた。
いいことをしたのだ、という満足感が、心の中に打ち水を撒くように広がってきた。

太陽が真上にある。
暑い。
全速で走ったせいで、全身から汗が噴き出していたが、それは気持ちのいい汗だった。

車道まで到達したとき、救急車に乗りかけていた女が、思い出したように振り向いて、私に声をかけた。
「あのー、お名前は?」

「いやぁ、名乗るほどではありません」

この言葉を、一度言ってみたかったんですよ(バカなやつ)。



★名乗るほどでもない人は、CG「変な男」


北京オリンピックまであと少し。

女子マラソンでは、日本人に対して警備を3倍に強化した、との報道がありました。
中国の友好国以外は、すべてがアウェイでしょうから、日本の選手は福原愛選手以外は、強烈なアウェイ旋風が吹き荒れるのは、間違いないところです。

サッカーでは、アウェイで相手国が肩身の狭い思いをするのが当然のようですが、友好を建前としたオリンピックでは珍しいことだと思います。
今回の大会に限っては、日本人選手にとって、前代未聞のブーイングが待っていることは、今からでも十分に想像がつきます。

13億の民族意識が、数百人の日本人選手に注がれるのですから、その圧力は想像を絶します。

元々オリンピックには、あまり興味のない私ですが、今回の大会は、13億の民族意識が歪んだものなのか、それとも成熟したものなのか見極めるいい機会なので、いつもよりは真剣に見てみたいと思います。

私としては、成熟した民族を見てみたいですが、それは果たして・・・。



2008/07/27 AM 07:12:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

愚痴を言うイケメン
「やせたんじゃないか」と、京橋のウチダ氏に言われた。

そんなウチダ氏は、いい血色をしている。
週に2、3回スポーツジムに通い、週に数回は、得意先をディナー接待。
そして、時間ができたら、家族で温泉旅行。
こんな生活をしていて、不健康な顔になるわけがない。

俳優の坂口憲二をさらに清潔にしたようなルックス。
着ているものは、いつも高級そうなスーツだ。
そして、事務所は京橋。
ウチダ氏は、1年前までは私と同じフリーランスだったが、今は法人化して「社長様」になっている。

3年前。
彼の勤める会社が倒産して、「Mさん、どうしよう」と蒼い顔で私を見たときの気弱な表情は、もうどこを探しても見つけることはできない。

彼が勤めていた会社からは、年に数回大きな仕事をいただいていた。
その担当者が、ウチダ氏だった。
彼は、いつも日に焼けた顔に涼しげな笑いを浮かべて、言葉を一語一語はっきりと発音する心地よい男だった。

会社が倒産したあと、マーケティング会社を経営している彼の弟から仕事を分けてもらって、彼はフリーランスになった。
そして、2年で「社長様」。

身に降りかかった危機を見事に「成功」に変えた、できる男・ウチダ氏。
実に鼻持ちならない男だ。
独立してから、彼は私に2度しか仕事を出したことがない。
たとえ、京橋の事務所に呼ばれたとしても、たいていは「お悩み相談」が待っているだけだ。

事務所でビールを浴びるほど飲まされて、ホカ弁を食ったり、高価なチーズを食ったりしながら、彼の愚痴を聞く。

「N興業のフルサワの野郎、ただ酒ただメシばっかりたかりやがって! 俺の顔を見ると朝田先生(by医龍)って、気持ち悪い声で寄ってくるんだよ。その度に、寒気がしてさぁ・・・」
「M工業会の理事長、プライベートな領収書まで、こっちに回してくるんだぜ!」
「Tセンターのイノウエ、接待でホテルの食事に連れて行ったら、彼女まで連れて来るんだぜ。考えられないよ!」


愚痴の連射である。

私は聞き上手ではないが、相手が誰であっても、話は最後まで聞くことにしている。
途中で意見を言うことはしない。

よく人の話を10分の1も聞かないうちに、会話に口を挟む人がいるが、私はそういう人に出会うと、首を絞めたくなる。
思わず両方の指に力が入ってしまうのだが、そのたびに「家族を路頭に迷わせてはいけない」と自分に強烈なブレーキをかける。

だから、私は、人から絞め殺されないように、人の話は最後まで聞くようにしているのである。

3本目のビールを飲みながら、ウチダ氏の話を聞く。

得意先に、輸入卸の会社があってな。今年が創立30周年なんで、盛大にパーティを開こうってことになったんだ。
パーティ会場の選択、招待券、パンフレットの製作やアトラクションまで頼まれた。
とにかく華々しく、誰もが楽しめるような演出を考えてくれと言われた。
俺には優秀な外部スタッフが2人いるから、演出はそっちに任せて、俺はその他のことを進行させていったんだ。
俺の方は2週間でケリを付けたんだが、演出の方がクライアントと意見が合わなくてね。
何故かと言うと、クライアントがどうしても1点だけ譲れない箇所があるって言うんだ。
最後は歌で閉めたいって言うんだな。しかし、最後に歌を持ってくると、それまでの演出と全く噛み合わなくなってきて、歌だけが浮いてしまうんだな。
しかし、クライアントは、浮いてもいいって言うんだよ。浮いて結構だと・・・。
だが、こちらはプロだ。中途半端な演出は絶対にしたくない。それだけは、受け入れられないと答えた。
すると相手は、ほとんど土下座せんばかりに頭を下げて、泣き落としでこう言うんだな。
「歌手は、会長のお孫さんです。お孫さんが今度CDを出すので、どうしても華々しい場所で歌わせてやりたいというのが会長の意向です。だから、これだけは外せないんですよ」
要するに、30周年パーティを盛大にやるのは、会長の孫をみんなにお披露目したいからなんだな。
なあ、担当者は俺に何て言ったと思う?
「パーティなんかどうでもいいんです。とにかく孫だけ目立てばそれでいいんです!」だってよ。
俺は「どうでもいいパーティ」を任されたんだぜ。まったく馬鹿にしてるだろ?


ウチダ氏の話を聞き終わった頃には、私は4本目のビールを飲み干していた。
そして、私は、こう言った。

「いいじゃないか。馬鹿にされたとしても、仕事は仕事だ。浮いた演出が嫌だと言っても、終われば君のところには金が入る。自分の演出に自信を持つのもプロだが、相手の要望に応えるのもプロだ。そして、どちらにしても金は入る。相手の好きなようにさせてやれよ。それに、その歌手が有名になったら、自慢にはなるだろ? 君の営業道具の一つになるかもしれないじゃないか。むしろ、思いっきり浮いた演出をしてやったらどうだ。それによって、新しい何かが見えてくるかもしれないだろ」

ウチダ氏は、昼飯の時はビールを飲まないのだが、今回は飲んでいた。
彼は、酒は強い方でも弱い方でもない。
ただ、飲むと必ず目の縁が赤くなるので、わかりやすい体質だと言える。

その赤い縁をした目で、ウチダ氏が私を見つめた。
ちまたに溢れる勘違いのイケメンとは違って、ウチダ氏は純度の高いイケメンである。
目に邪(よこしま)なものが、まったく感じられない。
そして、相手を包み込むような茫洋とした雰囲気を持っている。
欠点は、私の前でだけ口が悪くなることと、猫背なことくらいか。

その猫背のイケメンが、私を見つめながら、呆れたようにこう言うのである。
「Mさんはさ。いつも俺が愚痴愚痴言っても、的を外さないんだよな。さりげなくヒントを言ってくれるしなぁ。いつも思うんだけど、なんで、儲かってないんだ?」

・・・・・・・・・・(苦笑い)。

それはね、ウチダ社長。
君が私に仕事を出してくれないからですよ。



★イケメンは、CG「海辺のレストラン」



大阪府の橋下知事が、公用車でジムに行ったことが、少しだけ話題になっていました。

橋下知事に関しては、好みで言わせていただければ、何にでも突っかかる、あの小者感があまり好きではないのですが、今回のことは「重箱の隅をつつく」感があって、彼に同情したくなります。

知事としての仕事をきっちりこなしていれば、体力づくりに公用車を使ったとしても、大した問題ではないでしょう。
かかったガソリン代が税金だとしても、彼の働きぶりがそれを超えるものであるなら、その程度は見逃してもいいことのように思われます。

針の穴のような小さなモラルを振りかざすより、知事の仕事を真剣に見つめて、4年後に判断を下す鷹揚さが欲しいものです。
賢い大阪府民は、この程度のことで騒いではいませんよね。

「ええやないか。仕事中に公用車でパチンコに行ったわけでもなし。事務に行ったんやろ? えっ、ジムやて? ワシ、そんな外人知らんでえ! トムなら知っとるけどな。ガハハハハ」



2008/07/25 AM 07:34:00 | Comment(6) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ゴキッ! ゴキッ! ポキッ!
ブログに関するニュースを読んでいたら、ある女優が、酔っぱらいに突然「ブス!」と罵られたことにとても憤慨した、という記事を見つけた。

「ブス!」と言われたわけではないが、私も昨日、突然見ず知らずの男に罵られた。

「百姓!」

渋谷東急プラザ内の書店での出来事だった。
書店内の通路を歩いていたら、紙袋を両手に下げた小柄な30歳くらいの男が前から歩いてくるのが、目の端に入った。

知り合いではないから、私は全く気に留めなかった。
相手は、何ごともなければ、0コンマ3秒で忘れてしまうタイプの個性のない男だった。

首に少し強張りがあった。
こっているというほどではないが、軽く寝違えたときのような不快感が首にあった。

だから、男とすれ違う少し前に、無意識に首を「ゴキッ!」と鳴らした。
いい音がした。
最初、首を右に傾けて「ゴキッ!」、そして次に左に「ゴキッ!ゴキッ!」。左は、2回鳴った。

3回いい音で首が鳴ると、爽快な気分になる。からだが軽くなる。
そんないい気分でいたときに、「百姓!」と言われたのである。

すれ違いざまだった。
男は、私の顔を見上げるようにして、口を歪めながら、そう言ったのだ。
その言葉を言われたとき、確実に相手と目が合っていた。
だから、間違えようがない。

あれは、私に向けて吐き出された言葉だった。

えっ?
俺、なんか悪いことした?

普通、初対面の人から「百姓!」と罵られた場合、こちら側に非がある場合がほとんどだろう。
肩がぶつかったとか、道を塞いだとか、悪口を言ったとか、あるいは、睨んだとか。

しかし、私は歩いていただけなのである。
昨日は、夏物のスーツを着ていた。
夏物のスーツは一着しか持っていないので、色落ちして、かなりくたびれている。

その貧乏くさい姿が、相手に不快感を与えたのか。
貧乏くさい、鬱陶しい、と言われたら、私は返す言葉がない。

東京・世田谷生まれ、目黒区中目黒育ちの都会派の私を「百姓」とは、いい度胸だな、とは思ったが、今は埼玉県人だ。
過去の栄光をいつまでも引きずっていても仕方がない。
彼の目に、私が農業に携わっているように見えたのなら、それはただの勘違いだと思って、笑って済ませればいい。

俺は、大人なんだから!

瞬時に気分を変えて、私はデザイン関係の本を1時間ほど立ち読みをした。
勉強になった、役に立った、と浮き立つ思いで、渋谷から埼京線に乗った。

午後5時を過ぎていたので、埼京線は混んでいた。
電車内で立っているのは苦痛ではないので、吊革につかまって、ボーッとしていた。
だが、10分も立っていると、1時間の立ち読みの影響で、首がまた強張ってきた。

車内は混んでいたが、かまわずに、首を右に「ゴキッ」と鳴らした。
いい音がした。
今度は、左に「ゴキッ」

そのとき、私の前に座っていた40代の男が、ビクッと肩を震わせて、顔を上げた。
私と目が合った。そして、彼の目には敵意があった。
「チェッ」
舌打ちまでされてしまった。

そこで、遅ればせながら、私は気づいたのだ。
そうか、「ゴキッ」だったのか。
書店ですれ違った男も、これが気にくわなかったのだな。
私は今まで、首を鳴らす音が嫌いな人がいるということを想像したことがなかった。

これはきっと、彼らにとって「百姓!」と罵りたいほど、不快な音だったのだろう。
つまり、磨りガラスを爪でひっかく音が嫌いだ、というのと同じレベルの不快感だったに違いない。
これからは、気をつけなくてはいけない。

人前で無闇に首を鳴らすのは止めよう。
そう思いながら、私は左脚が少しだるくなったので、軽くかかとを持ち上げた。

ポキッ!

