Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








BOOK OFFにセレブ
56頁のカタログのデータを印刷会社のサーバに送って、年始の仕事の一つは片づいた。
あとは、12頁の社内報である。

しかし、続けて仕事をしても、疲れて能率は上がらない。
風邪がまだ治りきっていないので、半日くらいのんびりしたい。
だから、仕事部屋でボーッとしていた。

すると、子どもたちが来て、「あー、仕事していない!」と二人同時に叫んだ。
「今日仕事は?」
娘が聞く。

「少し休もうかと思ってね」
そうすると、二人はこれ以上ないくらいに嬉しそうな顔をして、
「大宮行こうぜ!」

この笑顔を見て、断れる親はいない。
体は少々ダルいが、家にいても結局は仕事をしてしまいそうなので、行くことにした。
それに、多少親らしいことをしないと、仕事もスムーズに運ばない。

今日は、ヨメの方も花屋のパートが休みだというので、家族全員で行くことにした。
しかし、大宮に来たからといって、何か目的があるわけではない。
息子も娘も「まずは、BOOK OFF!」と言うので、BOOK OFFに行った。
娘によると、その後ゲーセン、カラオケという順番らしい。

私の場合、新刊の本は買わない。いつも古本である。
子どもたちにそれを強制したことはないのだが、彼らも本といえば古本しか買わないのである。
貧乏が、身に染みついている親子である。

小学五年の娘は、2階の少女漫画コーナーで、立ち読みしながら欲しい本を籠に入れていく。幸福そうな顔をしている。
高校一年の息子は、地下1階のCDコーナーで、浜崎あゆみの昔のアルバムを中心に買いあさっている。顔がにやけている。
ヨメは、2階の実用書のコーナーで、花の本を手に取っている。顔が老けてきた。
私はと言えば、1階の漫画本のコーナーで「ドラゴン桜 8巻」を立ち読みしている。顔が間抜けである。

「ドラゴン桜」は、かなり無理のある設定だが、情報漫画としてはレベルが高い。
高度な受験のノウハウを、今までの受験書とは違った視点で解説してくれるので、いつも感心させられる。

東大に行くほどの頭脳は持っていなかったので、最初から東大は志望校から外していたが、当時こんな漫画があったら、受けてみようという気になったかもしれない。
それほど、人をその気にさせてくれる漫画である。

そう思いながら読んでいたとき、何となく視線を感じた。
まわりを見回してみると、右隣のトイ・プードルと目があった。
BOOK OFFにトイ・プードル? 予想外である。
ラーメン屋のメニューに、シフォンケーキがあるようなものだ。

トイ・プードルは、女性の腕に抱かれている。
その腕から上に視線を移していくと、20代半ばの女性の顔があって、彼女も私を見ていた。
目が合ったからといって、微笑むのは変である。初対面なのだ。
彼女が私を知っているという可能性も少しはあるが、私の方に心当たりはない。
ただ、最近ボケが始まっているので、「もしかして、どこかで接点があるかも」と心が揺らいだ。

その女性は、美人ではないが、品のいい顔立ちをしていた。表情に優雅さがある。そして賢そうだ。
まるでIntel社製のCPUが入っているかのように、目の奥に知的な光がある。

私の方は、任天堂の初代のファミコンのチップしか入っていないから、ちょっとしたことで思考が中断する。
たまに間違ってリセットボタンを押してしまうと、すべてのデータが消えてしまうのだ。

今もその状態に近い。
思考停止。
スロット部分の接触が悪くなって、データが読み込めない状態である。
だから、黙っていた。

「あのー、その手におもちの本……」
と彼女に声をかけられたが、それが「お餅の本」に聞こえた。
私は「お餅の本」は読んでいないぞ。
いくら新年とはいえ、「お餅の本」は読まない。ここは料理コーナーではないのだ。

「お餅の本、ですか?」
間抜けな顔で答えた。
「はい、その手にお持ちの本、もしかして『ドラゴン桜 8巻』ではないですか」

ここで、初めて理解した。
彼女は「ドラゴン桜 8巻」が欲しかったのだ。
しかし、棚には8巻がない。隣を見ると、間抜け面のオヤジが、真剣な顔をして読みふけっている。
それが、どうも8巻らしい。そこで、私を見つめていたというわけだ。

「ああ、これがご希望なんですね」
私はまるでBOOK OFFの店員のように、丁寧な言葉で答えた。
「はい」と彼女は、申し訳なさそうにはにかむ。
トイ・プードルも、はにかんでいるように見えた。

ダブルではにかまれたら、「どうぞ」と差し出すしかない。
まだ、前半4話ほどしか読んでいなかったが、読む義務があるわけではない。読みたい人が読むべきである。
「よろしいんですか?」
彼女は、軽く一歩後ろに下がって、私の顔を見た。
私が頷くと、二歩前進して、頭を下げながら本を受け取った。

「ありがとうございます」と何度も頭を下げながら、彼女は私の横を通っていった。
トイ・プードルが私の方を見ていたので、「バイバイ」と手を振ったが、トイ・プードルの表情は変わらなかった(当たり前か)。

彼女の後ろ姿を見ると、高そうなコートを着て、右手には高そうなバッグ、そして左手にはトイ・プードル。
セレブか、と思ったが、BOOK OFFにセレブ?
何か違和感がある。

彼女は、レジカウンターの手前まで来ると、カウンターのそばに立っている男に手を振った。
男も手を振り返している。
彼氏か旦那のようである。

その彼を見ると、顔は私に負けないくらい貧乏くさい顔をしている。身なりも私と同等の貧乏くささである。
それを見たとき、妙に嬉しくなって、右手で軽くガッツポーズをしていた。

なぜ?


2007/01/06 AM 10:45:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.