Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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わがままなやつ
「うちのやつ、我が儘で、ホント俺まいってるんですよ」
新婚一ヶ月の幸せ絶頂男・得意先の営業フクシマさんが、口をとがらせて私に言葉を投げかけた。
28日の午前中のことである。

もしかして、オノロケ? と思ったが、口に泡をためて一気に喋る姿を見ると、オノロケではないようである。
握ったこぶしを振り上げる様子も、鬼気迫るものを感じる。

この間、カナのやつ、料理教室に勝手に入会してきたんですよ。半年間の授業料が、材料費込みで4万8千円。一括で支払ったんです。
「新婚旅行で金を使いすぎて、ピンチだ!」って叫んでいた次の日に4万8千円払うんですから、「どんなつもりだ」って、俺言ってやったんですよ。
そうしたら、「だって、料理をもっと工夫しろって言うから」って、泣きそうな顔で言うじゃないですか。
でも、そんなことは、結婚前に済ましておくものだろ、って言うと、「あなたが結婚を急いだから、そんな時間なかったのよ!」って逆ギレですよ。
まったく我が儘なんだから。


そんなのは、我が儘とは言わない。

一昨日も、月末で金がないって時に、「約束なんだから、レストランに連れてって」って言うんです。
確かに「月に一度は、しゃれたレストランで外食するのもいいな」ってことは言ったんですが、俺、約束した覚えはないんですよ。
でも、カナは「絶対約束した」って言い張るんです。約束した、と言っても、現実問題として金がない。
そうすると、カナは平然として言うんです。「カードでいいでしょ」って。
カードだって、いつかは払わなきゃいけないんだから、それは誰が払うんだ、って俺聞いたんです。
そしたらまた、カナは平気な顔で言うんですよ。「あなたのお小遣いで払うのが当然でしょ」
これって、すごい我が儘ですよね。


そんなのは、我が儘とは言わない。

カナの友だちが食事に招待してくれるって言うんで、この間行ったんです。
でも、俺はその時、ものすごい仕事を抱えていて、ちょっと無理かも、って答えたんです。
そうしたら、カナのやつ、すごい目で俺を睨むんです。目が据わっちゃって、しかも何も言わない。
これは怖かったですよ。俺鳥肌が立ちました。
そして、突然ポロポロと大粒の涙をこぼして、こう言うんです。
「お友だちはみんな旦那さんを連れてくるのに、私だけひとりなんて拷問だわ。あなたは、私が拷問を受けても、平気な顔をしていられるの。そんなに冷たい人だったの」
こんなことを言われたら、仕事を放り投げてでも、行かないわけにいかないじゃないですか。
でも、カナの友だちの家に行ったら、旦那連れで来たのは、俺たちだけなんですよ。
他の3人は、仕事が忙しいからって、旦那なしですよ。
俺ひとりで、女4人の相手をして、もう疲れるわ疲れるわ。
あとで、カナに文句を言ったら、なんて言ったと思います?
「向こうの旦那が忙しいんだから、仕方がないでしょ」ですよ。
腹が立つくらい、我が儘ですよね。


そんなのは、我が儘とは言わない。
本当の我が儘とは・・・・・、

今年の3月の下旬、印刷ブローカーのネギシから、「大急ぎの仕事があるんで、助けてください。ピンチなんです。これがうまくいかないと、俺の将来はない!」と悲壮な口調の電話をもらった。

詳しく聞いてみると、恩のある会社からカタログの作成を頼まれたらしい。
しかし、あまりにも急ぎの仕事なので、誰も引き受けてくれない。
そこで、彼の知り合いの中では一番暇な私のことを思い出した、ということらしい。

内容はA4フルカラーの4頁である。
表紙に関しては、先方が選んだものを使うので、手間がかかるのは、見開きのページだけである。
私の方もそれなりに仕事はあったが、引き受けた。
ネギシに対して、私はまったく義理はない。もちろん、義務もない。
しかし、泣いている子は、頭を「ヨシヨシ」と撫でてやらねばならない。
それが大人というものである。

