Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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マジメな遺伝学
遺伝、ということをまじめに考えてみた。

昨年の終わりに、私の姉が、言葉にするのも恥ずかしい不始末を立て続けにしでかし、各方面に迷惑をかけた。
そのことが、今でも我が家に大きな影を落としている。
年末の忙しいときに「なぜこんなことを!」と言っても、本人は自分のことしか考えていないから、虚しくなるだけである。
しかも風邪まで感染(うつ)してくれる、というおまけまでついて、年末年始はそれで苦しめられた。

「子どもは、産まれるとき、親を選ぶことが出来ない」とは、よく言われることだ。
ただ、二人の子どもを持つ親の心情としては、私とヨメは、この子どもたちに巡り会うために人生を辿(たど)ってきたと思いたい。
そして、彼らにも、私たち親と巡り会うためにこの世に生を受けた、と思って欲しい。

しかし、私はこうも考えるのだ。
兄弟を選ぶこと、これだけは出来ない。
これはまったく別のものだと思っている。

だから、「遺伝」ということを考えてみたのである。
姉が悪いのではなくて、彼女を形づくる遺伝子が悪いのではないか、と思ったのだ。
つまり、代々受け継がれた血が絡み合って、悪さをしているのではないか、と。

わかる範囲でたどってみると、父方の祖父は、大分県の生まれで、郷土史研究家をしていたという。
私の父は、四人兄弟の四男で、長男は父親を継いで郷土史研究家、次男は漫画家、三男は絵描きだったらしい。
つまり、三人ともサラリーマンではなかった。人付き合いは悪かったようである。

人付き合いの悪いところを、姉は受け継いだようだ。

私の父は、働きながら小説家を目指していた。
勤めていた会社は、それなりに名の知れた会社だったが、彼は稼いだ金を自分のためだけに使った。
「小説家は、銀座新橋で名が売れなければいけない」といって、新橋にアパートを借りて、毎晩新橋、銀座で飲み歩いていたのである。
だから、我が家には月に1回程度しか、帰ってこなかった。
そして、我が家には、お金を一銭も入れないという徹底ぶりだった。

このあたり、私の姉に似ている。
彼女も、人のために何かをする、という観念が見事に抜け落ちている人だからだ。
これは確実に、父親の遺伝子を受け継いでいる。

父方の祖母は、「小町」といわれたほどの美人だったらしい。
若い頃の写真などを見ると、目元ぱっちりで小顔である。可愛いらしいお姫様という感じだ。
これは、親類の誰にも似ていない。
彼女の器量は、誰も受け継がなかったようである。小顔というところだけ、私の娘に似ている。

私の母方の祖父は、島根県出身の日本画家だっが、33才の若さで肺結核で死んだ。
帝展(今の日展)にも、何度か当選していたから、それなりに成功した画家だったのだろう。
祖母に言わせると「あの人は、絵を描くのと鳥を撃つだけの人だった」らしい。
毎日鳥を撃ちに行き、それを自分で器用に剥製にして、その絵を描く。
絵が描ければいい。他には何もいらない。そして何もしない。芸術家の典型のような人だ。
そして、煩わしいことからは徹底的に逃避する、怠け者だったようである。

このあたり、私の姉に似ているようである。

母方の祖母は、島根県で師範学校の先生をしていた。
いつも穏やかで、私は彼女が、怒ったり、人の悪口を言うところを見たことがなかった。
どんな状況でも、物事を冷静に判断して、理詰めで人を諭す。
教師になるために生まれてきたような人だが、決して自分の意見を押し付けることはしない人だった。

この祖母の持つ「人間の優美さ、崇高さ」というものを受け継いだ人は、祖母ほどのレベルではないが、二人いる。
私の母と私の息子である。

私の母は、人を疑うことが苦手である。
人間性善説の固まりのような人だ。しかし、現代ではこの種の人は多大なストレスに晒(さら)される。
お人好しを騙す人は、刈っても刈っても芽を出す雑草のごとく大勢いる。
母は何度も人に裏切られてきた。
しかし、それでも人を信じるのである。80年間もこれを維持できるというのは、たいした才能だと私は思っている。

私の息子も人を信じる。そして、嘘がつけない。
こういう話を聞いた人は皆、「嘘をつかない人間などいない」と必ず断言する。
私もいないと思う。
ただ、どんなことにも必ず例外はある。
息子がその例外である。

私と娘は、そろって悪戯(いたずら)好きなので、ヨメや友だちを騙して楽しんでいる。
それを息子にもやらせようとするのだが、彼の表情で、必ずばれてしまうのである。
嘘をつこうとすると「心臓がバクバクする」と言って、真っ赤な顔になるのだ。
息も荒くなる。ハァハァ言っているから、それでアウトである。

「オレ、嘘をついたら、心臓麻痺で死んでしまうかもしれない」
息子は、顔を真っ赤にしながら、そう言うのである。
部活から遅く帰ってきた彼に、私が「モスバーガーで何か食ってきたな」というと、すぐに顔を赤くして固まるのだ。
そして、心臓を抑えてこう言う。
「しっ、死ぬかも!」

何と可愛い高校一年生ではないか!(親バカ)

彼は人の悪口を言わない。人からからかわれたら人並みに怒るが、からかった人間を悪く言うことはしない。
彼は人を裏切らない。
しかし、人は平気で彼を裏切る。そのために、いつも泣くことになるのだが、それでも悪口が言えないのである。

成長期だから、情緒不安定なところはあるが、人間の出来という点では、はるかに父親(私)を凌いでいる。
このまま成長していって欲しいものだが、世の中は悪意に満ちている。その悪意を真正面から受けて、彼の「いい性格」が歪まないように、親が見守らなければいけない。

私の姉の性格と息子の性格は、地球の表と裏側ほども違う。
しかし、不思議なことに、彼は心配しているのである。
「俺って、叔母さんにちょっと似てるんじゃないかな」

私が、「まったく似ていないから心配するな」と言っても、「そうかなぁ、だって、人の話を聞いていないって、たまに怒られることがあるジャン!」と心配する。
確かにたまに集中力が途切れて、人の話を聞いていないときがあるが、それは私もヨメも娘もそうである。
人の話を聞いていないのは、「M家の呪われた血」によるものである。気にすることはない。
威張ることでもないが……。

姉の悪口を書いてきたが、彼女も負の部分だけがあるのではない。
絵の才能と手先の器用さは、祖父譲りで天才的だし、文章の才能は父親譲りである。そして、怖ろしいまでの記憶力の良さは、祖母譲りである。
この天賦の才能は、「無敵」と言っていいものだ。

しかし、残念なことに、彼女は人を信じない。そして自分自身でさえも信じていない。
だから、自分の才能をまったく信じていない。
人がどんなにその才能を褒めても、その言葉は岩に打ち寄せる波しぶきのように、はじけ飛んでしまって、実体がない。
一人の天才が、ひきこもってその才を発揮できないのは損失だが、天の岩戸よりも頑丈なその戸をこじ開けることは、誰にも出来ない。

我が家系のすべての「負の要素」が、いたずらに絡み合って彼女を創造したのだから、これは血を恨むしかない。
そして、この負の血脈がこれから先、誰にも受け継がれることがないように祈ることしか、私に出来ることはないのである。

こんなことを書いていると、私のブログを事前にチェックしている娘がこれを見て、私の足を蹴飛ばした。

「アタシのこと、また書いてるだろ! 出演料百円出せ!」

いったい、この性格は、誰に似たのか。



2007/01/20 AM 09:52:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | [怖い話]



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