Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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猛暑日のジョギング
8月の中旬、酷暑のさなか、「暑いぞぉ! うれしいなぁ」と叫んで、まわりから顰蹙(ひんしゅく)をかった。

私は、自分でも何故かわからないのだが、暑さが苦にならないのである。
全身に汗がしたたり落ちるほどの暑さを体感すると、アドレナリンが体中に充満する体質のようだ。
わけもなく、ハイになる。

しかし、暑いといっても限度がある。
熱中症で何人もの方が亡くなるという酷暑だ。浮かれていいわけがない。
暑さは体力を奪う。
病気を持った人やお年寄り、体の弱い人にとっては、暑さは大敵である。
凶器と言ってもいい。

その現実を認識しながら、「嬉しい」と言うのは、非常識である。
だから、反省しております。
猛暑バカ、と自分を罵っております。

かなり古いお話になりますが、この猛暑バカが、最高気温を記録した8月16日にしでかしたおバカな所業を、反省をこめて書き記します。

私が住んでいるさいたま市の場合、16日の最高気温がどの程度まで上がったのか、正確なデータを知ることができない。
埼玉の場合、熊谷が基準なので、さいたま市の詳しい気温がわからないのである。
人によって、「40度いったよ」とか「39度くらいか」、いや「37度くらいじゃないの」などと言っていたが、はっきりしない。

ただ、猛暑日だったことだけは間違いがない。
とにかく猛暑。

誰もがウンザリとした顔をしていた昼下がり。
岐阜県の多治見市が40.9度の国内最高気温を出したと報じられた午後2時過ぎ、「ちょっと走ってくる」という私の言葉に、家族全員の顔が凍り付いた。

普通なら、すぐに反応するはずの娘も「えっ」という顔で固まっている。
しばしの静寂。

静寂が支配している間に、私はジョギングシューズを履いた。
そして、立ち上がろうとしたとき、「死ぬぞ!」という娘の声が聞こえた。
珍しく、うろたえた声だった。

「スポーツドリンク飲んだから、水分補給はバッチリ。つらかったら、すぐやめるよ。パパは、暑さと闘おうとは思ってないからさ。そんな根性はない」
そう言うと、娘は普段の彼女の口調に戻って、こう言った。
「そうだよな。根性があったら、こんなビンボー生活してないもんな」

外に出た。
頭にタオルを巻いて、日向にでる。
確かに暑い。空気が歪むほどの暑さ。
入念にストレッチをするが、日差しが肌に痛い。
体感温度は、かなり高いようである。
ただ、耐え難いほどではない。

軽く走り始めた。
1キロ6分のペースで走った。
1キロでは、まだ汗はかかない。
1キロ半くらいのところで、汗がでてきた。それも、いきなり噴き出してきたのである。
2キロ地点にコンビニがある。ここを過ぎると当分コンビニはない。
だから、水分補給のために入った。

ポカリスエットの500ミリペットボトルを買う。
レジでお金を払うときも、汗がずっと噴き出ていた。
レジの女店員が、「まさかこのクソ暑いときに、ジョギング?」というような尊敬の眼差し(?)で見ていた。

日影でポカリスエットを半分飲んだあと、また走り出した。
タオルを頭に巻いているせいか、頭に受ける直射日光は、かなり軽減されている。
だから、走っていると、それほど厳しい暑さとは感じられない。

少し、この暑さをなめていた。

5キロあたりまでは順調だった。
俺って本当に暑さに強いな、といい気分でいた。
しかし、5キロを過ぎたあたりで、右足のふくらはぎがつった。
私の場合、足の筋肉がつるという経験は、まったくと言っていいほどない。

体を動かす前には、必ずストレッチをする。準備は万全にしている。
ほかのスポーツの時や日常生活でも筋肉がつったことがない。
だから、この時は焦った。

おい! 何があった! という、うろたえぶりである。
すぐに走るのをやめた。
走るのをやめると、さらに激痛が走る。
立っていられない。
これはもしかして、熱中症の症状か! と脅えた。

