Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








フリーペーパーの苦い思い出
フリーペーパーが流行っている。
タウン誌、音楽誌、アルバイト、通販、クーポン系など種々雑多である。

私は、このタウン誌に、苦い思い出がある。
1999年のことだった。
まだ、それほどフリーペーパーが認知されていなかった頃、フリーペーパーを発行しようと思ったのだ。

内容はタウン誌。
大宮、岩槻を中心にショップやビストロを紹介し、クーポン券を付けるというお決まりのタイプのものである。
早速、企画・編集など、大筋のプランを立て、印刷会社にもその企画を持ち込んで、見積もりを取った。
2週間ほど、幾つかの店を一人でまわって、主旨を説明し前向きな答えをもらった店も10件近くあった。

当時、大宮では、リクルートが大がかりなものを出していたが、私の方はオープンしたての店を中心に紹介することで差別化を図った。
同じことをしていたら、大手には勝てない。

といっても、さすがに大手の網の目は細かくて、ほとんどがリクルートの営業の網に引っかかっていた。
しかし、ホームページを格安で開設します、という条件を提示すると、意外と話に乗ってくれる店があった。
当時はまだ、ホームページを持っている店はそれほど多くなかった。

こちらとしても、ホームページ込みならメリットも大きいので、ある程度は成功するのではないかと思っていた。

ただ、二つクリアしなければいけない問題があった。
一つは、軍資金だ。
細かい資金プランを立ててみたが、最初は予想外に金がかかることがわかった。
つまり、資金を調達しなければならない。

資金を借りるとなれば、銀行である。
30数ページに及ぶ、詳細な企画書と収益予想を立てた計画書で、銀行の牙城を崩そうとした。
個人だから、信用はない。
このプランの将来性をどれだけ銀行が買ってくれるか、その点だけに絞って、これ以上ないくらい細かい内容の企画書を幾つかの銀行に持ち込んだ。

しかし、「こんなもの流行りませんよ。無料の雑誌なんて、誰も信用しませんからね」という「こんなもの」扱いをされて、ほとんど門前払いだった。
説明をしようと思ったが、百分の一くらいの説明を聞いただけで、ダメ出しをされた。

しかし、私は「こんなもの」が流行る時代が、すぐそこに来ていることを確信していた。
だから、諦めなかった。
世の中には、いい意味での「物好き」がいるはずだ。

銀行がダメなら、スポンサーを探せばいい。
そう思って、大手の書店や不動産屋、カーディーラーや量販店などを回って、スポンサー探しに奔走した。

その中で、埼玉に幾つかの店舗を持つ不動産屋が、条件付きでスポンサーになってくれるところまでこぎつけた。
こちらは、隔週の発刊を予定していたが、月に1回ならいいというのだ。
そして、とにかく一回、ダミーの雑誌を作って見せて欲しいと言われた。

前向きな答えをもらった店の了解を得て、写真を撮り、文を書いた。
ロゴも決め、表紙も目立つものにして、10日間という突貫工事で16ページの雑誌のダミーを作った。
その中の2ページは、見開きで、不動産屋の目立つ広告を入れた。

広告は気に入ってくれたが、表紙のイメージが曖昧だ、と言われたので、友人に表紙だけを作り直してもらった。
それはスポンサーに気に入ってもらえて、とりあえず、初めの一歩を踏み出したのである。

ただ、もう一つクリアしなければいけない問題点があった。
これは、考えようによっては、資金面よりも難しい問題だった。
人である。

フリーペーパーに載せるショップを探してくる営業マンが必要だった。
私は、他のデザインの仕事もしなければいけないので、企画・編集だけで手一杯である。
この企画をスムーズに進めるためには、最低2人の営業マンが必要だった。

そこで、何人かの知り合いに話を持ちかけたが、ここでも銀行と同じく、門前払い状態だった。

「ただの雑誌なんか、仕事にならねえよ!」
「どんなにしゃれた本だろうが、無料じゃ馬鹿にされる。だいいち、こんなの儲かるわけがねえ!」
「こんな馬鹿なことを考えてる暇があったら、デザインの勉強をもっとするんだな!」


企画書の十分の一も読まずに、鼻で笑われた。
計画書を最後まで読んでくれる人間は、一人もいなかった。
それだけ、私が信用されていなかったということだろう。
スポンサーにも、人を回してくれるように頼んだが、相手は「そこまで深入りするつもりはない」と拒んだ。

挫折した。

私にもう少し粘りがあったら、あるいは、この企画だけに専念していたら、フリーペーパー発刊は成就したのだろうが、目先の仕事に追われて、結局この話は流れた。
新しいことをやるときは、根気と信念が必要だが、当時の私にはその二つともなかった。

そして、今のフリーペーパー・ブーム。
先見の明はあったとは思うが、企画を実現する「がむしゃらさ」が足りなかったと思う。

昨日、その当時、営業を打診した知人と電話で話をした。
その知人には、最近電話で話すたびに、こんなことを言われるのだ。
「フリーペーパー、あの時やっときゃ良かったな。Mさんが、もっと詳しく説明してくれたら、俺もその気になったんだけどな」
鼻で笑いながら、門前払いしたことなど、きれいさっぱり忘れている。

そのたびに、私は「俺の一番のミスは、いくら困っていたといっても、お前なんかにこの企画を持っていったことだ」と心の中で罵っている。

二人とも、完全に負け犬である。

今日は、これから午前中に赤羽、午後いちで桶川、午後3時に熊谷、午後7時に近所の印刷会社に行かなければいけないというのに、何だか気持ちが暗くなってしまった。



2006/11/30 AM 08:08:23 | Comment(0) | [Macなできごと]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.