Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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類は友を呼ぶ
日曜日の昼間、娘にPhotoshopを教えていたとき、電話がかかってきた。
ディスプレイを見ると、Sデザインのようだ。

また、スドウ氏か。
この間、彼から依頼された仕事を、かなり失礼な断り方をした。
これで、完全にSデザインと縁が切れると思って、喜んだ。
彼は最後に捨てぜりふを吐いたから、かなり怒っているはずだ。
彼の性格からしたら、耐え難い屈辱を感じているに違いない。
それなのに、電話?

もしかして、嫌がらせの電話か。
よし、受けて立とう!
電話に出た。しかし、声は出さない。

「ああ、スドウだが……ちょっと話がしたい」
いつもながらの、こちらが「もしもし」と言う前に話しかける押しつけがましさは健在である。

黙る。
娘が、不思議な顔で私を見ている。
私は、電話を指さしたあとで、親指を下に向けた。
「こいつは、敵だ」という意味だ(ブーイングの意味もある)。
娘も無言で頷きながら、親指を下に向けた。

「ああ…、聞いとるかな。この間は悪かったね、君が随分と変わったんで、少々ビックリしたんだ」
私が初めて聞く、スドウ氏の穏やかな声である。
しかし、だからといってスドウ氏が丸くなったとは思わない。
スドウ氏は、骨の髄まで「俺サマ」が染み込んでいる人だ。

私は、黙り続けた。
こんな風に黙っていたら、きっとまた彼は怒り出すはずだ。
その時に話しかければいい。

「いや、こんなことを言ったら何だが、今までのMさんは面白みがない男だった」
スドウ氏は、私が黙り続けていても無視して話し始めた。
これは彼のいつものペースではあるが、声はいつになく落ち着いている。
私が首を傾げると、娘も一緒に首を傾げた。
「だれ?」と声を出さずに聞いてきたので、思い切り偉そうな顔をしながら怖い顔を作った。そして、眉をつり上げた。
それを見て、娘は机を叩きながら笑っている。

スドウ氏のひとりごとは続く。
「しかし、最近の君は、なかなか興味深い男になったよ。自己主張ができるようになった。どうかね、一度話をしてみたいんだが。もちろん仕事の話もしたいと思っている」

いつまでこの穏やかな声が保つか興味津々だったが、ちょうど我が愛機Macでは、娘がPhotoshopのフィルターをかけたところで「爆弾」が出たところだった。

そこで私はこう言った。
「申し訳ない、『爆弾』が出たので、切らせてもらいます」
「は? 『爆弾』?」
「Macの『爆弾』です」
切った。

スドウ氏はデザイン事務所の社長だった人だが、経営者専任だから機械に関しては疎いはずだ。
だから、「Macの爆弾」と言ってもわけがわからないだろう。
馬鹿にされた、と思うかもしれない。
しかし、それはそれでいい。
電話を切るほどの緊急事態ではないし、私の態度は礼を失しているが、これで本当に彼と縁が切れるなら、タイミングのいい「爆弾」だったと言える。

Photoshopを長く使っていると、メモリが解放されずにシステムを圧迫する。私の場合は、時々Photoshopでメモリをクリアしたり、「File Buddy」でファインダーを再起動したりして、メモリを解放するのだが、小学五年の娘は当然のことながらそれを知らない。
だから、「風フィルタ」などを使うと、運悪く爆弾が出てしまうのだ。
だが、爆弾が出たからといって、Macが炎上するわけではない(当たり前か)。再起動すれば、大抵は何ごともなく使える。
今回も、問題なく起動した。

「まったく、Macってやつは、手のかかるやつだぜ!」
娘は偉そうに言うが、娘は普段Windowsを使っている。
今日はたまたま私が暇だったから、私の隣でMacを動かしていただけである。

スドウ氏からの電話を切ってから10分もたたずに、また電話が鳴った。
娘と顔を見合わせた。
二人して同時に、親指を下に向けた(変な親子だ!)。
ディスプレイを見ると、予想通りスドウ氏だった。
娘がまた、大袈裟な身振りで親指を下に向けた(大丈夫か、こいつ!)。

「爆弾は消えたかな。さっきの話の続きだが、本当に考えてくれんかな。君がこちらに来るのが嫌だというのなら、私がそちらに出向いてもいいんだが」
背中に悪寒が走るほど、下手に出たスドウ氏の声。

もしかして、オレ、好かれた?

私が胴震いをすると、それを見た娘がまた机を叩いて笑った。
そこまで言われたら、邪険にするわけにもいかないので、私はこう答えた。
「私の方から伺いますが、いつ伺えるかはわかりません。来年になるかもしれません、あるいは再来年になるかも…」
できるだけ、感情を出さずに素っ気なく言った。

そうすると、スドウ氏は大きな声で、「おお、そうか! ありがとう! わかった、じゃあ、よろしく」と嬉々として言って、電話を切った。

電話を切ったあとで、
これって、結局、スドウ氏のペースにはめられたってことだよな……。
それに気づいて、私は今、ものすごい自己嫌悪に陥っている。



2006/12/04 AM 10:24:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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