Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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初詣で悩む男
普段は出さないが、正月になると仕事を出してくれる会社が1社ある。
その会社が、ありがたいことに今年も仕事を出してくれた。

得意先から「原稿取りに来て」という電話をもらうと、他の何よりも年末を実感する。
これは、私にとって重要な年中行事だ。
もしも、この仕事が来なくなったら、私は年末年始をどう過ごしたらいいか、わからなくなるだろう。

ただ、この仕事はいつもかなり急かされる。
1月4日までに校正を何度か出して、5日の朝までに校了にしなければいけないのである。
このスケジュールは何とかして欲しいといつも思うのだが、相手も正月がつぶれるのだからお互い様だとも言える。

いずれにしても、仕事をくれるのは有りがたいことだ。
いつも感謝している。

感謝しながら仕事をしていると・・・。

巨漢ラーメン男のスガ君から、電話がかかってきた(彼のことについては、こちらを参照してください)。
「すみません」が第一声だったから、また何かやらかしたのか、と思った。

しかし、続けて「子どもが産まれました」と言うではないか。
「おめでとう! いつ産まれたの?」
「11月2日です」

ハァー!!?
もう2か月近く経っているじゃないか!
なぜ、そんなに報告が遅れた?

(スガ君の奥さんの出産予定日が、大幅に過ぎていることを忘れていた私もどうかと思うが・・・)

「いや〜、Mさん、色々と大変だったみたいで・・・」
赤いタオルで汗を拭く姿が目に浮かぶほど、消え入りそうな声で話す130キロのメタボリックマン。

そうか、スガ君、心配してくれていたんだ。
ブログを書くときは、なるべく生々しい話にならないように、気をつけて書いているのだが、私のことをよく知る人ほど、文章を奥深くまで読みとってしまうのかもしれない。

人の良さだけが取り得の(失礼)スガ君の場合、さらに奥深くまで読みとって、私に遠慮してしまったのだろう。
困ったものだ(この『困った』は、自分に対して言っている)。

ブログは、自分を表現するにはいいツールだが、時として人から大袈裟に受けとめられることがある。
130キロの脂肪の中に、「心配」を詰め込んだスガ君のような人には、心配の種を植えつけるようなものだ。
ブログの内容を、もう一度練り直す時期が来ているのかもしれない。

「で・・・、男の子、女の子?」
「女の子でした。3800グラムのビッグベビーです」
「奥さんは、元気?」
「元気ですよ。ギャル曽根状態です」

つまり、食いまくっているということか。
それは何よりだ。めでたい!

「お祝いは、何がいい?」
私がそう言うと、スガ君は絶句した。

10秒の沈黙。

スガ君は、貧乏人の私にお祝いをねだるのは、非常識だと考えているのだろう。
彼の頭の中では、私の申し出をどう断ろうかと、使い慣れない言葉が渦を巻いているに違いない。

ここまで気を遣われると、こちらも居たたまれない心境になる。
「ああ・・・、まあ〜、ゆっくりと考えるからさ。君も考えといてよ。あまり高いものをリクエストされても困るけどね、ハハハ・・・」

最後の方は言わなかった方が良かったのかもしれない。
スガ君の沈黙の中に、大きな息づかいが混じっていた。

・・・・・・・(~ヘ~;)ハァハァ

「とにかく、おめでとう」
そう言って、静かに電話を切ったのだが、後悔だけが残った。
もう少し、違う言い方ができたのではないだろうか・・・(反省。まるで深海で落ち込む干物魚のように?)。

そして、すぐにまた電話が鳴った。
スガ君からか、と思ったが、WEBデザイナー・タカダ君からだった。

「師匠、今年もあと2日でおしまいですね。でも、大晦日と元旦の間には、普段と同じ時間が流れているだけなんですよね」(これは、私がいつも彼に言っている言葉だ)
ノーテンキなダルマの声を聞くと、なぜか落ち着く。
彼は、間違いなく私を癒してくれる友人である。

「ねえ、師匠。元日、Tさんと初詣に行く約束したんですよ。どこがいいですかねえ。
やっぱり、定番と言えば明治神宮ですかね。それとも鶴岡八幡宮。いや、成田山? 川崎大師
伏見稲荷は京都だから、ちょっと遠いですよね。京都に行くのなら、泊まりの方がいいから、それは、Tさんがなんて言うかなあ。いやあ、それは無理でしょう。無理無理!
オレとしては、生まれ故郷に近い中尊寺もいいんですけど、岩手県ですから、やっぱり、無理ですかねえ。
いや、一応Tさんに聞くだけ聞いてみましょうか。ねえ、師匠、どう思います?」


電話を切った。


★初詣に迷ったら、今日のFLASHゲーム


2007/12/30 AM 08:02:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

パオッパオ〜
大宮の印刷会社に挨拶回りに行った帰りに、街をうろついた。

午後2時過ぎ。
クリスマスが終わって、年末の忙(せわ)しなさを、街も、道行く人も濃厚に発散している時間、そして空間。
冬の太陽が、冷気鋭い風に簡単に打ち負かされ、手袋をしていない両手を凍えさせる。

左手をポケットに入れ、かじかんだ指先を冷気から守る。
右手はバッグを持っているので、冷気を受けている。だから、指先が痛い。
時々、右左を入れ替えながら、雑踏の中を歩いた。

スクランブル交差点で、トイプードルを散歩させている若い娘がいた。
3分の2ほど渡ったところで、信号が赤に変わったが、彼女はまったく優雅に信号を渡って行った。
ドライバーも辛抱強く、娘が渡るのを待っている。

若い娘は得だ。
そして、どんなときでも、ミニスカートは強い。
おばさんなら確実に、クラクションの嵐を浴びていることだろう。
たとえどんなに短いスカートをはいていたとしても、ドライバーは、おばさんには容赦がない。
その線引きは、見事と言うしかない。

どんなときでも、それくらい公平に対処して欲しいものだが、ドライバーの感情はいつでもエモーショナルだ(ルー大柴?)。
「世界は、オレ様の車を中心に回っている。オレ様以外はすべて虫けらだ」
唯我独尊のお子様ライダーが、わが物顔で埋め尽くす狭い車道。

前の車が少し速度を緩めただけで、パオッパオ〜〜
たいして混んでいる気配もなく、誰も邪魔をしている人もいない。
右折車は、所定の場所に停まって信号が変わるのを待っているのに、年末の空に、いくつものパオッパオ〜が重なる。
前からも後ろからも、パオッパオ〜が響き渡る。

車は、自然に流れている。
どこにも停滞はない。
それなのに、なぜクラクションが響き渡るのか?

戸惑いと苦笑を心に抱えながら、スクランブルを後にする。

5、6年前の12月のことだったが、横浜の山下公園そばの駐車場に車を停めていたら、斜め後ろからぶつけられたことがあった。
こすった程度だったが、紛れもなくそれは事故だった。
ぶつけた後で、その車のドライバーは、信じられないことに、クラクションを鳴らしまくって逃げていこうとした。

車内にいた私は、その状況が信じられずに、呆然としていた。
知らんぷりして逃げるのなら、多少はわかるが、クラクションを鳴らしっぱなしにして逃げることなど、想像もつかないことだ。

パオッパオ〜、パオッパオ〜〜〜!

数秒後、我に返った私は、車内から出て、車を追いかけた。
入りくんだ駐車場内だったので、相手の車もそれほどスピードを出していなかったから、すぐに追いつくことができた。

私がドアを叩き、窓を叩くと、相手はすぐに止まった。
そして、降りてきた。
肩を揺らして、首を少し斜めにして、私を下から睨む仕草は、ステレオタイプのチンピラだった。
それから、そのチンピラは、驚いたことに、私に唾を吐きかけてきたのである。

これは、私の想像をはるかに超えた行為だった。
私は咄嗟に避(よ)けたが、ズボンの裾に、そいつの唾が少しかかってしまった。

こんなとき、皆さんだったら、どうしますか?

相手の襟首を掴む。
いきなり右ストレートを出す。
蹴る。

色々あると思いますが、その時の私は、またも呆然としてしまったのです。
だって、そいつは、私に唾を吐きかけると同時に「バーカ!」と、まるで幼稚園児のように叫び、私に背中を向けて駈けだしてしまったのですよ。

年齢は、30代半ばに見えた。
あごの細い、見るからに意志薄弱という顔の男だったが、ブランド品に身を包んだ外見は、モデル体型だった。
ディップで固めた茶髪は、どんなときでも乱れることなく、逃げるときも同じ形を保っていた。

駐車スペースをはるかに外れて、斜めに置きざりにされた茶髪男のトヨタカリーナ。
そして、車を置き去りにして逃げていく茶髪男は、もう一度振り返って、歪んだ顔で「バーカ!」と叫んだあと、停まっていた車にぶつかって、弾け飛ぶように倒れた(まるで、ドリフのコントのように)。

男は、左手首を骨折して、救急車で運ばれていった。
ここまで馬鹿馬鹿しい光景を見たら、もう笑うしかない。

そして、あの時のパオッパオ〜と、今日の意味のないパオッパオ〜の違いは何だろう、と思った。

たいして変わらないんじゃないか、と思った。
それは、お子様たちの精一杯の自己表現。
「オレは悪くない! 悪いのはオレじゃない! オレ以外の誰かだ!」

どちらにしても、年末のクラクションは、悲しすぎる・・・。


★悲しいときには、今日のFLASHゲーム


2007/12/28 AM 08:14:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

3980円のMac
年末の慌ただしいときに、同じ団地に住む40代独身男から、「正月はパソコンを覚えるために頑張りたいから、できるだけ安くパソコンを揃えられないか」と相談を持ちかけられた。

できるだけ安くって、具体的にどれくらい?
「とにかく、限りなくゼロに近く」と、無茶なことを言う「こなきじじい」(そっくりなので)。

そして、「ものになるかわからないものに、あまり金をかけたくない。だから、とにかく動けばいい」とまで、こなきじじいは言うのである。

しかし、そんな心構えでパソコンが習得できるだろうか?
高価なものを買って、それを無駄にしないように頑張る、という人の方が世間では多いのではないだろうか。
最初から半信半疑で取り組んで、うまくいくとは思えないのだが。

私がそう言うと、「だってオレ、最後まで思い通りにいったことが一度もない人だから」と威張るではないか。
それを聞いて、馬鹿馬鹿しくなったが、私は根本的に馬鹿馬鹿しいことが好きなので、結局は引き受けることにした。

MacでもWinでもいい、と言うので、マイナーなMacで揃えることにした。
しかも、ほとんど化石に近い「OS9」のMacを選んだ。

初心者め! フリーズの怖さを思い知るがいい!

