Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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CDが一枚もない
睡眠不足だ。
7月4日から7日までの4日間で、トータル7時間しか寝ていない。

そもそもの始まりは、毎月5日締めの仕事の原稿が大幅に遅れたことである。
普段なら先月の23日前後に原稿が少しずつ入り出して、月末には原稿が揃う予定だった。
しかし、今回原稿が入ってきたのは7月2日である。
あまりにも遅すぎる。

この場合、なぜ遅れたのかを担当者に聞いても、5日の納期が延びるわけではないので、私は聞かない。
無駄なことは聞いても意味がない。
だから、頑張って一日で初稿を出した。それが寝不足の始まりだった。

そして、月に1〜2回仕事をいただくドラッグストアのチラシもそれに重なった。
さらに悪いことに、いや、これはいいことに、というべきか。
新規の客が獲得できたのだが、その仕事がTGV並の超特急なのである。
7月5日に原稿が入って、校了が7月9日。

仕事の内容は、B2のチラシ両面だ。
普通は、チラシはB3が主体だが、今回は初めての会社なのに、いきなりB2である。倍の大きさだ。
しかも工業機械の販売会のチラシだから、機械の切り抜きが270点もある。
機械は凸凹が多いので、画像をフォトショップで切り抜くだけで、丸一日かかった。

つまり、24時間。ノンストップの完全徹夜である。
この24時間の間に私が休んだのは、朝メシと夕メシを作ったとき、そして風呂に入ったときだけである。
あまりにも眠いので、包丁を使っているとき、左手の薬指をザックリと切った。おかげで、目が覚めた。
風呂では、突然眠気が襲ってきて、溺れそうになった。

5日締めの仕事は5日の深夜に、ギリギリ校了になった。
ドラッグストアの仕事は、7日の朝、校了になった。
この2つは、基本的にフォーマットが決まっているので、原稿さえ揃えば、時間が読める。
たとえ担当者の怠慢で原稿が遅れたとしても、徹夜すればこなせる仕事だから、力ずくで納期に間に合わせることができる。

しかし、新規の会社はそうはいかない。
一からデザインを始めなければいけないので、その分時間がかかるし、相手のデザインに対する好みも読めないから、神経を使うのである。

はたして、今日はどれくらい寝られるだろうか。

そんなことを思っていたとき、またWEBデザイナー・タカダから電話がかかってきた。
ここ一週間、毎日電話がかかってくる。
結婚願望MAXの33歳独身男は、WEBの技は天才だが、その他のことは「おぼっちゃま」である。
全身が、依頼心の固まりになる。

「あのー、師匠、安室奈美恵って知ってます?」
今度は、安室奈美恵ファンの女の子でも、好きになったか。

「いえ、そうじゃなくて、Tさんは浜崎あゆみの他に安室奈美恵も好きらしいんですよ」
つまり、彼女のご機嫌を取るために、安室奈美恵情報を私から得ようということのようだ。
しかし、私に聞くよりもインターネットで検索した方が、正確な情報が得られるのではないだろうか。

「いや、インターネットを信じないわけではありませんが、師匠のご意見の方が信用できますから」
タカダ君も、最近は世間がよくわかってきたようである。
目上の男を持ち上げる方法を覚えたようだ。
顔が気持ち悪いのは、許してやることにしよう。

「安室奈美恵は、今やHIPHOPの女王である」と私は言った。
「女王ですか」
「そうだ、女王様だ。頭が高い! 控えおろー!」

そんな私の戯言をタカダは素通りして、「でも、安室奈美恵って、オレの中ではただのアイドルですよ。それも、オレ好みではないですし」と小さく語尾を濁した。
タカダは、正当派アイドルが好きで、明るく天真爛漫、清楚な感じが好みの、嫌らしい中年男である。

「君は、遅れている。いつも、待ち合わせ時間にも遅れている」
その言葉もタカダは無視して、「でも、本当にイメージ沸かないんですよ、オレ。なんでTさんが、安室奈美恵が好きなのか。浜崎あゆみと全然タイプが違うじゃないですか」と念仏のようにつぶやいた。
ブツブツブツ・・・・・。

「安室奈美恵のアーティストパワーは、浜崎あゆみよりも上だぞ。ただ、HIPHOPというジャンルが、一部の世代にしか認知されていないから、彼女は過小評価されているんだ!」
「HIPHOPって、そもそも何ですか? おれ、全然わからないんですよ」
「それは、ケツが上がっているってことだろう。ケツは下がっているよりも、上がっている方がいい」

「・・・・・」(完全に呆れているようである)

「実は、俺にもよくわからないんだ。ただ、ラップとかDJミュージックなんかを総称して言っているらしいんだが、おじさんにはよくわからん。ただ、安室奈美恵がかなり質の高いHIPHOPを歌っているのだけはわかる。俺、『QUEEN OF HIP POP』というアルバムは、2年前毎日のように聴いていたんだ。いいぞ、これは」

今の安室奈美恵は、人に自分の歌をカラオケで歌ってもらったり、鼻歌で口ずさんでもらおうとは、思っていないようだ。
歌えるものなら、歌ってみなさいよ! アタシの歌は、そう簡単に歌えるもんじゃないわよ!
最近の彼女の歌からは、そんな、凄みを感じるのである。

「師匠、すみません。そのQUEENなんとかっていうやつ、貸していただけませんか。勉強したいんで」
「残念ながら、我が家のCDは全部、ある事情があって、売っぱらってしまったんだ。ただ、MP3に落としたデータがあるから、それを内緒で貸すことにしよう。いいか、これはあくまでも、ナイショだぞ(小声)」

「あー、ありがとうございます。助かりますよ。いつもお世話になりっぱなしで」
感謝しているようである。
いい気持ちだ。
そこで、調子に乗って、こんなことを言った。

「君は金持ちだから、何枚でもCDが買えるだろう。いま安室奈美恵の『PLAY』というアルバムが出ている。これを2枚買って、1枚俺にくれ!」

タカダは、そんな私の提案を見事に無視して、「でも、師匠、なんでCD全部売っちゃったんですか。もったいないじゃないですか」と無神経にも聞くのである。

「そ、それは・・・・・」
私は、泣きながら、電話を切った。


2007/07/08 AM 08:17:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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