Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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パンダが帰ってきた
嵐のような一週間も、終わってしまえば、どうってことはない。
眠い眠い、とボヤキながら仕事をしている最中は、「これが終わったら、飽きるほど寝てやるぞ」と思っていたが、いざ終わってみると、寝るのがもったいなくなるのである。

朝6時に起きて、高校2年の息子の弁当を作り、家族全員の朝メシを作った。
洗濯機を回し、家族全員を送り出したあとで、ひとり朝メシを食った。
朝メシは、納豆ごはんと竹輪の磯部揚げ、豆腐のみそ汁である。

午前9時5分。洗濯物を干してから、散歩。
団地の遊歩道を歩いている人は、一人もいない。犬を散歩させている人もいない。
無人の遊歩道で、時々50メートルのダッシュをする。
晴れ間がのぞいているが、蒸し暑さはない。ダッシュをしても、あまり汗はかかない。

4度目のダッシュをしているとき、猫の鳴き声が聞こえた。
立ち止まって、あたりを見回すと、私が可愛がっているノラ猫「パンダ」が、木のベンチに座って私を呼んでいた。

パンダが5月に足を怪我して、親切な獣医さんに一時的に引き取られていった顛末(てんまつ)は5月4日のブログに書いた。
パンダは、傷が癒えて、晴れてノラ猫に戻ったようである。
私がパンダの姿を認めて近づくと、パンダは早速体をくねらせて、腹を見せた。

「帰ってきたのか。元気そうだな」
怪我の具合を確かめてみると、怪我をしたところだけ禿げていたが、傷口は完全にふさがっているようである。
毛並みもよくなったようだ。
以前は、白い部分が薄茶色になっていて、薄汚れた感じだったが、今は白と黒のコントラストがはっきりしていて、男前になっている。

私がベンチに腰を下ろすと、パンダはすかさず私の膝の上に手を置いて、体半分だけ乗っかってきた。
そして、自分の頭と首筋を私の膝に押し付けて「ニャー」と鳴くのである。
「久しぶりだねえ、会いたかったよー」とでもいう感じか。

鼻筋を撫で、首を撫で、腹の横を撫でるたびに「フニャー」と甘えた声を出して、恍惚の表情を作る。
エサをやるわけでもないのに、これだけ人なつっこいノラ猫は珍しい。

私が撫でるのをやめると、パンダは顔を私の腿にすり寄せて、目をつぶった。
まさか寝ないだろう、と思っていたら、小さな寝息が聞こえた。
警戒心のまったくないパンダの寝顔を見ていると、自然と癒されてくる。

大きく息を吐いて、私も目をつぶった。

そして、激しく体を揺さぶられて、目が覚めた。
自分の肩がガクガクと揺れているのがわかる。
誰だ! 乱暴なやつだ。失礼な、と思ったが、夢か現実か、半分半分というところである。

「おい! おい!」
耳元で、でかい男の声がしている。
夢にしては、耳に届く声がリアルだ。
目を薄く開けてみた。

ブツブツの顔をした、眉毛の濃い男が私の顔をまん丸の目でのぞき込んでいる。
若い娘なら、確実に「キモイ!」という種類の顔が、目の前30センチのところにあった。
「あんた! 大丈夫か!」

大丈夫も何も、私はただ寝ていただけである。
何もあれほど強く肩を揺さぶって起こさなくてもいいではないか。
目覚めが悪い。損をした気分である。パンダも揺さぶられたせいで、逃げてしまったし。

「俺、30分くらいずっと見てたんだけどさ。あんた、真っ青な顔して、寝てるだろ。息をしてるのはわかったけど、全然動かないしさ。揺さぶって起きなかったら、救急車呼ぼうと思っていたんだよ」

それはご親切にありがとうございます。
30分も他人様に寝顔を見ていただくなど、初めての経験でございます。
世間も、まだ捨てたものじゃございませんね。


しかし、そんなに病人のような顔をしていたのだろうか。
極度の睡眠不足は間違いないところだが、自分では体調に問題はないと思っていた。
50メートルダッシュをしても、ほとんど息は上がらなかった。

「俺、そんなに死人みたいな顔してました?」
「ああ、真っ青だったよ、真っ青! 俺、はじめて見たよ、そんな顔」
大袈裟に肩をすくめながら、眉毛男は首を振った。
そして、「今は、ちょっと赤みがさしてきたかな。でもまだ顔色悪いよ」と頷きながら言った。

私が彼の顔を寝ぼけまなこで見上げていると、今度は、パチン、と手を叩いて、「栄養ドリンク買ってきてやろうか。コンビニすぐそこだからさ」と太い眉毛を動かしながら言うのである。

いくら何でも、そこまでしてもらう理由はない。
「いや、それはけっこうです。お気持ちだけいただいておきます」
私は、立ち上がって、頭を下げた。

「でも、本当に具合悪そうだよ。大丈夫? 家まで送っていこうか」
親切は嬉しいが、ここまで心配されると、正直鬱陶しい。
自分では、少しも具合が悪いと思っていないから、なおさらである。

「いや、もう元気ですから。ありがとうございました」
私は、もう一度頭を下げて、走り出した。まるでピンポンダッシュのように。

「おいおい、無理すんなって! おい! 死んじゃうぞ! おい! なんだぁ! はえーなー!



2007/07/10 AM 07:23:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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