忘れていた。
私の足首は、かかとを持ち上げると、時々でかい音で鳴るのだった。



★首を鳴らす人は、CG「飛ぶバイク」



中3の女子が、父親を刺殺。
中学生の娘を持つ同じ親として、人ごとではない事件です。

この事件に関しても、色々な専門家が、色々な検証をすることでしょう。
どれが正しいご意見なのか。
今回も、ひとしきり騒いだだけで終わって、最後は少女の「心の闇」ということで片づけられてしまうのでしょうか。

メディアの一方通行。
外交で日本の国益が犯されると、「毅然とした態度を」と叫び、内閣の支持率が下がると「福田色を出せ」と迫ります。

いつもながら、あまりにも紋切り型で、漠然としていています。
具体性のない各論は、何も言っていないのと同じこと。

「心の闇」は、いつになったら、晴れることやら・・・。


2008/07/23 AM 07:42:59 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

アル中? いや、そうじゃない
自分がアル中ではないか、と時々思うことがある。

ただ、毎日酒を飲んでいるわけではない。
飲まないときは、1週間飲まなくても、つらいとは思わない。

週に1回か2回、休肝日として、丸一日飲まない日を決める。
丸一日飲まないと、次の日も「今日は止めとこう」という気になる日がある。
その次の日も、「飲んだつもりで、今日は止めておこう」と思う。体は酒を欲しているが、気持ちは飲んだ気でいるから、我慢できる(変なやつ?)。

そうやって、1週間くらいは我慢できるのだ。
しかし、いったん飲み始めると、発泡酒を4本立て続けに飲んだりする。
つまり、我慢した反動が一気に吹き出してくるのである。

発泡酒のあとは、もらい物のバーボン、あるいは日本酒。
浴びるほど飲むというわけではないが、娘から「酒臭ぇ!」と怒られる。
そんな繰り返しが続いている。

飲まなくても、禁断症状はない。
それに、まだ仕事中に飲むことはないから、アル中一歩手前というところだろうか。
まだまだ、大丈夫じゃないの? そう思っていた。

だが、一昨日の昼、「Mさん、アル中なんじゃないの!」と、近所の印刷会社の社長から言われた。

印刷の仕事を頼みに昼休み前に印刷会社に行き、打ち合わせを15分くらいで終えた。
そのとき、社長から「昼飯食わない? 奢るよ」と言われたので、「ビールを飲ませてくれるなら」と、かなり失礼な答え方をした。

いいよ、と言うので、会社から500メートルほど離れた、最近「評判の」イタリアンレストランに連れて行かれた。
たった500メートルなのに、ボルボで行くなんて。
「だから、三段腹になるんですよ」とは、奢ってもらう側としては、絶対に言えない言葉である。

二人して「本日のランチ」を頼んだ。
食前酒は、私だけグラスビールだ。
ビールを一気飲みしたあと、スープが運ばれてきた。
コンソメスープの上にパセリのみじん切りが乗っかっているだけのものである。

ぬるい。
そして、塩辛い。
確実に期待は裏切られた(ビールを一気飲みした後だから舌が麻痺してるのかもしれないが)。

店内を見回してみる。
数枚のパステル画が壁に貼られている。
少し沈んだ色のプリザーブドフラワーが、カントリー調のキャビネットの上に置かれている。
そして、所々にイタリアの風景写真が額に入れられて、壁に掛けられていた。イタリア国旗もある。

店内は、白を基調とした漆喰風の壁で囲まれていた。
しかし、どことなくバランスが悪く感じた。もっとシンプルにしても、良かったのではないだろうか。
まるで、関西系のイタメシ屋さんみたいなコテコテ感がある。

これのどこがイタリアン? ただ、イタリアの風景写真があるだけで、イタリアを印象づけているだけではないのか。
そう思ったが、「いやあ、イタリアっぽくて、いいねえ」と、社長はお気に入りのようである。

サラダ。
完熟トマトを4等分したものと、数粒の枝豆の上にオリーブオイルをかけただけのもの。
トマトが美味かったら、これはお洒落なイタリアン・サラダということになるのだろうが、残念ながらトマトの味がしない。

「当店は、無農薬野菜を使用しております」
とは言っても、無農薬であれば不味くてもいい、ということにはならない。
金を取るなら、美味いものを食わせてほしい。

味がしないので、塩をかけて食った。
社長も、大量に塩を振りかけている。
しかし、当然のことながら、塩の味が勝ってしまうので、トマトを食っているという気にはならない。
枝豆も、水っぽい(冷凍?)。

ランチの値段を見てみた。
飲み物別で1280円となっていた。
奢りだから、私の懐は痛まない。
しかし、これでもし、メイン料理でお粗末なものが出てきたら、テーブルをひっくり返してやろうかと思うくらい、ここまでのメニューは値段に見合わないものだった。

「ここのスパゲッティは、評判なんだよね」と社長が、不満げな顔の私に向けて熱弁を振るった。
「以前、カルボナーラ食べたんだけど、最高だったね。本場には行ったことがないけど、本場の味って感じがしたなぁ。今日のランチは、カルボナーラじゃないけど、Mさんにも食べさせてあげたかったよ。ホント美味いんだから」

メイン料理が運ばれてきた。
鮭のクリームスープパスタ。
しかし、一目見てがっかり。
これ生鮭ではありませんね。鮭フレークにしか見えませんよ。

食べてみて、確信した。
絶対に、市販の鮭フレークだ。
いくらランチで手を抜きたいからと言って、市販品はないだろう。
なぜ、生鮭を使わない?

鮭に絡んだホウレンソウ。
やはり、ホウレンソウの味がしない。
無農薬だから? そんなことはないだろう。

腹が立ってきた。
「すみません、社長、ビールお代わりしてもいいですか」
そう言ったら、社長の片頬が引きつったが、「ああ・・・、いいけど」と言ってくれた。

ビールを一気飲みしたあとで、社長に「これ、美味いですか」と聞いてみた。
この社長は、印刷会社のオーナーなのに、調理師免許を持っている変わった人だった。
つまり、料理に関しては、私より遙かにプロに近い人なのである。

その社長が、頭をかきながら、こう言うのだ。
「カルボナーラは、美味かったんだよ。あれは、ランチじゃなかったけどね」

やはり、ランチだから、手を抜きましたか。
しかし、たった1回食べたものが気に入らなかったというだけで、失格の烙印を押すような乱暴なことは、私はしない。
私は、ミシュランの調査員ではないのだ。

今日は、美味しくなかった。
そんなときもあるだろう。プロとしては疑問符が付くが、目くじらをたてるほどのことではない。
奢ってもらった手前、すべて完食した。
しかし、口の中に言いようのないモヤモヤ感が残った。
このモヤモヤ感を引きずったまま家に帰るのは嫌だ。

だから、「社長、申し訳ない、もう一杯ビールをいいですか」と、とても非常識なお願いをした。
社長は、不味い店を紹介した引け目があったのか、「ああ・・・、いいよ」と言ってくれた。
そして、またもビールを一気飲み。

その姿を見た社長に、あきれ顔で「Mさん、アル中なんじゃないの!」と言われたのである。

いや、社長さん。
まだまだですよ。
本当のアル中さんなら、絶対にテーブルをひっくり返していますから。

私は、懸命に抑えました。だから、アル中ではないと思います。
うん、絶対に!



★アル中ではない人は、CG「ツリーハウス」



大分県教委汚職事件。

教員採用試験の闇の部分が、色々と出てきています。
教員になるために金品を渡す、金品をもらう。
それは薄汚い行為です。教育の世界からは、一番遠い出来事のように思えます。
しかし、それが現実。
教育界も汚れているということでしょう。

以上は、常識的なお話。

以下は、常識から外れた私の異論。

たとえ真正面の入り口から入ったとしても、生徒たちの為にならない教師は、役立たずの教師です。
違う入り口から入った人でも、生徒たちの個性や能力を伸ばしてくれる教師は、有能な教師です。

私は、たとえ入り口を間違ったとしても、有能な教師の方を認めます。
(これは、あくまでも現状の採用システムや法律論を無視した上での意見です)



2008/07/21 AM 08:21:09 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

日給8190円、そして、最悪のシナリオ
久しぶりにアルバイトをした。
大学時代以来のアルバイトだ。

夏休み、どこに行きたいか、子どもたちに聞いてみた。
子どもたちは、「行きたくない」と応えた。
もちろん、遠慮をしているのだ。

「アタシは、涼しい我が家で、まったりと夏休みを過ごすのが好きなんだよ」
「どこに行っても暑いし、人は多いしでストレスがたまるから、今年は家でのんびりがいいよ」
痛々しいくらいの気の遣い方である。
これは、子どもらしくない。

そこで、「よし! 来週、プールに行くぞ!」と私が勢い込んで叫ぶと、二人して「オー!」
結局、行きたかったようである。

しかし、プールに行くぞ、とは言ってみたものの、我が家の経理担当重役からは、「月末まではゼッタイ無理!」と、簡単に却下されてしまった。
そこで考えたのが、私がアルバイトをすることだった。
仕事のスケジュールを詰めて調整すれば、丸2日間くらいは空けられる。

その2日間で、日雇いのアルバイトをしよう!

まず、東武動物公園のプールに行く計画を立てた。
入場券は、東武鉄道に勤めているヨメの友だちが、安く譲ってくれるという。
昼飯は弁当を作って持っていく。できるだけ節約をしたいが、ただあまりケチケチでも子どもたちはつまらないだろう。

それに、娘や私はともかく、ヨメと息子は他人が食っているものを食いたくなる習性がある。
フランクフルト、美味しそう! 焼きそばも、美味そう! ラーメン食べたいな!

ということで、1万5千円を予算とした。
つまり、それだけの金額を稼がなくてはならない。

幸運にもアルバイトは簡単に見つかった。
本、雑誌の仕分けだ。
就業時間は、朝8時から夜6時まで。その間に1時間の休みが入るから、9時間労働だ。
日給8,190円。交通費も出ない仕事だが、日払いなので、その日のうちに稼ぎは現金でもらえる。

アルバイト先は、我が家から12キロ離れたところ。
普段だったら、自転車で行くところだが、慣れないアルバイトで疲れることを予想して、久しぶりに壊れかけの原付で行くことにした。

倉庫は、畑に囲まれたところにあった。
でっかい倉庫が一つと、プレハブの2階建ての事務所。

8時前に事務所に入って、薄っぺらな黄色いカードを渡された。
カードの上の部分に8時と刻印してあって、その下に班長の判を押してもらう。
仕事が終わって、午後6時過ぎたら、18時の下の欄に、もう一度、班長に判を押してもらって、現金をその場で受け取るシステムになっていた。

班長は、40代半ばくらいか。ザブングルの加藤さんに似ている人だった。
ザブングルに「やったことあるの?」と聞かれたので、「全くありません」と答えた。

倉庫の中に入ると、背の高い(4メートルくらい)棚が、等間隔に20列以上背中合わせに並べられていて、本がぎっしり詰まっていた。
「これをこれして」と言われて、注文伝票を渡された。

つまり、書店から送られてきた注文伝票に書かれた書籍を棚から探し出し、配送用の段ボールに詰めるのが仕事である。
簡単そうに見えるが、簡単ではないらしく、私の他に30人ほどいるアルバイトは、棚の前を右往左往していた。

ピックアップしたものをカートに放り込んで行き来しているのだが、それを冷静に見ていると、みな動きに無駄が多い。
行ったり戻ったりが多いから、その分時間のロスが多いのである。

そこで私は、まず出版社別に仕切られた棚の位置を確実に覚えることに集中した。
数えてみると、42社あった。知らない出版社も、たくさんあった。
それらの出版社のルートを何度も往復しながら、イメージトレーニングのように体で覚えていく。

その姿は、最初はサボっているように見られたらしく、班長に叱られた。
しかし、「うるせえよ! 今に見ていろよ!」と、心と体にエンジンをかけてからは、早かった。

自分でルートを把握してしまえば、効率よく本をピックアップできるので、行きつ戻りつすることはない。だから、体も楽である。
本はデリケートなものなので、湿気に気を配っているのだろう。空調が行き渡っていて、作業環境は悪くない。
その結果、午前中だけで、11個の段ボールを作った。

