Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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三カ国語バトル
友人のススキダと会った。
電話では、たまに話をしているが、会うのは3ヶ月ぶりである。

ススキダは、相変わらず怖い顔をしている。
茶のブルゾンの下に、黄色いセーターを着ているのだが、何を着ても「その筋の人」に見える。
私が警官なら、すぐ職務質問をするところだ。
白い粉は、どこに隠した!

隣には、彼の奥さんがいる。
こちらは大きな目がよく動いて愛嬌のある、見るからに良妻という感じの人である。

あまりにも不釣り合いなので、一度ススキダに夫婦のなれそめを聞いたことがある。
「お前、いったいどこで拉致してきたんだ」
「病院」

彼女は、元ナースだから、それは充分想像できたが、その拉致の仕方が問題である。
もっと詳しく聞きたかったが、顔が怖いのでやめた。

ススキダはそのように顔は怖いし、薄気味悪い笑い方をする男ではあるが、大変な気配りの男である。
昨年彼の事務所に行ったとき、私の体調は最悪で、彼にみっともない姿を見せてしまったことがあった。
それ以後、何か用事があると、彼の方からこちらに来てくれるようになった。
私の体調を気遣ってくれているのだ。
そして、元ナースも必ず連れてくる。

「レイコが、買い物があるって言うからさ。ついでに寄ったんだよ」
いつもそんな嘘くさい言い訳を、肩を揉みながら言うのである。
ススキダは、照れたとき必ず左手で、自分の右の肩を揉む。
人間誰しも、照れると少しは可愛く見えるものだが、彼の顔は怖いままだ。
珍しい男である。

「ニーハオ!」
待ち合わせ場所のすかいらーくに、約束の時間15分前に行ったが、ススキダ夫妻はもう来ていた。

また負けてしまった。

前々回は5分前に行き、前回は10分前に行ったが、彼らはすでに来ていた。
だから、今回は15分前に行ったのだが、それでも先を越された。
こいつら、いったい何分前に来てるんだ!
次は一時間前に行ってみようか。
こんな小さなことでも、私は負けず嫌いなのである。

旧正月に、こいつの実家に里帰りしてきた。悪いが……、また土産だ」
ススキダが肩を揉みながら、私の方へ紙袋を滑らせた。
ススキダは、正月には、寸又峡温泉の土産を送ってくれた。
今度は、香港の土産である。

「悪いが…」というところが、いかにもススキダらしい。
中身を覗いてみたが、ストラップやキーホルダーが10個くらい入っていた。
見るからに中国っぽいキャラのものが多い。

その中に、チャイナドレスを着た少女のストラップがあった。
つまみ上げてみると、ススキダの奥さんが「やっぱり!」と手を叩いた。

「Mさんは、真っ先にそれを手に取るって、わたし言ったんですよ。ヨシッ! 勝った!」と言って、ススキダにVサインを送るススキダ夫人。これで43歳なのである。
悔しそうに、握り拳で自分の額を叩くススキダ。こいつは47歳。

おもろい夫婦である。

私と奥さんは生ビール、ススキダはコーヒーを飲みながら、香港の旧正月の話題で盛り上がった。
そして、ピザを頬張りながら楽しく会話をしていたとき、馬鹿げたイタズラが私の頭に浮かんだ。
ススキダの奥さんの広東語が聞きたいと思ったのだ。
こういうときの私は、自制がきかない。馬鹿馬鹿しさを自覚していても、抑えられないのである。

ススキダの気持ち悪い顔に顔を寄せて、彼に私のイタズラを話した。
彼は無表情に頷いて、流暢な英語で話し始めた。
ススキダが、奥さんに英語で「君は広東語で話せ」と言うと、奥さんは、私の目を見て一度頷いてから、広東語で話し始めた。
あうんの呼吸というやつだ。
広東語は、不思議と普通に話しても少々甲高く聞こえる。
すかいらーくの店内に広東語が響き渡った。

そして、私は日本語。声の大きさはやや抑えめである。
ススキダが英語で話し、それに私が日本語で答え、奥さんが頷きながら広東語で答える。
広東語のトーンが高いので、それだけが浮き上がって聞こえる。
まわりを見回さなくても、まわりの空気が固まっていくのがわかる。

三人とも照れるかと思ったが、意外に堂々と出来るものである。
私の日本語と彼らの外国語は噛み合っていないはずだが、それが楽しい。
ススキダ夫妻は3つの言語がすべてわかっているから、私の話に合わせて話をうまい具合に誘導している。
しかし、店内の客には何を言っているかわからないだろう。

私にもわからない。

ときどき三人で同じ箇所で笑いながら、大袈裟な身振りで語りかける。
いま思えば、失笑ものの、程度の低いイタズラだが、ストレス解消にはなる。
ススキダも、彼の奥さんも確実に楽しんでいた。

そんなおふざけを演じているときに、ススキダの携帯が鳴った。
そして、携帯を取って話し始めたススキダの手元を見ると、チャイナドレスのストラップが揺れていた。
土産物とまったく同じものである。

携帯電話を持っていなくて良かった、と思った。
携帯電話を持っていたら、私は確実にこのストラップをしていただろう。
それは身の毛がよだつ行為である。

ススキダと同じストラップをするなんて、そんな怖ろしいことは、
It is absolutely unpleasant!
有而討厭(?)
(絶対に嫌だ!)



2007/02/24 AM 10:19:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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