まず、Mac本体は、近所のハードオフで、「メモリなしハードディスクなし、ジャンク品」というのを1500円で売っていたので、それを買った。
CPUは、G3/450MHzだ。
最新のマシンと比べるとオモチャみたいなものだが、私の機械より早いものを選ぶのは嫌だったので、これに即決した。

モニタは、やはりジャンク品コーナーで、COMPAQ製の17インチのCRTが500円で売られていたので、それを買った。
メモリは、大宮のドスパラ内に、やはりジャンク品コーナーがあって、128MBのメモリを1枚100円(!)で売っていたので、4枚買った。

内蔵ハードディスクは、使っていない20GBの在庫があったので、それを使うことにした。
これも、以前ジャンクコーナーで480円の値札が付いていたものを買って、ストックしておいたものだ。
キーボードとマウス、電源コードも、予備に取っておいたもので間に合わすことにした。
実は、これもジャンク品を買って、ストックしておいたものである。
3つ合わせて、たしか1100円くらいだったと思う。

これだけあれば、とりあえず、機械は動く。
そこで、早速組み立てることにした。
ハードディスクやメモリの設置は簡単である。10分もかからなかった。

すべてがジャンク品だが、「もしかしたら使えないかも」とは、思わなかった。
ジャンクだから、動かない確率は高いのだが、過去私が買ったもので動かなかったものはなかった。
だから、今回も動くことを確信して、作業を進めた。

電源を刺して、モニタを繋げ、パワーキーを押すと、起動音がした。
すかさず、OS9のインストールCDをトレイにのせ、機械にのみ込ませた。
そして、「C」のキーを押しっぱなしにしていると、30秒ほどしてOSのマークが出てきた。
つまり、この機械は使えるということだ。

ハードディスクは、最初からMac用にフォーマットしておいたので、右隅のCDアイコンの下にHDのアイコンがマウントされている。
あとは、そこにOSをインストールするだけだ。

インストールは、30分もかからずに終わった。
親切心を出して、インターネットエクスプローラーを5.1.7にアップデートしておいて、LANに繋げてみた。
正常に繋がった。

モニタの解像度を合わせ、色の調節をした。
ジャンクと言いながらも、上品な発色で、歪みも少ない。
モニタの外枠が、かなり黄ばんでいるが、映れば文句はないだろう。
もしこれで文句を言ってきたら、「じゃあ、新品を買えよ!」と言ってやろう。

30分ほど動かして、再起動を数回繰り返したが、安定して起動している。
メモリも正常に読みとっている。
余計な機能拡張類が入っていないから、快適だ。サクサク動く。

トータルで3980円也の、ジャンク品オンパレードのMacだが、大事に使えば1、2年は持つのではないだろうか。
これで操作を覚えて、自信を持ったら、最新のパソコンを買えばいい。
そうすれば、3980円の出費は、決して無駄にはならないだろう。

早速電話をして、こなきじじいに、機械を引き取りに来させた。
そして、彼の家まで機械を運び、セッティングした。

ホォーッ!

画面が綺麗に映っているのを見て、こなきじじいは、感嘆の声を上げた。

しかし値段を言うと・・・、
「えっ、こんなに汚いのが、3980円!

そして、
「インターネットが繋がらないよ」

プロバイダーと契約した?
「なに、プロバイダーって?」
そこから説明するのかよ!

「ワードとかは、入ってないの? 友だちのは、最初から入っていたよ」
Macには、入ってません。
「じゃあ、ウィンドウズの方が良かった」

ウィンドウズだって、バンドル版を買わないと、オフィスは入ってませんよ。3980円では無理です。
「何? バンドル版って? オフィスって何?」
何も知らないんだな。

「だから、頑張って覚えようとしてるんでしょ」
じゃあ、頑張って!

「え? 普通、機械を買ったら、アフターサービスがあるんじゃないの?」
機械のセッティングが、アフターサービス。
特別サービスとして、正規品の「MacOS9」のインストールCDも付けます(盤面にキズが付きまくりだが)。
それ以上のサービスは規定の料金をいただきます。

「ケチッ!」

どっちがケチなんだか・・・・・。


★関係ありませんが、今日のFLASHゲーム


2007/12/26 AM 08:06:29 | Comment(6) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

携帯は持っているが、電話はできない
友人から、不要になった携帯電話をもらった。
東芝製である。

もらったものだから、当然契約はしていない。
だから、電話機としては使えない。
しかし、その他の部分では、これはかなり使えるもらい物だった。

まず、音楽携帯として使える。
メディアプレーヤーが入っているから、MP3の音楽ファイルをAACに変換すれば、ウォークマンのように使えるのである。
ビットレートが、128 kbpsだから、音質は期待できないだろうと思ったが、外で聞くだけなら不足はないようだ。

親切にも、1GBのmicroSDも付けてくれたから、曲も大量に入る。
好きな曲を60曲入れても、250MB以内で収まっている。
電車で移動の時に聞いているのだが、それまでは車内では文庫本を読んでいたが、音楽を聴くようになって、目の疲れが格段に違うことに気づいた。

揺れる車内で文庫本を読むと、たまに目の奥に軽い痛みが走ることがあったが、お気に入りのジャズなどを低音量で聴きながら本を読むと、それがないのだ。
好きな音楽は、体をリラックスさせてくれるようである。

そして、この携帯でもう一つ私を驚かせたのは、デジカメ機能だった。
画素数が320万画素近くあって、ズームもできる。
キャノンのイオスのサブとして、この携帯でイベントの様子を撮ってみたが、かなりいい発色で撮られていた。

画像を細かく見てみるとノイズが多少目立つのは、携帯の性質上、ある程度しかたのないことだろう。
それはフォトショップで彩度などを調節すれば、それなりに抑えられる。
また、全体的に画像が平坦になるが、それは対象物以外をボカすことで、立体感を出すことができる。

イベントの写真を50枚撮って、microSDに保存しても、20MBほどである。
これをカードリーダーで読み込めば、Macに簡単に転送できるから、まったく普通のデジカメ感覚で扱える。

イベントの案内に載せる画像をその方式で作ってみたが、誰も携帯のデジカメで撮ったとは、気付かなかった。
キャノンのイオスで撮ったものと比べたら一目瞭然だが、比べなければ、まったく気にならない。
スナップとして使うには、充分な画質だ。

携帯のデジカメ機能は、オモチャだという私の偏見は、完全に覆された。
これは、嬉しい発見だった。

携帯電話は、当然のことながら、電話をかけたり、メールをすることを主に作られたものだが、たとえ電話機として使えなくても、かなり役に立つツールだということもよくわかった。

たとえば、カレンダー機能や国語辞書、英和辞書、和英辞書、電卓などは、パソコンほど使い勝手は良くないが、慣れれば過不足なく使える便利な機能だ。
これは、私が今さら言うまでもなく、使いこなしている人は沢山いるだろうが・・・。

この中で、特にカレンダー機能は、重宝している。
スケジュール管理が簡単で、重要な約束を登録しておけば、アラームで報せてくれるから、大事なことでも平気で忘れる私のような人間には、最適である。

メモ帳も便利だ。咄嗟に思いついたことを残しておくとき、自分の字では殴り書きになって、あとで判読できないということがあるが、携帯ではそんなことはない。

今まで私は、携帯電話イコール面倒臭いもの、という発想でいたから、この発見は新鮮なものだった。
携帯電話を持っていたときは、電話さえかけられればいい、メールは使わない、デジカメも、その他の機能もどうでもいいと思って使っていたから、携帯が自分の生活に役立つとは、まったく思っていなかった。

つまり、私は非文明的な人間なのである。

食わず嫌いはいけませんね。

これは、いいものを貰ったと思う。

ただ・・・・・、
私が携帯電話を操作している姿を友人が見ると、「何だ、携帯持ってるのかよ! 番号教えろよ」と必ず言われるのが、腹立たしいくらい鬱陶しいが・・・。


   


2007/12/24 AM 07:52:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

午前4時に脈が飛ぶ
年末の挨拶回りは、昨日無事終わった。
あとは、毎月仕事を出してくれる会社を来週訪問するだけだ。

やり慣れないことをすると、疲れる。
だからだろうか、今朝の4時頃、久しぶりに不整脈の発作が起きて、眠れなくなった。
眠れないから、こうしてブログを書いている。

キーを叩いているときも、頻繁に脈が飛ぶから、かなり気持ちが悪い。
「気持ちが」と打っているときに脈が飛ぶから、「気持ちg」になったりして、デリートキーを押す回数がいつもより、かなり多くなっている。
打ち間違いg、かなり多いtお思いますgあ、お許しくdあさい。

昨日訪問した西川口のデザイン事務所で、私の顔を見た担当者は、挨拶をする間も与えず「機械の調子が悪いんだけど」と言ってきた。

は?

私が固まっていると、「聞こえてるの! その機械、調子悪いんだ。ちょっと見てよ」と、顎をクイッと隣のデスクの機械の方に向けた。

「顎でこき使う」、まさにその通りの動作だった。
機械の前に行くと、それはウィンドウズ。
「ああ、ウィンドウズ入れたんですか?」
確か9か月前に来たときは、これはなかったように思う。

「そんなことはいいから! 壊れて困ってるんですよね!」
怒られてしまった。

こんな扱いを受けて、ニコニコとしていられる人は聖人である。
普通は、「なんだこの野郎! オレはおまえの部下じゃねえぞ!」という思いを目に込めて、睨むところではないだろうか。

しかし、私は今回だけは聖人だった。
お客さまは神様です、という古いフレーズを思い浮かべ、厳粛な顔をして頭を下げた。
「申し訳ありません。私はMac専門なので、ウィンドウズは専門外なんです」

私がそう言うと、相手は無言で下から威圧するように睨み上げ、「同じパソコンだろ! プロだったら何とかしてくれよ!」とスゴむのだ。

ゴタゴタぬかすな! 直さねえと、蹴り入れてやるぞ!
そんな感じだろうか。

しかし、同じパソコンとは言っても、OSが違うと、対処の仕方がまったく違ってくる。
同じほ乳類だからと言って、人間とクジラに同じ薬を与えていいという理屈にはならない。
それと同じである(同じではない?)。

私は聖人の厳粛さを顔に浮かべたまま、また頭を下げた。
「専門外の機械に手を出して壊してしまったら、そちら様に迷惑になりますので、それはご勘弁ください」

しかし、相手は言うことを聞かない。
「オレがいいって言ってるんだから、見るだけ見てよ! どうせ調子悪いんだから!」

相手がまったく引き下がる気配がないので、仕方なく機械を見ることにした。
OSは、Windows XP Professional だ。

我が娘が持っているウィンドウズもこれである。
私が友人から借りっぱなしのノートPCもこれだ。
だから、馴染みがある。
調子が悪いときは、適当にイジって直している。
だが、得意先の機械を「適当に」イジるわけにはいかない。「適当に」壊してしまうかもしれないからだ(?)。

この場合は、見たふりをして、「無理です」と言って、帰るのが一番いい方法だ。
一応、カタチだけでも症状を聞いてみた。

XPの自動アップデートができない。
手動でやってもできない。毎回、エラーになる。
ダウンロードファイルが壊れている。
ダウンロードしたインストーラーも壊れている。
回線は正常である。なぜならインターネットやメールは、問題なくできるから。
ワードやエクセルも問題なく動く。
ただ、オフィスのアップデートファイルをダウンロードしても、ファイルが壊れているから正常にアップデートできない。

