Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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元ナースはチャイニーズ
めまいで迷惑をかけてから、ススキダからよく連絡がくるようになった。

彼は、私が人から心配されるのを嫌がるひねくれ者だということを知っているから、私の身体のことを聞いてきたのは、一度きりである。
それ以外は、遠慮がちに色々な情報を教えてくれる。

「あのよぉ、アンタは物知りだからもうとっくに知ってるかもしれないけどさ、ギンナンがいいらしいな。今度送ってやるよ。農家やってる友だちがいるからさ」
「半身浴はいいぞ。じっくり体を温めるってのが、いいみたいだな」
「これはもう知ってるとは思うが、足は冷やさない方がいい。血の巡りが悪くなるからな」

おそらく、元ナースの奥さんの受け売りだろうが、仕事の話の途中に突然こういった話を入れてくるから、話が飛躍して、返答に窮する。
こちらとしては、笑うしかない。

ススキダは、六日間仕事で香港に行って来た。
そして、香港から帰ってきてすぐ、電話をしてきた。

「悪かったな、満足なのが書けなくて」
香港に行く前に、ススキダにハウスメーカーのキャッチコピーを頼んだ。
日本と香港間でメールのやり取りをしながら、コピーを練っていったのだが、メールだけだと歯がゆい部分がある。
うまく機能しなかった。
ススキダは、それを気にしているのだ。

電話で打ち合わせをすればよかったのだが、仕事の都合上、電話をかけられるのは夜遅くなるということでススキダが遠慮した。
ススキダは、律儀な男である。
朝9時前には絶対電話をかけてこないし、夜8時以降にもかけてこない。
ファックスやメールを送る時は、必ず事前に電話をしてくる。

今回香港からメールを送る時は、深夜近くなるので電話はなかったが、あらかじめ午後10時から12時までの間に必ずメールを送ると決めてあった。
そして、ススキダは、キッチリ午後10時にメールを毎日送ってきた。

そこまで、正確にしなくてもいいと思うのだが、それが彼の性分なのだろう。
強面(こわもて)の外観からは、想像できないくらい細やかな男である。

ススキダは、二日間日本で忙しく仕事をして、また香港に飛ぶらしい。
今度は仕事ではなく、奥さんの里帰りだという。
ススキダの奥さんの実家が、香港だというのだ。

知らなかった。

お互い余計なことは聞かないし、言わないという付き合いをしてきたが、友人の奥さんの出身を知らないというのは、間抜けである。

「香港生まれ? えっ、すると、あれかい? つまり……、外…、ん? ああ、つまり…」

「そうだよ、チャイニーズ。俺の親父も帰化したけど、中国人だったんだ。ニーハオ!」
「おう! ニーハオ。ランラン、カンカン」
「トントン」
そう言いながら、ススキダのかん高い笑い声が聞こえた。
笑い声だけは、女っぽいという変な男だ。

「うまい中華料理をたくさん食って、太って帰ってこい」
私がそう言うと、遠慮がちにススキダが言う。
「土産、買うつもりだが、もらってくれるか」

どこまでも律儀で謙虚なススキダである。
こんな男だから、彼との会話で不快感を感じたことは、一度もない。
知り合ってから四年、濃厚な付き合いをしてきたとは言い難いが、こんな友人がいてもいいのではないかと思っている。

「元ナースは、チャイナドレスを着るのか」
「へぇ〜、アンタ、そんな趣味があったのか。それも土産に考えておこう、じゃあな」
慌てて取り消そうとしたが、もう電話は切れていた。

チャイナドレスを土産にもらったら、どうすればいい?



2006/11/06 AM 08:15:11 | Comment(0) | TrackBack(6) | [Macなできごと]



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