Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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吠える犬と吠えない犬
アベ内閣の支持率が下がっているらしい。

しかし、下がっているといっても、ブッシュのように30パーセントそこそこの末期的な状態ではない。
発足当時の世論調査の結果が良かったのと、前内閣との比較で、「下がった下がった」の大合唱になっているだけのようである。

私は、前内閣の支持率は「上げ底」だったと思っている。
コイズミ内閣は、一昨年あたりからの「お笑いブーム」のような現象で、支持率を維持していたと考えている。

「お笑いブーム」というのは、大変不思議なもので、百人いたら、そのうちの半数以上は「何があっても、笑ってやろう」と構えている人たちに支えられている。
最初から「笑ってやろう」と思っているから、ネタがつまらなくてもかまわない。

笑うことが重要なのである。

前内閣も、「何をやっても認めてやろう」という、メディアも含めての「ブーム」で底上げされているから、政策などはどうでもいい。
コイズミ氏が、「こう言った、ああ言った」という現象を追うだけで、中身の検証は二の次である。

しかし、人(首相)が変わると、当然のことながら「上げ底ブーム」はリセットされる。
遅ればせながら、有権者も多少は冷静になって、「何でも〜」というのはなくなる。

政権の初っぱなは、ご祝儀の意味合いもあって、「一応、内閣を支持してやろうか」と気を遣うが、前内閣とよほど変わったところがない限り、メディアの露出度に左右されて、興を失う。
だから、支持率が下がる。

メディアに定見はない。
「ナントカ劇場」という冠を付けられない総理大臣は、「華がない」のひとことで片づけてしまうのである。

そして、メディアが「華がない、顔が見えない」とひとたび言えば、もともと浮き草のようにフラフラした支持者は、「あー、アベ氏には、華がないんだ、顔が見えないんだ」と納得して、無党派層に逆戻りする。
その程度のことなのである。

前内閣は、政権初期の頃、確かに仕事をした。

まずは、無理矢理に抵抗勢力を作った。
次に、トップダウンの方式で、ハンセン病の控訴断念という決断をした。
しかし、長期政権を目論むには、もう一押しが欲しい、と思ったのだろう。
その後、北朝鮮に行った。
これは凄いことである。歴代の内閣が誰もなし得なかったことをしたのだから、これは評価されていい。

しかし、印象としては地味であるが、アベ氏も前政権でボロボロになった韓国、中国との関係を、小なりとはいえ、修復した。
北朝鮮との外交と、韓国、中国との外交。
どれに重きをおくかで、判断は分かれるだろうが、これからのアジアの時代を考えるとき、「日本と韓国、中国との関係」は北朝鮮よりも重要である、と私は思っている。

しかし、メディアに言わせれば、それでは「華がない」ことになる。
鬣(たてがみ)を震わせて、敵陣に単身乗り込んでいく方が「華がある」ことになるのである。
それが本当の「指導力」だったかは、その後の北朝鮮との無視されっぱなしの外交で、判断できることだが、メディアは「華がある」という感想しか報道しないから、幸運にも、彼は「華がある首相」ということで任期を終えた。

メディアはただ単に「ナントカ劇場」が恋しいだけで、冷静な評価を与えないのである。

コイズミ氏は、「ブーム」だけの人だった、と私は思っている。
彼には「位人臣を極めた人」としての風格がない。
些細なことに反応して論戦を受けて立つが、言葉が勢いだけだから、すぐに飛び散ってしまって、聞く側の脳の言語視野に浸透しないのだ。

東京都知事もそうだが、相手の気勢を削(そ)ぐ短いフレーズは、反論を抑える効果はあるが、彼らの言ったことを言葉にして読んでみると、見事なほど「空虚」である。
彼らが抛(ほう)り投げる言葉からは、日本語が本来持っているはずの、細かい機微が全く伝わってこない。

昔から、人の上に立つ人間は「茫洋さ」で民を包み込む人こそ英雄の資質ありとされたが、コイズミ氏らは子犬が弱いもの同士吠えているかのように、小さなことで眉間に皺を寄せ、そして、歯をむき出しにして吠えかかる。

彼らは、「何をした」よりも、人から「どう見られているか」が重要であり、さらに反論されることを病的なまでに嫌う人種である。
その点、アベ氏は、違うように思える。

私のアベ氏観は、「超タカ派」以外の何ものでもない。
外見はソフトな印象だが、それを隠そうとして隠しきれない、極めて温度の低い「凄み」のようなものを感じる。

彼は、まるで遅れてきた「韓流スター」のように、時流からずれて首相になった。
ちまたに数多(あまた)溢れる「韓流スター」が、「ヨン様の残像」から逃れられずに、そろそろ食傷気味であるように、アベ氏もコイズミ政権の幻影に絡め取られて、胸焼けを起こしかけている(おそらく、半分以上はメディアの感想のせいで)。

茫洋、という資質は、アベ氏の方がコイズミ氏より、色濃く持っている。
鈍い、という言い方もできるかもしれないが、判で押したような笑顔で、感情を隠す様は見事と言っていい。

古来の王がそうだったように、人を断罪して、表情を変えることがない人種である。
たとえいま、開戦の決意をしたとしても、彼なら、その後も平気でフランス料理のフルコースを食することができるだろう。

そういった意味では、コイズミ氏よりずっと怖い存在と言っていいかもしれない。

だから、彼の内閣の支持率が低いのは、私としては望ましいことだが、それがコイズミ氏の「回帰」を招くとしたら、それも困る。

無闇に吠える犬は嫌だが、吠えない犬も、何となく不気味である。

強いて言えば、雪山で遭難者を救助するセントバーナードのような、「奥ゆかしい賢明さ」「勇気溢れる懸命さ」を持った指導者を望んでいるのだが、それは高望みに過ぎるだろうか。



2007/02/05 AM 09:40:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | [メディア論]



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