Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ロリちゃんの結婚
年末年始は、三流デザイナーに一流・二流から溢れた仕事が回ってくる。
だから忙しい。

「貧乏暇なし」と言うが、私の場合は「どビンボーヒマなし。寝る間なし、ノルマあり」という状況である。

18日は朝から熊谷のハウスメーカー、昼は浦和の一流デザイナーからのSOSで駆けつけ、その後大宮の印刷会社と近所の印刷会社で作業。寝る間もなく、朝まで諸々の仕事の修正に追われた。
19日は、ハウスメーカーの修正に追われ、その合間にデジカメで商品画像160点の撮影をする。
20日は、近所の印刷会社でホテルのパンフレットの最終校正をほぼ丸一日。
我が家のプリンターを正月の仕事に合わせてメンテナンスに出したので、ちゃっかり印刷会社のプリンターを使わせてもらい、かなりの量を出力した(もちろんタダで)。

なんか、もうかった気分。

しかし、この間、睡眠時間一日平均1.5時間。
疲れる。

だが、いいこともある。
18日に浦和の一流デザイナー・ニシダ君に呼ばれて行ったとき、嬉しいことがあった。

以前作ったデータをCD-Rに焼いたのだが、「そのデータが開かない」というトラブルで呼ばれた。
大手のメーカーのパンフレットを新しく作る予定でデザインを依頼され、2種類のデザインを提示してそのうちの一つを担当者に気に入ってもらえた。
しかし、土壇場で社長の「神の声」があり、2年前のデータをキャッチコピーだけ変えて印刷するということになった。

結果、彼が一所懸命頭を悩ませて出来上がったデザインはになり、二年前のデータを掘り起こすだけで終わったのである。
三流の会社ではよくあることだが、大手の会社ではそういったことはあまりないようだ。
彼のクライアントはほとんど一流会社だが、こんな屈辱は初めてだという。

そして、その二年前のデータが開かないというのだ。
CD-Rに焼いたデータを開こうとしたら、エラーメッセージしか出ない。
そこで私の登場である。

ニシダ君の仕事場には、SOSの時しか行かない。
しかし、一流デザイナーの仕事を、垣間(かいま)だけでも見るのは楽しいので、大抵は行く。
外国のビールも飲ませてくれるし(本心を言えばこれがメインである)。

熊谷のハウスメーカーとの打ち合わせを済ませ、昼飯を取らずに浦和の事務所に駆け付けた。
ニシダ君は「センセイ、今日中に何とかなるでしょうか」と言って、蒼い顔。
聞けば、明日の朝までに印刷所にデータを送らないと、印刷が間に合わないという。
クライアントの我が儘なんだから、少しくらい焦らせてもいいと思うのだが、真面目な彼にはそれができない。
ストレスが溜まって、ほとんど泣きそうな顔である。

トラブルデータのことは、メールや電話で把握した。
メールでもらった問題のデータを我が家で検証して、ほぼ復活できることはわかった。
ただ、それは我が家のPCでのことで、ニシダ君のPCでもちゃんと復活するかどうかは、やってみなければわからない。

パソコンのソフトというのは、それほど厄介なものなのだ。
性悪女みたいなものだ。
幸運なことに私の人生では、一度しか性悪女に出会ったことはないが(私の実の姉以外は)。

まず、CD−Rのデータをハードディスクにコピーする。
アイコンは白いままだ。ファイル名も文字化けしている。
つまり、どのソフトで作ったのか、パソコンが理解していないということだ。
そこで、PCを再起動してPRAMをクリアした。

アイコンはまだ白紙のまま。ファイル名も文字化けしている。
そしてこのファイルを、「MacSOHO」を介して、Windowsに送る。
Windowsの「イラストレータCS」でデータを開く。
そうしたら、あら不思議! データがちゃんと開けた。

「えーーーーー!?」
ニシダ君が、叫ぶ。

私は何ごともなかったように、それを別名で保存した。
それから、そのデータを「MacSOHO」で受け取り、「イラストレータ10」で開き、「イラストレータ8」形式で保存し直した。

これで終了である。

「えーーーーーーーーーっ、な、何でですか!?」 

種明かしは、こうだ。
おそらく、ニシダ君はデータをCD-Rに焼くときに、ISO形式で焼いてしまったのだ。
普段はハイブリッド形式(WinでもMacでも読める)で焼いていたのだろうが、たまたまこの時だけISO形式で焼いたのだと思う。
そこで、このデータはMacで読めなくなった。読める場合もあるのだが、今回は読めなくなった。

