Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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エステが1万5千円
京橋のウチダ氏と仕事をした。

それは、リラクゼーション・サロンが、1周年記念に、お得意様にプレゼントするバッグを作るという仕事だった。
私はデザインを請け負ったのだが、これはそれほど難しいものではなかった。

サロンのイメージカラーは元々決まっていたし、ロゴもすでにある。
バッグの種類は、トートバッグにすることにしたから、形状も常識的なものだ。
ロゴの配置と紐の部分の色に気を配るだけだったから、デザインは一回で決まった。

仕事は、ウチダ氏の事務所で、ノートPCを2時間程度動かしただけで終わるくらいの、拍子抜けする仕事だった。
あまりにも簡単に終わったから申し訳なく思って、神田の鞄メーカーとの折衝を、多忙のウチダ氏に代わってしたのだが、これも簡単に終わった。

「この仕事、俺じゃなくても・・・」とウチダ氏に言うと、「ヒマなやつは、Mさんしかいなかったんだよ」と、憎らしいくらい爽やかな笑顔で、正直に言われた。

そう言われると、何も言えなくなる。

「請求書早く寄こせよ。支払いは早い方がいいだろ」とまで言ってくれる、ナイスガイ・ウチダ氏。
そして、「今回のお礼にビール一箱Mさんちに送っておいたからな」と付け加えたときは、ウチダ氏に抱きつきたくなった。

ただ、私には、そちらの方の気はないので、「サンキュー」と言うだけにした。

しかし、そんな厚いもてなしを受けながらも、私はウチダ氏の事務所で、スーパードライをご馳走になりながら、彼の好きなジャイアンツの悪口をボロクソに言うのである。
我ながら、どんな性格をしているのだろう、と自分を呪いたくなる。

「そんなひねくれたやつは、体の奥が腐ってるんだ! これをやるから、体を清めて来い!」
そう言って、ウチダ氏がテーブルの上に置いたのが、リラクゼーション・サロンの無料招待券だった。

今回、バッグを作ったリラクゼーション・サロンである。
有効期限4月30日まで、と書いてある(早く行かねば)。

無料、と書いてあるから、タダなのだろう(当たり前)。

タダで、体がリフレッシュできる。
こんなに素晴らしいことはない。
要予約、と書いてあったので、早速電話をした。
3時半からなら空いていると言われたので、予約をした。

時計を見ると、もう30分もないではないか。
「フレーフレー! ジャイアンツ!」と嫌味なエールを送って、ウチダ氏の事務所をあとにした(ウチダ氏の呆れ顔に見送られながら)。

ウチダ氏の事務所から、銀座のリラクゼーション・サロンまでは1キロくらいだ。
3時20分に着いた。

一度打ち合わせに来たことがあるので、中の雰囲気はもうわかっている。
受付の女性が、中島美嘉に似ているというのも知っている。
白のコスチュームを着た中島美嘉は、何となく巫女さんに見える。
厳かである。

その厳かな受付に、少し気後れを感じながら、無料招待券を置いた。
「無料? この貧乏人が!」という冷たい目で、中島美嘉に見られたら、どうしようかと思った。
ただ、この人は、そんな冷たい目が似合いそうだったので、見られてみたい気もしたが。

しかし、中島美嘉は、CGのような型通りの笑顔を作って、「かしこまりました」と頭を下げただけだった。
そして、「この券では、こちらのコースだけになりますが」と、手をさし向けられた方を見ると、「アロマコース90分・1万5千円」となっていた。
他のコースを見ると、「2万5千円」というのもある。

1万5千円!

それを見て、体が震えた。

1万5千円が、タダァ!

逃げ出したくなった。

巫女の中島美嘉が、私を見つめている。

ゴクッ!
静寂な空間に、みっともなく、ツバを飲み込む音が響く。

90分で、1万5千円?
それは、19円のもやしが、何個分だ!?

それだけあれば、一家四人のひと月分の食費になる。
何と、もったいない!
これをお金に換えてくれたら、どんなに嬉しいだろう!

大きな溜息が出た。
巫女の中島美嘉は、CG顔を崩さず、まだ私を見つめていた。

そこで、「もっと、お安いのは?」と、試しに聞いてみた。
中島美嘉が、ゆっくりと首を横に振る。
どうやら、これが一番安いコースのようである。

さすが銀座! 金持ちの街!

90分間、借りてきた猫のようにおとなしく施術を受けて、まるで他人の体に入れ替わったような感覚で、サロンを出た。

施術を受けている間も、1万5千円が、ずっと頭にこびり付いていたから、少しも気持ちよくなかった。
スタッフの方には申し訳ないが、無駄なことをしているとしか思えない。
わけもわからず、体をいじられて、1万5千円である。

そもそも、私は肩の凝らない体質なのである。
体も柔かい。
ただ、オヤジ臭いだけなのだ。
オヤジ臭さを取るだけなら、15分千円くらいでいいではないか。
もっとコースを増やして欲しいものだ。

そんな呪いの言葉を吐きながらの帰り道。
上野駅の売店で発泡酒を買い、ホームのベンチに座って飲んだ。
体内に注入された、気取った血液を流す勢いで、ほとんど一気飲みした。

プッハァー! と息を吐いて、ようやく落ち着いた。
普段の自分に戻れた気がした。

家に帰る途中で、部活帰りの中学1年の娘と出くわした。

「おや? 今日は、酒臭いだけじゃないな? なんか甘い匂いがするぞ! 怪しいぞ、これは? まさか、ユー、ダブリュー、エー、ケー、アイ、じゃないだろうな」

「エム、エー、エス、エー、ケー、エー!」



★娘に疑われたら、CG「ビル街のスケボー野郎」


2008/04/22 AM 07:00:18 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]



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