Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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早朝チャリンコレース
自転車で無茶をしてしまった。
いま思い出しても鳥肌が立つ、馬鹿げたチャリンコレースである。

高校一年の息子が卓球の大会に出ることになった。
彼は、中学時代はレギュラーになれなかったが、高校はレベルが低いのか、それとも息子の努力のたまものか、レギュラーの座を勝ち取ることができた。
今回が、息子のレギュラーとしての初めての試合である。

めでたいことだ。
そこで、朝早く起きて、必勝を願ってボリューム満点の弁当をつくった。
出来上がった弁当を見て「これは傑作だ」などと、一人満足していたところまでは良かった。

その後、試合用のユニフォームにゼッケンを付け、弁当をバッグに入れた。
ヨメが花屋のパートに行く前に、車で駅まで息子を送ってくれるというので、6時50分に送り出した。

そして、台所で「PUSHIM」のCDを流しながら、小学五年の娘と私の朝食をノンビリと作った。
娘は7時頃起きる。
二人とも朝食は軽めである。

今回は、ポタージュスープと、食パンにツナマヨネーズを載せ、チーズとパン粉をまぶしてトーストしたものを半分ずつ食べた。

娘と二人、パンを頬張っているとき、電話が鳴った。
ヨメの携帯からである。

「体育館シューズがない!」
そういえば、入れた覚えがなかった。
息子も確認しなかったようだ。

裸足では試合に出ることはできない。そして、靴を二足持ってくる友達などいないだろうから、このままでは彼は試合に出られないことになる。
「卓球命」の彼が試合に出られないとなると、その落胆は、宝くじで二億円が当たったものの、当選番号を見るのをうっかり忘れて、気が付いたら期限が過ぎていた時と同じくらい、大きいものになる。(なんのこっちゃ!)

ヨメが吠える!
「あと、15分で電車が来ちゃうわよ! それに乗らないと集合時間に間に合わない! 私がこれから帰っても間に合わないから、パパが試合会場に届けてくれない?」

それは無理だ。
9時半に「すかいらーく」で仕事の打ち合わせの約束がある。
その人は、わざわざ川越から来てくれるのだから、時間をずらしてもらうわけにはいかない。
午後は、熊谷のハウスメーカーに行く約束がある。

「じゃあ、どうするの。試合に出られないじゃない!」
「今から、チャリンコで駅まで届ける」
「えー! 何いってんの! もう15分もないのよ! 無理でしょ」
「俺の足をナメんなよ!」(誰もナメてはいないが…)

私は慌てて、ジャージの上にダウンジャケットを着込み、息子の靴を抱え、飛び出そうとした。
「おい、アタシはどうするんだよ」
「気をつけて学校へ行けよ。面倒だから、戸締まりはしなくていいぞ。とられるものは何もない!

貧乏くさい啖呵を切って、私は階段を飛ぶようにして降りた。
リミットまで、おそらくあと12分
私の住む団地から、最寄りの駅までは最短距離で約3キロ。

普通にチャリンコを走らせて、15分くらいかかる。
以前、最短時間にチャレンジしたときは、約10分かかった。
信号をノンストップでクリアすれば、9分でいける可能性がある。少ない可能性だが、「できない」とは思わない。
楽観的なのか、馬鹿なのか……。

駐輪場からチャリンコを出して乗る。あと11分、か。

これから私の無茶が始まる。
遊歩道を前屈みになって漕ぐ。
朝早いので、幸い歩いている人はいない。だから、飛ばす。

最初の信号。
20メートルほど手前で「黄色」になったが、また「俺をナメんなよ!」と小さく叫んで、風のように通過。

2番目の信号も、「赤」になる寸前。通過しようとしたときは、「赤」になっていたが、車の姿は見えない。
「俺は色盲だから、『赤』が『青』に見えるんだよね」などと呟きながら、突っ走る。(渡っていた途中で赤に変わったときって、戻らないといけないんでしたっけ。記憶喪失)