・・・こんな症状らしい。

これを聞いて、一つ思い当たることがあった。
そこで、「プロダクトキーの付いたXPのCDはありますか?」と聞いてみた。

「ない」と即座に言われた。
そして、「最初から入ってたからね」と面倒臭そうに付け加えた。
最近の機械は、自作でない限りOSがプリインストールされている。だから、それは珍しいことではない。
だが、普通はリカバリ用のCDも付いているはずである。
それがない、とキッパリと言われた。

ということは、このXPは正規のものではない可能性がある。
私が知人から借りているノートPCが、そうだった。
組み込まれていたOSが初期のXPで、しかも正規品でなかったから、アップデートができなかったのである。

私は、オークションでXPの正規品を手に入れて、その現象を回避したが、この場で「これは正規品ではない」と言っていいものだろうか。
それは、失礼に当たらないか、と考えた。
それに、正規品だが、CDをなくしてしまったということも考えられる。

ただ、こんなことをいちいち聞くのは、面倒だ。
だから、「申し訳ありません。私の力不足です」と頭を下げて、何の話もしないまま、その会社を出てきてしまった。
何のために行ったのか、わからない訪問だった。
疲れる。

そして、長い文章を打つと疲れる。
これを打っている間も、脈が50回以上飛んだ。

じkおくは、いや、時刻は、午前5時9分。
あとは、GIFアニメを作るだけ。
今度は何回、脈が飛ぶかnあ・・・・・。




2007/12/22 AM 07:48:29 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

年末の挨拶回り
年末の挨拶回りを始めている。
今年は、これが結構忙しい。

しかし、それは仕事先が増えたからではない。
逆に減ったからだ。
今年はいつになく危機感を持っているから、いつもはサボっている挨拶回りに、かけずり回ろうと決めたのだ。

例年なら、挨拶回りは、4社を回るだけだった。
悲しいことに、確実に毎月仕事をくれる会社が、それしかなかったから、その4社だけを回れば十分だと思っていた。

もちろん、他にも仕事を出してくれる会社はある。
しかし、年末年始の挨拶は、怠慢ではあるが、してこなかった。
それは、年に数回しか仕事を出さない会社は、挨拶に行っても行かなくても、仕事を出す量はまったく変わらないということが経験上わかっていたからである。

だが、今年はそんなことは言っていられない。
緊急事態である。
来年度は、息子の大学受験が控えている。
このままの状態で一年を過ごしたら、入学金が払えない状況になるのは目に見えている。

だから、過去一度でも仕事を出してくれた会社は、すべて挨拶回りをしようと決めたのだ。
ただ、全部は回れない。
名古屋や静岡、新潟の会社などから仕事をいただいたが、往復の交通費を考えると、割が合わない。
だから、この3社は、電話で済ますことにした。

そこで、訪問するのは、埼玉、東京、神奈川の会社に絞ることにした。
なるべく交通費がかからないようにしたいので、沿線にそった会社を一日で回るようにしたい。
時刻表や料金表を見ながら、一番効率のいいルートで行くように計画した。

数えてみると、全部で21社あった。
そのうち、東京が11社。つまり、半分を占める。
これをできれば2日で回りたい。
そして、東京の延長線上にある横浜と川崎へは、田町にある会社を訪問してから、一気に訪問してしまおうと思った。

残った埼玉の8社は、原チャリで回る。
大きく川越方面と川口方面に分けて、それを2日で回ろうと計画した。
ボロい原チャリだから、途中で成仏する可能性はあるが、もう随分と使い込んだから、ここで息絶えたとしても原チャリ君も本望だろう。

そんなことを思いながら、今週の月火水の三日間で、東京、神奈川の会社を回った。
担当者が変わっていたり、完全に私の存在を忘れ去られていたりで、13社のうち5社は、まともな対応をしてもらえなかった。

いつもなら、肩を落としているところだが、今回は「大学の入学金、入学金・・・」と念仏を唱えていたから、落ちるはずの肩が落ちなかった。
この念仏は、結構効くようである。
皆さんも、お試しください。

ただ、世の中は、そうそう甘くない。
担当者が会ってくれた他の8社のうち、今まで仕事を出す頻度が高かった3社を除いて、判で押したように「景気が悪くてねえ・・・」と、渋い顔で応対をされた。

本当にその会社が、景気が悪いかどうかは、わからない。
景気が良くても、「おまえなんかに仕事出さないよ」という場合もある。
ただ、どちらにしても「景気が悪くてねえ・・・」というニュアンスは、「おまえに出す仕事はねえ!」と言っているのと同じことだから、結果は同じである。

中には、私が「どんな仕事でも!」と頼み込むと、「出す仕事があれば出すけどね・・・、ハァ〜」と、相手の肩の方が落ちていた人がいた。
しかし、相手の肩がガックリ落ちていたとしても、私が同じように肩を落とすわけにはいかない。
「肩を落とす選手権」をやっているわけではないのだ。

だから、「大学の入学金、入学金・・・」と念仏を唱えながら、肩を水平に保ったまま我が家に帰ってきた。
今日、明日は、埼玉の8社を回って、原チャリを成仏させてやろうと思っている。

「景気が悪くてねえ・・・」と、エンドレスに言われても肩を落とさないように、朝起きてからずっと「大学の入学金、入学金・・・」と念仏を唱え続けている。

「大学の入学金、入学金・・・」と呟いているうちに、私の方が、成仏しなければいいと思っているが・・・。
(経費節約のため、昼メシを抜いているので・・・グー)


2007/12/20 AM 06:55:21 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

KYはオッパッピィ
同業者同士の忘年会に誘われた。

この忘年会は、一昨年まで毎年やっていたが、昨年は皆のスケジュールが合わず、開催できなかった。
そのことがあって、今年は11月の初旬あたりから調整していたので、早い段階で12月15日に忘年会を開くことが決まっていた。

2年ぶりの忘年会なので、みんな楽しみにしているようだが、私は「出ない!」と宣言した。

「またまた、Mさん、冗談はやめようよ」
「そんなことを言っても、誰も信じませんよ。まったく、お茶目だなあ」


「お茶目だろうが、オカメだろうが、俺は出ないんだよ!」と言っても、「やだなあ、Mさん、まったくKYなんだから」と言って、相手にしてもらえない。

KY?
いい年をして、流行の言葉を使うんじゃない!
ハゲたデブには、似合わねえよ!(すみません。差別用語を二つも使ってしまいました)

最初この言葉を聞いたとき、私は、この「KY」というのは、お笑い芸人の小島よしおのことだと思っていた。
彼の芸風から来る印象で、「オッパッピィ」なやつのことを「KY」というのだと思っていた。
つまり、突然意味もないことを言って、笑いを取る人のことを「KY」と言うのだと、勘違いしていたのだ。

それを小学6年の娘に言うと、娘は心底呆れた顔で「おまえって、本当に変わってるなぁ〜、それでよく今まで生きてこられたな。ほめてやるよ」と言われた。
珍しく褒めてくれたので、「オッパッピィ!」と喜んだら、頭を殴られた。

だから今は、KYの意味は知っている。
そして、空気を読んだからこそ、私は「出ない」と言っているのである。

この忘年会は6年前からやっているが、大体やることはいつも同じである。
飲み屋で酒を飲んで、どうでもいいことを話題にして、カラオケを歌うだけだ。
私は、「こんなの一体どこが面白い?」という顔をして、黙って酒を飲んでいるだけだから、私もつまらないし、まわりもつまらないだろう、と思っているのだ。

「俺、カラオケ嫌いなんだよね」「昔は良かったなんて話するんじゃねえよ!」「人の噂話をして何が面白いんだ!」「酒飲んでいるときに、仕事の話なんかするんじゃねえよ!」「結局は、自慢話かよ!」
悪態ばかりついている私が参加したら、皆をシラケさせるだけだ(事実いつもシラケている)。

つまり、私は、ちゃんと空気を読んでいるのである。
KYと言われるのは、心外だ。

私がそう言うと、今回幹事役のコピーライターのヨネクラさんは、「いやいやいや!」と、やたら力を籠めて叫んだあと、「わかりました!」とさらに大声で吼えた。

「Mさんだけ、会費は結構です。その分は、俺が負担しますから」と言ってくれたのだ。
しかし、会費を払ってくれても、嫌なものは嫌だ。嫌なことに時間を費やすほど、私はヒマではない。

「嫌だよ!」
私が断固とした口調で言うと、ヨネクラさんは、泣きそうな声で「頼みますから〜、Mさん、お願しますよ〜」と、今まで聞いたことがないような哀願調で訴えてきた。

なぜ、それほどまでに私を呼びたがる?
何か、よからぬ魂胆でも?

「だって、タナカさんの暴走を止められるのは、Mさんだけですから(涙声?)」

そういうことか。
要するに、暴走機関車のタナカさんを止める役割だけを私に求めているのだな。
確かにタナカさんは、よく暴走する人だ。

タナカさんは、170センチ、80キロでマッチョタイプである(筋肉増強剤を使っているのでは? と思うほど二の腕の筋肉が盛り上がっている)。
彼は、DTPデザイナーだが、少年野球の監督の方が本職と言っていいくらい、少年野球にのめり込んでいる男だ。
それも、鬼が可愛く見えるほどの怖い監督らしい。

そして、どこで覚えたのか、柔道の絞め技やプロレスの危険な技を人にかけるのを趣味としている暴走男でもある。
同業者は、忘年会以外でも関節技を決められたりして、ひどい目にあっているらしい。

ただ、タナカさんは、私だけは苦手にしているらしく、絶対に技をかけてこない。
それは、6年前の最初の忘年会にさかのぼる。
その時、腕相撲大会を開いたのだが、彼は最初の1回だけは私に勝ったが、2回目以後は、まったく私に勝てなかったのである。

タナカさんは、確かに力は強い。ただ、彼は無駄に力を入れて、力任せに相手をねじ伏せているだけだったから、彼の癖を見抜くのは簡単だった。
私は力は彼より劣るが、瞬間的に力を出す技術だけは彼より勝っていた。

それは、タナカさんが息を吸って力を入れる寸前に、集中して力を籠めるだけの単純な技術だったが、力任せのゴリラタイプには、これはかなり効果がある。
「なんでこんな痩せた男に!」と思って、相手は余計力任せに出てくるから、その方式は、さらに効果を増す。
結局、何度やっても勝てない、ということになって、タナカさんは私に苦手意識を持ってしまったようだ。

酒が入って、同業者に荒技をかけ始めても、私が「いい加減にしたら」と言うと、彼はおとなしくやめるのである。
要するに、彼らは、タナカさんに苛められないために、私に参加して欲しいだけのようだ。