これは、新記録だったらしい。
「どんなに慣れたやつでも、最高9個だったな。普通は、6か7だ」
班長は褒めてくれたが、同時に疑いの目で私を見た。

「本当に、伝票通りにやったかぁ? 間違ってないよな?」
明らかに年下の男に、タメ口で疑惑の目を向けられた。
アルバイトは、つらいよ。

疑り深い班長は、昼休みを返上して、私がまとめた11個の段ボールをチェックしていた。
仕事熱心な人だ。

午後1時。
班長が、ザブングル顔で「あんた、相当な経験者だよな」と言った。

いや、経験はありませんよ。

「嘘、嘘! 未経験者が、こんなに早く正確にできるわけがない! 絶対、ベテランだ。10年以上やっている俺が言うんだから、間違いない!」

まあ、どうでもいいや。

いや、どうでもよくはない。
午後、私に渡された注文伝票の束は、明らかに他の人より倍以上多かったからだ。
なんと無茶な、と思ったが、逆にやる気に火がついて、渡された伝票は5時過ぎに、すべてこなした。

午後は、14箱分の仕事をこなした。
就業時間の残りは、45分。少し意地になって、「追加をお願いします」と班長に申し出たが、ザブングルは「くやしいです!」と叫んだ(嘘です、そんなことは言っていない)。

ザブングルは、「いいよ、時間まで休んでいてよ。これでみんなと同じ日給しか出せないなんて、申し訳なくてさ。悪いね、決まりだからさ」と、頭をかきながら言った。
そして、「25箱の記録は、絶対破られないだろうな。俺だって、無理だよ」と、肩をすくめながら、私に背中を向けた。
その背中が泣いているように見えた(まさか)。

2日目も25箱分の仕事をこなした。
ヨメは、「同じ日給しか貰えないのに、そんなにがんばることないわよ。みんなと同じペースでやったら」と言ったが、体にペースが染みこんでしまったので、ダラダラやると、むしろ疲れる。
だから、2日目も、同じペースでこなした。

班長が日給の入った封筒を渡すとき、「悪いね、本当に。でも、決まりだからさ」と、前日と同じことを言った。

気にしないでください。あなたの立場もわかります。

「で、明日も来てくれるよね」
いや、しばらく来られないんですよ。時間がとれないんで。
「そうかぁ、あんたみたいなベテランがいたら、予定が立てやすいんだけどねえ」
いや、ベテランではないんですけど・・・。

「8月、何日か来られないかなぁ。十日間くらい来てくれると、俺も助かるんだけどなぁ」

ザブングルさん。
私が、ここで十日間もアルバイトをする状況になったら、危機的ですよ。
自分の本職が廃業してない限り、十日間も時間がとれません。

それは、私にとって、最悪のシナリオだ。



★アルバイトをした人は、CG「いったい何をしている?」


竹島(韓国では独島というらしい)問題に、火がついたようです(作為的な部分も窺えますが)。

領土問題は難しいものです。
それは、人の命を巻き込んだ歴史があるので、感情論が先に立ってしまうからだと私は思っています。

ネットの世界では、特に感情論が噴出しやすいので、なおさら勇ましい意見が幅を利かせるようです。
サイレントマジョリティもネットの匿名の世界では、時に過激派に変身して、サイレントではなくなります。

政府が弱気である、という意見が多く見られます。
韓国が、あれだけ強行意見を持っているのだから、こちらもそれに対抗すべきだという意見のようです。

ただ、強行意見が世論を押し包んだとき、それは過去の日本であり、ドイツ、イタリア、そして最近のイラク、米国のような顛末になることは目に見えています。

外交は、何のためにあるのか。
お互いの意見を出し合って、紛争を防ぐためです。

「政府のやっていることは、生温いんだよ!」というご意見。

しかし、私は、「温(ぬる)いことを言い合うのが外交」だと思っています。
感情的な罵倒は、外交ではなく、程度の低い喧嘩に過ぎません。

強行意見だけで衝突したら、負けた方は必ず相手に遺恨を持つでしょう。
そして、その遺恨を消すことは、容易なことではありません。場合によっては数十年かかることもあるかもしれません。

強行意見を引っ込めて、お互い温(ぬる)い意見を言い合うことが、確実に先に進む道なのではないかと私は思っています。

ただ、領土問題を政権浮上の道具にする政治家がいる限り、威勢のいい言葉だけが世論として採用され、本当の外交は置き去りにされたままかもしれませんが。


2008/07/19 AM 07:56:11 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]

夫婦の立ち位置
ブログを呼んでいる友だちから、たまに言われることがある。

おまえの嫁さんは、何をしているんだ?
料理は作っていないようだし、子育てにもあまり深く関わっていないように見える。
嫁さんの顔が、見えないぞ!
私の母親にも、似たようなことをたまに言われている。

そう言われても、私は苦笑いを返すしかない。
ひとの家庭のことなんか、ほっとけよ!

彼女は、間違いなく主婦をしている。
料理は、たいていは私が作っているが、彼女も作る。
ただ、ヨメは和食しか作れない。
小アジの南蛮漬けや肉じゃが、煮物類、炊き込みご飯などは、かなり美味い。
ただ、子どもたちは、和食があまり好きではない。

だから、洋食が得意な私が料理をすることが多くなるのは、仕方のないことだろう。
肉じゃがよりも、オムライスやハンバーグの方がいいという子どもたちの要求に私が応えているだけだ。
それは、少しも不自然なことではない。

ヨメは、中学1年の娘の行く学校で、役員をしている。
だから、子育てにも関わっている。
ただ、私が子育てにエネルギーを使っているので、それを邪魔したくない、という意識は強いようだ。

周りからは、私が子育てに熱心であるというイメージで見られている。
家事にも熱心であると見られている。
それは間違いないことだが、ヨメが一歩引いてくれたおかげで、そう見られているということもできる。

息子と娘の勉強も私が教えているが、これに関しても、ヨメは「わからないことがあったら、パパに聞きなさい」というスタンスをとっている。
暗記力は、私より優れているのに、この分野でも、彼女は私をたてることを忘れない。

その結果、「ママ、何してんの? 料理はしないし、おバカだし、どうしようもない人だね」と、娘に言われっぱなしなのであるが、彼女は、そんなときも「ごめんなさいね、ガハハハハ」と笑い飛ばすのである。

息子からも、「ママはパパをこき使いすぎだよ!」と言われるが、「そうだね、ママが悪いね、ガハハハハ」と笑い飛ばす。
仕事をして、家事もして、学校行事にも必ず顔を出す私は、はたから見ると負担が多いと思われているのかもしれない。

息子は、それを心配してくれているのである。
負担は確かにあるが、自分でそういう環境を作っているのだから、ヨメとしては、黙って見ているしかないと思う。
彼女は、他人の意見を聞かない私の性格をよく知っているからである。
彼女としては、私の邪魔をしないということが、最大の仕事だと割り切っているのではないだろうか。

そのあたりの夫婦の呼吸が、当たり前のことだが、子どもには理解できないようだ。

私の場合、子どもたちが熱を出すと、心配で夜も眠れないが、ヨメは平気で熟睡している。
病院に連れて行くのも私の役目だ。
これは、愛情の問題ではなくて、役割の問題だと思う。

夫婦が二人してオロオロしていたのでは、家庭に芯が通らない。
だから、どちらかが動じない役割を果たさなければいけないと思う。
我が家ではおそらく、役割が逆転していて、私が母親役で、ヨメが父親役なのだろう。

私は、それでいいと思っている。

ヨメは、我が家では2つの大きな役割を担っている。
一つは、貧乏所帯を支える経理担当重役。
極貧の家計を切り盛りして、よくぞ沈没させずに舵取りをしていると思う。
この役割は、大きい。
大企業の経理部長さえ務まるのではないかと思うほどである。

もう一つは、夫を演出するプロデューサー。
仕事熱心な夫、子育てに一所懸命な夫、家事もがんばる夫を前面に出して、自分は一歩身を引く。
たとえ、世間や子どもから、主婦失格と思われても、彼女は、その立ち位置を変えない。
それは敏腕プロデューサーだからこそできる、ブレのない高度な演出なのである。

夫婦の本当の姿は、役割とバランスでわかる。
そして、その役割とバランスは、夫婦にしか見えない。
残念ながら、子どもたちにも見えない。

ヨメは、つらい役割を背負っているが、彼女は文句を言わない。

そんなヨメに、私は、ただ感謝するばかりである。



★感謝したい人は、CG「開放的な空間」



厚生労働省のお役人が、省内のパソコンで掲示板やチャットを利用していたということが話題になっています。

ネットでの反応を見ると、「けしからん」と思っている人が、圧倒的多数のようです。
お役人は、確かに清廉潔白でなくてはいけませんが、かといってネットを閲覧してはいけないと、杓子定規に考えることは、私にはできません。

勤務中にネットを閲覧。
民間で自社のパソコンの使用を規制している会社は、かなりあると聞きます。
それに比べてお役所は規制が緩い、あれは税金で賄われたものだ。だから、けしからん。税金泥棒め!

ごもっともです。
しかし、役所の持つ負の性質を取り上げて、即座に「税金の無駄遣い」という発想につなげる風潮には、私は同調できません。

無駄も仕事のうち。
これは、ほとんど私の信念に近い考え方です。
無駄のない社会は、まるで無菌室。
乱暴な意見だとは思いますが、菌はあった方がいい、無駄もあった方がいい、と私は思っています。

勤務中のネット閲覧はけしからん、というのは正論です。
掲示板で日頃の鬱憤晴らしや合コンの下調べは論外。ゲームに熱中も論外。
業務と関係のない閲覧は、すべて禁止。そんな暇があったら、働け働け!

すべて正論です。

しかし、仕事を滞りなくこなしていれば、その程度はいいのではないかと、私は思ってしまうのです。
もしネットを閲覧することで、日本の社会に多大な損失を与えたときは、そのときこそ糾弾すべきでしょう。

ただ今回のことは、「何もかも、けしからん! 役人のくせに」という、役人を叩くための道具として一時的に盛り上がっているようにしか、私には思えないのです。

真四角な役人の世界から、少しはみ出したからといって、そのはみ出した部分だけを叩いても、真四角であることに変わりはありません。

だから私は、「人間、少しくらい、はみ出してもいいじゃないか派」です。


2008/07/17 AM 06:59:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

絵になるカップル(和久井映見似の女)
朝一番で、得意先に印刷物を納品した。

朝8時過ぎに家を出た。
得意先は、大宮駅の近くだ。距離は、我が家から8キロ前後か。
自転車で行くことにした。

自転車の後ろの荷台に印刷物を突っ込んで、すっ飛ばした。
途中大宮公園(第三)を通る。
公園を通らずに車道側をすっ飛ばしてもいいのだが、朝から公園の爽やかな空気に触れるのもいいものだ、と思って公園を通った。

犬を散歩させている人とウォーキングをしている人が多い。
朝から優雅ですねえ・・・・・(ケッ!)

