Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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霊感の強い人たち
「ボク、霊感が強いんですよ」

昨日、得意先で仕事を受け取った後、担当者との世間話の中で、彼はそんなことを言った。

彼は大変礼儀正しい男で、顔が四角いせいか、融通の利かない堅物というイメージがある。
だから、「霊感」という不条理なイメージと、彼のイメージが重なり合わないので、何と答えていいのか戸惑ってしまった。

そんな私を見ながら、彼は「見てください」と立ち上がって、私に窓際に来るように促した。
彼の会社は9階建てのビルの5階にある。
そして、通りを隔てて、向かい側に4階建ての古びたマンションがある。築30年以上の、灰色の壁のシミがかなり目立つ、老朽化した建物だ。

彼はそこの4階左端あたりの窓を指さした。
「あの部屋は、いま無人なんですが、霊が沢山いるんです。この2年間で4回引っ越しがありましたが、長い人でも4ヶ月でまた引っ越してしまうんです。早い人は2週間以内で、引っ越していきました。おそらく『霊』が、そうさせるのだと思います。Mさんには、見えませんか?」
いかつい顔で、無表情に言ったのだが、「霊」の見えない私には釈然としないものがある。

自分に霊感がないから、そのての話は、どうしても作り話めいて聞こえてしまうのだ。
ヨメのパート先の社長は、「馬の霊がウジャウジャいる」とか「朝、出がけに忍者の霊を見た」などと言うことがあるらしい。

こんなものは、笑い話としても、ちっとも面白くない。
忍者の霊って何だ!

ここで、大人気ない反論をひとつ。

私たちが「忍者」というときには、時代劇やコミックの中の忍者を思い浮かべる。(NIN-NIN!)
しかし、昔の本当の忍者というのは、そんなにわかりやすいものではないだろう。
「私は忍者です」という格好をしている「忍者」なんているわけない。
本当の忍者は、時代劇などで見る「忍者着」など着ていなかったはずだ。人混みに紛れやすい格好をしていなければ、忍者は務まらない。

では、社長はなぜ、その霊が「忍者」だということが分かったのか。
霊が「俺は忍者だ」と告げたのか。

ここまで考えて、あまりに大人気ないので、思考は停止。

こういう話は、「笑い話だよ」と言われれば、つまらなくても、とりあえず納得できる。
しかし、本気で言われると、鼻白む。

今回も、「あそこに霊が沢山見えます」と言われて、心の中でため息をついた。
こういうのは、「言ったもん勝ち」だ。
こちらには全く見えないのだから、「見える」という人間に勝てるわけがない。

喧嘩で必殺の右フックを食らったようなものだろう。
「見えないよ、そんなもの。バカじゃないの!」
と小さいジャブを放っても、信じている人間には、蚊が刺したほどにも、応えない。

「見えないんですか。しょうがないですね、霊感のない人は…」という、優越感と諦めが混ざったような視線で見られるだけだ。

ただ、今回は、少し無駄な抵抗をしてみた。
「なぜ、あそこにだけ霊が沢山いるんですか? その下の階にはいないんですか?」
4階のその部屋にだけ住み着く事情があるなら、聞いてみたい。殺人事件でもあったのか?

「事件は何もありません。霊が、ただそこを好きになっただけです。居心地がよかったからでしょう」

どういう場所が、霊にとって、居心地がいい場所なのだろう。

「人がそれぞれ、居心地のいい場所が違うように、霊の場合も居心地のいい場所は、それぞれ違うのです」

それは、霊に聞いて確かめたわけ?

「いや、感覚でわかるのです。会話は出来ません。生きている人間と霊とでは、音の波長が違いますから、お互いの声を聞くことはできません。ただ、あそこにいる霊は、大変気持ちよさそうに見えます」

私は、ここまで聞いて、急に興味がなくなったので、「その霊感を良いことに生かしてください」と、適当なことを言って、逃げてきた。

この話を、「俺は霊感が強い」と日頃から威張っている友人に、電話で話したら、「それは俺の霊感とは違うな」と言われた。

「俺は『霊』を感じるだけだから、その『霊』が遠いと見ることが出来ない。だから、自分の感じる範囲の近さでしか、『霊』を感じない。しかも、俺の目には『霊』の姿は、はっきりと映らない。いつもぼやけている。強いて言うなら、俺に見える『霊』は、『気配』と言った方がいいかもしれない」

こういう話を大真面目にされると、性格の悪い私は茶化したくなる。

「おい、そう言えば、さっきから、この電話に怪しいノイズが入るんだけど、これはもしかして『霊』の仕業か!」

「ああ、おまえも感じたか。俺も最初から感じていたんだ。なんだ、おまえも結構『霊感』あるじゃないか」

話のオチとしては、「それはただのノイズだろ!」というのを期待していたのだが、予想外の展開に、慌てて電話を切った。

怖くなって、電話を切ったわけではない。
「電話線にどうやって、『霊』が入り込めるんだ! 説明して見ろ!」と怒鳴りたくなったからだ。

ただ、この場合、相手の言うことは大体想像がつく。

決まってるだろ、電話線の中が居心地がいいからだよ。



2006/05/30 AM 11:34:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [怖い話]



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