言ってみれば、私は調教師か。
忘年会費たてかえは、調教代の代わり。

「じゃあ、出てやるよ」と、私は恩着せがましく参加した。
しかし、当のタナカさんは、当日痔の具合が悪くなったので、欠席することになった。

タナカさんが来ないとわかると、途端に私に対する扱いが冷たくなった皆の態度は、見事と言うしかない。
ニシダ君以外、誰も私に話しかけてこないという冷淡さ。

いま私は、来年はタナカさんとタッグを組んで、みんなに荒技をかけまくってやろうかと、良からぬことを考えております。


2007/12/18 AM 06:55:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

8500円
宝くじには、縁がない。
というより、当たるかどうかわからないものに金を費やすという余裕が、私の心にも財布にもない。

だから、10年以上、宝くじを買ったことがなかった。
以前、ジャンボ宝くじをグループ買いしたことが3度か4度あったが、私の宝くじ歴はその程度である。

もちろん、当たったことはない。
大学時代の知り合いが20年近く前、「6千万円当たった!」とホラを吹いたことがあったが、真偽のほどは定かではない。
その知り合いは、その後西日暮里にマンションを買ったから、もしかしたら当たっていたのかもしれないが、「俺は毎日UFOを見ている」というホラ話しかしない男なので、信じる気になれないのだ。

実は、私も三鷹でUFOを見たことがある。
それは、ヨメも見ていて、周りにいる人も何人か見ているのだが、それを他人に話したことはない。
これ以上、変人に見られるのが嫌だからだ。

「UFO見たよ!」と、一度大声で言ってみたいが、私にわずかに残された理性が、かろうじてそれを抑えている。

「宝くじ当たったよ!」
そんなことも言ってみたい。

そして・・・、
それが、当たったのである。
ただ、金額は「8500円」だったが・・・。

だが、8500円でも、当たったことに変わりはない。
・・・・・と、前フリが長くなりました(いつも長い)が、今日はそのお話をしようと思います。

今週の月曜日、桶川の得意先に行った帰り、この冬初めて着るコートのポケットに手を入れると、紙が手に触れた。
「あー、レシート入れっぱなしかよ! だらしねえなあ!」
と自分を罵りながら、紙を出してみると、千円札だった!(嬉々)

千円を有効に活用する方法は、いくらでもある。
仕事用の(中古の)本を買う。
中古の文庫本を大量に買う。
原チャリにエネルギーを補給してやる。
DVD-Rを買う。
最近めっきり白くなった髪のために、白髪染めを買う。

色々なことを思い浮かべながら、桶川の東武マインの中を想像を膨らませながら歩いていたとき、宝くじ売り場が目に入った。
よく目にする宝くじ売り場だったが、いつもは素通りだった。

宝くじ!? ケッ! どこの国の話だよ!
といつもは思っていたが、この時は、自然と立ち止まっていた。

千円があるじゃん!

そこで、久しぶりに宝くじを買ってみようと思ったのだ。
しかし、宝くじに関して、私は浦島太郎だった。
ナンバーズ? ミニロト? ロト6? スクラッチ?

その名前も存在もTVのCMで知っていたが、別世界のことは、どう考えても別世界としか思えなかった。
だから、ほとんど興味がなかった。
カウンター横の用紙を手に取ってみたが、「う〜〜ん」と首をかしげるしかない。

そんなとき、その私の心許ない様子を見て、私にこと細かく教えてくれた男の人がいたのだ。
彼は、一つひとつ宝くじの種類について、私に詳しく教えてくれた。しかし、それでも私にはよくわからなかった。

彼は、「初心者は、ナンバーズ3がいいよ」と言ってくれたが、私の手はミニロトの申込用紙を掴んでいた。
「おやっ、あんた意外とギャンブラーだね? それで勝負に出るのかい?」

私の肩を小さく叩きながら、「好きな数字を適当に選んで、線を塗りつぶすんだよ」と、初心者丸出しの私を優しい眼差しで見つめてくれた人。
彼がいなければ、きっと私は「ああ、めんどくせえ!」と言って、やめてしまったことだろう。

私が200円しか買わないことを知って、「すげえなあ! 堅実だね! すげえ!すげえ!」ともう一度肩を叩くと、彼は「こりゃあ、もしかしたら当たるかもしれないな。俺もあんたと一緒のやつを買ってみようか」と言った。

我々は二人して、同じ番号のミニロトを買った。
その後、私たちは、お互いの右手のげんこつを合わせて別れたが、もちろん私は、それが当たるなどとは思っていなかった。

しかし、何となく予感はした。
水曜日、インターネットで「みずほ銀行」のサイトにアクセスして、5つの数字のうち4つの数字が当たっていることを知ったとき、「くそ! あともう1個当たっていれば・・・」とは思わなかった。

200円で買ったものが、8500円になったのだ。
それで満足すべきだろう。
世の中には、「いいこと」が必ずどこかに隠されている。
その隠された「いいこと」をめくってみたら、たまたま8500円だっただけのことだ。

そして、他をめくったら、もっといいことが隠されているかもしれない。
どこをめくるかは、その人次第だ。
めくって損をする人もいるかもしれないが、それは次をめくる楽しみを倍加させてくれる通過点に過ぎない。

8500円で心がウキウキ。
その8500円を投資して、また宝くじを買うことも考えたが、電気屋のチラシを見ていたら、MP3プレーヤーが丁度8500円で売られているのを見つけたので、それを買うことにした。

これは、息子の17歳の誕生日プレゼントである。
まともな親ならもっと高価なものを買ってやれるのだろうが、私がまともでないことは息子もよく知っているので、彼はきっと我慢してくれるはずだ。

あとは、クリスマスプレゼント。
そして、お年玉。

さあ、どこをめくれば、黄金が出てくるか・・・・・。


2007/12/16 AM 08:53:19 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

東京駅で舌打ち
初めて訪問する会社に行くときは、緊張するものである。

8日前に、「まだ仕事を出す予定はないが、話だけでもしてみたい」というメールが、東京八重洲に事務所を構える会社からあった。
仕事が、穴の開いた風船のように急速にしぼんでいく現状では、小さな救いの手でも縋り付きたくなる。

すぐに返信して、会う日時を決めた。
13日午後1時半。
場所は、東京駅から10分程度だろうか。八重洲1丁目の明るい色合いの雑居ビルに、その会社はあった。

以前は、東京の新川に得意先が1社あって、年に数回行っていたが、その会社が大手に丸ごと吸収されると、完全に縁が切れてしまった。
他に、東京駅近くの京橋に事務所を持っている友人がいるが、彼は私にあまり仕事を出してくれない。

彼の事務所に行っても、ホカ弁を食って、スーパードライを浴びるほど飲まされて、彼の愚痴を聞いてやるだけだ。
先日も、友人の愚痴につき合わされて、スーパードライを5本も飲まされたものだから、東京駅から電車に乗ろうと思って、地下街をフラフラと歩いていたら、ブティックの看板にぶつかって、転んでしまった。

幸いブティックの看板は頑丈だったので、倒れも壊れもしなかったが、ブティックの女性店員に露骨に舌打ちをされた。

客商売は普通、ひとの体の心配をするものではないのか!
それを、舌打ちするとは何だ!

・・・と思ったのだが、「俺は客ではなかったな」と、すぐに平静にかえって、ぶつけて痛む右足を引きずりつつ、「怨霊退散!」などと呟きながら、駅まで歩いた。

こう考えると、私にとって東京駅近辺は、鬼門といっていい場所かもしれない。
怨霊退散! を5度唱えてから、約束の会社の前に立った。
時刻は、午後1時15分。
どんなときでも、約束の時間10分前には到着するのが、フリーランスの基本である(そんなことはないか)。

ビルには、エレベーターが1基あったが、6階まで階段で行った。
6階にある会社は1社だけだったから、わかりやすかった。
分厚いくもりガラスのドアを開ける前に、大きく深呼吸して、ドアを押した。

中に入ると、体型だけ芸人の柳原加奈子に似た受付の女性が、「ドッコイショ」という感じで立ち上がって、にこやかに「いらっしゃいませ〜」と迎えてくれた。
しかし、こちらの名前と、約束の相手の名を言うと、「えっ! Kですか? Kは今日出張してるはずですが」と言うではないか。

しまった! 日にちを間違えたか。
慌てて、バッグからメールをプリントしたものを取り出して、確かめてみた。
「13日午後1時半」となっていた。

受付の女性にも確かめてもらった。
「あー、本当ですね。今日の1時半で、間違いないですね」
受付嬢は、何度も首をひねっていた。

念のため、「御社にKさんという方は、他にいらっしゃいますか?」と聞いてみたが、いないと言われた。
詳しく聞いてみると、Kさんは前日から2泊3日の予定で、鹿児島に出張しているということだ。
予定では、帰るのは、明日の夕方になるという。

これは、どういうことだろう?
突然の出張だったので、私に連絡をする暇がなかったのだろうか。
それはあり得ることなので、そう聞いてみた。
受付嬢は、「自分ではわからないので、課のものに聞いてみます」と言って、私を受付左の応接室まで導いてから姿を消した。

その程度のことを聞くのに、それほど時間はかからないだろうと思っていた。
せいぜい5分程度だろう、と考えていた。
しかし、受付嬢は、なかなか姿を見せなかった。

10分、20分、30分、そして40分・・・・・。
飲み物も出ない。
応接室には、絵もカレンダーも掛かっていない。壁時計は掛かっているが、ほぼ真っ白だ。
殺風景この上ない。
ガラスの応接テーブルに触れると、感触が冷たい。
貧乏揺すりをする自分の足しか見えない。
小さな壁時計のたてる「チッチッチッ!」という音が、舌打ちに聞こえてくる。

初めて訪問した会社で、これほど寒々とした雰囲気を味わうとは、想像もしていなかった。
逃げ出したくなる。
貧乏揺すりが、さらに細かくなる。

時計の「チッチッチッ! チッチッチッ!」・・・。

舌打ちしたいのは、俺の方だ!
責任者呼んでこい!
テーブルを叩こうとしたとき、受付嬢がやっと姿を見せた。
後ろに、色黒だが著しく不健康な顔をした40年輩の男を従えていた。

男は、Sと名乗ったあと上半身を必要以上に反らせて「Kは、出張中で会えません。今日はお帰りください」と、口を歪めながら横柄な口調で言った。
もう少し違う言い方があるだろう! まずは、謝るのが先だろ! と思ったが、それを言っても仕方がない。

私は「後日また連絡させていただきます」と、二人に頭を下げた。
そのとき、受付嬢が両手に持ったお盆の上に、コーヒーカップが乗っかっていて、いい香りが漂っているのに気づいた。
「それ、いただいていいですか」と受付嬢に断ると、受付嬢は、にこやかな笑みを浮かべて2度大きく頷いた。

