Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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コンセプトの亡霊
何年もやっていながら、デザインとは何だろうか、といつも自問自答する毎日である。

先月の半ば頃、まったく同じ時期に2つのチラシのデザインを請け負った。
一つは長年の付き合いがあるハウスメーカー。
もう一つは、中古バイクの販売店が、車の中古車センターを立ち上げるというもの。

どちらも、新しいイメージで「生まれ変わり」をアピールするというものである。
だから、基本的にコンセプトは同じだ。

私の場合、自分で持てあました仕事の場合は、必ず人に相談する。
自分の考えだけでは、必ず壁にぶち当たるからである(情けない話ではあるが)。
私は、低い壁でも高いと認識してしまう人間なので、今回もすぐに一流デザイナー・ニシダ君に相談した。

「先生、イメージ戦略で生きましょうよ。仮想線(目に見えない想像上の線)誘導と文字をイメージとして有効に使えば、告知型の質のいいチラシができるはずです」
ニシダ君は、かつて私がMacを教えたので、いまだに私のことを「先生」と呼んでいる。

しかし、いまや彼は一流会社をクライアントに持つ、押しも押されもせぬ第一線のデザイナーに成長した。
先生の方が、今でははるかに格下というのが、紛れもない現実なのだが、私はあまり気にしていない。
能力のある人は、優遇されて当然だからである。

ともあれ、私もニシダ君の意見に賛成した。
どぎつく「生まれ変わりました」と言っても、巷(ちまた)にはそんなチラシは溢れているから、誰も目に留めてくれない。
かえって、目にやさしいものの方が、いい場合がある。

それは人の好みにもよるが、とりあえず今回はその路線でいくことにした。

しかし、ハウスメーカーのチラシは難航した。
デザインワークを先方に見せると、「何を言いたいのかわからない」というご指摘を受けた。
俺は、デザイン学校に行っている人を知っているが、彼ならこれくらい、3時間くらいで作れるよ、とも言われた。

一流デザイナーのニシダ君が半日かけて作ったものを3時間で作れるなら、その人は、今すぐプロになるべきである。
私が保証する。
その人は絶対に一流デザイナーになれる。

仮想線誘導というデザイン理論を述べようと思ったが、一刀両断のもとに切り捨てられては、二の句が継げなかった。
だから、仮想線誘導の話はやめることにした。

それに対して、中古車センターの方は、「ああ、面白いね」と言って気に入ってもらえた。
細かい文字の修正はあったが、全体のコンセプトはそのままで、2稿目で校了となった。
それは、11日の折り込みチラシで配布された。

お盆休みの土日だし、猛暑である。だから、先方はせいぜい50組来てくれればいい、100組来てくれたら大成功、という皮算用でいたらしい。
しかし、実際の訪問者は、2日間で154組! すごい数である。
大成功と目論んだ数の1.5倍の訪問者があったのだ。
成約数も、10件を超え、予定額を超えたという。
めでたしめでたし。

日曜日の夜に、社長から「盛況でしたよ。Mさんに見せてあげたかったな。家族連れで大勢の人が来てくれて、オレ涙が出てきましたよ」とうわずった声で感謝の言葉をいただいた。
私も感激した。

それに対して、ハウスメーカーのチラシは、頓挫している。
同じようなコンセプトで作ったものでも、会社が違うと、反応がまったく違う。
袋小路に入った感がある。
どこをどうすればいいのか、まったくわからない。

コンセプトを一から考え直さなければならない。
ニシダ君も、頭を抱えている。

今はおそらく、ニシダ君が新しいアイディアを出すたびに、それはボツにされるだろう。
コンセプトのスパイラルである。
このスパイラルにはまったら、抜け出すことは難しい。

もともとコンセプトは、人の頭の中でそれぞれ形を変えるものである。
それがスパイラルしてしまっては、いつまでも到達点が見えなくなる。
だから、スパイラルは怖い。
スパイラルは、まるで亡霊のようである。

今年のお盆は、コンセプトの亡霊が、私のまわりをウロチョロするかもしれない。



2007/08/15 AM 08:05:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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