Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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一分前の奇跡
3ヶ月ぶりに大宮の印刷会社からお呼びがかかったので行ってきた。
この会社は、相変わらず私に対して冷淡である。
世間話もなく、ほとんどなんのコミュニケーションもないまま仕事を与えられて、その場で黙々と作業をし、1時間半で仕事を終え、心のこもらない挨拶を交わして、会社をあとにした。

寒々とした秋風が心の中を通り過ぎるのを感じながら、大宮駅まで歩いていった。
大宮駅で、何かチケットのようなものを配っていた。
私は基本的に、配布されているものは何でももらうというポリシーを持っている。

ティッシュの場合、必ずもらう。
ティッシュ以外でも大抵はもらうが、手に取ってみてクーポン券が付いていたりすると、たとえそれを使わなくても、得をした気分になる。
貧乏くさい話だが、スーパーなどでビールのキャンペーンをやっていると、吸い寄せられるように寄っていって、必ず試飲する。

先日は、新橋の駅前で、ジョージアの新しい缶コーヒーを配っていた。
すぐに寄っていって、1本もらった。
打合せを終わって帰るときもまだいたので、また1本もらった。
最初にもらったときと同じキャンペーンガールだったが、気づかれなかったようである。
得をした気分になる。

今回もらったものを見てみると、インターネット喫茶の半額クーポン券だった。
通常2時間1200円のところ、このクーポン券を持っていくと、600円で2時間インターネットと漫画、DVDなどが楽しめると書いてあった。
しかも、ソフトドリンク無料とも書いてある。

財布の中身をのぞいてみた。
660円。
かろうじて利用できる。

急ぎの仕事が1件あったが、すぐ家に帰って仕事をする気にはなれない。
今日は、やる気がない。

だから、行ってみた。
受付でクーポン券を見せ、600円を払った。
受付は小綺麗な感じで、係の若者もてきぱきとしていて気持ちがいい。

室内は幅が狭いが、奥行きはかなり広い。
つまり縦に長いから、見通しがいい。
見渡すと、真っ昼間なのに、思いのほか利用客が多い。
私も含めて、世の中暇なやつが多いということか。

指定されたブロックに行って、まずコーヒーを淹れてから、空いている席に腰掛けた。
インターネット喫茶は、今年の1月に家族で1度だけ利用したことがある。
その時は、「のだめカンタービレ」を1巻から5巻まで読破した。
今回、続きの6巻を読もうかと思ったが、眼が疲れているので、漫画を読むのはやめにした。

インターネットは自宅でいくらでもできるので、まったくしたいと思わない。
DVDも目を使うから、今回はパス。
では、何をすればいい?
せっかく入ったのだから、何かを楽しまなければ意味がない。

そんなとき、壁に「CDプレーヤー無料で貸し出します」の貼り紙が目に入った。
音楽があるではないか。
そこで、受付に行き、CDプレーヤーとアヴリル・ラビーンの「ベスト・ダム・シング 」を借りた。

コーヒーをもう1杯サーバーから注いでから、席に腰掛け、CDをプレーヤーにセットした。
軽快でとんがったアヴリルの声がいきなり耳に飛び込んでくる。
コーヒーを飲みながら、首でリズムを取る。
身体全体に滞った澱(よど)みのようなものが、スーッと抜け落ちていく感じがする。

両隣に誰かいるのだが、それがまったく気にならない空間が持てるのが、インターネット喫茶のいいところだろう。
音楽を聴いたり、映画を見たりしているかぎり、人の存在はほとんど感じない。
自分の部屋にいるような感覚になれる。

少し癖になりそうなくらい、いい空間である。
何ごとも体験してみなければわからないものだ。

まったりとした時間が、通り過ぎる。
あまりにも気持ちがいいので、目をつぶった。
そして、毎度のことながら眠ってしまったのである。

目をつぶると必ず眠る。
これは、どんな状況でも変わることのない私の悲しい条件反射だ。

目を開けて、零コンマ2秒で思った。

ヤバイ!
ここには、2時間しかいられない。
なぜなら、2時間を過ぎると追加料金を払わなければならないからだ。
しかし、財布には60円しかない!
もし2時間を過ぎていたら、どうしよう!
赤っ恥をかくぞ!


目を開けた途端、その現実が洪水のように押し寄せてきた。
咄嗟に受付でもらった時間を刻印した紙を手に取った。
利用開始時間、12時02分と打ってある。
パソコン画面上の時計を見ると、14時00分!

あと1分しかない!
寝ぼけている暇はない。
CDプレーヤーを掴み、バッグを掴み、コーヒーの紙コップを右手でつぶしてゴミ箱に放り投げ、ドタドタと受付まで走った。

パソコンの時計が正確だという保証はない。
むしろ狂っていることの方が多い。
過ぎていたら、どうしよう!
ドキドキ、ドッキン・・・・・・・・。

店員の「ありがとうございました」の声を聞いたとき、滝のような汗が背中をつたうのを感じた。
そして、全身から力が抜けた。
座り込んでしまいたいほど、疲れた。

そんな私を受付の店員は、不思議そうな顔で見ている。
一応、エヘヘと愛想笑いをしておいたが、余計変だったかもしれない。
彼の笑顔が固まっていた。

エレベーターに乗ると、大きく息を吐きながら壁にもたれた。
全身に疲れが澱(よど)んでいる。
インターネット喫茶は疲れる。
こんな忙しい思いは2度としたくない。
もう行くことはないであろう。

いや、しかし・・・・・・
無料の券をくれるのなら、行ってやってもいいかもしれない。
う〜〜〜ん・・・・・・・。


2007/09/04 AM 07:23:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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