私は、それを持って椅子に腰を下ろし、コーヒーをゆっくりと飲み始めた。
それを見た色黒の男は、小さく舌打ちをして、応接室を出ていった。

えっ! 舌打ち?
この場面で、なぜ私が舌打ちをされなければいけないのか、私には理解できない。
東京駅近辺に勤める人は、そんなに舌打ちが好きなのか。

そんなことを考えながら、私がコーヒーを満喫しながら小さく舌打ちをすると、受付嬢はまるで感電したように体をビクッと震わせて、逃げるように応接室を出ていった。

コーヒーを飲み終わって、帰ろうと応接室を出たが、受付に受付嬢はいなかった。
私は、「お邪魔しました」と大声で言ってから、小さく舌打ちをして、その会社をあとにした。


2007/12/14 AM 07:07:05 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

フルマラソンでサプライズ
ホノルルマラソンを走ろうと思っていた。

今年参加するつもりで、正月から準備をしていて、フルマラソンを走るための予定表まで作っていたのである。
1月から10月まで、毎月フルマラソンの3倍の距離、約130キロを走ることをノルマにしていた。

それは、順調に達成されて、時に1か月でトータル160キロ走ったこともあった。
たまに腰痛と膝痛に悩まされたりしたが、ハーフ(21.0975キロ)で1時間30分を切ったこともあった。

すべてが予定通りいっていた。
いや、練習だけが予定通りいっていた、と言うべきか。

まさか、取引先が立て続けに2件倒産して、ホノルルの夢が霧散するとは、思ってもいなかった。

「今年、ホノルルマラソンを走るからな」と、ことあるごとに周りに吹聴していたから、格好が悪いったらありゃしない。
ただ、周りはホノルルマラソンにそれほど関心を持っていないから、忘れていた人もいるので、その点だけが救いだった。

しかし、記憶力のいいヤツは「おい、マラソン頑張れよ! そして、土産もな」とノーテンキに電話をしてくるから、そのたびに身に降りかかった不幸を説明する羽目になる。
これが、結構面倒臭い。
説明している間に、こちらも惨めになってくるから、テンションが下がる。
聞いている方も、テンションが下がるようで、「ああ、よいお年を!」と一方的に電話を切られたこともあった。

よいお年を、だと!?
正月が越せるかどうかもわからないのに、適当なことを言うんじゃねえ!
などと八つ当たりをしてみても、何の解決にもならないので、とりあえず結果だけは残そうと思った。

せっかく、フルマラソンを走るために練習を積んできたのだから、フルマラソンを走って、けじめをつけようと思ったのだ。
もちろん、ホノルルを走るのではない。
ホノルルとは若干景色が違うが、我が家の周りを走ろうと思ったのである。

日にちは、ホノルルマラソンと同じく、12月9日。
悲愴な決意をして、朝5時、真っ暗な中、起き出して団地前の遊歩道で、入念にストレッチングをする。

寒い。
限りなくゼロに近い体感温度である。
本当だったら、地表がある程度温められた10時頃から走るのが一番いいのだが、昼間は仕事の打合せがあるので、朝を選んだ。
夜走るという選択肢もあったが、実際のホノルルマラソンと同じように、暗い頃走り始めて、走っている間に明るくなるというシチュエーションにこだわったのだ。

実際の気温は、ホノルルとは20度以上違うが、少しでも実際の大会と雰囲気を合わせたかった。
それに、初マラソンだから、暑いよりは寒い方がいい。
少し寒すぎるが、それは気持ちの持ちようで何とでもなる。

ここはホノルル、ここはホノルル・・・、と暗示をかけて、心の中で号砲を轟かせ、走り始めた。
団地の遊歩道を通り過ぎて、外側の住宅街を回るコースを取ると、1周約6.8キロになる。
6周走って、1.4キロ過ぎると、大体フルマラソンと同じ距離になる。
途中にコンビニが2店あるので、水分補給はこまめにできる。
100円玉を10個小さなケースに入れて、上着のポケットに入れておいた。

暗い中、自分の吐く白い息を見ながら、順調に走り出す。
練習で一番長い距離を走ったのが、25キロ。
ひと月に1回は、必ず25キロを走った。
タイムは、1時間27分から45分くらいだ。

なぜ練習で、フルマラソンと同じ距離を走らなかったかというと、ただ単に面倒臭かったから。
ハーフを走れれば、フルはペースを落とせば走れるだろうと簡単に考えて、フルマラソンは、本番にとっておいたのである。

走っているときは、タイムはどうでもいいと思って走っていた。
どちらかと言えば、走り終わったあとの、膝の具合や全身の疲れ具合でその日の調子を判断していた。

25キロを1時間27分で走ったときは、そのあと疲れが、丸三日抜けなかった。
1時間45分で走ったときは、ほとんど疲れを感じなかった。膝もあまり痛くならなかった。
つまり、私にとって、25キロを1時間45分で走ることが、一番自分の体にあったペースだと言うことになる。

5キロを21分のペース。
それが、私にとって一番無理のないペースだ。
しかし、初めて40キロを超える距離を走るのなら、5キロを22分まで落として走った方が、さらに負担は減る。

それは、フルマラソンだと、3時間6分の計算になる。
フルマラソンを3時間を切って走ることを「サブスリー」と言って、市民ランナーの間では、それが大きな目標になっているようである。

私も最初は、それを目指していて、友人と「3時間切ったら図書券」という約束をしていた。
だから、3時間を切ることにこだわっても良かったのだが、今回はとりあえず完走を目的として、無理のないペースで走ることにした。

最初の10キロは、43分半。いいペースである。
そして、走っている間に空が明るくなってくると、次第に気持ちが高揚してきた。
ただ、ここでペースを上げると、後半がきつくなるのは目に見えている。
だから、わざとペースを抑えめにして、次の10キロは44分半で走った。

20キロ走っても、いつもより疲れが少ないように感じる。
つまり、調子がいいということだ。
しかし、調子に乗ってはいけない。25キロを過ぎて未知の領域に入ったら何が起きるかわからない。

どんなときでも、初めての時は、慎重であるべきだ。
そこで、コンビニに入って、初めての水分補給をすることにした。
コンビニは温かい。
おでんの匂いが、さらに体を温かくしてくれて、ポカリスエットが体の隅々まで入り込んで、その心地よさに思わずガッツポーズが出た。

その意味のないガッツポーズをレジの若者に見られて、照れ隠しに親指を立てたのだが、完全に無視された。
逃げるようにコンビニを出て、また走り始めた。

次の10キロは、45分弱で走った。
いいペースだ。いつもなら痛くなる左膝も、今日はおとなしくしているようである。
天気もいい。少し風が出てきたが、鬱陶しいというほどではない。

次の10キロも予想外に快調に走り終わって、気が付いたら40キロを2時間58分で走り過ぎていた。
初マラソンの時、誰もが感じるらしい「地獄の35キロ」も、難なく通り過ぎた(平坦な道なので、体力の消耗が少なかったせいもあるが)。
30キロを過ぎると、「いつ苦しくなるか、いつ苦しくなるか・・・」と思いながら走っていたが、鼻歌が出るほど、楽に足が前に出た。
少し左膝が痛くなって、腰も重くなったが、フルマラソンを走りきることはできそうだ。

途中で買った「午後の紅茶」を思いのほか美味しく飲むことができたとき、完走を確信したが、フルマラソンは最後まで何が起きるかわからないスポーツである。
そう思って、最後は極端にペースを落として、走りを楽しむことにした。

息も体も苦しくはない。
天気もいい。
ゴールに定めた小学校の校庭が見えたとき、スパートをした。
300メートルを全力で走った。

フルマラソンを完走!
タイムは、3時間7分27秒。
順調すぎるほどの、初めてのフルマラソンだった。

左膝は痛いが、我慢できないほどではない。
アイシングをすれば、1日で治るだろう。
ストレッチを入念にして、家に帰った。

9時前に家に帰って、リビングのテーブルを見ると、山盛りの手作りのサンドイッチの上に「完走おめでとう」と書かれた紙が貼ってあった。
そして、クラッカーの鳴る音。

サプライズだ!
フルマラソンを走ることは、家族には言っていなかったが、私のわかりやすい性格を家族は読んでいたようである。

私が朝早く起きたあとで、みんなで起き出して、団地の外を走る私の姿を見て、距離を推測したのだという。
「このバカ親父は、きっとフルマラソンを走るはずだ。もし走りきったら、馬鹿なやつだが、お祝いくらいしてやろうじゃないか」と話し合ったというのだ。
そして、みんなでサンドイッチを作った。
安物だが、シャンパンも用意してくれた。

それを聞いて、バカ親父は号泣!

ホノルルマラソンを完走するより、はるかにすごい思い出をもらったバカ親父は、涙味のサンドイッチを食いまくった。

そして、その日の打合せで、クライアントから「Mさん、目が腫れてますけど、寝不足ですか」と聞かれたバカ親父は、また涙目になって、涙をそっと拭いた。


2007/12/12 AM 07:00:33 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]

ごちそうさま
毎月5日締めの仕事は、今回はスムーズに運んで、何ごともなく校了になった。

この件に関して、このブログでは、いつも担当者のハヤシさんとのバトルを書いている。
自分でも大人気ないと思いながらも、「売られた喧嘩は必ず買う」という幼児性で、私の方も好んで摩擦を起こしているところもあるかもしれない。

しかし、今回は仕事上でのバトルはなかった。
バトルはなかったが、以前から心に引っかかっていたことが一つだけあって、何のバトルもなかった今回、そのことが余計に気にかかるので、それを今回書こうと思う。

11月28日の午後9時半、ハヤシさんから「原稿がそろいましたよ」と、電話があった。
「おれ、今すかいらーくにいますから」
いつもながらマイペースのハヤシさんは、相手の都合など気にも留めずに、すからいらーくに到着してから電話をかけてきた。

もし私が外出していたら・・・、という発想は、ハヤシさんの頭にはないようだ。
以前、4、5回、彼が電話をかけてきた時、私がいなかったことがあって、「Mさん、遅くまで何してるんですか、オレ、すかいらーくで2時間以上も待ちましたよ」と、文句を言われたことがあったが、これって、オレが悪いの?
すかいらーくに来る前に、電話で確認しない方が悪いんじゃないの?

2年前に、とりあえず一回だけ「電話してから来て欲しいんですがね」と文句を言ったのだが、まったく改める様子がないので、それ以来相手の思うままにさせている。
ハヤシさんを見ていると、日本語がわからない日本人は、どんな簡単な日本語でも理解できない、ということを思い知らされる。

私がすかいらーくに行くと、ハヤシさんは「オレ、朝から真面目に働いていたんで、腹が減っちゃって」と言って、「ハンバーグとビーフ焼肉」を食っていた。

夕メシ食わなかったんですか? と聞くと、「ローソンでサンドイッチ二つ買って食べましたよ」と言っていた。
確かに、若いから、それくらいでは持たないだろうということは、想像できる。
じゃあ、朝と昼は抜いたのだろうか? だから、腹が減って、夜食にハンバーグを食っているのか。

「いや、朝も昼も、ちゃんと食いました」
そうか、真面目に働くと、一日4回メシを食いたくなるほど、腹が減るのだな。
それは、実に健康的だ。うらやましい!

