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● ひとり忘年会 その1 |
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今年はまだ忘年会が一度もない。
例年、同業者の忘年会が最低2回はあるのだが、皆のスケジュールが合わなくて今年は一つも話がまとまらない。 この調子では、忘年会はゼロになりそうな気配。 これは、独立して初めてのことだ。
といっても、別に忘年会が好きなわけではない。 むしろ、嫌いな方だから、ないことは歓迎すべきことである。 6、7人で集まっても、二次会まで盛り上がることはない。 二次会に行くのもいるようだが、私はいつも二次会を断っている。 とりあえず、忘年会だけはお付き合いするが、それ以上のことは面倒臭い。 他人の下手なカラオケなど聴きたくない。頭が痛くなる。皿を投げつけたくなる。後ろ回し蹴りをしたくなる。
しかし、人間というのは勝手な生き物だ。 忘年会がないとなると、何となく寂しさを感じる。
そこで、馬鹿なことを考えた。 ひとり忘年会、である。 「隠れ家」で、ひとりで盛り上がろうと思ったのだ。
きっかけは、宮部みゆきの「ぼんくら」。 本の整理をしていて、この「ぼんくら」の下巻を手に取ったら、お札らしきものが床に落ちたのである。 拾ってみると、二つ折りにした本物のお札だった。 数えてみると、三千円。二千円札一枚と千円札一枚である。
自分では全く覚えがないのだが、我が家では私の本棚に触る人間はいない。 別に「触るな」と厳命したわけではないが、私の読む本には家族の誰も関心を示さない。 しかも、「ぼんくら」に金を隠すというボンクラはいない(?)。
だから、これは私の金である。 そこで、これを使い切ろうと思ったのだ。 しかし、普段金を持ち慣れていないから、我が娘の鋭い眼力は誤魔化しきれなかった。 「金、持ってるだろ。バレバレだぞ。みんなには黙っててやるから…」 と脅されて、「少女コミック」と「のだめカンタービレ」を買わされた。 将来が恐い女である。
だが、それでも手元には2300円も残っている。 「ひとり忘年会」の会費としては、充分な額だ。 忘年会といえばまず、酒。 隠れ家には、「いいちこ」が常備してあるが、ここは奮発したいところである。
そこで、ロジャースで「フォア・ローゼス」を1170円の特価で売っていたので、これを購入した。 もっとも、奮発したといっても「いいちこ」と30円しか違わないが。 次におつまみとして、カマンベールチーズとスモークチーズを買い求めた。
以上である。
私は食べ物に対する欲求が薄いので、これといって食べたいものがない。 たまたま、ロジャース内を巡り歩いて目に留まったものを買っただけである。 腹が減ったら、隠れ家にストックしてあるカップラーメンを食えばいい。 ゴミをあまり出したくないという「環境に優しい気持ち」を持っている私としては、これ以上地球を汚したくないのだ。
忘年会決行の日は、金曜日の深夜。 しかし、夜中に家族の目を盗んで家を抜け出すときに、荷物があっては邪魔なので、購入したものは、朝のうちに運び込んでおいた。 ゴミ捨て場で拾ったギターも、ついでに。
このギターは、先週の金曜日の朝、東京の新川2丁目の得意先に行こうと朝早く家を出たとき、ゴミ捨て場で見つけたものだ。 いくら私が意地汚い性格だといっても、今までにゴミ捨て場からものを拾ってきたことはない。
いや、一度しかない(結局あるのか!)。
それ以来のことである。 横目で見たところ、弦が数本切れてはいるが大きな傷や汚れはなさそうだし、破れているところも折れているところもない。 つまり、弦を張り替えれば使えるのではないか。 そう思いながら、ゴミ捨て場を通り過ぎた。 いつもは風のように自転車を走らせるのだが、この日だけは風といっても微風である。
どうしよう。拾っちまうか。いや、誰かに見られたら恥ずかしい。 「Mさんのご主人、とうとうゴミまで漁るようになったみたいよ」という井戸端で交わされる会話などが、頭の中を駆けめぐる。
しかし、生まれつきの意地汚さには勝てない。 引き返すときは風のようである。 周囲に誰もいないことを確かめると、バーゲンに群がるおばちゃんのような素早さでギターをゴミの山から抜き出し、我が家の玄関脇のメーターボックスに慌てて隠した。
(その2に続く)
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2006/12/16 AM 10:31:41 |
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