校了まで4日しかない、と言うので、初稿を1日で仕上げた。
ネギシは喜んだ。
しかし、校正が戻ってきたときは、ページ数が8頁に増えていた。

倍である。しかも、納期は変わらないと言うのだ。つまり、時間がない。
ページが増えれば、当たり前のことだが、値段は上がる。
見積もりを出し直して、最低限これだけはもらわなければ、この仕事は無理だ、と言った。
それに、校了3日前に、ページを4頁増やすなど、あまりにも計画性がなさ過ぎる。
普段は、客に説教がましいことは言わないが、この時は言った。

ネギシは、「はいはい」と言って聞いていた。
最初のものより3倍の値段を付けた見積書を見せたが、ネギシは素直に「ウン」と頷いてくれた。
だから、徹夜して1日で仕上げた。

すぐに校正が戻ってきた。
今度は、表紙が気にくわない。表紙を新たに考えて欲しいというのである。
おい、待て! 表紙はそっちが選んだものだろう。それを変更するのはおかしくないか!
納期は延ばしてくれるんだろうな!

頭に来て、詰問口調になった。
それに対して、ネギシは恐縮する態度を示しながらも、「納期は変わりません」と平然とした顔で言うのだ。

話す時間さえもったいないので、その場で2種類の表紙を作った。
突貫工事である。この場合、突貫工事しかあり得ない。
こんな短時間に、満足なものなど、できるわけがない。だから、作りながら「手抜きに見られてもいいのか」と、ネギシに念を押した。
ネギシは「いい」と大きく頷いた。
私は2種類とも不満だったが、ネギシはそれを持って、先方にお伺いをたてに行った。

表紙にOKが出たのは、期限ギリギリだった。
無事終了だ。
疲れた。
表紙はまったく気に入らないが、とりあえず、やり遂げたことに対しての満足感はあった。

しかし、その日の夜に、ネギシから電話がかかってきたのである。
「表紙は、あらためてプロのカメラマンに撮ってもらうことになりました」

こんなことを言われたら、誰だって怒る。
急ぎの仕事じゃなかったのか! 納期は延びたのか!
結局、延ばしてもよかった仕事なのか!


「表紙は、やっぱり重要ですからね。表紙で手を抜いたら、商品も手を抜いていると思われるじゃないですか」

殴るぞ! この野郎!
今さら何を言ってるんだ。
納期優先で仕事を受けて、「時間がない、時間がない!」って騒いでいたんじゃなかったのか。

「今すぐ来て、ちゃんと説明しろ!」
私は、受話器を握りしめ、喉が痛くなるくらいの声で、怒鳴った。

しかし、ネギシは「俺、今日は疲れていて眠いんで、寝させてもらいますよ」と言って、一方的に電話を切った。

ネギシ、死ね!
歯ぎしりをしたが、私もすぐに眠った。
疲れていたので・・・・・。

それ以来4ヶ月間、その仕事は止まったままである。
ネギシに催促をしても、「俺にだってわかりませんよ。先方の都合でしょ」と言い逃れるだけである。

腹立ちまぎれに「じゃあ、請求書送るから」と言うと、「Mさん、仕事が終わっていないのに、請求されても困りますよ。どんな仕事だろうと、請求書は仕事が終わってから・・・、それがこの世界の常識でしょ」と軽くあしらわれたのである。

この仕事は、ボツになる可能性が高い。
「まさか、ボツにするつもりはないよな」
無駄だと思ったが、一応ネギシに聞いてみた。

「そーんなこと、わかりませんよ。俺、神様じゃないんだから・・・、言っておきますけど、俺は悪くないですからね」

わかりますね。
こういうのを、本当の我が儘というんです。

いや、これは非常識と言った方がいいのか、あるいは、面の皮が厚い、と・・・。
それとも、ただ単に、俺がバカにされただけ・・・・・か?。


2007/07/30 AM 08:11:16 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]



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