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● ギャグ小説を書き上げた |
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昨年11月の終わり頃、同人誌を出しているサワダ氏から、小説を書いてくれないかと頼まれた。 そこで、色々と悩んだ結果「ギャグ小説」なら書いてもいいと返答して、サワダ氏の了解を得た。
2月末が締切だったが、初めてのことだから早く仕上げた方がいいと思って、仕事の合間にテキストエディタでせっせと打ち込んでいった。 物語の大筋が決まったら、意外とスイスイといった。 しかし、慣れていないので、描写がしつこくなってしまい、決められた文字数内に収まらなくなった。
不要だと思われる部分をダイエットするのだが、それでもまだ多い。 さらに、文字を削るのだが、削りすぎると、話が飛躍して前後関係がわからなくなる。 シロートの悲しさである。
「ギャグ小説」は、オレには荷が重いか、と激しくヘコみながら、何度も手直しをした。 何度か無理なダイエットを繰り返し、リバウンドしながら、とりあえず一昨日、小説は完成した。 予定より二週間以上早かったが、早いほうがサワダ氏も「ダメ出し」がしやすいだろう。
私の中では、90パーセント以上没(ボツ)になることを想定しているから、迷惑を掛けるなら結論は早い方がいい。
今日、メールでサワダ氏にテキストデータを送ったら、2時間後に返信があった。
「何と表現していいかわかりませんが、私は面白いと思います。しかし、2カ所辻褄の合わないところがありました」
彼の指摘した箇所を改めて読んでみると、確かにその部分だけ、話が浮いている。 書き上げて、自分で読み直しているときは、自分では話の流れがわかっているから気づかなかったが、ひとから指摘されると、確かに辻褄が合わない。
さすが、サワダ氏の読解力はたいしたものだ、と失礼ながら感心した。 すぐに修正を入れて、テキストデータを送った。
サワダ氏は、またすぐに返信をくれた。 これで校了とします、と書いてあったが、「大変ユニークな作品なので、賛否で言えば、おそらく9割方『否』と取る人が多いでしょう。なぜなら、当方の同人誌の読者は比較的年配の方が多く、保守的だからです。そこで、最後から二番目に掲載することにしたので、悪しからず」とも書いてあった。
おそらく、自分から頼んだ手前、載せないわけにはいかないので、一番目立たない場所に載せて埋もれさせようということだろう、と判断した。
しかし、私もそれは賢明な方法だと思った。 自分でも、これは活字にするほどの価値はないと思っている。 真面目に小説を書いている方々には申し訳ないが、眉間に皺を寄せたり、呻吟したりして文章を書くというのが、私の肌には合わない。
お気楽、が一番いい。 だから、今回は徹頭徹尾「独りよがり」に書いた。 出来の悪いコントのような作品だが、誰も感動しない馬鹿馬鹿しさがいい、と自分では思っている。
娘に読ませると、「おまえ、ほんとにバカだな」と言いながらも、笑ってくれた。 一方、日常生活でも冗談の通じない息子は、「なにこれ! 意味がわからない! 最後まで読む気にならないよ」と言って、途中で抛り投げた。
おそらく、息子の反応が正常で、娘と私が異常なのだろう。
ところで、この小説には、モデルがいる。 友人の120キロ(もしかして130キロ?)の巨漢グルメ、スガ君である。 これは、大食漢で、バツイチの彼のドタバタ行動を一人称で描写したものである。
だから、一応、この小説のモデルにも読んでもらわなければ筋が通らないし、正当な評価も得られないと思った。 そこで、昼飯をご馳走しながら、彼にこの小説を読んでもらうことにした。
大きめの文字でプリントされた原稿を、恭(うやうや)しく受け取って、スガ君は老眼鏡を掛けて(30代半ばなのに!)読み始めた。
場所は、大宮駅近くの「中華食堂 日高屋」である。 おそらく、こだわりを持ったラーメン通の人には、鼻で笑われるかもしれないが、私はここのラーメンが好きである。
まず、安い。そして、味が安定している。また、胡散臭い「ラーメン道」の雰囲気がないのもいい。 当たり前のことだが、ラーメンはただのラーメンであって、特別なものではない。 行列ができる必要はない。 ラーメンよりうまい食べ物は、この世の中には、いくらでもある。 ラーメンだけを無理に格上げする必要はない、と私は思っている。
スガ君は、かつて4年ほどラーメン店を経営したことがあるが、「はったり」のない性格が災いして、店は行列のできない店となり、泣く泣く店を閉めた。 しかし、今でもラーメンに対する彼の愛情と執着は深い。 彼は、年に200食以上、ラーメンの食べ歩きをしている。 彼の体重の4分の3は、ラーメンで出来上がっているのではないか、と思うくらいラーメン臭い男である。
私が「行列のできるラーメン屋」に批判的ということもあって、二年前に、彼が恐る恐る紹介してくれたのがこの「日高屋」である。
「特別うまくもない庶民的な味ですが、ラーメン屋の原点のような味ですよ」 と、彼に教えられて家族四人で行ったところ、全員で気に入って、我が家では「ラーメン屋」といえば、「日高屋」ということになった。
餃子と中華スープだけは二度と口にしたくないが、他のメニューは値段のわりに、悪くない。 スガ君の採点では、5点満点で2.5点だが、「行列ができる」だけで点が高かったり、店主が「こだわるふり」を見せただけで点が高くなる店よりはいい。
この日のスガ君は、「温玉旨辛ラーメン」と「おつまみチャーシュー」2人前と生ビール。 彼は4分40秒で、すべてを食い終わって、原稿を読み始めた。 顔全体に大粒の汗が浮かんで、それを特大のタオルで拭いている。
スガ君、真っ赤なタオルはやめた方がいいんじゃないか!? 暑苦しいぞ!
私は、生ビールをほとんど一気に飲んでから、「中華そば」を食べ始めた。 うちのヨメによると、「むかしデパートの食堂で食べたラーメンの味に似ている」ということだが、 私はデパートの食堂に行ったことがないので、それが適切な表現なのかはわからない。
要するに、ヨメは「庶民的」ということを言いたかったのだろうが、私としては最高の褒め言葉として、この「庶民的」という言葉を使いたい。 誰でも安心して食えるものが、私にとって最高の食事だと思っているからだ。
「Mさん、美味しそうに食べてますね。しかし、前歯どうしたんですか?」
ほっとけ! ピスタチオが悪いんだよ!
読んでいる途中、4回、スガ君は痙攣(けいれん)したように笑った。 多少はウケてくれたようである。
そして、眼鏡を外して、私の顔を見たあとスガ君が言った。 「Mさん、ありがとうございます。俺のこと書いてくれて、本当に嬉しいです。でも、オレ心配ですよ」 「は?」 「Mさん、脳味噌の中どうなってるんですか? これ馬鹿馬鹿しすぎます! 大丈夫なんですか、Mさん。オレ、本当に心配ですよ」
ありがとう、スガ君。 それは、私にとって最高の「褒め言葉」だよ。
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2007/02/12 AM 09:47:00 |
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