Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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デジカメの画像はクセモノ
チラシやカタログなどの仕事の場合、得意先から、先方で撮ったデジカメの商品画像を使って欲しいというケースが増えた。
一見、こちらの手間が減って楽そうに見えるが、意外とそうでもない。
ひどい画像が多いのだ。
大体が、暗い。ぼやけている。メリハリがない。
蛍光灯の灯りで撮っているから、まったく奥行き感がない。

当然のごとく、フォトショップで加工するのだが、あまりひどいと修正が効かないことがある。
ベタ部分が潰れているものは、どういじっても潰れたままである。
「この暗い部分には溝が掘られているはずなのに、その溝が見えない」
と抗議されても、最初から映っていないものを、どう修正しろというのか。
想像で溝を書けと言われても、現物がなければ書けない。

フォトショップは万能ではない。
私など、自慢するわけではないが、欠陥だらけのデザイナーである。
そんなこと、できるわけがない(開き直り)。

そんなに大事な商品なら、専門家に任せて欲しい。
はっきり言わせてもらうが、シロートがいい写真を撮れる確率など、よほどの幸運がない限り、ゼロに近い。

デジカメは簡単に撮れる。
仕上がりも綺麗になった。
だから、デジカメ万々歳! というのは、シロートの発想である。

この件に関しては、メーカーも悪い。
誰でも綺麗に撮れるような宣伝をして、勘違いを助長している。
スナップ写真なら、それでもいいかもしれないが、仕事で使うことを前提にするなら、スナップ写真のような画像では見る人に失礼だろう。

簡単に撮れる、イコールいい写真が撮れることではない。
そのあたりを勘違いしている人があまりにも多すぎる。
デジカメの2.5インチの液晶モニタで綺麗に見えたからといって、そのまま印刷物用に使えるわけではないのだ。

誰でも気軽に扱える、誰でもいい写真が撮れる、と宣伝するメーカーの戦略に乗せられて、デジカメは市民権を得たが、それはあくまでもパーソナルな分野に限られる。
商品の良さをアピールする商品画像の場合は、シロートに撮ってもらっては困る。迷惑だ。

クライアントは神様です、という人なら、それがどういう結果をもたらそうが、言いなりになるだろう。
しかし、少しでも良いものを作りたいと思っている「ひねくれデザイナー」としては、「シロートが手を出すんじゃネエよ」という気概を捨てるわけにはいかない。

そこで、今回は、知り合いの印刷会社の「撮影用ブース」を借りて、商品を撮り直した。
これは、元々は私が自作したものだ。
我が家は、自慢ではないが大変狭いので、印刷会社さんの一室を借りて、そこに置かせてもらっている。

横幅80センチの立体ボックスを作って、その中に2種類のバックスクリーンを交換して使えるようにしたものである。ライトは「ドイト」で適当なものを買ってきて据え付けた。
バックスクリーンは青と、薄いグレーのグラデーションの2種類を、商品に合わせて使っている。

私が商品画像9点を撮っていると、印刷会社の社長が寄ってきて言った。
「Mさん、ついでにこれも撮ってくれないかな」
見ると、立派な書道の掛け軸である。
自分で書いたものらしい。
躍動感溢れる書体で、「忍耐」と書いてある。
右隅に社長の落款が押してある。

要するに、自慢である。
おそらく、褒めてもらいたいのだろう。
だが、社長は相手を間違えた。

私の母は、書道の達人だ。
だから、書を見る目は肥えている。
母と比べたら、この程度の作など、赤子と大人の違いがある。

私は正直者だ。
だから、「はい、撮っておきます」とは言ったが、褒めたりはしなかった。
社長は明らかに気分を害したように、私をにらみ据えて、その場を離れた。

「忍耐」は書だけか!

こちらは真剣勝負で、商品撮影をしようとしているのだから、それに集中したい。
しかし、ヒマな中小企業の社長には、それが理解できない。
自分の作が褒められることを期待していたものだから、私は完全に悪者になった。

撮影を終わって、帰りの挨拶をしたときこう言われた。
「あの撮影用ブース、邪魔だから持って帰ってくれないかな」

私は、そういうことをストレートに受け取るタチだから、素早く折り畳んで持ち帰ろうとした。
すると、社長は慌てて、「冗談だよ、冗談。これ意外と活躍してるからさ、置いといて構わないよ」と言った。

デジカメも面倒臭い機械だが、人間もけっこう面倒臭いものである。



2006/09/06 AM 08:45:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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