公園の真ん中に芝生の広場がある。
芝生の緑が視界いっぱいに広がって、癒される気がする。

その緑の芝生の上で、男女がフリスビーをしていた。
こんな朝早くから、カップルでフリスビー?
エネルギーが余っているな、と舌打ちしたい気分で女性の方を見てみると、これが目を惹くような清楚な美人だった。

白のTシャツに白の短パン、そして短パンから伸びた足は、細くて長い。
顔は女優の和久井映見を細くした感じで、全体がこぢんまりとまとまっていた。
そして、モデル体型のからだ。170センチはありそうだ。歳は、20歳前後か。その姿は、朝の公園の風景に見事にとけ込んで、何か別の世界の出来事を見ているようだった。

思わず見とれた。

しかし、見とれている場合ではない。
印刷物を届けなければならない。
目線はずっと和久井映見似を追っていたが、ペダルを漕ぐ力は緩めなかった。

9時前に得意先に着いて、無事納品完了。
「助かった! 助かった!」という担当者の声に、大きく安堵の息を吐き、頭を下げ、コーヒーを一杯ご馳走になって、また自転車にまたがった。

帰りも大宮公園を通った。
カップルは、まだいた。
今度はキャッチボールをしていた。

15メートルほどの間隔を置いて球を投げる和久井映見似のモデル体型の女。
その投げるフォームは、動きに無駄がなくて、綺麗だった。
普通、女性の場合、キャッチボールに親しんでいないから、球を投げるフォームというのが、様にならない人がほとんどである。

しかし、彼女は理にかなったフォームで、しかも美しい投げ方をした。
むしろ、男の方がぎこちない動きをしていた。
男は、やはり二十歳前後で、小顔の整った顔をしていた。身長は、和久井映見似と同じくらいか。

私は、何となく興味を惹かれて、彼らから20メートルくらい離れたベンチに腰を下ろした。
見ていると、女はほとんど球を正確に受けているが、男は4回に1回くらい後ろに逸らしていた。
運動があまり得意ではないのかもしれない。

俺だったら、もっとうまいのになあ、と勝手なことを思いながら、和久井映見似のフォームに見とれていた。
他人のキャッチボール風景など、すぐに飽きてもおかしくないが、これは見ていて飽きないのである。

なぜだろう?
和久井映見似が、美人でスタイルがいいということもある。
しかし、それだけではない。
二人の醸し出す雰囲気が、良質の映画を見ているようで、それに目を奪われたからだろう。

要するに、「絵になるカップル」だということだ。
二人の波長が、気持ちいいくらい合っていた。
その心地よさは、公園の爽やかさと相まって、私の脳にアルファ波を送り込んでくれるのである。

その心地よさに、つい目をつぶってしまった。
そして、眠った。
スペースシャトルの中で、地球を見下ろしている夢を見た。
夢の中で見た地球は青かった。

目が覚めた。
カップルの姿を探した。
カップルは、まだいた。

和久井映見似が、網を持って、細い小川で何かをすくっているのが見えた。
何をしても優雅な人だ。
寝ぼけ眼で、その姿に見とれた。

しなやかな動作で、網を右手で持ち、何かをすくう。
その程度のことが、こんなに絵になる人を、私は今まで一度も見たことがない。
相手の男は、幸せな男だ。

嫉妬を感じた。
こんな美人が彼女だなんて、羨ましすぎる!

神よ! この男に天罰を与えたまえ!

そんな不純なことを思っていたとき、男がのんびりとした口調で、和久井映見似をたしなめた。

「姉さん、だめでしょ。もっと慎重にやらなくちゃ」

何だよ! 姉弟だったのかよ!



★仲のいい姉弟は、CG「青空リビング」



「死に神」と言われて、お怒りになった人がいます。
彼は、「リューク」(byデスノート)と言われたら、怒らなかったのでしょうか。
これは、被害者遺族の感情を慮ると、かなりデリケートな問題です。
ただ、私には、その感情を想像することはできても、実感することはできません。

おそらく「死に神」と呼ばれた人も、実感できないでしょう。
彼は、被害者遺族ではありません。
被害者遺族が憤慨するのは、私の想像力の範囲内で、ある程度わかります。
しかし、政治家である彼の思惑は・・・・・、藪の中です。

政治家は、もっと強烈な罵倒を世論から浴びせられることがあります。
それらは甘受しても、某新聞の記事は見逃さない、「俺は許さない!」という基準がどこにあるのか、私にはよくわかりません。

「俺は死に神だが、メディアこそ、オレ以上にたちの悪い死に神だ、ガハハハハ・・」と笑い飛ばしてくれたら、私はこの政治家を尊敬したかもしれません。

生きながらにして「神」と言われた人は、そう多くはありません。
自称「生き神」は、たくさんいます。

彼のことを「生き神様」と言えばよかったのか・・・。


2008/07/15 AM 06:58:45 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

飼い主と飼い犬は似るのか?
「ノラ猫、犬、ハトにエサを与えないでください」

私が住む団地に、最近この立て看板が林立している。
これを見て、私は思う。
これを作るのに、一体いくらかかったのだろう?
もっと、有効な方法は見つからなかったのだろうか。

これではまるで、「ノラ猫が増えて困る」という苦情に、とりあえず「形だけでも何かしてみました」という工夫のなさが見え見えではないか。
ノラ猫にエサをやるな、と言っても、猫好きの人は、密かに与えるに決まっている。

猫好きは、猫が餓死するのは我慢できないだろうし、エサをあげないことによって、猫がゴミあさりをすることも嫌がるはずだ。
立て看板などに税金を使うより、もっと実効のある方法を考えるべきだろう。
たとえば、猫さんの繁殖能力を絶つなどの現実的な防御策は、思い浮かばなかったのか。

「ノラ猫は餓死したっていいんだよ!」
むかし、得意先の社長で、そんな過激な思考方法を持っていた人がいた。

ノラ猫にエサをやるな! ノラ猫がゴミ箱を漁ったら、ぶち殺せ!
あいつらは、無用な生き物だ。ゴミよりも劣る存在である。

大変無茶な発想だが、これをそのまま鵜呑みにすることはできない。
なぜなら、彼は家でアメリカンショートヘアーを飼っていて、その愛猫が交通事故で死んだときは、ショックで2日間寝込んだというからだ。

ひとの口から発せられる言葉が、すべて本音を吐露しているかは、本人でなければわからない。

先日、その立て看板の1本に、ささやかなイタズラが仕掛けてあった。

「犬、猿、キジにキビ団子をあげないでください」

パソコンで打ち出されたポップ体の文字だった。
それは、雨でインクが流されるのを防止するために、太幅の透明のビニールテープでガッチリと貼られていた。

それを見て、大笑いと言うほどではないが、小笑いはした。
程度は低いが、馬鹿馬鹿しくて、いいと思った。

しかし、昨日、その立て看板の前を通ると、40前後の偽物っぽいセレブの香りをまき散らした女性が二人、そのイタズラを剥がしているところに出くわした。

「まったく、どんなつもりでしょうね! こんな馬鹿なイタズラをするなんて。きっと、○○中の男の子たちに決まってるわ。校長に抗議しなくちゃ!」

鬼のような形相で、イタズラと格闘しいていた。
彼女たちの頭の中では、もう犯人は決めつけられていたようだ。

その剣幕をみると、ノラ猫にエサを与えるな、とお役所に談判に行ったのは、彼女たちかもしれない、と想像したりもする。
そして、これも想像だが、彼女たちはノラ猫は嫌いだが、家ではトイプードルを飼っているかもしれない、という勝手な推理も浮かんできた。

ノラ猫は悪さをする。だがら、忌むべき存在だ。
そういう思考方法は、ある部分では当たっているかもしれない。
しかし、たとえ忌むべきものであっても、共存はできるのではないかと思っている。

それに、時に飼い犬がまき散らす「恐怖」よりは、いいのではないか、と。

私は、昔20年以上犬を飼っていたことがある。猫を飼っていたこともある。
犬も猫も大好きだ。
だから、ある程度は、飼い主の気持ちは分かる。
しかし、わからないときもある。

疑問符がつく飼い主が、少なからずいるからだ。
昨日、週末恒例のジョギングの後、クーリングダウンを兼ねて、遊歩道をゆっくりと歩いていた。

前方に、20代半ばの女性二人が、ベビーカーを遊歩道の端っこに置いて、世間話をしていた(決して道を占領していたわけではない)。
そこへ通りかかったのが、リードを外されたフレンチブルドッグだった。
飼い主は、フレンチブルドッグの後ろから自転車でついてきている。
この時点で、この飼い主は失格である。
リードがなくて、しかも自転車。もし、不測の事態が起きたら、飼い主はすぐに対応できないだろう。

案の定、フレンチブルドッグは、緩慢な動作でベビーカーにぶち当たった。
ふつう、危険意識の強い犬は、障害物に当たることはない。
このフレンチブルドッグは、よほど、緊張感のない犬だったのだろう。
平気でぶち当たって、そのまま通り過ぎていった。

その衝撃を受けて、それまで静かに眠っていた赤ん坊が、けたたましく泣き始めた。
だが、飼い主は、飼い犬がしでかしたことに気づきながらも、知らんぷりをして自転車で通り過ぎようとした。

もちろん、犬の飼い主のすべてが、この種の人種だと乱暴なことを言うつもりはない。
ただ、犬がしでかしたことは、すべて飼い主の責任である。
犬を飼うというのは、その責任を背負うということだ。

私が犬を飼っていた頃は、散歩中に絶対に気を抜かなかった。
予測不可能なことをしでかすのが、犬という生き物である。
彼らを100パーセントコントロールしようと思ったら、飼い主は、絶対に犬から目を離してはいけない。手を離してはいけない。

猫もそうだ。
友達が家に遊びに来たときは、猫アレルギーかどうかを一番に聞く。
アレルギーではなくても、根本的に猫が嫌いという人も、意外と多い。
だから、犬猫が好きかどうかも事前に聞いておく。

飼い主は、自分が犬猫が好きだから、他人も好きなんだと思いがちである。
飼い主は、たちの悪い「自分本位の生き物」なのだ。
他人を自分と同じレベルで見ようとする。

自分が可愛いと思っているペットは、他人も可愛いと感じるはずだ、と思いこんでいる人が多い。
羨ましいくらい、勝手な人種だ。
ペット好きというのは、音楽が好き、映画が好き、というのと同じレベルのものなのだが、ペットの飼い主はそうは思っていないようだ。
自分のペットだけは、特別なんだ、と思いたがる。

無言で通り過ぎようとしたこの飼い主も、そんな人種だったようだ。
「俺様のペットは、可愛いんだから、いいんだよ!」

しかし、20代半ばの奥様は、躊躇がなかった。

「あのさあ! 知らんぷりするわけぇ? 犬がぶつかって、子供が起きちゃったんだけどぉ! ふつうは、謝るんじゃないの、飼い主がぁ〜!」

言葉遣いはともかく、奥様は、まともなことを言ったはずである。
しかし、犬の飼い主は、自転車を止めて、奥様たちを睨んだ。
そして、彼はこう言う。
「そんなところにベビーカーを止めて、話しているのが悪いんだよ!」

白髪をオールバックにして、チョイ悪風に決めた60歳前後の親父。
キラキラのグリーンのシャツのボタンを、上から3つ目まで外していて、そこから胸毛がのぞいていた。
口をへの字に曲げて、奥様たちを上から見下ろしている。
なかなか迫力のある表情だった。
まるでヤクザ映画に出てくる中尾彬のようだ。

しかし、奥様たちも負けてはいない。
大股で男に近づくと、「男はね、こういうときは、素直に謝るものですよ!」と、迫った。
その迫力は、「極妻」の岩下志痲か。

この勝負は、あっけなく終わった。
中尾彬が、岩下志痲の迫力に負けて、逃げてしまったからである。

逃げる中尾彬の後を、懸命についていくフレンチブルドッグ。
その後ろ姿の哀れなこと・・・。

負け犬のように逃げていく飼い主も、また哀れだった。
飼い主と飼い犬は似る、というのは、本当かもしれない、と思わされた瞬間だった。



★似たもの同士は、CG「青空ログハウス」



不倫で、大騒ぎ。

その不倫の現場となった場所が、騒動以来「満員御礼」というニュースを見たときには、呆れました。
反社会的な言動だと誹(そし)られるかもしれませんが、タレントひとりの倫理観を真面目に糾弾したとして、何になるのかという思いは拭い切れません。

大人が不祥事を働いて謹慎したなら、「はい、それで終わり!」でいいではありませんか。
みなが聖人君子のように道徳観を押しつける風潮は、世論の悪しき感情の一点集中だけを招いて、ただの鬱憤晴らしにしかならない気がします。

お相手の某野球選手は、不倫の当事者でありながら、それほどのお咎めがありませんが、それは極めて真っ当なことのように思われます。

不倫も喧嘩両成敗。
バランスをとるなら、このタレントの処置も某野球選手と同じでなければアンフェアだと思いますが、なぜタレントにだけ世論(メディアの煽動)は厳しいのか。

男社会だから?
浮気は、男の甲斐性だというご都合主義が、社会の隅々にまで蔓延しているから?
あるいは、記事を書いているのは、ほとんどが男性でしょうから、男尊養護の意識が働くからでしょうか。
そして、その男尊養護に追従する女性もいて、タレント側に「見えない力」が働いているのかもしれません。

しかし、いつの間にか不倫野球選手は活躍し、いつの間にか不倫タレントは復権する。
それが現実になる日は、そう遠くない日だと思うのは、私だけでしょうか。


2008/07/13 AM 08:03:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

不思議なほど似ている(愛しのフィレオフィッシュ)
マクドナルドのフィレオフィッシュがぁ〜、100円の限定価格だったころぉ〜、1週間毎日フィレオフィッシュを食っていたのはぁ〜、どこのどいつだ〜い?

