Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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カラオケボックスで打ち合わせ
世の中には、信じられない発想をする人がいる。

得意先の担当者に呼ばれて、先方に行くと、「1つしかない応接室がふさがっているので、外で打ち合わせをしましょう」と言われた。

どこに行くかと思ったら、会社から歩いて3、4分の所にあるカラオケBOXだった。
私が驚いた顔で看板を見上げていると、「今時分は客が少なくて静かだから、打ち合わせには丁度いい」と言いながら階段を上っていった。

朝の10時半。
確かに、この時間帯にカラオケに来るのは、暇な大学生か主婦ぐらいだろう。

そして、彼の言ったとおり、店内には全く音が漏れていなかった。
カラオケボックスの廊下が静かだと、何となく居心地が悪い。

ハワイアン風のデコレーションを施した部屋に入り、廊下の自販機で買った缶コーヒーを飲みながら打ち合わせをしたが、どうも落ち着かない。

それほど親しくもない人間と、密室に二人きりというのは、台風前の天気のような、妙な鬱陶(うっとう)しさがある。
しかも、打ち合わせの前に、「今回は予算がないので、いつもより、低めの設定でお願いしますよ」と言われたので、なおさら鬱陶しい。

簡単な仕事なら、その提案は納得出来るが、撮影を任され、納期も短い、報酬も少ないとなると、ただ忙しいだけのサービス仕事で終わってしまう。

そこで、「少なくとも、あと4日納期を延ばしていただけたら、お受けします。納期が延長できないなら、せめて普通の価格設定にしていただきたい」とお願いした。

「う〜ん、それができるならねえ」

要するに、「それが出来るなら、他のデザイナーに出すよ。時間も金もないから、あんたに頼むんだろ」ということだろう。

正直、どんなものでも仕事は欲しい。
フリーランスは、仕事が来なければ干上がってしまう生き物だ。
だから、どんな悪条件でも仕事を引き受ける、という哀しい性(さが)を持っている。
いつもなら、この条件でも引き受けていただろう。

しかし、この密室の鬱陶しさがいけない。
(冷房はかなり効いているが)気分的には、不快指数85以上。
全員不快。まるで熱帯地方にいるような感覚。
だから、すべてが面倒臭くなってしまった。

投げ遣りにこう言った。

「申し訳ありませんが、この条件では無理です。これだけタイトな仕事は、何人もスタッフを抱えているところでなくては、こなせないと思います。残念ながら、今回はご遠慮いたします」

相手は、一瞬気分を害したような顔になったが、思い直して、携帯電話を取って、電話をかけ始めた。
上司に報告しているのだろう。

「こんな仕事、やらねえよ」
とこちらは決めているから、相手の会話を聞くつもりはない。
テーブルの上にある「新曲リスト」を手にとって、ソファにもたれながら、中を見てみた。

ほう、上木彩矢の新曲がもう入っているのか。木村カエラもある。中島美嘉の新曲もある。へえー、Bzの「SPLASH」もあるじゃないか。

「Bzのサウンドはカッコイイぞ」と、私が常日頃言っているから、我が家の子ども二人は、最近やっとBzサウンドに芽生えてきて、MP3プレーヤーで「LOVE PHANTOM」や「Crazy Rendezvous」などを聞いている。
プロモーションビデオなども真剣に見るようになった。
おそらく、この「SPLASH」も、「ダウンロードしておいて」と言い出すことだろう。

などと思っていると、電話が終わったらしく、「わかりました」という担当者の声がした。

は?

「いま、上と相談しましたところ、納期は短くできませんが、価格はいつも通りで結構、ということになりました。来週の月曜朝までに初稿をメールでいただくということで、お願い出来ますか」

それを聞いて、今まで不快だった気分が、避暑地の高原にでもいるような爽快さに変わっていった。
人間の気分というのは、何と簡単に変わるものか。

おそらく、いつものように会社の応接室で仕事の話をしていたら、悪い条件でも引き受けていたかもしれない。
密室の居心地の悪い鬱陶しさが、不愉快をバネにして、自己主張が出来る雰囲気を作り出してくれたのだろう。

だから、たまには、カラオケボックスで打ち合わせというのもいいのかもしれない。



2006/06/27 AM 11:13:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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