Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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「隠れ家」で夜明かし
私の家から約1.5キロ離れたところに、取引先の倉庫がある。
ここが私の「隠れ家」だ。

20帖強の狭いスペースだが、隅っこに壊れたデスクやOA製品が山積みになっているだけだから、結構広く感じる。
入口のそばに、衝立で仕切られた事務所があり、事務机2セットと長い応接ソファが置いてある。
電気も水道も使える。嬉しいことにエアコンまでついている。窓はない。

先月の今頃、取引先の社長に頼み込んで、この倉庫を使わせてもらうことにした。
パソコンのメンテナンスを無料でする、という条件付きだったが、こんな静かな環境が手にはいるなら、そんなサービスは何でもない。

事務所は埃が少々あったが、百円ショップで買ってきた、ほうき、ちりとり、雑巾で拭いたら、それなりに綺麗になった。
ソファにこびり付いた汚れは落ちなかったので、家から古いシーツを持ってきて、それをかぶせて使っている。

ガスはないが、HARD OFFで315円で買ったジャンク品電熱器を使って、百円ショップで買ったケトルでお湯を沸かせば、ラーメンも食えるし、珈琲も飲める。
CDラジカセと文庫本と毛布、焼酎「いいちこ(25度)」も持ってきて、置いてある。
それらを一式、普段は段ボール箱に入れておいて事務所の隅に置き、使う時だけ出す。
そうすれば、取引先の社員が来ても、邪魔にならないだろう。

段ボールには、私の名前を大きく三色のマジックで書いておいたから、捨てられることはない(だろう)。
私は太っ腹なので、「いいちこ」くらいは飲まれても構わないと思っている。
だから、段ボールに「中に『いいちこ』入っています。ご自由にどうぞ」と小さな字で書いておいた。
ただ、それが読めるかどうかは、努力次第である。

土曜日25時過ぎ、仕事を終えて、家族が寝たのを見計らって、家を抜け出し、自転車で「隠れ家」に行った。
寒い。倉庫はかなり冷えている。

蛍光灯の明かりを一カ所だけつけた。
ほの暗い明るさが丁度いい。
欲を言えば、間接照明が一つ欲しいところだが、それは贅沢というものだ。

まず、毛布をかぶった。
そして、エアコンをつけて、急速暖房にした。

段ボールから電熱器を取りだして、スイッチオン。お湯を沸かした。
百円ショップで買ったマグカップに「いいちこ」を半分ほど入れ、お湯を注いだ。
飲む。
三分の一を一気に飲むと、胃が熱くなり、その熱さが徐々に身体全体に回ってくる。

いつもはCDをかけるのだが、今夜は無音で過ごしてみようと思う。
少し離れた道路をたまにトラックが通るが、うるさいというほどではない。
今日は、霊も静かにしているようだ(?)。
ソファに足を投げ出し、残りを少しずつ飲んでいく。

体が温まってきたので、段ボール箱から、大沢在昌の「新宿鮫/炎蛹(ほのおさなぎ)」を手に取った。
新宿鮫シリーズは、かなり有名。
大沢在昌は、これで様々な賞を取ったので、このシリーズは彼の代表作の一つと言える。

私は「灰夜」まで7作は読んでいるが、この「炎蛹」だけは読んでいなかった。
いつも先入観なしで、本を読むことにしているが、このタイトルが今ひとつピンと来なくて、これだけを飛ばしてしまったのである。

「毒猿」「屍蘭」「無間人形」などは、新宿鮫に相応しいタイトルだと思うが、「炎蛹」には何となく違和感を感じた。
タイトルから見えてくるものがない。
「炎」と「蛹」というのが、物語に関係しているのは間違いないだろうが、この言葉から連想するものが薄い。
イメージしづらい。
そう思って、買ってから5年、読まずにいた。

それを、読み始めた。
物語は、窃盗品密売グループの追跡、という新宿鮫にしては地味な書き出しで始まっている。
ただ、大沢の落ち着いた文体は、ハードボイルド小説に完璧にはまっている。細部がイメージしやすい静かな出だしは彼の持ち味であり、物語にリアリティを与えている。

70ページあたりまで読み進むと疲れたので、またホット焼酎を作って飲んだ。
体がさらに温まってきたが、そうするとお腹がすいてきた。
段ボール箱には、カップラーメンも10数種類ストックしてある。
その中から、「一平ちゃん味噌味」を取りだした。

取り立てて美味くもないものだが、ドラッグストアで69円で買ったものだから、贅沢は言えない。
腹が満たされればいい。
夜食のあとは、珈琲。
百円ショップで買った怪しいインスタント珈琲なので、安っぽい味がする。
香りも足りない。だから、通常より濃くして飲んだ。濃くすれば、何とか飲める。

少々、ボーッとしたあと、また「炎蛹」を読み始めた。
115ページまで読み進み、疲れたので、本日の読書は終了。
壁の時計を見ると、5時20分になっていた。
今日は日曜なので、家族は8時過ぎまで寝ているはずだ。だから、それまでに帰ればいいが、6時に帰ることにした。

それまで時間があるので、またホット焼酎を作って飲んだ。
外が寒そうなので、身体を中から温めないと、外に出る気がしない。(これは、言い訳だが)
6時10分前に外に出たが、寒い。5度は切っている感じだ。

家に帰って、仕事部屋にそっと入った。
PCを立ち上げて、ミネラルウォーターを飲んでいると、娘が顔を出した。
トイレで起きてしまったようだ。

「おお、徹夜か。ご苦労さん。働けよ。あとで寝かせてやるからな。じゃあ、アタシはまた寝る」
そう言って、自分の部屋に入っていった。

気づかれなかったようだ。
危ないところだった。


2006/11/20 AM 11:09:45 | Comment(0) | [日記]



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