アタシだよ!(パクリ、しかも古い)

6月17日。
朝から、大宮の印刷会社で作業をした。
このブログにも書いたことがあるが、この印刷会社は、私に対して、いつも冷淡である。
誰も話しかけてこない。飲み物も出ない。そして、昼メシを食う暇も与えてくれない。
6時間ノンストップで働かされて、呪いの言葉を吐きながら、我が家の近くまで帰ってきた。

当然、腹が減る。
その腹ぺこオッサンの目に、マクドナルドの看板が見えた。
そして、フィレオフィッシュ100円というポスターも目に入った。

所持している現金は、ジャスト800円(珍しく金持ち)。
いつもだったら、決して贅沢はできなかったが、今日は違う。
フィレオフィッシュとマックフライポテトのS、コーヒーを頼むという贅沢ができるのである。
しかも、400円以上余る。

心浮き立つ思いで、店内に入った。
午後4時過ぎ。店内は、思いのほか混んでいた。フィレオフィッシュ目当てのやつが多いのかもしれない。
普段200円以上するものが、100円で食えるのだ。
すべての物価が上がった今、この価格は魅力的だ。

おなかの虫が、グーグーダンスを踊っている。
早く腹に何か入れないと、エド・はるみが出てきそうだ。
知らないうちに、早口で注文していたのだろう。マックの店員に、注文を2度聞き返されてしまった。
これは、少しも「グー」ではない。

そして、やっと私の希望の注文が聞き入れられた3回目。
出来上がりを待っているときに、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「アタシは、マックの中で、フィレオフィッシュが一番好きなんだよね〜」
間違えるわけがない。あれは、我が娘の声だ。
興奮すると声が1オクターブ上がって、55メートル先からも聞こえるのだ。

そう言えば、今日は3年生が修学旅行に行っているので、部活はないと言っていた。
だから、学校から帰るとすぐに友だちを誘って、愛しのフィレオフィッシュを食いに来たのか。
声の気配から察すると、店の奥のブースにいるようだ。
こっそり覗いてみると、私も顔を知っているお友だちが、前に座っていた。

友だちと楽しんでいるところを邪魔しては悪い。
だから、絶対に気づかれないであろう、カウンターの一番端に席を取って、愛しのフィレオフィッシュを一気食いした。

一気食いしている間も、娘の声が聞こえてくる。
「アタシは、毎日フィレオフィッシュでも、飽きないんだよね〜」

もう少し、声のボリュームを落として欲しいものである。
普段は気配りができる子だが、今日は随分とハイテンションだ。
これは、フィレオフィッシュの魔力なのか。

毎日フィレオフィッシュか。
そこで、考えた。
明日の朝メシをフィレオフィッシュにしてみたらどうか。

毎朝、息子の弁当と家族の朝メシを作っているが、フィレオフィッシュがあれば、朝メシを作る手間が省ける。
その分だけ、睡眠が多く取れる。
これは、いいアイディアだと思った。

フィレオフィッシュを一気食いしたあとは、ポテトをゆっくりと食い、コーヒーをのんびり飲んだ。
愛しのフィレオフィッシュの話題が済んだのか、娘の声は聞こえなくなった。
おそらく、Hey! Say! Jumpの誰それが可愛いとか、あるいはサッカー部の男の子の話を密かにしているに違いない。

壁時計を見ると、4時25分。
娘は、おそらく6時ごろまで、ここで延々と盛り上がっていることだろう。
私は、身を隠すようにして注文カウンターまで行き、フィレオフィッシュを4つ頼んで、お持ち帰りをした。

それから1週間、毎日朝メシは、フィレオフィッシュ。
誰が一番先に音を上げるかと思ったら、やはり息子だった。
2日目に「飽きた」と言ったので、3日目から、息子だけマックポークにした。

次に文句を言ったのが、ヨメだった。
4日目から、マックポークにした。
息子もヨメも、マックポークは飽きないようである。

このマックの朝メシは、1週間続いた。
区切りがいいので、1週間でやめた。
考えてみれば、お金がもったいない。
いくら100円とはいえ、1週間続くと、2800円になる。
これは、米が10キロ、楽に買える金額である。
そのことに遅ればせながら気づいたので、やめた。

娘は「何で今日はフィレオフィッシュじゃないんだ!」と怒ったが、やめた理由を説明したら、アッサリ頷いてくれた。

「この1週間、フィレオフィッシュが毎日食べられて、アタシは幸せだったよ。毎日が楽しかったなあ」
シミジミという13歳の娘。

あれから、二週間がたった。
娘はあれ以来、時々「フィレオフィッシュ食いてぇ!」と叫ぶ。
「今度また100円になるまでのお楽しみだな」と私が言うと、「ああ、そうだな」と淋しげに笑う。

昨日、また大宮の印刷会社に呼ばれて、仕事をした。
11時からノンストップで5時間働かされた。その間、誰も声をかけてくれなかった。話しかけても、相手をしてもらえなかった。
疲れ切った心と体に鞭打って、我が家まで帰ろうとしたとき、マックの看板が見えてきた。

条件反射で、フィレオフィッシュが頭に浮かんだ。
財布の中身を確かめてみた。
500円玉が1個、その存在を主張していた。

フィレオフィッシュが食える!

マックのドアを開けた。
すると、聞き覚えのあるハイテンションな声が聞こえた。

「久しぶりに食べるフィレオフィッシュは、やっぱりうまいなあ!」

こっそり除いてみると、前と同じブースに座って、フィレオフィッシュを頬張っている娘がいた。
前に座っているのは、以前と同じお友だちだ。

「悪いね、奢ってもらっちゃって。ホント、悪い、悪い」

友だちに平気で奢ってもらうところまで、似ているなんて!
なんて変な親子だろう!



★変な親子は、CG「青空ベッドルーム」



洞爺湖サミット、記憶に残りましたか?

夜のニュースをいくつか見ましたが、私には、誰かさんの薄ら笑いしか記憶に残りませんでした。
任期終了間近の、さる国のお偉い大統領は存在感をまき散らしていましたが、去りゆく人が目立っていても、果たして世界のためにいいのかどうか。

成果は全くなかったね、と外国の特派員がテレビのインタビューで答えていました。

サミットには、当然のことながら議題がある。その議題に対して明確な成果がなかったのだから、今回のサミットは意味がない、と彼は言いたかったのだと思います。

しかし、今回に関しては、それを望むのは無理があると私は思います。
任期切れ間近の大統領がいる会議で、未来を語れ、というのは、現実的なこととは思えません。
彼は、存在感をまき散らしましたが、他国が彼を見る目は、もうリタイアした人に向ける視線です。

言うなれば、花道。
数々の力業(ちからわざ)を見せた彼ではありますが、そんな彼に対して、最後は気持ちよく見送ってやろう、という諸外国の「思いやり」を感じたのは、私だけでしょうか。

去りゆく人への遠慮。超大国への気配り。
そんな気配りを受けたこともあって、このサミットでは、その国は「普通の大国」としての役割しか示せなかったと思います。

そして、我が国はと言えば・・・。

やはり、薄ら笑いしか、私には記憶に残らないのです。

ですから、今回のサミットを私が定義するなら、「去りゆく人への気配り、そして、薄ら笑いサミット」と言うことになります。


2008/07/11 AM 06:57:44 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

レールの先にあるものは・・・
ちょっとしたミスをした。

それは、大急ぎの仕事だった。
クーポン券のデザインと印刷の仕事を受けて、昨日の朝、納品した。
納期に間に合って、クライアントは喜んでくれたが、印刷会社の社長には怒られた。

「Mさん、素人じゃないんだから、とじしろは10ミリ以上とってよ。ホチキス止めが大変だったんだから」

B5の変形サイズのクーポン券。
表紙を含めて6頁つくったが、クライアントからクーポン券の部分をできるだけ大きくして欲しいと言われたので、とじしろが8ミリしか取れなかった。
印刷会社の社長は、それを怒っているのである。

8ミリは確かに狭い。印刷会社としては、10ミリ以上欲しいところだろう。
ミシン目などの工程を考えたら、12ミリ確保すべきだろうが、クライアントのご要望にも応えたい。
難しいところである。

「ホント、素人じゃないんだからさ」
また、言われてしまった。
「すみません。ご迷惑をおかけしました」
こんなときは、謝るしかないが、確実にストレスは溜まる。

そんなとき、ショウコから電話がかかってきた。
夕方の6時前だった。
「いま大宮にいますよ〜。マサも一緒ですよ〜。お酒奢りますよ〜。マサの奢りですよ〜」

半年ぶりに聞くショウコの声。
いきなり来るというのは、ショウコらしくない気もしたが、電話でそれを言ってもしょうがない。
「わかった、家族の夕飯をつくったら、すぐ行く」

7時に行くと言って、電話を切った。
場所は、前回も利用した居酒屋だ。

私の姿を見て立ち上がったのは、マサだ。
「お久しぶりです、先輩」と、深く頭を下げられた。

ショウコは、右手に持ったジョッキを軽く上げただけだ。
マサは酒が飲めない。だから、ジンジャエールを飲んでいた。
テーブルの上には、サイコロステーキと鶏の唐揚げ、ジャガイモピザ、串焼き、枝豆という、いかにもの居酒屋メニューが並んでいた。

「食べるのはマサに任せて、私たちは飲みましょうよ」
ショウコが手を差し出してきたので、握手をした。
柔かい手。
6歳のころから、この手を何度も握ったことを思い出した。

いまは、人妻、そして大学生になったが、ショウコはショウコのままだった。
柔かい手に触れて、そう思った。

「いきなり愚痴で悪いんですけど」と言って、ショウコはジョッキを呷った。
マサが、「大丈夫かな」という風に、ショウコの横顔を見つめていた。
男にしては長い睫毛が、居酒屋の間接照明に浮かんで、少々見とれた。

ショウコの愚痴は、こうだった。

大学の友だちが、何かあるごとに、「ショウコは、結婚したんだから、人生の目的を半分達成している。だから、余裕があっていいわねえ」と、からかい半分に言うらしいのだ。
講義が終わって帰ろうとするたびに、「愛する人がいる家に帰るのね」などとも、言うらしい。
ショウコも、友だちの言葉に悪気はないと思ってはいるが、毎回言われると「まったく! 嫌になる」と、怒っている。

マサにそのことを言っても、「冗談なんだから、何を言われても笑っていればいい」としか言わない、とショウコはむくれるのである。

マサの言う通りだよ、と言っても、ショウコは納得しないだろうから、私は違う表現の仕方をした。

「俺たちの前に、レールがあるとしよう。その先に、『入学』『就職』『結婚』『出産』『独立』などの駅がある。ショウコは、超特急に乗ってしまったんだな。ショウコと友だちの列車は、『大学入学』までは皆一緒だったが、ショウコの場合、そこから『結婚』までが、超特急だったんだよ。友だちは、まだ『大学』駅にとどまっている。だが、ショウコは『大学』駅にも停車しながら、講義が終わると、『結婚』駅にまっしぐらに向かうんだ。友だちは、それが羨ましいんじゃないか。自分たちと違う駅に毎日帰るショウコがね」

「羨ましいと言ったって、結婚して2年近くたつのに、いまだに言われるなんて、納得いかないなあ!」
ショウコが、新しいジョッキをまた呷る。
男前な飲み方だ。ほとんど化粧気のない顔が、少年のように見える。
いま思ったのだが、ショウコは、「ラスト・フレンズ」瑠可役の上野樹里に雰囲気が似ている。

「いつかは、友だちもショウコに追いついてくるだろう。その前に『就職』があるだろうから、『就職』駅までたどり着いたら、みんなもショウコの結婚には、こだわらなくなるんじゃないかな」

