Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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アル中のクマさん
ひとのブログを読むのは、楽しい。
ホノボノとしたもの、情報系、過激な内容のものや毒舌系、画像中心のものなど様々である。

私が気に入ったブログがいくつかあるので、これからたまにご紹介していきたいと思う。
いま気に入っているのは、宇多田ヒカルのブログ
これは、面白い。

クリエイティブな仕事をしている人のブログとは思えないほど、どこかが外れているブログである。
適度な虚脱感と四コママンガを見ているような楽しさも感じる。
洒脱な落語家が、寄席の舞台の上で、思いのままに客を操っている粋な風情も感じ取れるブログだ。
また、時に不器用なほど正直なところも見えるので、スーパースターが身近に感じられる。

このブログには、ぬいぐるみのクマと宇多田ヒカルとの会話がよく登場する。
これが楽しい。
まったりした漫才を見ているようである。
以前、彼女の直筆の絵で「ベルサイユのクマ」というのが出てきて、娘と一緒に大笑いした記憶がある。

ぬいぐるみのクマは、可愛い。
宇多田ヒカルが描くクマも大変魅力的である。

しかし、クマ、と書いて、私の脳細胞に、笑えない現実が突然思い起こされたのだ。
それは、1トンの重さのハンマーで、頭蓋骨を叩きつぶされるほどの回復不能の大きな衝撃である。

私には3歳年上の姉がいる。
そのことに関しては、何度かこのブログに書いた。
昨年の1月18日から22日のブログには、かなり詳しく書いた。
もし興味がある方は、それを読んでください。
ただし、どんな不幸があなたの身に降りかかろうとも、私は責任を負えません。
自己責任でお願いいたします。

クマ。
3歳のクマ。
この50歳を過ぎた私の姉が、2年前から、「私は3歳のクマだ」と言いだしたのである。

これは、かなり深刻な話なのだが、深刻な話を深刻に書くと笑える話になるので、笑いたい方は続きを読んでください。

私は可愛い3歳のクマだ。
そう聞いて、「クマも3歳になったら、かなりでっかいだろう。可愛くなんかねえよ!」などと彼女に言ってはいけない。
それを聞いたら、彼女は半日泣き続けて、部屋に引きこもるに違いない。

「あたしは、可愛いんだもん! だって、3歳なんだから!」

ただ、このクマさんの場合、夜の7時になったら、引きこもりを解除して、缶酎ハイを飲み始める習慣があるから、涙にまみれるのは午後7時までである。
どんなに泣いていようが、夜の7時になったら、必ず缶酎ハイを飲むのは、どんな驚天動地の重大な事件が起ころうとも、絶えることがない彼女の優先事項なのである。

たとえ、親が死んだとしても・・・・・(怖)。

「クマはごはんは食べないんだよね」とクマは言う。
これは文字通りご飯、つまりお米のことで、クマさんは米は食べないのである。
野菜もまったく食べない。

「だって、クマさんは、米も野菜も嫌いでしょ」

だったら、クマは、缶酎ハイも飲まないんじゃないか。
などと言ってはいけない。
そんなことを言っても、彼女には意味が通じないのだ。
「クマだって、お酒飲むんだよ!」
その一言で、おしまいである。
クマは、すべてを自分の都合のいいように解釈する生き物なのだ。

朝は、ハムにマヨネーズをかけて食べたり、ローストビーフを食べるらしい。
昼は、チャーシューや豚肉の生姜焼きなどを食べる。
夜は、缶酎ハイを飲みながら、ウナギの蒲焼きや牛丼の具だけを食べる、とクマの母は言っていた。

クマさんの生態を知らない第三者からは、幸せで、のどかな娘さんだと思われているかもしれない。
このクマさんは、にこやかに隣近所に挨拶ができるのである。
私は、いい娘です、というのを全身で表現する演技力は過剰なほどに備わっている。
そして、身内にはニコリともしない、という徹底ぶりである。
3歳のクマは、賢いのである。

しかし、クマさんの日常は、限りなく怠惰だ。

朝10時頃起きて、肉を食う。
寝っ転がって、テレビを見る。
何もしない。
昼は、2時頃、肉を食う。食わないときもある。
昼寝をしたあと、買い物に行く。
肉が中心の買い物である。
ほかに何もしない。たまに、パチンコをする。
そして、夜7時になったら缶酎ハイを飲み始める。
肉を食う。
母親に愚痴をこぼす。
3本目の缶酎ハイの頃には、激しく罵倒する。咆吼して、のたうち回る。

私は、世界で一番不幸なクマだ!
40過ぎまで一生懸命働いて、家族を養ってきた。
だから、結婚もできなかった。
子どもも産めなかった。
いったい、誰が悪いんだ!
母親のお前が悪いんだ!