信号を抜けて、最初の坂道を疾走する。
ジョギングなどでも上り坂は得意なので、一気に駆け上がり、ゆるやかな下りをすっ飛ばす。

住宅街を右に左に、さらに右左右左とチャリンコを走らせる。
小さなカーブのところで、犬の散歩をしていたオバさんにぶつかりそうになる。
犬が驚いて「キャン」と吠えるが、知らんぷり。オバさんが少し遅れて、「何よ、危ないわねえ!」と罵声を浴びせてきたので、「すいませ〜ん」と小さく言って、さらに加速。

このあたりでやっと半分のルートか。
時間を確認するものを持ってきていないし、たとえ持っていたとしても、見る余裕はない。
おそらく、あと6分、か。

住宅街の最後で、路上駐車の車が数台あって、先の見通しが悪かったが、ここでスピードを落としたら、間に合わない。
対向車が来ないことを祈りつつ、やや減速して(そうは言っても、かなりのスピード)通過する。

最後に一回、右左右とカーブをやり過ごし、メインストリートへ。
ここまで来ると、チャリンコで駅へ急ぐ人が、かなりいる。

これはレースだ!
こいつらに、負けるわけにはいかない!
と思うと、血が騒ぐ。(間違いなくバカ)

3つ目の信号は幸い「青」だった。
ここで、4台のチャリンコを追い抜いた。
さらに、前を行くマフラーをなびかせた女子高生に狙いを定めて、抜きにかかる。
抜いた。
次は、前屈みで力強い漕ぎっぷりの若いサラリーマンをターゲットにした。その距離20メートル

しかし、この男、かなり早い。
私の方は、長い距離を飛ばしてきたせいで、乳酸が膝に溜まってきたのだろう。脚が思い通りに動かなくなってきた。
4つ目の信号を超えたが、差は依然20メートルのままだ。

駅まではあと二百メートル弱。
タイムリミットまで、おそらく、あと3分
そこで、こう思った。

そうだ! この20メートル先の人ではなく、さらに先の人をターゲットにすれば、早く漕げるのではないか。
30メートル先の禿げオヤジをターゲットにすればいい。

これは、私がジョギング大会に出て、途中疲れて足が上がらなくなったときに、よくとる方法である。
これは、意外と効果があるのだ。
ジョギングでうまくいくのだから、チャリンコでもうまくいくはずだ!

馬鹿な男ほど、こういう暗示に弱い。
最後の信号の手前で、若いサラリーマンを追い越し、ターゲットにした禿げオヤジも追い越した。

ロータリーを迂回して、自転車を止め、鍵をかけずに駅の階段の前まで走った。
まだ、電車は来ていないようだ。
いや、あるいは、行ってしまったあとか。

駅のロータリーの時計を確かめようとしたが、眼鏡がないので文字盤が見えない。
よく考えたら、眼鏡もかけずに、これだけすっ飛ばして、よく無事に来られたものである。

しかし、今はそんなことに感心しているときではない。
階段を二段飛ばしで駆け上がった。
階段の最上段には、息子のまん丸目の顔。

「えー! ホントに自転車で来たの。スゲェー! まさかぁ」
「驚いてる暇はないから、さっさと行け。遅れるぞ」
と言ったとき、上り電車が来る音がした。
息子は、「ヤバッ!」と、改札めがけて駈けていった。

間に合ったようである。
ひと安心だ。

しかし、まわりを見回して愕然とした。
眼鏡がないから、すべてがぼやけて見える。
よくこの状態で、この距離を走って来られたものである。

ただ、途中追い抜いていくチャリンコの姿だけは、確実に捉えていたのだから、不思議と言うしかない。
動体視力だけは、別ものなのだろうか。
研究の余地があるかもしれない(?)。

しかし、どちらにしても、よい子の皆さんは、くれぐれも真似をしないでいただきたい。




2007/01/26 AM 09:43:07 | Comment(1) | TrackBack(0) | [日記]



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