Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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携帯を無表情に見る人
携帯電話がない生活を送るようになってから、一年以上がたつ。
携帯をやめた経緯に関しては、このブログに書いた。

自由業にとって、携帯電話がないのは致命的である。必ず仕事に支障をきたすだろう。
最初は、そう思っていたが、それほどでもない。
営業や打合せに出かける回数は多いが、あらかじめ固定電話やメールで、時間や場所を決めておけば、あらためて携帯で確認することはない。

また、緊急の呼び出しのとき困るのではないかと思ったが、取り返しがつかない緊急事態はほとんどない、ということが今回よくわかった。
携帯電話を持っていたとき、緊急事態でもないのに、「大変だ!」と電話をかけてくる人がいたが、緊急なのは気持ちだけで、実際の仕事はそれほど急を要さないことの方が多かった。

3〜4時間、連絡が取れなかったとしても、家に帰って対応してからでも間に合うことがほとんどだった。
「大変だ」と言って電話をかけるのは、安心を早く得たいからであって、仕事の緊急度とはまったく関係ないようだ。

それがわかったから、移動の途中は、安らかな気持ちでいることができるようになった。
携帯電話の呼び出しがない生活は、快適である。

電車に乗ってあたりを見回すと、半数以上の人が年齢に関係なく携帯画面を覗いている光景を目にする。
携帯を開いていない人は、たいていは眠っている。

携帯画面を見るか、眠るか、まるで車内ではその二つしか選択肢はないようだ。
昔は、男性の場合は新聞を読んでいる人が相当数いたが、今はあまり見かけない。
携帯電話が、車内では天下を取った感がある。

無表情に携帯の画面を見ながら、無表情に右手を動かす人たち。
その無表情さは、小さい画面を見ているから、どことなく不機嫌にも通じる無表情さである。

まるで誰かのコントを見ているかのように、携帯の画面を個々に見ながら、会話を交わしている女子高生がいた。
右手が器用に動き、口では隣の友だちに話しかけているのだが、無表情である。
隣の友だちの右手も素早く動いて、顔は頷いているのだが、同じように無表情だ。

時々「ハハハ」という笑い声が入るが、笑顔は一瞬で消える。
そして、目はすぐに、携帯画面に吸い込まれていく。
携帯画面に吸い込まれた目を持つ人々が、まわりを埋めている。
不気味ではあるが、それはすでにあたりまえの光景になっているから、誰も何とも思わない。

携帯電話は今さら言うまでもなく、大変便利で革命的なツールである。
人と人を、人と情報を、人と世界を結ぶ役割を、極めて小さな筐体に凝縮したその存在は、ある意味スーパーコンピュータと言ってもいいかもしれない。

このように驚異的な発明と言っていい携帯電話だが、使う人間によって、確実にイメージは変わる。

荻窪の喫茶店に、待ち合わせ時間5分前に行ったのだが、WEBデザイナーのタカダ(通称ダルマ)は、先に来て携帯の画面を食い入るように見ていた。

両目が寄っているから、歌舞伎の見栄を切っているような顔になっている。
ダルマの見栄、それは思いのほか絵になっていて、私は思わず見とれてしまった。
たとえ顔はブサイクでも、極端な絵ヅラというのは、人の目を惹くものがある。

ダルマと臙脂色の携帯電話は明らかにミスマッチだし、その姿からは文明の匂いはしてこない。
しかし、二つまとめてオブジェとしてみれば、これは一つの芸術である。
私は、思わず「ホーッ」とため息をついた。

そのため息を感じ取ったのか、ダルマは顔を上げて私を認めた。
そして、「師匠、師匠!」と言うのである。

「師匠、ブログ読んだんですけど、かなり財政が厳しいみたいですね。いいんですか、俺にサーティワンなんか奢って」
この話は、少々説明を必要とする。
しかし、説明するのは面倒臭いので、こちらを参照してください。

「いいんだよ。約束は約束だ。下手な遠慮なんかしたら、師弟関係を解消するからな!」
私がそう言うと、ダルマは大きく息を吸って、こう言葉を発した。
「いいんですか。オレ本当に食いまくりますよ。マジ食いしますよ」
「ああ、マジで食え」

そこで、サーティワンに移動して、ダルマにアイスクリームを奢ることにした。
ダルマは、アイスクリームにものすごい勢いで食らいつきながら、Tさんとのディズニーランド・デートの模様を、アイスクリームにむせながら休みなく話し続ける。

「うめえ! 今度ディズニーシーにも行きましょうよって話も出て、ああ、うめえ! その他にお台場もいいですねって話も出て、うわぁ、うめえ! みなとみらいもいいなあってオレが言ったらTさんもいいですねって言って、ワオ! 最高! うめえ! これうまいッスよ!」

そのすさまじい光景に、まわりの空気が凍りついているのも知らずに、ダルマはアイスを頬張り続けた。
アイスを食って、まわりを凍りつかせる芸当ができる人間は、この地球に60億の人間がいたとしても、おそらくダルマ一人しかいないであろう。
ダルマは珍種と言っていい。

その珍種が食ったアイスの額は、4千円を超える。
お前は、ギャル曽根か!

「ああ、嬉しいですねえ。オレ、ギャル曽根大好きですから」

ギャル曽根は、いくら食っても太らないが、君は今日で確実にリバウンドの世界に足を踏み入れたことだろう。
そうなるとディズニーシー・デートもお台場デートも、みなとみらいデートも消えてなくなるであろう。

フフフフ・・・・
ダルマよ! リバウンドの恐ろしさを知るがいい!

「えっ、師匠、何か言いました? で、師匠。なんで携帯電話持ってないんでしたっけ?」

うるせえよ!


2007/11/15 AM 06:56:32 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]



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