Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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横須賀市とさいたま市
「おい、めまいはどうした」
いきなり本題から話し始める男、友人のススキダからの電話である。
そして、すぐに電話の声が変わった。

「ああ、Mさん? お久しぶりです。めまいはどうですか? Mさん、毎年6月になると、2週間めまいに悩まされるって言ってましたよね。今年はどうだったんですか」
聞こえてきたのは、ススキダの賢妻・元ナースの穏やかな声だった。
まん丸目の優しい笑顔が目に浮かぶ。この声を聞くと、気持ちが落ちつく。

めまい。
これは私の持病である。
毎年必ず5月か6月に、ほぼ2週間ほど、強烈なめまいに襲われる。

立っているときも、寝ているときも、仕事をしているときも、メシを作っているときも、風呂に入っているときも、絶えず世界が揺れているのである。
腹立たしいほど不快な症状だが、それが2週間後にはピタッと治まる。
何ごともなかったように、治まるのである。
必ず治るから、私はそれほど深刻に考えてはいない。医者にも行かない。
だから、このことは誰にも言っていない。家族にも言っていない(ブログには書いてしまったが)。

昨年は、6月の他に10月にもこのめまいが襲ってきて、憂鬱になった。
そして、その10月に、ススキダ夫婦に、このことがばれてしまったのである。
だから、彼らは、心配してくれているのだ。

しかし、今年は、この恒例のめまいがなかった。
喜ばしいことである。
だから、「めまい? ああ、ないですよ。全然ないです」と答えた。

それを聞いた元ナースは「あんらぁ〜! それはよかったですねー!」と、どこの地方のオバさんか、と思うようなのどかな声で言った。
元ナースは、ひとの全身から力を抜かせるのがうまいようである。
頬がゆるむ。

では、今年は何故めまいが襲ってこなかったのか。
思い当たることは一つしかない。
今年の6月は、珍しく忙しかった。
それが良かったのではないだろうか。
そう考えると、私のめまいは「グータラ病」の一種と言っていいのかもしれない。
仕事に集中していれば、めまいが入り込む余地などない。
病は気から、とはよく言ったものである。

「おい、めまいがないなら、仕事をやるぞ。働け、ほら、働け!」
世界がどんなことになろうと、決してめまいにはなりそうにないゾウリムシ男・ススキダに電話がまた変わった。

「ススキダ様、ありがとうございます。これで一家四人、しばらく食っていけそうです。拝みます、拝みます」
「本当に拝んでいるのか。舌を出してるんじゃないか」
「もちろん、出してるよ」

ウォーッホッホ。

いつものことだが、ススキダの笑い方は、気持ちが悪い。
彼とは5年の付き合いになるが、この笑い方だけは、いまだに慣れない。
この件に関しては、元ナースを尊敬する。
あんな笑い方をする男と、よく結婚したものである。
その勇気ある行動を褒めてあげたい。

「で、いつ仕事を出してくれるんだ」
「今夜7時、すかいらーくに行く。俺とレイコ(元ナース)は、サーロインステーキを食うぞ。お前は何を食う? 何でも好きなものを食っていいぞ」
「お前の奢りか」
「ああ、奢りだ。俺サマの奢りだ。俺が奢ってやる! いいか、たとえ、お前が断ったとしても、俺は絶対に奢る。俺サマの言うことを聞け! 邪魔をするやつは、許さねえ! 鉄砲玉をぶち込んでやる!

後半の方はドスの利いた声に変わって、絞り出すような声になっていた。
想像したくはないが、ススキダの顔を想像してしまった。
強面(こわもて)の極道顔。
背中の龍の彫り物(嘘だが)。
鳥肌が立った。
そして、軽いめまいがした。

だが、「め、め、めまいが・・・」
そう言ったのは、ススキダだった。
力みすぎて、酸欠になったらしい。

こんなバカを野放しにしておくとは、横須賀市というところは、寛容なところらしい。
さいたま市だったら、永久追放である(もちろん、嘘です)。

さいたま市に住んでいることに感謝しながら、私は何も言わずに、電話を切った。


2007/07/24 AM 07:06:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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