Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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怖がる60代
近所に、変なおばさんがいる。
歳は60歳前後か。
今までに5回、自転車に乗っているとき、遭遇した。

おばさんは、前二輪、後ろ一輪の三輪自転車に乗っている。
おばさんに遭遇するのはいつも、団地の遊歩道だ。
団地の遊歩道は、幅が比較的広い。自転車だったら、二台がすれ違ってもかなり余裕がある幅である。

しかし、この変なおばさんには、その幅はあまり関係ないようだ。
私の前をおばさんの自転車がトロトロと走っている。
遅い。
どう考えても歩く方が早い、と思われるほどのスピードだ。
しかし、それぞれ事情はあるだろうから、スピードに関しては文句は言えない。

ただ、文句は言わないが、そのスピードにこちらが付き合う義務もない。
だから、当然追い越すということになる。
右側から、追い抜いていった。

すると、ものすごい大声で、おばさんが吠えた。
「あ〜ぶ・な・い! 気を付けなさいよ。びっくりするじゃない! まったく!」

私は、おばさんの右側1メートルほど離れた地点を通過していった。
スピードは出していない。
おばさんより、少し早い程度のスピードである。
私の感覚では、少しも危なくない。
振り返って、おばさんの顔を見た。
おばさんは、顔を真っ赤にして私を睨んでいる。

血圧が高そうだ。

だから、「すみません」と謝った。
謝る必要はないのだが、口答えをできる雰囲気ではない。
平和主義者の私としては、謝るほかない状況である。
納得はいかないが、無理に波風を立てることもない。

二回目。
同じく遊歩道。
前回と同じく、亀の歩みで自転車を走らせるおばさんを発見。
今度は、二メートルほど外側を追い越していった。

しかし、「び〜っくりした! あっぶないじゃない!」
とまた怒鳴られた。
この時も、とりあえず謝った。

三回目と四回目は遊歩道の途中の横断歩道。
状況は若干違うが、場所と反応は一緒である。
そこは、信号のない横断歩道。
横断歩道は広いので、今度は三メートル以上離れて追い越した。

この時は、停止してくれている車があったから、待たせては悪いと思って、スピードを出して追い越した。
だが、またも、
「ちょ〜っと! あっぶないじゃない!」
怒鳴られた。

こうなると、さすがに謝る気にはならない。
横断歩道を渡ったところで停まって、振り返った。
すると、おばさんは横断歩道の真ん中で自転車を止め、腐りかけのトマトのような顔をして私を睨んでいた。

車が何台も停止しているので、私が文句を言ったら、余計停滞するだろう。
だから、無視してその場を去った。
「この、くそばばあ!」と罵りながら(もちろん心の中で)。

そして、昨日のことだった。
また、腐りかけトマトおばさんに遭遇した。
同じように、遊歩道を時速2キロのスピードで自転車を走らせている。

引き返して、他の道を行こうかとも思ったが、そこまで気を遣うこともないだろう。
怒鳴られるのには、慣れた。
しかし、どうせ怒鳴られるのなら、派手に仕掛けてやろう、と思ったのだ。

そこで、呼び鈴をチリンチリンと乱暴に鳴らし、「はい、通りますよ、どいてどいて!」と言って、おばさんのすぐそばを通り抜けていった。

そうすると、信じられないことに、おばさんは「ああ、ごめんなさい」と言って、停まったのである。
え!?
まさか、謝られるとは思っていなかったから、思わず振り向くと、おばさんはまだ頭を下げていた。

これは、どういうことだろう。
随分と、しおらしいではないか。
今回と前4回と違うのは、呼び鈴を鳴らしながら、声をかけたこと。
ということは、おばさんは予告なく追い越されることに対して、恐怖心を持っていると推測できる。

予想外のことが起きると、過剰に反応するタイプだとも言える。
こういうタイプは意外と多いようだ。

十日ほど前だが、得意先から仕事を貰って帰ろうとしたときのことだ。
得意先のビルを出ようとしたとき、おばさん二人がおしゃべりしながら道を歩いているのが見えた。
狭い道路だったので、私はビルの入口の端のところに立って、二人が通り過ぎるのを待っていた。

ところが、おしゃべりに夢中のおばさん二人は、ビルの前まで来て、「ぎゃっ!」と叫んだのである。
私はただ立っていただけなのだが、私のそばを通過するとき、手前にいたおばさんが、どういうわけかビルの方を向いたのだ。
おしゃべりに夢中になっていたから、そばに人が立っていることなど思いもよらなかったのだろう。

「何よ! びっくりするじゃない!」
おばさんの体は5センチほど浮き上がっていた。いくら何でも驚きすぎだ。
歳は60才前後。いかにも「染めました」というブラウンの髪がわざとらしかった。

びっくりするじゃない、と言われても、私は立っていただけである。
立っていて文句を言われるのなら、忠犬ハチ公はどうなる!

そして同じ日、この得意先から百メートルほど離れたところに、バッティングセンターがあるので、気晴らしに寄っていこうと思った。

バッティングセンターに入るには、駐車場を通って、数段の階段を上らなければいけない。
私が、その階段を上る手前まで来たところ、左側からやって来た男の人が突然「何だ、ビックリするじゃねえか!」と怒ったのである。

私は人を驚かせることは何もしていない。
普通に階段を上ろうとしていただけである。
むしろ、謂われもなく怒られた私の方が、ビックリしたと言っていい。

相手を見ると、背の低い60年配の男である。150センチそこそこという感じだ。
おそらく、考え事をしていて、前を通る私のことに気づくのが遅れた。だから、過剰に反応した。
私は、身長180センチある。彼からしたら、大男である。
つまり、突然大男が目の前を横切ったので、勝手に驚いたのではないだろうか。勝手に驚いた自分の臆病さを隠すために、怒鳴ったような感じだ。
面倒臭くなったので、バッティングセンターに入るのはやめて、そのまま帰った。

そして、これはそれから数日後のことだが、私は埼京線に乗って文庫本を読んでいた。
午後の埼京線の各駅はすいているので、ゆったりした気分で本を読んだ。
読み疲れたので、目を休めようと思って、眼鏡を外し、目の前の車窓を眺めていたときのことだ。
「なに見てんだよ! この百姓!」と怒鳴る声を聞いた。

近くを見回すと、私以外はいないようだ。
ということは、その言葉は、私に投げかけられたようである。
私は、眼鏡をかけて、前に座っている男を見た。
60年配の貧相な男である。怒っているようだが、目はオドオドしている。

また60か、とウンザリする思い。

舌打ちとともに、勢いよく立ち上がり、右足で床を「ドン」と踏みしめた。
すると、男は首を振りながら、隣の車両に逃げていった。
素早い逃げ足である。

これによって私は、今の60代は怖がりで、いつも何かにビクビクしている、と結論づけた。
少ないサンプルで結論づけるのは賢明とは言えないが、わずか十日で何度も同じような事態に遭遇すると、腹立ちまぎれにそう思いたくなる。

私の耳には「なに見てんだよ! この百姓!」という声が、いまだに残っている。
この私が百姓?
それでは、お百姓さんに失礼ではないか!



2006/12/02 AM 08:55:24 | Comment(9) | TrackBack(0) | [日記]



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