Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








「すかいらーく」で酒盛り
一流デザイナーは、いい仕事をする。
そんな当たり前のことに感心しながら、ニシダ君に感謝の昼飯を奢った。

先月末に、得意先のハウスメーカーのチラシデザインで行き詰まっていたとき、ニシダ君の事務所に押しかけてアドバイスを受けた。
同じことを何年も続けていると、イメージが固まってくる。
クライアントから「斬新なイメージで」と言われても、長年のイメージに絡め取られて、アイディアが広がっていかない。

三流・四流のデザイナーは、すぐに思考がフリーズする。
そこで、他のハウスメーカーのチラシを参考にしようと、チラシをあれこれ手に取ってみるが、どれも目に痛いデザインだから、あまり参考にならない。
他の業種のものを参考にしようと手に取っても、どうもしっくりこない。

袋小路である。
こんなときに頼りになるのは、友しかいない。それも、一流の。

一流デザイナー・ニシダ君は、嫌がる素振りも見せずに、快諾してくれた。
運良くニシダ君はその日、急ぎの仕事がなかったので、五流デザイナーに丁寧に手ほどきをしてくれた。
新妻のチヅルさんがいなかったのは残念だったが、バドワイザーを飲みながら、天才のご意見を拝聴した。

彼にそのハウスメーカーの過去のデータを見せると、この天才は、5分ほどの沈思黙考のあと、紙にラフデザインを書いていった。
色指定、写真のトリミングや文字サイズの指定も、ササッという軽やかさで書いていく。

表と裏のラフデザインは、20分もかからずにできあがった。
そして、森永の「DARS」を口に放り込みながら、パソコンディスクに座って、あらかじめ取り込んでおいたデータを、自分が書いたラフを見ながら、無駄のない手順でレイアウトしていった。

その横顔の何と凛々しいこと!
チヅルさんが惚れるのも無理はない。
普段は物静かな好青年だが、パソコンを前にすると、オーラが出ている感じさえする。
一流の輝き。
まぶしい!

おもて面のレイアウトは、簡単に終わった。
全体の配置を見ると、グリーンを基調にした落ち着いた色調のものだが、文字が生きている。
派手ではないが、文字を効果的に見せながら、画像も目立たせるという表現方法の冴えが、見る側の視覚を捉える。
この切れ味には、恐れ入る。

ニシダ君は、チラシのデザインは、ほとんどしない。
だから、チラシのベタベタ感に染まっていないのがいい。
紙面からはクールな感じを受けるが、全体が抵抗なく目に入ってくる心地よさは、目に痛いチラシの多い他のハウスメーカーのチラシと比べると、特異性が際立つ。

うら面までやってもらうのは気が引けるので、うら面は自分でレイアウトした。
とはいっても、ニシダ君のラフ通りにレイアウトしただけだが…。

そして、そのチラシは先週無事校了となった。
クライアントにも喜んでもらえた。
すべてはニシダ君のおかげである。

ニシダ君は「センセイに教わったことをそのままやっただけですから、これは当然のことです」と報酬を拒んだが、私はそこまで図々しくはない。
ささやかだが、デザイン料を支払った。
それは一流のプロに支払うには、あまりにも恥ずかしい額だが、ニシダ君は恐縮して受け取ってくれた。

場所は、我が家の近所にある「すかいらーく」。
「デザイン料もらって、お昼までご馳走になるなんて、ラッキーラッキー、ガハハハ!
と、新妻チヅルさんが、ビールのジョッキを呷りながら、デザイン料の入った封筒を自分の方に引き寄せた。
ニシダ君は、それを微笑みながら見ている。

テーブルに並んだものは、「BLTクラブサンド」「ミックスピザ」「シーフードサラダ」「ポテトフライ」「若鶏からあげ」である。
飲み物は、私と新妻チヅルさんが、ジョッキの生、ニシダ君は車の運転があるので、「ドリンクバー」だ。

ニシダ君は、細身の体のわりによく食べる。
クラブサンド、ミックスピザ、シーフードサラダは、すべて彼の胃袋に入った。(なんと、1700kcal !
チヅルさんは「若鶏からあげ」を少し食べては、ジョッキをグビグビし、4杯もお代わりをした。
この新妻は、私にもお代わりしろと強制するので、私も嫌々だが、4杯付き合ってやった。
大酒飲みというのは、ホントに困ったものである。
すかいらーくで、昼間こんなにビールを飲む人間は前代未聞なのではないか。
反省してもらいたい。
(このブログを読んで、怒るチヅルさんの顔が目に浮かぶが、新妻なんだから、穏やかにおだやかに…)

「Mさん、相変わらずですね」
珍しく目のまわりを赤くさせた、ほろ酔いのチヅルさんが、ジョッキを握りしめながら言った。
「ん?」
「ほら、普通なら、新婚生活はどうなの? とか、旅行は行ったの? とか、聞くじゃないですか。Mさん、ぜ〜〜んぜん、聞きませんねぇ」

二人の生活に興味はあるが、私はTVのレポーターではないから、他人の家に土足で上がり込むようにして詮索する気はない。
彼らが自分から話をするなら、喜んで聞くが、こちらから無粋にマイクを突きつけようとは思わない。

「センセイは、わかりやすい人だって、いつもチヅルが言ってるんですよ。だから、絶対にセンセイは裏切らないって」
それは、買い被られたものだが、そう言われて悪い気はしない。
人を裏切るというのは、エネルギーを使う。
私には、そんな余分なエネルギーがないだけなのだが、彼らは私のことを好意的に見てくれているようである。

「実は、新婚旅行の相談に来たんですよ」
「いや、俺は妻子ある身だから…いまさら、新婚旅行なんて」
「これこれ」
新婚さんは、ツッコミが弱くなるようである。
以前なら、「オイオイ、オヤジ、違うだろうが!」と言ってくれたはずだが。

幸せボケか!

新婚旅行に行きたいが、ニシダ君のスケジュールの都合で、休みが4月第2週の3日間しか取れない。
その大事な3日間で、どこに行ったらいいか、という相談である。
おそらく、二人であれこれ考えたが、決定打が出なかったのだろう。
考えれば考えるほど、疲れてくるので、第三者にアイディアを聞く。
考えが煮詰まったときは、この方式が一番楽である。
他人の意見なら、素直に聞ける場合があるからだ。

「どこに行きたい、よりも、どこに連れて行ってあげたい、って考えてみた?」
私がそう聞くと、二人は顔を見合わせた。

「ヨコハマ!」

随分、近くである。
「チヅルは、仕事でしか、横浜に行ったことがないんですよ。プライベートで行ってみたいって、いつも言ってたんです」とニシダ君。
「シンジは、中華街で死ぬほど美味しいものを食べてみたい、って言ってた」とチヅルさん。

決まりである。
旅は、遠くに行けばいいというものではない。
行きたいところにいくのが、旅である。

「行ってらっしゃい。お土産は、コスモワールドで、イルカのストラップを、ヨロシク!
「何ですか、それ?」

「見事ゲットしたら、次のステージに上がれるよ」

「わかりました。じゃあ、最後にエビスビールで乾杯しましょ!」
結局最後はビールで締める、若妻と酔っぱらいオヤジだった。


2007/03/20 AM 10:31:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.