Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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蚊にも嫌われた男
仕事ができあがったので、得意先T社に届けに行った。

仕事は、紳士服専門店の閉店セールのチラシである。
そこは、もともと店のオーナーが趣味でやっていた店だったから、固定客しか来ない淋しい店だった。

だから、閉店セールのチラシも200枚という淋しい数である。
印刷するほどの数ではないので、我が家のレーザープリンタで出力した。
黒1色で、ベタも少ないので、トナーもそれほど使わない。
だから、格安で請け負った。

軽いものだから宅急便を使うのも、もったいない。
T社は、近い。
最近我が家の近くに引っ越してきたこともあり、自転車で届けに行った。

住宅街の一軒家である。
二階建ての、普通の民家だ。
そこの広いリビングが事務所になっている。
リビングの他に3室洋間があるが、その使い道はまだ決まっていないという。
一応、広告代理店と名乗っているが、何だか、よくわからない会社である。

チラシを届けにいったら、庭でバーベキューパーティをやっていた。
引っ越しを祝って、パーティを開いたというのである。
社長は、すでに赤い顔をして、できあがっていた。

「ウォッホイ! Mさん、いいところに来た。Mさんの好きな松阪牛、焼けてるよ。ビールもあるよ! イッイェーイ!」
ハイテンションである。
(社長のはしゃぎぶりとは対照的に、営業3名、事務の女性1名〈自称ミス秋田〉は、眉間に皺を寄せて、引き気味である)

私は、高級な食材が嫌いだ。だから、松阪牛は好物ではない。しかし、ビールは好物である。だから、バケツの中で冷やされていたビール瓶を掴んだ。
コップを探すのが面倒臭いので、ラッパ飲みした。

それを見て社長が、「おーい! サガミ、見てみろ! これが男の飲み方だぜ。ウォッホイ! 惚れ惚れするぜ!」と叫んだ。
目の前に「肉」と言って、肉の盛られた皿を出されたが、「今は、お腹がいっぱいなので」と恐縮しながら、トウモロコシにかぶりついた。

アチッ! アッチイ!

指も熱いし、舌も熱い。
しかし、「熱い!」と言って、のたうち回るのはみっともないので、平気な顔をして食った。
指が、熱さで膨張する。痛くて持っていられないほどである。しかし、懸命に耐えた。
それを見て、また社長は言うのである。

「おい、このMさんの食いっぷり、見たか! 粋だねえ! よし俺も」と言って、社長もトウモロコシにかぶりついたが、当然のことながら熱い。

「ジョワッチィ!」と言って、社長は、のたうち回った。

社長。あなたはまだ、修行が足りない。
男には、やせ我慢が必要なときがあるのです。
ごらんなさい。ミス秋田(自称)が、笑っていますよ。
金歯が丸見えです。
ミス金歯と言った方がいいかもしれない。

営業3人は、松阪牛にかぶり付きである。
ミス秋田は、エビを上品に食っている。
社長は、舌を火傷したらしく、だらしなく舌を出して、ビールの入ったコップを舌にあてて冷ましていた。
私は、庭の隅のデッキチェアに座って、ビールをラッパ飲み。

全員無言。
社長が口を開けなければ、静かな会社なのである。

静寂が支配する空間。
これは、私には居心地のいいシチュエーションである。
黙ってタダ酒(ビール)を飲めるなんて、なんていい日なんだろう。
ほとんど、感動していた。

しかし、その感動もつかの間だった。

「かゆい!」
「かゆい!」
「かゆーい!」

私以外の全員が、叫びだしたのである。
社長の場合は、まだ舌が痛いので「ファユヒ!」と聞こえたが・・・。

みんな蚊に食われたらしいのだ。
腕や首筋を一様に叩いている。
ミス秋田は、足首あたりを刺されたらしい。
鬼のような形相で、自分の足首を叩いている。
その顔は、秋田名物なまはげに似ていた。

パチッ パチッ パチッ
みんな大変なようである。
しかし、私には蚊の被害は、まったくない。
私は、ほとんど動いていないから、蚊にとっては、私が一番刺しやすい獲物のはずである。

「おい、キンチョールはないのか! なんで蚊取り線香を用意しなかった! 蚊の大群が来たぞ。どうするんだ!」
社長が、叫んでいる。

「いま、買ってきます」
ミス秋田が、体をかがめながら、庭から脱出した。
残った4人は、パチパチ、パチパチ。
まるで下手くそなカラオケに、お義理で拍手をしている感じだ。

私は、依然ビールをラッパ飲み。
私だけが、平和な時間を満喫していた。
しかし、人間というのは、他人の平和を妬むものである。

営業3人が私のそばに寄ってきた。
私のそばには、蚊がいないと思ったのだろう。
しかし、ここにも蚊はいたのだ。
だから、当然のように彼らは蚊に刺された。

そして、一斉に叫ぶ。
「なんで!」

君たちは、知らないのだ。
蚊にも嫌われる男が、この世界にいることを。

ちなみに、蚊に食われやすい人の体質というものがあるらしい。
血液型はO型。
酒好き。
色黒。あるいは、黒い服を着ている人。

私は、O型。
ビール好き。
色黒ではないが、この時は、黒のポロシャツを着ていた。

蚊に食われる条件はそろっているのに、食われない。
不思議である。
もし将来、蚊の言語が理解できる機械が開発されたら、真っ先に私が購入して、理由を聞いてみたいものである。

「なぜ、俺のことを刺さないんだい?」
「だって、あんた、蚊みたいな顔してるじゃん。俺たちは、人間と違って、仲間割れはしないんだよ」


2007/08/01 AM 07:16:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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