「それ、それ! もう一つ頭に来るのが、『ショウコは就職はしないんだよね。だってもう永久就職したんだから』って言うのも、いるんだよね」
ほんと、アッタマ来る! と、唐揚げを食べようとした手を止めて、ジョッキを呷った。

そんな酔いと怒りで、顔を赤くしたショウコの目を真正面から見て、私は言った。
「前から聞いておこうと思ったんだが、ショウコにとって、結婚は終着駅なのか。それとも、そこから、違うレールは延びているのか」

ショウコは、私を茶色の目で見たあと、マサに顔を向けて、悪戯っぽい視線を下から上に移動させた。
そして、私の方に視線を戻してこう言った。
「結婚は、もちろん終着駅じゃない。私にも夢はあるもの。今は、マサにも内緒だけどね。それに、夢は別にして、将来『離婚』ていう駅に、急停車することだってあるんだからね」

その言葉を聞いて、マサが口を開けて、ロボットのような固い仕草で、ショウコに顔を向けた。
「えっ?」
まさか、そんな言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。
マサは、まばたきも忘れて、目線をショウコの顔あたりに泳がせていた。

マサも驚いたろうが、私も驚いた。
ショウコは、この種の冗談を言う子ではないと思っていたからだ。
ショウコは、いつもストレートなものの言い方をする。
ショウコが、人の気持ちを試すような言い方をしたことは、私が知る限りなかった。

鬱屈したものが、心の中にあるのか。
結婚生活と大学生活のバランスを自分でうまくコントロールできないのだろうか。

まだ二十歳だった。
自分では、「もう二十歳」と思っているかもしれないが、いくらマサに理解があったとしても、心のバランスを維持するのは、難しい年なのかもしれない。

しかし、つぎのショウコの言葉で私もマサも救われた。
「ごめん! 私いま、ちょっと嫌な女になっていたよね」
ショウコは、夢から覚めたような顔をして、私の目を真っ直ぐ見つめ、軽く頭を下げた。
そして、横にいるマサの方に体を向けて、「ごめんなさい」と、深く頭を下げた。

マサの開いていた口が、閉じた。
まだ笑顔がぎこちなかったが、マサは私のジョッキを見て、「ああ、先輩、ビールがないですね。頼みましょう」と言って、大声で店員を呼んだ。
店員を呼ぶために上げた手に、力が入っているように見えた。

そんなマサを見て、ショウコがまたマサと私に頭を下げた。

ショウコたちは車で来ていたので、帰りはマサに車で送ってもらった。
車内でのショウコは、マサをたて、私に気を配る、いつものショウコに戻っていた。

そのショウコが、私の方に体を向けて、「はい!」と右腕を上げた。
「なんだね、ショウコ君」
「私は、遅ればせながら、大学で陸上部に入部しました」

これには、驚いた。
ショウコは、中学から今まで、ずっとテニス部だった。
ショウコのテニスは、特別上手いというわけではないが、球筋を読むことは上手かった。
そして、スピードがあった。
つまり、脚力があった。

その走りを見て、中距離向きかな、と私は密かに思っていたのである。
「中距離だな」
私が呟くと、ショウコは「そうか、サトルさんにはお見通しだったか。パパが言ってた『陸上バカ』っていうのは、本当だったんだね」と、私を指差した。

「でも、そう思っていたら、言ってくれればいいのに」
ショウコがそう言うと、マサが言葉をはさんだ。
「本人がその気にならなければ、言っても無駄になることが多い。テニスを一所懸命やっているときに、陸上中距離の素質がある、と言われても、聞き流されたらお終いだ。要は、タイミングなんだな。どんな親切な言葉でも、タイミングが合わなければ、言葉は無駄になる。そうですよね、先輩?」

さすが、ショウコの選んだ男。私の言いたいことを全部言ってくれた。
「マサ、ナイス、フォロー!」
運転席のマサの肩を叩いた。

それを見てショウコが、「気持ち悪いなあ、あんまり男同士仲良くなられても困るな。サトルさん、今度からは、飲むときは、二人だけにしようよ」と、私にウィンクをしながら言った。

私もそれに合わせて、「望むところだ!」と言うと、マサがほとんど悲鳴に近い声で、
オーマイガッ!

さすが、英語の教師。
発音は、たいしたものだった。



★発音のいい人は、CG「楽園?」



居酒屋タクシー。
ひと頃大騒ぎをしていましたが、今ではその騒ぎも一段落です。

小さな悪を暴いて、大きな悪をあぶり出す。
そのための居酒屋タクシー糾弾だと思ったのですが、気が付いたら、「居酒屋タクシーはけしからん」で終わってしまった感があります。

小さな悪はほっとけ、とは言いませんが、もっと大きな無駄遣いをあぶり出してほしかったのに、出てきたのは、小さな虫ばかり。
小さな虫退治は、バルサンで十分。

大きな虫退治をしたいときは、何に頼ればいいんでしょうか。

え? 業務用バルサンがある?
それは、お役人様だけでなく、政治家様にも効くんでしょうか?


2008/07/09 AM 06:57:20 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

独身貴族の怪しい謎
長年の疑問が、一気に解けた。

4歳年上の知り合いがいる。
彼とは、私が法律事務所に勤めていたときからの付き合いだから、20年以上になる。

弁護士事務所には、問い合わせの電話などが、頻繁にかかってくる。
だから、受話器の使用頻度は高い。当然、汚れる。
そこで、週に1度、電話の掃除や消毒、殺菌を業者に頼んでいたのである。

週に1度、電話の掃除に来るのが、ミズシマ氏だった。
彼は、背が低く、頭髪の薄い男だった。
その時ミズシマ氏は、30代前半だったと思うが、見事に額が禿げ上がっていて、10才以上老けて見えた。

ミズシマ氏は、灰色の作業着に小さな体を包んで、愛想良く仕事をこなしていた。
笑うと顔全体が小動物のようになって、和やかな雰囲気をまき散らすから、彼が来ると事務所内の空気が柔かくなった気がした(弁護士事務所は、普段堅苦しいですからね)。

自然な流れで、暇なときに、ミズシマ氏と話をするようになった。
話をしてみると、大学が一緒だった。学部も一緒だった。
4年先輩だから、接点は全くなかったが、同窓ということで、お互い親近感を持った。

「今日、仕事終わったら、何か食べない? 奢るからさ」と言われたので、奢ってもらった。
以来、ミズシマ氏とは30回以上会食しているが、私は、一度も金を払ったことがない。
先輩だから、奢ってくれるのか。
それもあるだろうが、ミズシマ氏は、なぜかいつも福沢さんを大量に持ち歩いている人だったのである。

ミズシマ氏は、財布を持たない。
勘定を払うときは、スーツの内ポケットに手を入れて、輪ゴムで止めた一万円札の束を掴み出すのだ。
その中から、器用に万札を「ピッ!」という素早さで抜き出して、支払うのである。
それが、とても格好良かった(初めてその姿を見たときは一瞬固まったが)。

しかし、なぜ、いつも大量に福沢さんをお友だちにしているのか。
これが、いつも疑問だった。

ミズシマ氏は、大学卒業と同時に、大手の商社に勤めたが、そこを一年半で辞めた。
それ以来、彼は、アルバイトやパートをしながら、生活していると言う。
そんな生活をしていたら、常識で考えたら、あまりお金には縁がないと思うのが普通だ。
しかし、大量の福沢さんとお友だち。

なにか悪い闇の商売でもしているのか?
良からぬものを売っているのか?
物資の横流しとか・・・。

「俺、下北沢にアパートを持っているんだ」と、ミズシマ氏はあっさり言う。
1DKの世帯が6つ。
そこの家賃が毎月入るから、食うには困らないんだよ、と。

下北沢にアパートを持っているなんて、まさか、ご実家が金持ちとか? と思ったが、「俺は山梨の貧乏農家の四男だよ」と言われたので、実家金持ち説は、簡単に消えた。

では、どんなカラクリが? 私の疑問は、さらに膨らむ。
下北沢のワンデーケーの家賃が、いくらなのかは知らない。
そこから入る家賃収入は、かなりの額にはなるのだろうが、ミズシマ氏は、当時家賃30万の吉祥寺のマンションに住んでいたのだ。
BMWを乗り回している。リゾート会員権も持っている。競走馬を、共同購入した、とも聞いた。そして、いつもふところには大量の福沢さん。

一つのアパートの家賃収入だけで、そんな暮らしができるだろうか。
宝くじでも当たったか・・・(これが一番無難な考え方だろう)。

だが、私は、その種のことが聞けないタチである。
「ミズシマ先輩!」とおだてながら、高級な酒をたかることは平気でできるが、相手の事情を聞くことは、下品な行為だと思ってしまうのだ。

昨日、新宿の焼鳥屋で、ミズシマ氏と一年半ぶりに会った。
焼鳥屋でミズシマ氏と会うのは初めてだったが、ここは、ミズシマ氏の馴染みの店だったようだ。
焼鳥屋、というと、かなり庶民的な店構えを想像しそうだが、この店は、高級な鮨屋という趣を持っていた。
広い店内、質のいい木材を使った意匠、重々しい額に入れられた書、高級そうな和服に身を包んだ店員。
落ち着かなくて、腰が浮きそうである。

重厚な造りのカウンターに座って、越乃寒梅(!)を飲み、いかにも高級な鶏肉を使いましたという焼き鳥を食いながら、心の中で「ケッ! 焼き鳥のくせに」と舌打ちをしていたとき、「ああ、ミズシマさん」という声が、横から聞こえた。

「ミズシマさん」と呼んだのだから、私を呼んだわけではない。
だから、私には関係がない。
一応、声の主に挨拶だけはしたが、私は、こういうときは、全く相手に興味を持たないことにしている。

「越乃寒梅、お代わり!」
奢りだから、高い酒も平気で注文できる。
酒に没頭しようとした。

しかし、ミズシマ氏の横に座った男の声は、かん高い。
その話の内容が、左の耳から入ってくる。
話を聞きたくなくても、勝手に耳に入ってくるのだ。

それによると、男は大手企業の特許担当者だったようだ。
ミズシマ氏は、大学時代いくつかの発明をして、企業にアイディアを売り込んでいたらしい。
そして、その中の二つが、大学卒業後に爆発的に売れて、ロイヤリティ(アイディア料)というかたちで彼の元に入ってきたという。

大金を手にしたのは、彼が商事会社に勤め始めて、1年半たってからだった。
あまりにも簡単に大金が入ってきたので、彼は商事会社をあっさりと辞めた。
そして、彼は、それで下北沢のアパートを手に入れた。

気が向いたら、「社会勉強」と称して、アルバイトかパートをする。
気が向いたら、海外旅行に行く。
気が向いたら、競馬で百万をつぎ込む。
気が向いたら、災害国や災害地に寄付をする。
だが、結婚にだけは、気が向かなかったようだ。

今でも時々、昔ほどではないが、それなりにまとまったロイヤリティが入ってくるという。

「ミズシマさん、もう一度、どでかいホームランをかっ飛ばしましょうよ!」
かん高い声の男は、華奢なミズシマ氏の肩をドシンと押し込むようにして叩き、「じゃあね」と言って、自分のテーブルに戻っていった。

一呼吸おいて、ミズシマ氏が、私の方に顔を向けた。
「ばれちゃったね」
50代半ばの独身貴族・ミズシマ。髪の毛は、後頭部と耳の横に、申し訳程度にこびり付いているだけだ。

彼の万札の束には、そういうカラクリがあったのですね。
私は、50半ばまで結婚せず、定職にも就かないミズシマ氏を、好ましく思いながらも、「大丈夫かいな、このオッサン。将来が心配だよ」と思っていた。
しかし、物語の筋が見えてくると、「これは、ミズシマ氏らしい生き方かもしれない」とも思えてきた。

いま、謎は解けた!

