Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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映像は先入観の餌食になる
遅ればせながら、ジブリの「ハウルの動く城」を観た。
以前、テレビで放映したものをビデオに撮っておいて、今頃観たのである。

「ハウルの動く城」は、インターネットでレビューなどを読んでみると、あまり評判が良くない。
しかし、ネットの評判はあまり当てにならない場合が多い。
観てもいないのに、「つまらない」と断定する人がいるから、そのあたりは差し引かなければならない。

ただ、今回はネット以外にも、「映画評論家(評判家?)」と称する人たちの評価もあまり高くなかったような気がする。
反戦の主張が中途半端で、何を言いたいのか伝わらない、というものがいくつかあった。

若いヒロインの声を60過ぎの倍賞千恵子が演じるというのが不自然、という「感想文」を書く評論家もいた。
原作に忠実ではない、という見当はずれのことを言う人もいた。
しかし、原作は原作であって、映像に転じれば、それは「別物」というのが、映画の世界の常識ではなかったか。

このような先入観を持って映画を観るというのは、ネット社会ではもう当たり前のことになっていて、そういった雑音をすべて受け入れた上で「覚悟して観る」というのが、現代の正しい映画の見方である。

映画というのは、映像を見せるものである、という単純な見方しかできない私にとって、この映画を観た感想は、「満足」の二文字で単純に表すことができる。
「映像」の中には、当然「ストーリー」も含まれる。

先ずは、滑稽な姿をした城が動く様がいい。
卓越したイマジネーションを感じる。
ダイナミックに、コミカルに動くこの映像は、ジブリにしか創ることはできないであろう。
それだけで、最大限の評価をしてもいいのではないか。

倍賞千恵子の声にしても、たいしたものだと思う。
倍賞千恵子の実際の歳に必要以上の先入観を持つ人には、それがこだわりになって、物語に没頭できないだろうが、それは個人の感性の問題である。
私は物語に没頭したから、まったく気にならなかった。
見事である、と賛辞を送りたい。

倍賞千恵子は、紛れもなくソフィを演じていたと思う。
木村拓哉も悪くない。「棒読み」「鼻の詰まったような声が変」などという悪意に満ちた感想は、井戸端会議的主張に過ぎない、と私には思える。

反戦の主張が中途半端、という評があったが、私は普通に恋愛映画として見たから、正直なところ、その評価の意味がわからない。
一つの作品では、いくつものテーマを要求してはいけない、と私は思っている。
私はこの映画は、「ソフィの恋愛」をテーマにしたものだと思っているから、それ以外のことに細かい意味を求めない。

エンターテインメントとしてテーマが破綻していなければ、枝葉末節は物語を支える「伏線」に過ぎない。
伏線にまで、テーマを求めるのは、見当違いというものだろう。

娯楽大作として、この「ハウルの動く城」は破綻なく、見事なダイナミズムを見せてくれる。
だから、傑作である、と私は思うのだ。
他の誰が、こんな作品を創ることができるだろう。

ネットでは、ジブリの作品は「もう飽きた」と評する人が意外と多い。
つまり、「飽きた」という、作品の正当な評価とは関係ない部分で評価しているのだ。
飽きたら、観なければいい。
新しいものに飛びついて、そしてまた飽きればいい。それは、ご自由に、と言っておく。

ジブリの新作「ゲド戦記」も、評判があまり良くないようだ。

先日、作者が作品に対して批判した、などというニュースもあった。
作者が、「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」と比べて、細密な正確さや斬新さがない、あるいは、一貫性に欠けている、などと言っていると報じられた。

これを読んで、私は「となりのトトロ」などを引き合いに出すのは、フェアではないと思った。
「となりのトトロ」は外人から見れば、エキゾチックに見えるだろう。「千と千尋の神隠し」は、エキゾチックで、しかも幻想的に見えただろう。

だが、「ゲド戦記」は、原作者である彼が書いたものだ。
比較するのは、見当違いだ。
原作に忠実でない、原作の倫理観の表現が不十分だと言うのなら、誰にも映画化の権利を与えるべきではない。
紙の世界だけに閉じこめておくべきだ。
彼の読者のためにも、映画化すべきではなかった。

だから、私には原作者の言っていることは、「戯言(たわごと)」にしか聞こえない。
あるいは、政治の世界で言うところの「ネガティブ・キャンペーン」か。

こんなアンフェアな「戯言」が一つの評価の基準になって、まことしやかな「否定的感想文」がネットに充満するとき、映像作品は、巨大な先入観の餌食にされる。

「ゲド戦記」を観に行く時間はないが、DVDで発売されたら、観てみようと思う。

先入観をタップリ頭に詰め込んで、映像に浸るのは、もう慣れてしまったから。




2006/09/16 AM 09:10:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | [映画]



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