私は、ドリンクバーを頼んだので、ハヤシさんが食い終わるまで、外を見ながらコーヒーを飲んでいた。
それに対して、ハヤシさんは私の存在など知らないと言わんばかりに、ゆっくり優雅に肉を口に運んでいた。
私としては、仕事の話を早く終わらせて、早く家に帰りたいのだが、彼は澄ました顔でナイフとフォークを動かして、時に目をつぶりながら味を確かめているのである。

私がすかいらーくに来てから15分間、私は彼の食べる姿しか見ていない。それは、少しも面白い光景ではない。
私は、彼の食べる姿を見るためにすかいらーくに来たのではない。
仕事の話をするために来たのである。
しかし、時は無駄に過ぎていく。そして、ストレスだけが、溜まる。

食べ終わってから、電話しろよ!
大切なクライアントに、心の中でそう毒づく私は、罰当たりな男なのでしょうか?
罰当たりだ! と言われたら、頷くしかないが・・・・・。

皿の上に何もなくなって、やっと仕事の話か、と私が体を乗り出すと、ハヤシさんは「ツナサラダ」を追加注文するのだ。
細かいことを言うようだが、彼はクライアントなので、この場の勘定は、いつも私が支払う。

ハヤシさんが払ったことは、5年以上の付き合いで、一度もない。
そして、これが一番理解しがたいことなのだが、私は彼から「ごちそうさま」という言葉を聞いたことが一度もない。
本当に、ただの一度もないのだ。
いつも、当たり前のように私に支払わせて、ご本人は横を向いている。

彼は「ごちそうさま」という言葉を知らずに育った、日本の歴史上ただ一人の人間かもしれない。
文部科学大臣様。ハヤシさんを、特別天然記念物に指定してください。

想像して欲しい。
こちらが望んでもいないのに、他人の夜食代を払って食い逃げされ、感謝もされないというのは、大変むなしい行為とは言えないだろうか。
毎回のことだから慣れるだろうと思うかもしれないが、これだけは慣れないのだ。
だから、別れ際にはいつもストレスが溜まる。

2回目の打合せは午後4時過ぎだったから、ハヤシさんはメシは食わなかったが、ケーキを注文して、ゆっくり頷きながら食っていた。
12月5日の校了の時は、やはり突然夜の8時前に電話がかかってきて、私がすかいらーくに行くと彼は「チキンステーキ」を食っていた。
ライスの他にパンも頼んでいた。

仕事が無事校了になって、開放感を味わうはずが、ため息をつきながらレジで勘定を払うというのは、大きな不幸である。
だから、一つの悪意が私の心に浮かんだとしても、誰も私を責めることはできないはずだ。

私は、ハヤシさんに向かって、彼の目を無理矢理のぞき込みながら、「ごちそうさま」と言ってみた。

これは、かなり嫌みな言葉である。
しかし、この言葉に対して、ハヤシさんがどんな反応を示すかで、彼の本心が知れるのではないかと思ったのだ。

その言葉に過剰に反応して感情的になるか、それとも聞こえないふりをするか、あるいはバツの悪い顔をして「ごちそうさま」と返してくるか。
はたして、ハヤシさんはどのタイプの人間なのか。
これは、かなり興味深いことだった。

しかし、彼の反応は、私の予測を超えていた。

「ハハハハ、おかまいなく。そんなこと気にしないでくださいよ。ハハハハ」

完全に、読まれていたようである。
負けた。
こいつ、私が思っていた以上に、手強いやつかもしれない。


2007/12/10 AM 06:57:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

だめだ、こりゃ!
車に轢かれそうになった。

相手がこちらの存在に気づかず、ブレーキを踏まずに左折してきたから、自転車を投げ出すようにして体を傾け、さらに右足で思い切り蹴って体を浮かせたから、間一髪で衝突を回避することができた。

場所は16号。ロジャースに買い物に行く途中の交差点での出来事である。
交差点の角に大型のカー用品店がある。
車は、そこから出てきたミニクーパーだった。

信号が青に変わって、自転車で横断歩道を渡った。
横断歩道を渡って右に行くと、目指すロジャースがある。
左側にカー用品店。そして、車の出入り口は歩道をまたぐ場所にあるから、カー用品店から出てくる車は必ず一旦歩道を通らなければ、車道に出ることはできない。

当然のことながら、車は一時停止して、左右を確認しなければいけない。
だが、ミニクーパーは左右を確認せず、一時停止もせずに、いきなり車道に出ようとしたのである。

そこに、歩道を通ってロジャースに向かおうとした私がいた。
私は、車が当然止まるものだと思って、普通に自転車を漕いでいた。
車がスピードを落とさずに店から出てくることなど、思いもよらぬことである。
ミニクーパーがいくら小さいとはいえ、ドライバーの視線もミニということはないだろう。
歩道を走る自転車が見えないわけがない。

だが、クーパーはまるで自転車など眼中にないような無謀さで、突進してきたのである。
ドライバーはブレーキをかける気配もない。
つまり、私が何とかしなければ、衝突は避けられないということだ。

私は今まで一度も「死にたい」と思ったことがない人間なので、「死にたくない!」という思いを足と身体全体に込めて、必死に「死のゾーン」から逃れた。
幸い自転車は壊れなかったし、体も壊れなかったが、私の人格が壊れた。

全身が、怒りの固まりになった。

て〜んめえぇ〜〜!

自分でも、驚くほどの大きな声が、口から出た。
相手も、さすがに衝突する寸前に私の存在に気づいたから、急ブレーキをかけていた。
だが、相手は車から出てこない。
ミニクーパーの運転席が低いせいか、相手の顔は見えない。
ただ、しっかりとハンドルを握っている両手が小刻みに震えているのが、私の角度から見えた。

私の怒りは、叫んだことによって、さらにボルテージが上がった。
車の運転席側のガラスを手で叩いた。
ドアを蹴ってやろうかと一瞬思ったが、「そこまでは、しちゃいけないよ」という心の声が聞こえたので、手で叩くだけにした。

だが、相手がハンドルを握ったまま反応を見せなかったので、私は右手で20回くらいガラスを叩いた。
そんな私を、歩行者や自転車に乗った方々は、冷ややかな目で見ながら、遠巻きにして避けて通っていった。
カー用品店の店員も何人か見ていたが、誰も声はかけないし、近づいても来なかった。

こんなときは、見て見ぬふりをするのが一番いい。いいじゃないか、轢かれたわけじゃないんだから、そんなに熱くなるなよ・・・、そんな雰囲気をまき散らしながら、誰もが私を避けて通っていった。

私は、普段は「仏のマツ」と言われるくらい温厚な人間だが、これほどの仕打ちを受けて、黙っていられるほど、人間の質が良くはない。
右手が痛くなったので、今度は左手でガラスを叩いた。
そして、左手で叩くのにも疲れた頃、やっとドライバーが出てきた。

青い顔をしている。
ただ、私は出てきた男の顔を見て「しまった!」と思った。
普段だったら、絶対に関わりになりたくないようなゴツい顔をしていたからである。

将棋のような顔。
「歩」や「桂馬」だったらまだいい。「金将」や「銀将」でもいい。
車から出てきた男は、どこから見ても「角」という感じの将棋の駒顔だったのだ。

年は、30歳前後。身長は私より低いが、体重は30キロプラスと言ったところか。
フィッシャーマンズベストを着た、角張った上半身が、プロレスラーを思わせる力強さだった。

男の顔を見ながら、約一秒の間に、私は考えた。
このまま逃げようか・・・。
一発だけ殴って、自慢の足で逃走するか・・・。
それとも、無言で睨みつけて、相手の出方を見るか(逃げる用意をしながら)。

三つの選択肢を頭に思い浮かべながら、私は相手の顔を見つめた。
顔は怖そうだが、その厳(いか)つい顔は、今は蒼白で、小さな目は瞬きもせずに私を見つめていた。
唇を見ると、唇も薄い紫色で、カサカサに乾いているのがわかる。

それを見て、私の気持ちに余裕ができた。
自分では意識していなかったが、口元は笑っていたようである。
そんな私の変化を敏感に感じ取ったのか、相手はすかさず、上半身を硬直させたまま「すみません、すみません、すみません」と3回続けて頭を下げてきた。

「すみません」と言ったときの、男の唇が、可哀想なくらい震えていた。
私は、日本一単純な人間だと思う。
それを見て、怒りが急速にしぼんだのだ。

そして、「ああ、考えごとしてたんじゃないの。俺でよかったよ。オレ運動神経いいからさ、あれぐらいは避(よ)けられるから」と、場違いな自慢をし始めたのである。

男に「すみません、すみません」と、今度は2回頭を下げられると、「いいから、いいから。もう行って」と簡単に許してしまうこの性格、何とかならないものだろうか。
そればかりか、「すみません」ともう一度頭を下げて車に向かう男に、「気をつけるんだよ」とまで言ってしまうこの馬鹿さ加減。

ミニクーパーが去っていく姿を見ながら、自分の両足が小刻みに震えていることに気づいたときは、我ながら「だめだ、こりゃあ!」と呟いていた。
さらに、自転車にまたがろうとしたとき、膝も震えていたから、自転車が傾いて倒れそうになった。

そして、3回目の「だめだ、こりゃ!」を呟いたとき、やっと自転車に乗ることができた。
しかし、自転車を真っ直ぐ走らせることができないから、向かいから来る自転車に乗ったお爺さんとぶつかりそうになるという、みっともなさ。

「酔っぱらってんのか、おまえ!」というお爺さんの罵声を背中に聞いて、今度は大きく叫んだ。

だめだ、こりゃ!


2007/12/08 AM 08:05:29 | Comment(2) | TrackBack(0) | [怖い話]

マックで魚肉ソーセージ
車に轢かれそうになった。

あと2メートルで完全にぶつかるところだった。
そのことを思い出すと、いまだに心に恐怖が巣くっているから、足の裏からワサワサと、表現しようのない感情が湧き上がってくる。

この体験をブログに書こうと思ったが、情けないことに、頭と体が硬直した状態なので、思い出すのも怖い。
だから、このことは落ち着いてから書こうと思う。

そこで、マクドナルドである。
あやうく難を逃れたあとで、心を落ち着かせるために、16号沿いのマクドナルドでコーヒーを飲むことにしたのだ。

自転車カゴに積み込んだままの大根とゴボウ、レンコンなどの野菜類を、駐輪スペースに置き去りにしたまま店内に入った。
朝11時前後だったので、店内はすいていた。
私は、一人の時は、どんなときでもカウンターを選ぶのだが、このマックにはカウンター席がない。
だから、壁際の2人席を選んで座った。

私がカウンター席をいつも選ぶのは、一人でテーブル席を占領するのが嫌いなのも理由の一つだが、向かいの席に誰もいないという空洞感が我慢できないからである。
4人席を一人で占領して堂々としていられる人を、私は心底うらやましいと感じる。

よく寂しくないな・・・・・。

同じような理由で、ガラガラの店内、というのも好きではない。
人が沢山いて、あちこちで笑い声が聞こえて、会話が弾んでいる状況が、私にとって一番好ましい。
時に「うるせえな!」と感じることはあるが、シ〜ンとしているよりはずっといい。
静寂よりも適度な騒音があった方が、居心地がいい。

だから、この日の店内は、あまり居心地がよくなかった。
しかし、真っ直ぐ家に帰って仕事をする心境になれなかったので、居心地の悪さを心の底に抑え込んで、100円のコーヒーを飲んだ。

コーヒーの香りを嗅ぐと、落ち着く。
以前、友人にそのことを言ったら、「コーヒーに鎮静効果はない。コーヒーに含まれるカフェインは大脳皮質を刺激して知覚機能を高めるから、むしろ覚醒を促進して興奮させる作用の方が強い。だからおまえが落ち着くと思うのは、錯覚に過ぎない」と、冷静に指摘されて、シラケたことがある。

おまえは、ガリレオか!