よかった! よかった!
福沢さんの束は、悪いことをして得たものではない、それがわかっただけでも私は嬉しい。

これからは、心おきなく、気持ちよく奢ってもらうことにしよう。
(今度ミズシマ氏が、でっかいホームランをかっ飛ばしたら、車でも買ってもらおうかな)
そんなことを思いながら、私は仕上げに、ウニ茶漬けを啜り込んだ。



★謎が解けたときは、CG「何人いる?」



モンスターペアレントがテレビドラマになるなどして、社会現象化しています。
統計を見たわけではないですが、1パーセントにも満たない非常識な親を取り上げてキャンペーンを張る教育界とメディアの意図に、限りなく胡散臭さを感じる人は、不思議なことに、私の周りでは、ほとんどいません。
私だけのようです。

みな一様に、キャンペーン通りの反応を見せます。
「なんて非常識なんだ!」
「あり得ない! これでは、学校が大変だ!」
「学校側は毅然とした態度で、非常識な親に臨むべきだ!」

とは言っても、世の中の親のほとんどは、昔も今も常識的です。
むしろ、子どもを学校側に人質に取られて、学校に遠慮している人がほとんどです。
お互いの力関係を冷静に見れば、子どもを人質に取り、成績を思いのままにつけられる教師側が強いのは、歴然としています。

私の感覚では、「こんな非常識な親がいる」というのは、学校側からの伝聞が多い気がします。
私には、学校側が親との真正面からの対決を避け、ただ親の行動に反応して「非常識だ」と言っているだけに見えます。
対決を回避して、弁護士や公的判断機関などに解決を委ねるというのは、教育の放棄としか見えません。

学校現場というのは、PTAも含めて、教育なのです。
都合のいいときだけPTAを利用して、自分たちが制御できないと「モンスター」と言って、遠ざけるのは、筋が通らないのではないかと。
これは、学校側が、外圧に対する対処能力がない、と自ら宣言しているようなものです。
親は、そんな心許ない教師に、大事な子どもを預けなければいけないわけです。

大量の人質を取った「モンスターティーチャー」と、一人(あるいは二人)で立ち向かう「モンスターペアレント」。

これは、私の娘の通う中学でのお話。
中学には、学内にベンチはあるが、なぜか生徒がベンチに座ることは禁じられています(つまり、ベンチは飾りとしてあるだけ。意味不明)。
昨年度のこと、女子生徒がベンチに座っているのを見た教師は、いきなり生徒の脚を思い切り蹴飛ばして注意したそうです。

女子生徒が、左脚が大きく腫れ、大きな痣を作って帰ってきたので、父親が談判しに行くと、蹴った本人は出てこずに、教頭が「ベンチに座るのは禁止されています。お宅のお子さんが、ベンチに座ったのを見て教師は注意をしただけです。教師は、蹴った覚えはないと言っています。痣ですか? もしかしたら、脚が少し当たったかもしれませんが、それは偶然ではないですか」と答えたそうです。

教師の多くは、常識的で教育熱心で真面目な人が多いと思います。
ただ、このような伝聞が、私の周りにいくつも存在しているのも事実です。

教師側の言い分だけで、モンスターペアレントと決めつける方式に私も倣って、伝聞だけを基に、教師にもモンスターがいることを書いてみました。

どこに真実があるかは、藪の中(伝聞ばかりですから)。
モンスター同士で戦っている姿を見せないと、話はどんどん大きくなるばかりなので、公開でモンスター同士戦うというのは、どうでしょうか。
私は、そんなことを思っていますが、そんな私は、やはりモンスターの一人なんでしょうか。


2008/07/07 AM 06:54:36 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

中山美穂のポスター
新規の仕事が入るのは、嬉しいものだ。
特に、何の苦労もなく仕事の話が舞い込んでくると、その嬉しさは倍増する。

我が家から2キロほど離れた設備会社から仕事の依頼が来た。
初めて名前を聞く会社である。
私といったいどんな接点が? と思って、依頼の電話を受けたとき、相手に聞いてみた。

「私もよくわからないんだけど、あなたの名刺が私の手元にあるんですよ。いつ誰に、その名刺をもらったのか、まったく記憶にないんだけど、まあ、一度頼んでみようかと思って、電話をしてみました」

曖昧な話だが、仕事をいただけるなら、経緯はどうでもいい。
そこで、この間の日曜日、その設備会社に行って来た。

プレハブの平屋の社屋。
事務所内は実用本位に作られていて、無駄なものは、ほとんど置かれていなかった。
事務机と応接セット、コピー機やファックス、コーヒーサーバー、書類の入った大きなキャビネットなど。
そして、壁には若いころの中山美穂のポスターが貼ってあった。

中山美穂?

壁に掛かったそのポスターだけが、どこか浮いている。
おそらく中山美穂が20歳前後のころのものだろう。
なぜ、そんな古いものが、壁に?
しかし、ポスターは黄ばんでもおらず、皺も寄っていないきれいなものだった。

そのポスターに見とれていたとき、社長が姿を見せた。
名刺交換。
歳は、40歳を少し超えたくらいだろうか。
白髪は多いが、肌の艶はいい。表情に若さがある。
背は170センチくらいだろう。平均的だが、上半身の造りは頑丈そうだ。
つまり、健康そのもの。

もう一度、壁のポスターに目を移したとき、社長が片えくぼを浮かべた笑顔で、「彼女は、僕の永遠のアイドルなんですよ」と言った。
その照れた笑顔が、良かった。
構えたところのない、力の抜けた笑顔だった。
少し、気持ちが惹き込まれた。

そして、「笑わないでくださいよ」と、目を極限まで細めて片えくぼをつくり、社長は話を続けた。
「同じポスターを30枚持ってるんです。20年くらい前にまとめ買いして、少し傷んだなと思ったら、新しいのに貼り替えるんですよ。だから、いつも綺麗な中山美穂が見られるんです。社員や家族は、みんな呆れていますがね」

私も今でこそ、柴咲コウ、柴咲コウと騒いでいるが、昔は中山美穂が好きだった。
同類ですね、と私が言うと、社長は「ああ、柴咲コウも、いいですね」と、軽い動作で親指を立てた。

それがあったからだろうか、仕事の話はあっけないほど順調に進んだ。
B5サイズのチラシを5万部作るという話が、10分ほどで終わった。
初対面にしては、驚くほど短い打ち合わせだった。

一杯目のコーヒーを飲み終わったころ、それに気づいて、社長が「お〜い! コーヒーを注いでくれ」と、応接セットの衝立の向こうに声を掛けた。

すぐに、ポットを持った女子事務員が現れた。
その事務員は、最初にコーヒーを持ってきてくれた人とは、違っていた。
最初の人は40前後だったが、今回の人は、若かった。
女子高生と言ってもいいくらいの若さだ。

その事務員が、私の顔を見て、「アラ!」と言ったのである。
アラッ?
「あら」と人から言われた場合、たいていは、相手が自分のことを知っている場合が、ほとんどだろう。

つまり、この若い子は、私を知っているということなのか。
だが、私には、若い子の知り合いはいない、これは断言できる。
失礼にならない程度に、女の子の顔を見つめた。

知らない顔である。
心の中で、首をかしげた。

すると、社長が、「私の娘です。高校三年なんですよ。たまに、事務所の手伝いをしてもらってるんです」と言った。
高校三年と言えば、私の息子と同じ学年である。ということは、息子と小学校、中学校が同じだったことはあり得る。
だから、「アラ!」なのか?

そこで、息子の出身中学の名前を出してみたが、違ったようだ。
では、何だろう?
考えていても答えは出そうにないので、「私のことを知ってるんですか」と聞いてみた。

社長の娘は、父親と同じく、片えくぼの笑顔で近所のスーパーの名前を言った。
「私、夕方だけ、そのスーパーでレジ係のパートしてるんですよ。お客さん、週に2、3回来てますよね。それだけだったら、あまり記憶に残らないかもしれないけど、お客さんはいつも、私がレシートを渡すと『お世話さま』って頭を下げるんですよね。私だけでなく、他のレジ係の人にも同じことを言ってるでしょ。だから、お客さんは、我々の間では、『お世話さまのおじさん』って言われてるんですよ」

お世話さまのおじさん。

思いもよらぬことである。
基本的に私は、他人のことを見ていない。
だから、「いつ、どこそこで見かけましたよ」とか「すれ違ったんだけど、気づきませんでした?」などと言われることが、頻繁にある。

しかし、見ていないんだから、気づくわけがない。
道ばたに100円玉が落ちていたら気づくが、人間に関しては全く興味を惹かれることがないので、よほどの偶然がない限り、気づかない。

他人が、私のことを気に留めているとも思わないから、視線も気にならないのである。
だから、悪いが、スーパーのレジ係の顔も全く覚えていない。

社長の話では、彼女は「自分が行く大学の入学金くらいは自分で払う」と宣言して、今年の春から、土日は事務所の手伝いをし、平日はスーパーでパートを始めたのだという。そして、受験勉強は、真夜中に。

天晴れな娘ではないか。
目に、意志の光が見える。口元に、毅然とした強さが見える。
彼女は、社長にとって、自慢の娘ではないだろうか。
目を細めて、娘を見つめる社長の顔は、幸せな父親の顔をしていた。

「『お世話さまのおじさん』ですか。Mさん、有名人じゃないですか。いやあ、いいなあ、その呼び名。羨ましいですよ」

感心をからだ全体で表した社長は、「誰にもあげたことないんだけど」と言って、私に中山美穂のポスターを1本くれた。

何故そういう展開になるのか、意味不明ではある。
しかし、なぜか嬉しかった・・・・・・・・・・。



★中山美穂が好きな人は、CG「和室のある空間」



飛騨牛、うなぎの偽装は、よくありませんね。
消費者をだますのは、商売人として、一番恥ずべき行為です。
でも、私には、美味い牛肉と不味い牛肉の区別がつきません。
うなぎは嫌いだから、美味いかどうかもわからない。

ブランドは、幻のようなもの。
有り難がっている間は、いい夢が見られるが、夢から醒めてしまえば、ただの自己満足。

夢は、いつまでも続かない。
夢が醒めたときに怒るだけでは、ブランド信仰はなくならない。
怒りが消えたときに、また「ブランドの神様」が降りてきて、消費者はそれに取り憑かれるでしょう。

それは、ミシュランの星の数と一緒ですね。

私は三つ星より、ほしのあきの方が、まだいいと思っていますが。

星野オリンピック代表監督は、微妙です。

ん? 何の話?


2008/07/05 AM 08:08:59 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

オリンピックはオモローか?
「予言しましょう」と私は言った。
目の前には、得意先のフクシマさんがいる。

「今回のオリンピック。日本が取る金の数は、3個から9個です」
「それ、予言になってないですよ、あまりにアバウトで。それに、数字が中途半端ですよ」
眠そうな顔で、フクシマさんが小さなツッコミを入れた。

「ちょっと、3の倍数を言ってみたかっただけですが、それが何か?」
そして、二人同時に「オモロー!」。

馬鹿である。

女子事務員二人の冷たい視線。
ただ、我々はそれには慣れているので、そのまま話を続けた。

「Mさん、かなり悲観的な数字ですが、何か根拠でも」
「だから、3の倍数を言ってみたくなっただけで・・・」

・・・・・・・・・・・。

「オモロー!」

本当の馬鹿である。

あまりの馬鹿さ加減に呆れたせいではないだろうが、なぜか麻生久美子似の事務員がやって来て、「オリンピック、楽しみですねえ」と言いながら、優雅な動作で、フクシマさんを押しのけて、私の前の椅子に座った。
先ほどまでは、帳簿類と格闘していたが、コーヒーブレークを自発的に取ったようだ。

いつも思うのだが、美人である。
眼にもう少し力があれば、女優でもやっていける、と思わせるほど整った顔立ちをしていた。
あと5パーセント、何かが足りていれば、今ごろは近寄りがたい存在になっていたかもしれない。

その消費税分、足りない美人が言う。
「でも、あのスポーツ中継の実況は何とかならないかと、いつも思うんですけど」

同感です。
絶叫するだけの実況。その場の雰囲気に酔って、自己陶酔にしか聞こえない実況。
滑舌が悪い、その場しのぎの解説。まるで一般人のように「頑張れ」としか言わない解説。

サッカーで、「ゴール!」を何回叫んだと得意気に言うアナウンサー。
体操で選手が着地を決めたとき、「栄光の架橋だ」と意味不明のことを言うアナウンサー。

あれは、自己満足ですよね、と私が言うと、麻生久美子似は、大きく頷いてくれた。
その横で、フクシマさんは、会話に入れずに、ポカンとしている。

「コーヒーカップが空なんですが」と私が言うと、「はい! ビールですね」と、フクシマさんは冷蔵庫まで走っていった。
その走りは、なかなか良かった。
オリンピックは、無理だろうが・・・。

