|
|
● モンスターになれなかったオヤジ |
|
オヤジは、いま反省しております。 余計なことをしてしまったのではないかと・・・。 とんだ勇み足。
眠れない夜は続く。
ことの発端は、中学1年の娘が吹奏楽部に入ったこと。 他の中学校の部活動はどうか知らないが、娘の行く学校の部活は午後6時45分に終わる。 3時半に授業が終わったとして、部活動の時間が約3時間。 そして、朝練(早朝練習?)なるものがある。 朝練は、7時半から1時間程度やるらしい。
無駄に長い。
私は、こういった悪しき伝統が、気にくわない。
一人ひとりの個性を無視して、みんな一緒に長い時間練習をしましょう、というのは個を認めない行為である、と常々思っている。 長い時間練習をしたとしても、練習の意味をそれぞれが理解した上でなければ、本当には身に付かないはずである。
吹奏楽は、全員の調和が大事である。 だから、揃って練習するというのならわかるが、1学期は、全体練習はないと言う。 全員が時間内に適当に音を鳴らして、時間がくれば、自動的にお終いという練習方法らしい。
意味がわからない。
「みんな考えながら練習してるのか」と私が聞くと、娘は首を振って「顧問の言う通りにやるだけ。そうしないと、音楽の授業にも影響するらしい」と言うのである。
まさかそんなことはないと思うが、もしそれが本当なら、あってはならないことだ。 部活動と音楽の授業は、まったく違うものである。 それは、一種のファシズムではないのか。
「でも、現実はそうなのさ。まあ、いいんじゃねえの。真面目にやってる振りしてりゃ、向こうも機嫌がいいんだからさ」 そう娘は、あっけらかんとして言う。
しかし、私は納得できない。 なんだ、この中学は!
そんな中学に対しての嫌悪感が、今回の勇み足の要因だったかもしれない。
先日、娘が夜の7時40分を過ぎても帰ってこないことがあった。 何だよ! 長い部活だな。こんな時間まで練習させるなんて、非常識じゃねえか。 そう思って、学校に電話をした。
文句の一つでも、言ってやろうかと思ったのである。 しかし、部活はいつも通り6時45分で終わって、生徒たちも帰り、顧問も帰ったというではないか。
学校から我が家までは、ゆっくり歩いても15分程度。 いままでは、遅くとも7時10分には帰っていた。 それを聞いて、私は「おかしい・・・・」と呟いた。
その呟きが、いけなかったのかもしれない。 電話に出た教師は、「そうですね、おかしいですね。お子さんの担任は帰りましたが、他のものと相談してみましょう」と早口で言って、電話を切ったのだ。
こちらは、無駄に長い部活動に文句を言おうと思って電話したのだが、事態は娘の「不明事件」へと発展してしまったのである。
それからが、大騒ぎだった。 私と高校3年の息子は、自転車で団地内を駆け回り、子どもたちがたむろしそうな場所を探し回った。 教師より早く見つけないと、娘の立場がない。 大袈裟な事件扱いになったら、娘が可哀想だ。
私と息子は、夜の団地を隅から隅まで、探し回った。 団地の集会所やベンチの置いてあるスペースが、一番可能性が高いと思ったが、全部空振り。 公園にもいない。コンビニにもいない。スーパーにもいない。ドラッグストアにもいない。 30分走り回ったが、娘の姿はどこにも見えない。
「どうしたんだ! まさか誘拐!」と蒼くなりかけたとき、私が住む棟のすぐ近くの棟の上階から娘の声が聞こえた。 「何だ、友だちの家にいたのか。よかった!」と思ったら、娘とお友だちが教師二人と階段を下りてくるのが見えた。
教師の方が、先に見つけやがったのである。 しまった! 最悪の事態だ!
