Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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フリーランスは一人で闘っている
独立するとき、確たる成算があったわけではなかった。

固定客が3社と、単発で仕事をくれる会社が7〜8社もあれば何とか食っていけるな、程度の考えしかなかった。

幸運だったのは、独立する寸前に、「マニュアルを作らなければいけないので、手伝ってくれないか」と突然電話がかかってきたことだ。

それは小さいデザイン事務所の社長からの電話だったが、いまだに、どんな経緯で私の存在を知ったかは、教えてくれない。
ただ、どちらにしても、確実に仕事をくれる会社というのは、フリーランスにとって「神様、仏様」のような存在なので、今もその会社は、私にとって優先順位一番のお客である。

他に毎月仕事をくれる会社が2社。
単発で仕事をくれる会社が7社。合計10社が、私のメシの種である。
その他、飛び込みの仕事が年に4〜5件、知り合いのデザイナーから回ってくる仕事が年に2〜3件、「Mac出張講習」が年7〜8回といったところか。

多いときは定期的に仕事をくれる会社が5社。単発が12社あった。
しかし、私のルールに合わなかったり、あまりにフリーランスを小馬鹿にした態度を取る相手に対しては、我慢の限度を超えた場合、喧嘩を売ることにしている。
いや、喧嘩を買うというべきか。

フリーランスは、一人で仕事をしているわけだから、それなりのルールを持っていなければ、やっていけない。
普段は、相手は大事な客であるから、羊のようにおとなしく接しているが、ルールを踏みにじられた場合は、こちらも「阿修羅」になる。

私は、外見はのんびりしているように見えるし、口数も少ないので、穏やかに見られることが多い。
人間というのは、外見の印象で判断する生き物である。
概して「のんびり」「穏やか」な人間に対しては、侮(あなど)る傾向が強い。
稀に「誠意がある」と見てくれる人はいるが、軽んじる場合の方が圧倒的に多い。

逆に「強面(コワモテ)」あるいは「はったり」の強い人に対しては、一目置く傾向がある。
たとえ、張りぼてで作られた「はったり」でも、ひとは簡単に騙される。

私はこの「はったり」が嫌いなので、一番楽な「のんびり」「穏やか」で人と接することにしている。
それは、私の本質が「のんびり」「穏やか」だからだが、当然のことながら、怒らない人間などいるわけがない。

中には、私は怒らない人種だと決めつけて、言いたい放題で難癖をつける人がいる。

定期的な仕事と単発の仕事が減ったのは、そんなバカな客と「闘った」結果である。

今思い出しても、一番腹が立つ出来事。
それは、2年前のことだった。
犬の「飼育書」を編集する仕事を受けたときのことだ。
その会社からは、毎月ペットショップのチラシの仕事を貰っていた。

チラシの仕事を受けるたびに「Mさんの作るチラシは、インパクトがないよね。無難で、優しいだけだから、本当に効果があるかどうか、今ひとつわからないね」とよく言われた。

3年以上、毎月1回必ず出していたチラシの打ち合わせで、毎回同じことを言われた。
ペットショップのチラシだから、どぎついイメージのものは合わない。
だから、最初の打ち合わせで、「なごみ感」のあるイメージで、ということをお互い了解して、請け負った仕事だ。

その都度打ち合わせをして、デザインの方向性を決めているのに、毎回同じようにネチネチと「インパクトがない」と言われる。

しかし、いかにも定見のなさそうな担当者に、高尚なデザイン理論を言ったとしても、わからないだろうから「はいはい」と受け流して聞いていた。

そして、その会社が、犬の「飼育書」を出版したいと言って、私にデザインを依頼してきたときのこと。
104ページ、4色(フルカラー)。文章はコピーライターが書き、犬の写真は専門家が撮り、私はデザインだけ、という仕事。

2回目の打ち合わせの時、ラフデザインを提示して、その中から選んでもらった。
それほど急ぐ仕事ではなかったので、ラフを考える期間は2ヶ月以上あった。
だから、その時は、4種類のラフを考えて、提示した。

その打ち合わせの時、担当者の他に、コピーライター2人とカメラマン2人が同席した。
その4つのデザインの中で、担当者が選んだのは、オレンジを基調にした明るいものだった。
しかし、他のコピーライターとカメラマンが選んだのは、ブルーを基調にした落ち着いた、清潔感のあるものだった。

こういうときは、私は意見は言わない。
提示するだけで、余計な先入観を与えないようにする。
最終的に選ぶのは、担当者。
彼が「責任者」だから、彼に決めさせる。

そのとき、彼はアッサリと自分の意見を捨てて、コピーライターたちが選んだラフに決めた。
「このセンで進めてください」
彼はみんなの前で、キッパリとそう言ったのだった。

方向性が決まれば、進行は早い。
文章と写真が揃ってすぐ組み始めて、ほぼ1週間でレイアウトは終了。
大きな修正はなく、2稿、3稿で細かい修正をして、校了となった。

校了までは、彼と私とコピーライター、カメラマンは同時に責任を負うが、校了になったあとの責任は、すべて担当者にある。
そのあたりをはっきりさせないと、仕事がぼやけてくる。
責任が曖昧になる。

1ヶ月以上たって、「本、出来上がったんだけどさあ…」という電話をもらって行ってみると、担当者は仏頂面で腕組みをしていた。

出来上がった本を手に取ってみると、校了したときに、サンプルとしてレーザープリンタで出力して製本したものと、ほとんど変わらない出来栄えだった。
細かい誤字脱字はわからないが、落丁はないし、不自然なところもない、完成した本である。

しかし、眉間にしわを寄せて、彼はこう言うのだ。
「なんか、目立たねえなあ。インパクトがない。面白みがない。Mさんよお、アンタ、こんなの売れると思うかよ」

このとき、私は突然思ったのだ。
こんなバカとは、もう付き合いたくない。時間がもったいない!

言いたいことは沢山あったが、言うだけ空しい。
(だいいち、インパクトのある「犬の飼育書」ってどんな本だ! 書店にインパクトのある飼育書なんか置いてないぞ!

一度大きく舌打ちをしたあと、こう言った。

「一生悩んでいやがれ!」

それだけ言って、席を立った。
お茶を運んできた女子社員の大きく見開いた目、それは今でも鮮明に覚えている。

私にもう少し「こらえ性」があったら、得意先をなくすことはないだろうが、譲れない部分はある。

私の中のルールはただ一つ。
自分の言葉に責任を持てないやつとは付き合いたくない。

だから、これからもきっと、得意先をなくす場合が何度もあるだろう。

もしかして私は、フリーランスには向いてないのかもしれない。
最近、そんなことを思っている。



2006/06/14 PM 12:11:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | [フリーランスの心得]



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