しかし、博識の友人がどう言おうが、私はコーヒーの香りを嗅ぐと落ち着くのだ。
これだけは、譲れないぞ、悪いか!

いかん、いかん。興奮してしまった。
ここで、興奮したら、友人の思うツボになる。
コーヒーを飲んで、落ち着こう。

一昔前のマクドナルドのコーヒーは、私にとって、まずいコーヒーの代名詞だったが、今はだいぶ改善されて、平均点を超える味になったと思う。
平均点以上の味が、100円で楽しめるのだから、我々は幸せ者である。

ミシュランさん、マクドナルドに☆を一つあげてくれませんか?
高尚なフランス人の舌では、庶民の味を採点するのは無理でしょうか。

そもそも、飲食店を格付けすることに、何の意味があるのでしょう?
金が乏しいときに食った、場末の定食屋の肉野菜炒め定食のうまさを知らない人種に、はたして食い物を語る資格があるだろうか。

ライスが、おかわり自由なんですよ。
みそ汁のお代わりも自由です。
たまに、「余っちゃったから」と言って、皿に盛った切り干し大根をサービスしてくれたときは、60過ぎのオバちゃんが、天使に見えてくるんです。

私は、この感動を☆なんかで、表したくはない!
☆が何だ!
☆なんかに興味はない! ほしのあきにも興味はない!

いかん、いかん。また興奮してしまった。
興奮したら、腹が減った。
そこで、グラコロを注文した。

テレビで頻繁に宣伝しているので、期待して食ったが、これは期待はずれだった。
中に入っているグラタンが中途半端で、味がまったく主張をしていない。
えびフィレオの方が美味いな、と思ったら、えびフィレオを食いたくなった。

えびフィレオを食べることにした。
これは、パンとレタスとプリプリの海老とのバランスが絶妙である。
満足した。

一杯目のコーヒーを飲んでしまったので、また100円のコーヒーを注文して飲んだ。
ゆっくりと飲む。
そして、落ち着く。

落ち着いたので、まわりを見渡してみると、4人席に一人で座っている二十歳前後の女の子がフライドポテトを食べているのが目に入った。
それが、とても美味そうだった。

フライドポテトのMを注文した。
久しぶりに食うマクドナルドのフライドポテトは、安心できる味で、ひとくち食べると止まらなくなった。
おそらく、2分くらいで全部食べてしまったのではないだろうか。

そこで、考えた。
私は恐怖を感じると、異様に腹が減る体質らしい。
私は、普段は大食いではないが、これだけ食べても満腹感が得られないのだ。

財布の残金のことを考えると、これ以上食べるわけにはいかない。
しかし、何か食べたい。
そう言えば、さっきロジャース魚肉ソーセージを買った記憶がある。

そう思ったら、すぐにそれが食いたくなった。
私は、駐輪場まで早足で歩き、レジ袋をカゴから取りだし、その中から魚肉ソーセージを掴みだして、マックの店内に戻った。

半分残っていたコーヒーを手に取ると、店の隅の2人席まで移動して、魚肉ソーセージを貪(むさぼ)るように食った(店員に見られないように)。

食っている最中に思った。

俺は、一体何をしているんだろう?
俺の人生、これでいいんだろうか?


家に帰っても、まだ魚肉ソーセージに食らいついているが、その答えはまだ見つかっていない。


2007/12/06 AM 06:54:32 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]

30パーセントの誠意
川崎の得意先に、1年4か月ぶりに呼ばれて行ってきた。

私は諦めが早いタチなので、1年以上お呼びがかからないと、「もう仕事は来ないな」と判断して、脳細胞から得意先を消滅させてしまうから、電話がかかってきたときは、すぐに対応できなかった。

「Fセンターのタツミです」と言われて、まず「どこのセンターだ?」と思った。
センターはイチローだろう、と心の中でボケたため、数秒の空白ができた。

「もしもし? スカイデザインさん? Mさん? え〜と〜・・・・」
という相手の戸惑った声が流れてきたので、慌てて「はい! ハイ! ハーイ!」と徐々にトーンが上がって声が裏返ったから、笑われてしまった。

担当者が辞めたとき、気持ちに余裕のある人は、引き継ぎを丁寧にしてくれるので、その会社とのお付き合いをそのまま続けることができる場合が多い。
しかし、担当者が会社を辞めることしか頭にない場合は、引き継ぎをしてくれないから、その会社との付き合いが途絶えることがある。

昨年の7月に担当者が辞めると聞いて、慌ててFセンターに駆けつけたが、担当者には会えずに伝言だけを残して帰ったことがあった。
このとき、「この会社との付き合いも、これでおしまいか」と確信した。
少しは期待していた部分もあったが、半年も過ぎると古い記憶がどんどん死滅していく私の脳細胞から、徐々にFセンターの記憶が消滅していった。

新しい担当者のタツミさんは、大変正直な人で「他のデザイナーさんの方が、距離的に近いんで、他に頼んでたんですよ」と、笑いながら告白した。
そして、「二人のデザイナーさんに頼んでいたんですけどね、その人たち、FLASHがイマイチなんで、またMさんに頼もうかな、なんて・・・」と悪びれずに言っていた。

そうか。浮気をしていたのか。
だから、1年4か月、私に仕事が回ってこなかったのだな。
まったく!

しかし、私の存在を思い出してくれただけでも、ありがたいことである。
感謝、感謝・・・(拝)。

1年4か月ぶりに行った得意先で名刺交換をしたあと、我々はにこやかに世間話を交わし、爽やかに仕事の話をし始めた。
私の心の中には、何のわだかまりもない。
本当にない!

しかし・・・・・。

今回の依頼は、ホームページに差し込む、ユーザーためのガイダンスをFLASHアニメで作るというものである。
ガイダンスを進行するキャラクタは既存のものがあるので、それを動かしながらガイダンスを進める、という仕事自体は、たいして難しいものではない。

しかし、引っかかる点が一つだけある。
デザイン料を以前より30パーセント(!)安くしてくれ、と要求されたのだ。
たいして難しくはない、とは言ってもFLASHアニメは、一応は特殊技術である。
誰にでもできる、というものではない。

以前の担当者は、そのあたりに気を遣ってくれて、こちらの言い値で処理してくれた。
彼は、「俺にできないことができる人は、たいしたやつだ!」という判断基準を持っている人だった。
こういう考え方ができる営業マンは、考え方が柔軟で公平な人である。

しかし、多くの営業マンは、「とにかく安く人を使えばいい。それが一流の営業マンの証だ」と思っているのが現実だ。
今回の担当者は、このタイプだったようだ。

だから、今回「前より安くしてくれたら、俺は満足だ。仕事の質は二の次だ。とにかく30パーセント負けろ!」という発想で、デザイン料のディスカウントを要求してきたのである。
彼の感覚では、下請けはクライアントの言うことは素直に聞かなければいけない、という方程式が出来上がっているのだろう。

私が、「30パーセントですか?」と呟いただけで、それまでの友好的な空気が一変した。

彼は「30パーセントくらい引くのが、誠意じゃないんですか?」と、眉を少々つり上げて、言ってきた。
しかし、「誠意」は、むかし提出した価格表で示してある。
これ以上、誠意を示したら、自分が惨めになるばかりだ。

30パーセントの誠意を示したら、我が家から川崎まで6回往復する運賃と変わらなくなる。
だから、ゆっくりと首を横に振った。
駆け引き上手の人だったら、相手の機嫌を損ねないように、適当な落としどころを見つけながら相手を誘導していくのだろうが、残念ながら、私はそんな上等なテクニックは持ち合わせていない。

すぐに、面倒臭くなってしまうタチである。

ガキがお小遣いをもらおうと思って、大人に媚びるのとはワケが違うんだよ!
俺にだって、最低限のプライドがあるんだ!
俺をバカにするやつは許さねえぞ!
(ただでさえデザイン料を安く設定してあるんだから、それをさらに安くしろ、というのは完全に私に対する侮辱だと受け止める)

私は、また二度ゆっくりと首を横に振った。
タツミさんの眉は、吊り上がったままである。
このままだと、交渉決裂という事態になるのは、必至だ。

ただ、どんなときでも、救世主というのは、表れるものらしい。
我々の会話を遠目で見ていたナガサワ次長が、「今回はMさんにおまかせしたらどうかな?」と言ってくれたのである。

「いいんですか?」と、次長の方に首を回して、二人でハモるタツミさんと私。
大きく頷くナガサワ次長。
タツミさんは、小さく舌打ちをしていたが、私はそれを聞かない振りをして、資料を素早くまとめて、「では、初稿は19日に」と言って、席を立った。

そして、タツミさんの顔は見ないようにして、次長に頭を下げ、会社をあとにした。
当然タツミさんは、いい気分ではいられないだろう。
Fセンターでの仕事は、今回限りの可能性が高い。
だが、私はこれで満足なのだ。

30パーセントまけるのが誠意だというのなら、私は、そんな誠意は断固拒否する。

それは、馬鹿げたプライドだが、そんなプライドでも持たないよりはいいと、私は思っている。


2007/12/04 AM 07:01:30 | Comment(6) | TrackBack(0) | [フリーランスの心得]

イタイふたり
昨日の話の続き。

お得意先のフクシマさんとは、いつもおバカな話ばかりして、肝腎な仕事の打合せは10分足らずで終わることが多い。

今回の仕事は、来年3月に行われる、小さなスポーツイベントのチラシだった。
現状では、開催日とキャッチコピーだけしか決まっていないので、あとは全ておまかせで、とりあえず2種類のラフ案を2週間以内に提出して欲しいという依頼である。

写真はどんなものが?
「適当に」
イラストはどんな?
「テキトー」
デザイン料は?
「抑えめに。できればゼロが望ましい」
・・・というご要望である。

それを聞いて、フクシマさんのスキャンダラスな過去をまた暴きたくなったが、この件に関しては彼も反省しているらしいので、これ以上の追及はやめることにした。

「Mさん、人間が大きいですねえ。そうですよ、過去は過去。俺たちには明るい未来が待ってるんですから、過去を振り返るのはやめましょう」

しかし、私は後ろを振り返ってみた。
壁がある。
その壁は、アイボリーの色をしていたようだが、ところどころ変色していて、一部分壁紙が剥がれ落ちていた。
そして、壁には、ワールドカップバレーボールのポスターが貼ってあった。

