Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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自由業と自営業、そしてルックス
人間は見た目と肩書きなのか、というお話。

まずは、中学1年の娘とのおバカな会話。

「いいかい、人間を顔で判断してはいけないよ」

「『人間は心だ』なんて、当たり前なことは言うなよ!」

「いや、人間は顔じゃない! 心でもない! ルックスだ!」

ここで、必ず娘に、頭を叩かれる。
馬鹿な父娘(おやこ)である。

ルックスと肩書きは、大事だ。
しかし、時に大きな誤解を招く。
母が2年前、手術で入院する際に、担当の医師と方針について話し合うことになった。
つまり、インフォームド・コンセントというやつだ。

このとき私は、得意先のパーティの帰りだったから、三つ揃えのスーツを着ていた。
自慢するわけではないが(というフリの時はたいていは自慢だが)、私は身長180センチあるから、スーツを着ると、それだけでまともに見える。

普段は、まったく冴えない吐き気がするほど汚いオッサンだが、スーツを着るとまともに見える。
そして、その時、母が医者に余計なことをいった。
「この子は、自営業なんですよ」

それを聞いて、医者の目の奥が、キラッと光った(ような気がした)。

母は、フリーランスの意味がわからない。
いつも、フリーターと間違えていた。
だから、私は「自由業だよ」といつも言っていたのだが、母は、それを「自営業」と覚えてしまったのである。

自由業と自営業は、違う。
簡単に言えば、自営業には、金持ちの匂いがする。
庭付き一戸建て、外車、別荘、海外旅行、そして愛人・・・。

もちろん、自由業にも金持ちは沢山いるだろうが、私が貧乏だから、私の中では、自由業は貧乏という概念が完全に出来上がっている。

「自営業」という言葉を聞いた医者は、「今なら個室が空いていますが」と、鼻の穴をふくらませながら、私の目を見つめた。

いくら母が言ったとしても、私を自営業と信じるなど、彼も、たいした医者ではない。
スーツを着ているからまともに見えるとはいえ、私の顔をよく見れば、貧乏が染み込んでいるのは歴然としているだろう。

こいつ、ヤブ医者だな、と思ったが、病院も商売だから、個室を埋めて利益を上げなければいけないのは、理解できる。
ただ、彼は明らかに相手を間違えている、と思った。

だから、私は抵抗した。
「いや、4人部屋とか6人部屋でいいですよ」
すると、医者はゆっくりと首を振って、外人のように肩をすくめ、「社長さん」と言うのである。

俺は、社長さんじゃない!
それに、こんなとき普通は、「息子さん」とか言うんじゃないのか。
その言い方は、おかしいだろう、そう思ったが、何となくいい響きなので、その言葉の響きに酔っていた。
それが、間違いのもとだった。
医者は、その隙を見逃さずに、こう言ったのである。

「社長さん、生憎ただいま大部屋がふさがっていまして、個室しか用意することができません。もし大部屋がいいと仰るなら、空いた時点でそちらに移っていただくということで、いかがでしょうか? お母さまの病状から判断しますと、一刻も早く手術をされた方がいいと思われますので、ためらっている暇はありません」

そう言われたら、すぐにも入院させるしかない。

しかし、それは、まったく相手の思うつぼだった。
結局、約3週間、母は個室のままで、入院費は体が震えるほど高額なものになった。
このときは、ヨメに「いいじゃない。お義母さんが個室でノビノビできたんだから」というありがたいお言葉をいただき、ヨメの許しを得て、バンジージャンプで谷底に飛び込む気分で、定期預金を解約し、支払いにあてた。

今でも、あのとき医者に「自営業」と言っていなければ、こんなことにはならなかったと思っている。

人の判断基準で、見た目と肩書きは、大きい。
他に判断すべきデータがないときは、この2つさえあれば、いくらでも妄想をふくらませることができる。

この間、さらに、こんなことがあった。

リアルイラストの達人・イナバが、すかいらーくでの打ち合わせの最後に、こんなことを言ったのである。
「車、クラウンにしました」

イナバは、それまでダイハツ・ムーブに乗っていたが、子どもが大きくなったので、ムーブでは狭く感じるようになった。
そこで、買い換えることにしたのである。

イナバも私同様、貧乏くさい顔をしている。
しかも、背が私ほど高くないから、「金持ちルックス」からは、かなり遠い位置にいる。
そして、貧乏揺すりがひどい。
爪を噛む癖がある。慌てると、過呼吸になる。
哀れだ。

しかし、彼の奥さんは、美人である。スタイルもモデル並みだ。
車を買い換えるとき、奥さんが付いていった。
車の説明を受けたとき、まるで美人女優のそばに控えるマネージャーのような存在のイナバは、完全に主導権を奥さんに取られたまま、結局クラウンを買わされるはめになった。

中古車販売店の営業マンは言う。
「社長様の奥様は、やはりクラウンが一番お似合いです!」

美人の妻を持ったばっかりに、イナバは自由業を自営業と間違えられてしまったのである。

「車は気に入っているんだけど、俺は似合わないねえ。自分でもそう思うよ」
と、大きな溜息をつきながら語るイナバ。
しかし、彼は、だらしなく顔を崩して、こうも言うのである。

「でも、サユリは、クラウンがよく似合うんだなぁ〜。あいつは華があるからねえ! オレ、いつも、ウットリしてるよ!」

思いっきり、スネを蹴飛ばしてやった。



★美人妻を持った人は、CG「黄昏時の部屋」


2008/04/12 AM 07:35:57 | Comment(6) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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