だから、一度Windowsのイラストレータで開く必要があった。
そして、Mac用のファイル名を再度付けなおして保存したのだ。
我が家のWindowsには、「イラストレータ8」しかないので、復元が中途半端だった。
だから、ニシダ君のところの「イラストレータCS」が必要だったのだ。
簡単なことである。
しかし、一流のデザイナーではあるが、小学生並みの機械音痴の彼には、それがわからない。

だが、それでも彼が一流であることには変わりはない。
トラブルは、三流以下のデザイナーに任せておけばいいのだ。
私の存在価値は、そこにある。

「さあ、ビールだな」
私がそう言うと、ニシダ君は嬉しそうに、「彼女も待っていますから」と言った。
彼女、というのはニシダ君の同居人チヅルさんのことだ。
私は彼女のことを「酒豪」と呼んでいる。
彼女が酒を飲んでいない姿を見たことがないからだ。

そこで、彼の仕事場の隣の号室に移動した。
そこには「酒豪」が待っていた。
いつもはダテ眼鏡をかけているのだが、今日はない。
幼い印象がして、少しドキッとした。

「昼食、まだなんじゃないですか?」
とチヅルさんに微笑まれて、ダイニングに通された。
テーブルにはクラブハウス・サンドとバドワイザーのボトル。

「お忙しいでしょうが、しばし忘年会のお付き合いを、ねっ、ロリちゃん!
と言って、彼女はニシダ君を見た。

ロリちゃん?

「ロリちゃん?」
私がニシダ君の方を見ると、ニシダ君は真っ赤な顔をして俯いていた。

笑いながら「まあ、座ってください」と促されたので、座った。
そして、彼女は嬉しそうに話をし始めた。

「この間、私の実家に彼を連れて行ったんですけどね。私には、一回り年の離れた中学二年の妹がいるんですよ。それを見た彼が、あとで私に何度も『シオリちゃん、可愛いね』って言うんですよ。確かに妹は可愛い部類に入りますけど、あまりにしつこいんで、『きみ、ロリコンだね、今度からロリちゃんって呼ぶから』って言ってやったんです。彼もそれを否定しないので、それからずっと『ロリちゃん』って呼んでるんですよ」

ハハハ、笑うしかない。

しかし、彼女の実家に行ったということは、もしかして……。
そこで、聞いてみた。
「とうとう、決心を…」

チヅルさんは、笑みを浮かべて大きく頷いた。
ロリちゃん、いやニシダ君はまだ赤い顔をしている。

「やったね、ロリちゃん」と私が言うと、ニシダ君は笑っていいのか、怒っていいのかという顔をして、悲しげに首を傾げた。

「そうか、それでチヅルさんは、眼鏡を取ったんだね。幼い感じになったんでビックリしたよ。つまり、それがニシダ君の好みというわけだ」
「さすが、Mさん、鋭い。そして、乾杯!」

三人で乾杯した。

「結婚はいつ?」
「入籍は彼の誕生日、来年の1月25日の予定です。結婚式はしません。無駄なことはしたくないんで」

それは、チヅルさんらしいかもしれない。
彼女のことをよく知っているわけではないが、彼女ならそう思っても不思議はない。

「Mさんも、結婚式はしなかったクチじゃないんですか?」
「いや、ヨメさんの母親が『カッコがつかないから』ってしきりに気にするんで、一応挙げたよ。でも、オレは嫌だったんで、それをアピールするために俺の方は両親しか出席させなかった」
「それは変則的ですね。披露宴もそうですか」
「いや、披露宴はお互いの友だちを呼んで、小さなレストランを借り切ってやった。お互いの両親は呼ばなかった。だから今でも、あの時結婚式を何で断れなかったんだ、ってずっと後悔している」

「いやあ、でも一度だけですからね、いい経験じゃないですか、お義母さんが喜んだならそれでいいんじゃないですか」
チヅルさんは、バドワイザーをラッパ飲みしながら「ガハハ」と言った。

私は「チヅルさんの妹さんはそんなに可愛いの」とニシダ君に聞いてみた。
ニシダ君は、新鮮な唐辛子のように赤くなって、少々どもりながら言った。
「あ、あ、あ、新垣結衣みたいに、笑顔が可愛いです!

すかさず、チヅルさんの左ストレートがニシダ君の右頬に炸裂した。



2006/12/21 AM 10:59:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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