母の名誉のために言わせてもらうが、クマさんは、50余年の生涯の中で、働いたのはたった1年足らずである。
それ以外は、ずっと家にこもって、夜7時になると酒を飲んでいた。

何も生産したことがない。
誰かの役に立ったこともない。
だから、40過ぎまで一生懸命働いたというのは、クマさんの妄想である。

妄想の中に逃げなければ、自分があまりにも惨めだからだろう。
妄想の中でクマさんは、月に100万円以上稼ぐキャリアウーマンになっている。
10回以上、結婚を申し込まれたことになっている。
しかし、母が病弱なので、それを理由に、すべての結婚を断ったというストーリーができあがっている。

「ゴメンナサイ。私は、長女なので、母親の看病をしなければいけませんから・・・(泣)」

昨年母は、6度入院し、3度手術をしたが、クマさんは母の入院先でまわりに愛嬌を振りまいていただけだった。
世話らしい世話はしない。

酒を飲むと、病弱な母親相手にも、クマさんは容赦がない。
自分が一番可哀想だと思っているから、年老いた母がどんなに疲れ切っていたとしても、妄想の中に入り込んで、何も感じないのである。
現実は、彼女の頭の中では、ボウフラほどの大きさでしか存在しない。

そして、彼女の頭の中では、自分以外の人すべてがボウフラほどの大きさであり、自分はクマなのである。
たとえ身内であっても、自分以外はボウフラなのだ。

最近、クマさんの生態をこと細かく精神科医に伝えた(相談するだけでも結構高いので、皆さんお気を付けください)が、「ああ、それはアル中ですね」とあっさりと言われた。
たしかに、酒を飲まない日は一日たりともない。
母親を罵倒するのは、酒が入ってからである。
妄想を繰り返すのも、酒が入ってからである。

アル中だってさ。
母にそう言うと、彼女は「そんなのは、昔からわかってました。でも、お酒を取り上げようとすると、部屋中の壁を叩いて、『人殺し!』って叫ぶのよ。救急車を呼んでも、『醒めれば治りますよ』と言って帰ってしまうの」と、涙目で語るのである。
私も、その現場は何度も見た。

何度か病院に無理矢理連れて行こうとしたが、クマさんは、壁を叩いて「人殺し!」と叫べば、すべてが収まると思っているらしく、いつまでも壁を叩き続けるのだ。
2時間でも3時間でも、こちらが諦めるまで。
その結果、実家の壁は、あっちこっち凹んでいる。

昨晩は、突然「クマ牧場に行く!」と言って、旅行の支度をし始めたらしい。
「クマ牧場はどこにあるの?」と母親。
「登別よ。知らないの! バッカじゃないの!」とクマさん。

クマ牧場のクマさんに会うために、失礼があってはならないと思い、歯を何度も磨き、顔を何度も洗い、手を何度も洗う3歳のクマさん。
慌てて実家に駆けつけてみると、玄関先にクマさんが横たわっていた。

突然アルコールが切れて、玄関先で寝てしまったのだという。
口元には、ベッタリと歯磨き粉が付いていた。
母親と顔を見合わせて、笑うしかない。
苦笑いではない。
お互い疲れ切った笑いである。

だから、そのままほったらかしにした。
一応、クマの柄のタオルケットはかけておいたが。

2時間かけて我が家へ帰る途中、私はずっと寒気がしていた。
それは、冷房のせいだけではないと思う。

アル中の3歳のクマさん。
童話の中のクマさんは可愛いが、さすがにアル中のクマさんは童話に出てこないようだ。

だから私は、いま本気で、アル中のクマが登場する童話を書こうかと考えている。
童話のエンディングは、立派に自立するクマさんの姿を書いて、ハッピーエンドで終わらせたいと思うのだが、それは私の妄想で終わる可能性もある。


2007/08/21 AM 08:17:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | [怖い話]



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