これは?
「見ればわかるでしょう。バレーボールですよ。いまテレビでやっているでしょう。知らないんですか?」

もちろん、知っている。
普段はスポーツ中継に見向きもしない小学6年の娘が、Hey! Say! ナントカが出るというので、毎回見ているのだ。
そして、私も一緒に見るように娘に命令されているから、「実況がうるさい、解説者がアホ!」と呟きながら仕方なく見ているのである。

「そうですか、Mさんも娘さんに脅迫されているんですね。実は俺も嫁さんに、さいたまスーパーアリーナまで拉致されて、男子バレーの初戦を無理矢理見せられたんですよ」
にしおかすみこ似の超美人の奥さんに、無理矢理ですか?」
「そうです。無理矢理です」
「ムチで叩かれて?」
「そうです、容赦なく叩かれて」

フクシマさんは単純な人だから、それまでまったく興味がなかったバレーボールを目の当たりにして、その熱気に浮かれ、一気にバレーボールファンになってしまったらしい。
「すごいですよ! あのエネルギー! あの一体感!」
両手を握りしめて熱弁を振るうフクシマさんの姿は、鬼気迫るものがあった。

しかし、目が真剣なフクシマさんの顔は、笑える。
フクシマさんの垂れた目は、どんなに真剣なことを言っていても、キリッと吊り上がることはない、ということを今回発見して、忘れないうちに、打合せ用のノートにその似顔絵を描いてみた。
それは、冒頭のアニメにしましたので、笑ってやってください。

熱いフクシマさんとは正反対に、私の心は、今回初めてワールドカップバレーボールのテレビ中継を見て、勝敗に関係なく、冷え冷えとしてきたのである。

なぜ実況アナウンサーは、最初から最後まで、あんなにエキセントリックに叫び続けているんだろう?
画面左上の点数を見ないで、興奮した叫び声だけを聞いていると、全ての試合で日本が勝っているような錯覚に陥ってしまうのは、私だけか。

なぜ解説者は日本が負けた試合で、敗因分析をしないんだ。
勝因と敗因を分析するから、彼らは解説者の席に座っているんじゃないのか。
監督や選手にとって耳の痛いことでも平気で言えるのが、プロだろう。
応援をしたいのだったら、応援席でやればいい。

「Mさん、ごもっともですが、あの会場の雰囲気に呑み込まれると、叫び声しか出ませんよ。俺、日本がどの国と対戦したのかも覚えてないですもん。日本の選手しか見てないですから。たとえ負けたとしても、『頑張った!』って讃えたくなっちゃうんですよ」

頑張ったのは、相手も同じだろう。
私も日本に勝って欲しいが、誰もが「頑張れ」としか言わない環境で、細かい欠点の修正ができるわけがない。

監督が、選手を褒めるのはいい。
だが、監督や選手をサポートする人たちは、選手の長所短所を冷静に分析すべきである。
「頑張れ!」は、観客だけが言えばいいのだ。

「Mさん、大人気ないですよ。じゃあ、話を変えましょう」と、フクシマさんは、私の言いがかりを受け流して、出来の悪い子どもを諭すような口調で、先頃の坂出市の事件を話題にした。

しかし、大人気ない私は、この事件に関して、詳しい情報を知らない。
新聞は読まないし、ニュースも見なかったからだ。
インターネットを見て大まかなところは掴んでいたが、インターネットでは、脇道にそれた話題になっていたようなので、興味を持てずにいた。

「そうでしたね。大人気ないMさんは、ああいった話題が嫌いでしたね」
そう言われた私は、頷きながらペンをマイクにして、歌い始めた。

君は天使じゃなく 俺だって聖者じゃないんだぜ〜(詞・浜田省吾)

「な、な、なんですか! 突然に! 殿ォ、気を確かにィ!」
「浜田省吾の唄を歌いたくなっただけですよ。それが何か?」
「それが何かって、それ、相当おかしいでしょう。普通、この場面で歌わないですよ! カラオケボックスじゃないんですから。イタイ! Mさん、イタすぎますよ」

いや、誰だって天使や聖者じゃないんだから、人を裁くことはできないってことを言いたかったんですよ。
人を裁くことができるのは、裁判官だけで、少なくともメディアには、推測で人を裁く権限は与えられていない、ということを歌で表現したのですが、それが何か?

「深いですねえ、Mさん。そんなに深い主張が、その調子っぱずれの歌にこめられていたなんて、いやあ、深い! そして、イタイ!
「毎日にしおかすみこにムチで叩かれているフクシマさんの全身も心も、イタイ!」
「ハイ! Mさんに、座布団を一枚!」

二人で拍手。

このイタイふたりは、ホントに大丈夫なんだろうか?


2007/12/02 AM 08:33:32 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

おバカふたり
「Mさん、ブログ読みましたが、ご愁傷様です!」
応接室の席に座るなり、むき出しのニッカ・黒ラベルをテーブルの上にドン! と置いて、得意先のフクシマさんが言った。

変態の、いや変人のフクシマさんのぶっ飛んだ変人ぶりについては、コチラコチラのブログなどに書いた。
他にも書きたいことは沢山あるのだが、結婚してしまった以上、詳しく書くことができない。
彼はネタの宝庫と言っていい人なのだが、それを封印しなければならないのは残念だし、それはブログ界にとっても多大な損失だと思っている。
いつか、匿名で書いてみたいものだ。

「ねっ、フクシマさん?」
と言って、黒ラベルのボトルのキャップをひねろうとしたら、フクシマさんに「ストップ!」と大声で止められた。
フクシマさんが右手の親指を立てて、事務所の奥を指し、気持ち悪い顔で目配せをした。

今日は、社長がいるので酒盛りは駄目だ、と言っているようである。
ここの社長も変態である。いや、変人である。
ただ得意先のボスのことを言うのは、差し障りがあるので、詳しいことはコチラを読んでいただきたい(結局、差し障りのあることを書いたのだが)。

今日の社長は、愛犬のマルチーズと会話をしている。
それは、とても微笑ましい光景だ。
社長の人柄が偲ばれて、こちらの心も温かくなる。
素晴らしい社長のいる会社の未来は明るい。
フクシマさんは、実に幸せ者だ。

「Mさん、目が嘘っぽいですよ。そんな目で真面目な話をされても、誰も信じませんよ」
正直者というのは、時に大きな誤解を招くようである。
皆さんも、お気を付けください。

「Mさん、本当の貧乏になった感想はどうですか。切実な貧乏話をブログに書くと、世間から同情を集めて本が出せるんじゃありませんか。でも、ベストセラー作家なんかになったら、俺なんか見向きもしてくれないでしょうけどね。ああ、ヤダヤダ! ホントに薄情な人だ!」

何を言っているんだ、この男は!
しかし、私がベストセラー作家になったら、確かにフクシマさんとは縁を切るかもしれない。
彼は、顔に似合わず勘の鋭い男のようだ。
見直した!

「酒好きのMさんのためにとびっきりのウィスキーをプレゼントしたんだから、もっと喜んでくださいよ。今日は、リアクションが薄いですよ」

そうですか。申し訳ないですねえ。
ただ嬉しいことに、我が家の窮状をブログに書いたら、知人・友人が酒や食材を大量に送って来てくれたんですよ。

ビールは、銀河高原ビールを20本。ハイネケンを24本。
日本酒は、鬼ころし1升を1本、のものも5合を1本。
ウィスキーは、I・Wハーパーを1本、フォアローゼスを1本。
その上、先月ススキダからもらったスーパードライ6箱のうち、まだ4箱が残っている。

タカダ君、ニシダ君、ハセガワ、チバ、尾崎、ニシヤマ、そしてススキダ。
ありがとう。

おそらく、これで半年近くは保つのではないだろうか。

ちなみに、食材は数人から、レトルトや缶詰、乾麺を大量に送ってもらった。
特にうどん、そば、ラーメン、スパゲッティは、量ってみたら合わせて10キロ以上あった。
また、私がイタリアンを得意としていることを知っている友人は、オリーブオイル2リットルとホールトマトの缶詰を30缶送ってくれた。

フクイ、タカハシ、ノナカ。
ありがとう。

それを聞いて、フクシマさんがバツの悪そうな顔をした。
「すみませんねえ、安いウイスキーしか差し上げられなくて。それに、食べ物にまで気が回らなくて、ホントにすいませんねえ」と、すねた口振りで言った。
そして、彼は私が持っていたウイスキーを引ったくろうとして、「ヘン! こんな安いウイスキー、俺がいま全部飲んでやる!」と体を乗り出してきた。

しかし、フクシマさんは、私より20歳近く若いが、力は弱い。
運動不足の体では、私の力に敵うわけがない。
そこで、敵わないことを知ったフクシマさんは、また「ヘン!」と横を向いて、すねた。

もちろん、フクシマさんは本気ですねているわけではない。
これは、おバカな男二人の、恒例の遊びなのである。
こんな遊びがないと、話が先に進まないのだから、正真正銘のバカふたりと言っていい。

「このウイスキーをくれないというのなら、あれをブログに書きますよ」
「あれ?」
フクシマさんの顔に狼狽が走る。

「一昨年の12月、渋谷のセンター街での出来事」と私が言うと、フクシマさんは「わかりました!」と大声で叫んで、両手をテーブルについて頭を下げた。
その声があまりにも大きかったものだから、社長が立ち上がって「なんだ! フクシマ君、Mさんに金でも借りてるのか?」と、ピントのずれたことを言ってきた。

「はい、10億円借りましたので、ご心配なく」
「おお、わかった!」

わけのわからない会社である。

さらに、「3年前の夏、湘南の海で19歳の女子大生に・・・」と、私が追い打ちをかけると、フクシマさんは、立ち上がって最敬礼をした。

「Mさん、安いウイスキーで、お口には合わないかもしれませんが、ぜひお持ち帰りください。そして、飲んですべてを忘れてください。今夜寝酒としてすべて飲むことをお薦めします。飲んで気持ちよく眠ってください。そして、二度と目を開けなくて結構ですから・・・」

「3年前の夏、銀座・数寄屋橋のイタリアンレストランで、日仏混血の女性と食事をした後・・・」

私がそう言うと、フクシマさんは、テーブルの上に置いてあったプラスチックの定規を素早く手に取り、それを腹に突き刺し、十文字に腹を切って、見事な切腹を遂げた。

アッパレである。
その見事さに敬意を表して、私は、彼の数々のスキャンダラスな過去を忘れることにした。

「ホントですか! Mさん!」

あれっ? 死んでない。

私が睨むと、フクシマさんが、また死んだ。

結局、この日の打合せは、脱線しっぱなしで、2時間近くもかかってしまった。
バカが二人そろうと、話がまとまらない・・・・・(呆)。


2007/12/01 AM 08:02:51 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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