友だちの家の前で、時間を忘れるほど話し込んでいたら、その声を巡回していた教師に聞かれて、捕まったらしい。 教師は不機嫌な顔をしていたが、娘と友だちは、無表情である。 あとで聞くと、謝ろうとしたが、何を言っても「言い訳をするな!」と叱られたらしい。
教師はまだ、高ぶった声で、「何で、早く家に帰らなかった!」と怒っている。 怒られた娘と友だちは、お互い顔を見合わせていた。 そして、娘は最初に友だちの顔を見たあとで、私の顔を見て、2度3度と頷いた。
親バカと言われるのを承知で書くが、私は娘と12年間濃厚な付き合いをしてきたから、彼女の表情で、ある程度のことは察することができる。
この頷きの意味は、「とりあえず、謝っておこうか」というものだったと思う。 自分たちは、おそらく大人たちに心配をかけたのだろう。 だから、ここは謝っておけば、無用な波風は立たない。 ここで、さからってはいけない。 だから、娘は、もう一度謝ろうという態度を見せた。
しかし、教師はただ怒るばかりで、娘たちの反省の意を汲むことをせず、「どれだけ、皆さんに迷惑をかけたのか」ということを延々と熱弁を振るうだけだった。
そうしている間に、探し回ってた教師たちが、教師の興奮した口調を聞きつけて、集まってきた。 その数3名。申し訳ないくらいの大事になってしまった。
教師にも申し訳ないと思ったが、娘たちにも申し訳ないという気持ちで、私は居たたまれない気持ちになった。
これ以上の説教はいい、と私は思った。 確かに遅くなった娘は悪いし、人に迷惑をかけた。それは、事実である。 だが、謝ろうと思っている人間に対して、長々と説教を続けるというのもいかがなものか。
我が家では、「悪いことをしたら、とりあえず謝ること」と教えてある。 まず謝ることが、第一番の礼儀である。 そうすれば、過ちを認めたことが相手にもわかる。 反省していることがわかれば、相手も冷静になる。 だから、その出来事が尾を引くことはない。
娘と友だちは、無表情ではあったが、明らかに謝ろうとしていた。 ただ、機先を制されてしまったのだ。 謝るタイミングを逸した。 教師が、そのタイミングを奪ってしまったのである。
怒ることを優先では、怒る側の一方通行にしかならない。 それでは、怒られた側は納得しないだろう。
娘たちに謝らせてくれなかったので、私は教師の説教に無理矢理割って入って、集まった教師全員に頭を下げた。 そうしたら、熱い教師は、叱るのをやめた。
しかし、彼は、娘たちに向かって「明日の朝、もう一度職員室に来なさい」という捨てぜりふを残すことだけは忘れなかった。
長い説教が終わって、全員にもう一度頭を下げてから、私と娘は、教師たちに背を向けた。
5メートルほど歩いて、娘が、「麻婆春雨、食いたいな」と突然言った。 何という偶然! 我が家の晩メシは、麻婆春雨だったのである。 二人の考えが一致したので、私たちは控えめにハイタッチをした。
しかし、この状況でハイタッチはまずいか、と後ろを振り向くと、娘の友だちを自宅まで送っていく教師と目があった。
これは、ヤバイ! と思ったが、今さら取り繕っても、もう遅い。
知らんぷりをした。
だからというわけではないだろうが、翌日、娘と友だちは、それぞれの担任と学年主任に、強烈な説教を食らったという。
「ちゃんと謝ったか」 「謝ったけど、少しこちらが何か答えると、言い訳をするなって怒るんだよ。黙って、先生の言うことに頷いていたら、『本当にわかってるのか』って言うし。少し黙ると『聞いてるのか!』って言うし、どうすればいいかわからなかった」 娘は、納得いかない表情で言う。
教師には、独特の尺度があるようだ。 おそらく、彼らが反省していると見えなければ、反省していないことになるのだろう。 それは、あくまでも彼らの主観で、生徒の感情は多くの場合、無視される。
以前にも、ブログで書いたが、教師は生徒にとって王様である。 王様である教師は、おそらく支配を教育と勘違いしている。 3分で終わる説教を延々と続けるのは、支配者の愉悦以外の何ものでもない。
ため息が出る。
私が学校に電話しなければ、こんなことにはならなかった。 いっそ、今流行りのモンスターペアレントになって、「謝ってるんだから、ネチネチと説教してんじゃねえよ! カツアゲしたり、万引きしたわけじゃねえんだから!」と、談判してやろうかと思ったが、冷静な娘に、こう言われた。
「まあ、気にすんなよ。今回のことで、中学教師って、そんなもんだってのが、わかったからさ。いい勉強になったよ」
その娘の言葉だけが救いである。
モンスターにならなくてよかった・・・・・。
(余談ですが、いまモンスターペアレントがメディアで話題になっていますが、私の感覚では、モンスターティーチャーの方が多いような気がする。教室というほぼ密室の中での行為は、外には伝わりにくい。そして、独裁国家の不祥事は、独裁者自らの手で隠すことが出来る。だから、ペアレントだけがモンスターという報道の仕方に、私は疑問を感じています)
★モンスターになりたくない人は、CG「夫婦の距離」。
|
2008/04/28 AM 07:01:13 |
Comment(3) |
TrackBack(0) |
[子育て]
|
|
|
|
(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.
|