一番搾りを、グビッと飲む。
得意先で飲むビールは、なぜかうまく感じる。

「オリンピックにしても、サッカーのワールドカップにしても、スポーツニュースで見るのが一番いいですね。たとえ過剰な実況が入っていたとしても、短いですから、我慢できます」

同感です。
選手には、金色のメダルを取って欲しい、と切に願っていますが、私は冷静にアスリートの躍動感を見たいので、あの実況を聞くと喜びのボルテージが確実に下がります。
解説を忘れた解説者の存在も、私のボルテージを下げます。
だから、オリンピックはスポーツニュースかダイジェストで見るのが一番いいですね。

「ああ、やっと、同じ意見の人を見つけました。私がこんなことを言うと、みんな変わっているって言うんですよ。日本人なんだから、アナウンサーだろうが誰だろうが、日本を熱く応援するのは当たり前だ。みんなで感動を共有すべきだって、みんな私を責めるんです」

そうですか、そうですか。
私も実は、いつもヨメにそう怒られてるんですよ。
私のヨメは、スポーツには全く興味がないのに、オリンピックとワールドカップには、熱くなるんです。
そして、一緒に熱くならない私を非国民扱いです。

彼女は、スポーツのルールを全く知らないんですよ。そして、日本人が出ている種目しか見ないんです。
オリンピックとは関係ありませんが、「タイガー・ウッズってプロレスラーは、強いの?」って聞くんです(タイガーマスクと間違えてる?)。
「ハンドボールは、サッカーの真似してる」って、訳のわからないことを言うんですよ(ゴールポストの形が似てるから?)。
「テコンドーって、空手のサッカー版かしら」って、変なたとえをしたりとか(意外と合ってるかも)。

「ああ、でも、俺も似たようなもんですね。オレ、スポーツのルールは、全く覚えられない人なんですよ」とフクシマさん。

私と麻生久美子似は、その言葉を完全に黙殺。

「伝える側が、言葉で過剰に演出しないで、ありのままを邪魔せずに見せてくれたら、感動はもっと大きくなるでしょうね」

そうですね。映像が言葉に頼りすぎたら、映像よりも言葉のイメージが勝ってしまいますからね。
それでは、スポーツの本質を伝えたことにはならない。
映像の送り手側の自己満足で終わってしまう。
もちろん、それでも感動する人は、大勢いるでしょうが、それは言葉によってナショナリズムを高めたための感動であって、スポーツ本来が与える感動とは違うでしょう。

「わかります。だから、私はもっと純粋に、スポーツで感動したい。私が、スポーツニュースやダイジェストを見て感動するのは、それがスポーツの本質を凝縮しているからでしょうね」

そうですね。ただ、ニュースによっては、感動の押し売りが激しいものもあります(スポーツとは関係のないタレントが大騒ぎをするだけの)。

「確かに、あります。でも、短いですから、我慢できます」
瞬きのない目で、時折私を見つめる麻生久美子似の女。
目力はないが、淋しげな光が、時々ハッとするような美を感じさせる。

その姿に見とれていたら、垂れた目を何回も瞬きさせながら、フクシマさんが突然奇声を上げた。

「イチ、ニィ、サ〜〜〜〜ン!」

・・・・・・・・・・。

「オモロー!」

仕方がないので、付き合ってやった。

麻生久美子似が、冷ややかな目で私を見ていた。



★目線の冷たい人は、CG「エルデーケー」



落書きはいけません。大聖堂に落書きは、もっといけません。
世界遺産は、人類の財産です。大事に扱いましょう。
落書きをした人は、悔い改めましょう。
そして、その人が本心から悔い改めたら、叩くのはやめましょう。
人は、そんなに打たれ強くない。

落書きをした世界中の人に、私が言いたいことはただ一つ。

なぁにぃ! やっちまったな!

クールポコのネタをパクらせていただきました)

私も深く悔い改めたいと思います。


2008/07/03 AM 07:00:19 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

友を待った1時間半
「断れない客からのオファーが突然来た。俺の馴染みの店だから、先に食ったり飲んだりしていてくれ。だから、何時にそこに行けるかはわからないが、俺の名前を出せば、請求書は俺に回るから、遠慮なくやっててくれ」

一年ぶりに会う約束をしたオオクボから、待ち合わせ場所に直接かかってきた電話。
オオクボに関しては、昨年のブログに書いた。
あれから一年以上、何の連絡もなく、一昨々日の夜、電話があった。

「ちょっと知恵を貸してくれ」
「成功したやつが、成功してないやつの知恵を借りようなんて、ずいぶん嫌味だな」
怒るかと思ったが、オオクボは怒らなかった。
大学時代だったら、大声で怒鳴っていただろう。
「仏のオオクボ」と言われているのは、本当なのかもしれない。

「これから成功するもの同士、仲良く知恵を出し合おうということだよ。月曜日の夜7時に会おう」その後、待ち合わせ場所を一方的に言って、オオクボは電話を切った。
ただ、忙しさ、慌ただしさをまき散らしただけの電話だった。

面倒臭い、とは思ったが、昨日彼が指定する居酒屋に顔を出した。
そこで私を待っていたのは、冒頭に書いたオオクボから居酒屋にかかってきた電話だった。

丸の内線新宿御苑駅から厚生年金会館へ至る道の途中に、その居酒屋はあった。
小さな店だ。
特別新しくもないが、特別古くもない。
内装は、白壁が土蔵の雰囲気を漂わせていて、倉敷あたりに、こんな喫茶店があったと思い起こさせる造りをしていた。

L字形のカウンター。座席は、15程度しかない。
カウンターの中には、3人いた。
その中で一番年長のゴマ塩頭の人に、オオクボの名を言ったら、「」のボトルを目の前に置かれた。

「響」が高級な酒だということは知っていたが、本当の価格は知らない。
私の人生には、まったく関係のない酒だろう、とは思う。
しかし、ただなら飲んでもいい。

氷と水が出されたが、とりあえずストレートで飲んでみた。
一口飲む。
「芳醇な味」とは言えない。ただ、香りはいい。
酒は、飲んでしまえば、みな同じである。
この酒が、特別美味いとは思わない。
しかし、香りは楽しめる、と思った。

この酒はきっと、香りの分だけ高いのだろう。
香りに、高い金を払う。
要するに、金持ちのための酒だ。
普段なら毒づいているところだが、残念ながら毒づく相手がいなかった。

ストレートを一気に飲んでから、黙って、「響」のロックをゆっくりと飲み始めた。
目の前のゴマ塩頭の男に「何をお作りしましょうか」と聞かれたので、「この酒に合う料理を」と答えた。
カウンターの中の男たちは、無闇に客に話しかけてこない。
その雰囲気は、いいと思った。

太刀魚の南蛮漬けとアサリの酒蒸し、茄子の揚げ出しが出てきた。
特別凝ったものではないが、どれも味のバランスが絶妙だった。
誰にでもできる料理だが、すべて味が完結していて、他の料理の邪魔をしていなかった。
無駄な余韻がない味。水を少し口に含んだだけで、余韻が消える味。
だから、ウィスキーの邪魔もしていない。

この料理には余韻がありますね、というのは、私には「不味い」と同義語に聞こえる。
いつまでも後を引く味は、他の料理やデザートの邪魔になる。
完結した料理こそ、私はプロの味だと思っている。

料理に満足し、「響」を飲みながら、まわりを見回してみた。
客は、私を除くと5人。みな40才以上の男だ。
その5人が、きれいに1つずつ座席を空けて座っている。
つまり、誰もがひとりで来ているということだ。

もしかしたら、ここは、彼らにとって「隠れ家」的な店なのかもしれない。
オオクボもきっと、いつもひとりで来ているに違いない。
照明が暗い。本当に、土蔵の一角にいるような気分になった。

音楽は、クラッシックが控えめに流れている。
曲は、マーラーの「復活」だ。
スケールの大きな曲だが、居酒屋で聴く音楽ではない。
合唱部分が平坦に聞こえるから、ただの雑音にしか聞こえない。

「響」のロックを4杯飲んだ。
オオクボは、まだ来ない。
また、「何かお作りしましょうか」と聞かれたので、「豆腐料理なら何でも」と答えた。

豆腐とカニと空心菜、エリンギの炒め煮が出てきた。
片栗粉のとろみが効いていて、すべての味を上品にしていた。
そして、これも完結した味だった。
プロだと思った。

「響」のストレートを1杯とロックを5杯。
しかし、オオクボはまだ来ない。
壁に時計が見あたらないので、ゴマ塩頭に時間を聞いた。
8時半を過ぎていた。

あと30分待とう。
いい店だが、2時間も一人で飲む場所ではない。
ここは、経済的に余裕のある人間が、落ち着いて飲むところだ。
私には、まったく似合わない。

「響」のロックを6杯目。
いい加減、この香りにも飽きてきたころ、オオクボが入ってきた。
成功者の匂いをばらまいて、まわりを見回す目にも、ゆとりが感じられる。

「悪かったな」
「いや」

遅いぞ、と怒ってみても、自分の格を下げるだけだ。
「響」の水割りを作って、オオクボに渡した。
喉が渇いているだろうと思ったので、かなり薄く作った。

オオクボは、それを一気に飲み干して、「美味いな」と、疲れを吐き出すように言った。
さらに、もう一度息を大きく吐き出してから、私の方に体を向けた。
口元に、言いようのない豊かさが見える。
目は、人の意思を表すが、口元には人間の本質が見える、と私は思っている。

あらゆるもので自分を武装しようとしても、下卑た人間は、口元が下卑ている。
政治家の口元が、その証拠だと言ったら、偏見が過ぎると怒られるだろうか。
口先だけで生きている人間の口元は、下衆の口元になる。
私の口元は、誰が見ても下衆に見えるだろう。

しかし、オオクボの口元には、何とも言えない優雅さがあった。
思わず「いい大人になったな」と言っていた。
オオクボは、軽く笑っただけだった。

それから、仕事の話になった。
オオクボは最近、ウォーターサーバーの会社の顧問を頼まれたという。
企業や家庭にサーバーを貸し出して、ひと月ごとに一定の金額の料金を取るシステムだ。
競争が激しいので、それほど儲かってはいないということだ。
だから、コンサルタントのオオクボに、「お知恵を拝借」という依頼だった。

私も一度無料で借りてみたことがある。そして、無料期間だけでやめた。
水道水よりも少し美味しい程度だったからだ。
支払う対価に見合わない味だと思った。

美味い水が飲みたいときは、浄水ポットを利用している。
これは、ポットの中の浄水フィルターが、塩素などを除去して、まろやかな水にしてくれるものだ。
2か月に1回程度、フィルターを取り替えるだけだから、こちらの方が経済的にもいい。

ウォーターサーバーもいいが、浄水ポットのレンタルも考えてみたらどうか。
儲かるかどうかは、俺は素人だからわからない。
それを考えるのが、お前の仕事だろ。

そう言うと、オオクボは小さく笑いながら頷いた。
オオクボの高級そうな時計が、9時半を指しているのが見えた。
オオクボが3杯目の水割りを飲んでいる。
私は、7杯目のロックだ。

料理は、オオクボが好きだというアジフライ。
ほとんど何の苦労もなくかみ切れるフライの感触。しかし、口の中にアジの濃厚さが広がるのである。そして、食べ終わった途端に消える。
居酒屋の料理のお手本のような味だった。

「気づいていたか?」
オオクボが、自分のグラスを見ながら言った。
「何が?」
「俺たちが一緒に酒を飲んだのは、去年が初めてだったんだよ」

ああ、確かにそうかもしれない。
大学時代は、オオクボが私を避けていたような気がする。

「そして、二人きりで酒を飲むのは、今日が初めてだ」
オオクボが私を見た。
仏のオオクボ。
しかし、昔はいつも眉間に皺を寄せて険しい顔をしていたものだ。

今は、羨ましいくらい、いい顔をしていると思った。

「俺と一緒に、酒を飲みたかったのか?」
私が言うと、オオクボは、一度顔を天井に向けて、「ああ」と頷いた。

「気持ち悪いな」
「確かにな」

二人の笑い声が、暗い空間に漂っていた。



★気持ち悪い人は、CG「診察室」


2008/07/01 AM 06:52:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.