無様ではあるが、日影まで這って行った。
50メートル近い距離を尺取り虫のように這った。
見ると、ふくらはぎが別の生き物のように、変な盛り上がり方をしていた。
触れてみると、痛い。

持っていたポカリスエットのボトルを、ふくらはぎに当ててみた。
気持ちがいい。
少し痛みが和らぐ感じである。
しかし、それも一瞬だ。
ペットボトルを離すと、痛みがまた戻ってくる。

安静にしていれば治るのかもしれないが、初めての経験なので、いつ治るかわからない怖さがある。
だから、無理矢理ふくらはぎを軽くマッサージしながら伸ばしてみた。
足首のストレッチもしてみた。
しかし、痛い。

色々なことをしてみたが、効果がないようなので、仕方なく安静にしていることにした。
遊歩道の端に、土が盛り上がったところがあって、上に草が生えている。
それを枕がわりにして、横になった。

汗はかなり出ているが、暑さはそれほど感じない。
少しずつ、ポカリスエットを口に含む。口が潤う程度である。
30分くらい、そうしてじっとしていた。

そこで気づいた。
走っているときも、コンビニにも、遊歩道にも人影がまったくなかった。
コンビニの店員以外、誰ひとり出会わなかった。
遊歩道で、だらしなくダウンしていても、誰も通りかからない。

もし今、俺がここで熱中症で死んだら、いつ発見されるんだろう?
そう考えると、背筋が寒くなった。
そして、立ち上がった。
立ち上がると、ふくらはぎに強張った感覚はあるが、痛みは小さくなっていた。

歩いてみた。
歩ける。
ポカリスエットの残りを一気に飲み干した。
あと1.5キロ行けば、もう一件コンビニがある。そこで、水分補強をしよう。
ゆっくりと歩き出した。

10分ほど歩いているうちに、足の痛みが気にならなくなってきた。
少し走ってみた。
痛くないようである。
スピードを上げた。
調子がいい。

コンビニを通り過ぎて、スタート地点まで戻ったが、まだ走り足りない。
そこで、時にダッシュを入れながら、最初のコンビニまで走った。
ここで本日のジョギングは終了。距離は、約10キロ。
発泡酒の500缶を買った。

コンビニ近くの公園のベンチに座った。
この公園には、日差しを遮るものが何もない。
だから、誰も遊んでいない。
ベンチが灼けていて、大変暑い。
しかし、我慢して座った。
二、三度暑さで飛び上がったが、汗を大量にかいていたおかげで、すぐに冷めた。

発泡酒を半分ほど飲む。
滝のような汗が噴き出してきた。
しかし、爽快である。
噴き出た汗に、強烈な日差しが降り注ぐが、最初ほど日差しに痛さは感じない。
たまに吹いてくる風が、肌を軽く撫でて、気持ちがいい。
発泡酒の残りを一気に飲み干した。

また汗が噴き出した。
そこで、水飲み場まで行って、頭から水をかぶり、全身を濡らした。
肌に付着した水滴は、またたくまに蒸発して、湯気が上がっているのが見える。

それを見ながら、スゲエ! と感動していたときだ。
薄い青の事務服を着た中年の男が、近づいてきた。
その人が強い口調で言う。
「高温注意報がでてるから、早く帰りなさい! 死んでもいいのか!」

高温注意報? そんなのあるのか。
聞いたことないぞ、と思ったが、彼が着ている服から察すると、お役人っぽい感じに見えないこともない。
私は、素直に言うことを聞いて、時々ダッシュを入れながら、家に帰った。

家族に「高温注意報がでてるんだって?」と聞いてみたが、声を揃えて「なにそれ?」と言われた。

からかわれたんじゃない?
このクソ暑いのに走っているバカを見て、ちょっと脅したのよ。


みんなに笑われた。

あれは、からかわれたのか、本当だったのか。
私は、あれから二週間、ずっと悩んでいるのである。



2007/08/31 AM 08:31:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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