Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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泣き言三重奏
昨日から、ひとの「泣き言」ばかり聞いている。

半分引きこもりの姉から、約半年ぶりに電話があった。
姉に、こちらから電話をすることはない。姉からもほとんどかかってこない。
4〜5年に1回というのが普通だから、半年ぶりの電話というのは、異常な事態に属する。

しかも、早朝の6時10分。
息子の弁当を作っていたときだ。
この時間の電話だから、緊急の用に違いない、と慌てて出ると、いきなり泣き声が聞こえてきた。
ディスプレイを見て、川崎の実家からの電話であることは確認してあるから、姉の泣き声であるはずだ。

泣いているということは、父か母の具合が悪くなったのか、と緊張した。
しかし、聞こえてきたのは、「楽しかったあの時間に戻りたい」と言う、意表をつくすすり泣き。

こんな時間に、つまらないことで電話するな、と怒ってはいけない。
この姉は、怒られたことは、いつまでも根に持つという、恐るべき性格の持ち主だ。

だから、黙って聞いた。
他愛ない話だ。別れた元カレの夢を見た、と言う。
昨日テレビで、彼が乗っていた愛車と同じ色、同じ型の車を見たせいで、楽しかった頃の彼とのドライブの夢を見たという。

だから、あの日に戻りたい、と言って泣く。

この姉は、人への関心が希薄だ(限りなくゼロに近い)。人の話を聞くのも嫌いだ。自分の感情にしか興味がない。だから、話し相手がいない。
自分が、この世界で一番可哀想な人間である、との確信は、核兵器でも砕くことはできない。

そして、たまに話すことは、自分のことばかり。
気持ちいいくらいの、自己中心的な性格である。
だから、人の気持ちが読めない。いや、読む才能がない。
こちらが迷惑だと思っても、自分の話をすべて聞いてもらうまで、話し続ける。
この場合は、泣きながら話し続けた。

「子どもの弁当作っているんだから、後にして」などと言おうものなら、大変だ。

「アタシと弁当のどっちが大事なの!」と泣き喚くに決まっている。
だから、弁当を作りながら聞くしかない。(断言するが、弁当の方が大事だ)

そして、30分ぐらい泣き言が続いて、何の予告もなく、電話が切れた。
突然切れたのだ。
言いたいことはすべて言ったから、もういいと思ったのだろう。

この見事さは、笑うしかない。
これが今朝のこと。

昨日の午後は、大宮の得意先に呼ばれて行った。
そこで、印刷会社の社長から、深刻な表情で、こう言われた。

「『人工透析』になったら、どうしよう!」

工事現場に行けば、必ずこんな体格をした人がいる。
陽に焼けて、病気とは全く無縁。ホカ弁は必ず大盛りで、おかずの肉がちょっとでも少ないと、文句を言う人。

その人の口から「人工透析」という、全く似合わない言葉を聞いた。
まさか、この健康そのものの社長が、「人工透析」をするわけがない。
身内に誰か、腎臓の悪い人がいるのだろうか。

「この間、健康診断したら、ちょっとタンパクが出たんだ。最近たまに足がむくむしね、腎臓が悪いかもしれない。『人工透析』なんかになったら、大変だよ。俺、結婚が遅かったから、子どもがまだ小さいでしょ。借金はあるし、まだまだ、教育費はかかるし、これからだってのにさあ」

よく聞いてみると、定期的な健康診断で、尿にタンパクがちょっと出ただけらしい。
健康診断の他の数値はほとんど正常範囲内で、「念のため、できれば低タンパクのものを摂るように」と言われただけだという。

尿のタンパクは、健康な人でも、風邪をひいたり、睡眠不足、ストレスなどでも出る場合がある。
だから、「一過性かもしれないから、落ち込むことはないですよ」と言うしかない。
しかし、この社長、落ち込むと深みに入り込む性質(たち)らしい。

泣き言が止まらない。

「いい加減、頑張りすぎたかな。あ〜、やだなあ、『人工透析』。人ごとじゃネエなあ。健康な時代が懐かしいよ。もっと、自分の体に気を配っときゃ良かったなぁ。そうだ、減塩を徹底しないといけないな。外食はしばらく止めよう」

「今日は早く帰って休もうかな。悪いけど、関根くんと打ち合わせしてくれる?」

それを見て、事務の女性が笑っているが、こちらは笑うわけにはいかない。

「お大事に」
一番無難な言葉をかけたが、今まで見たことがない、弱々しい笑顔で「ありがとう」と言われた。

人間の感覚は不思議だ。それだけで、ひと回り体が萎(しぼ)んだような気がする。
「お大事に」今度は心の中で、つぶやいた。

それから、家に帰り、木曜日提出の仕事をやり始めたとき、友人のWEBデザイナーから、「折っちゃいました」と電話がかかってきた。
彼は、私が一からWEBデザインを教えた男だが、今では私を遥かに超える「売れっ子」になっている。

恥知らずな男だ。

折っちゃった? 枝でも折ったのか? それとも千羽鶴か?

「いや、指です。左手の小指」

聞くと、1年ぶりにテニスをしていたら、滑ってバランスを崩し、左手で体を支えた拍子に、小指だけに体重がかかってしまって、折れたらしい。

「ヤンキースの松井状態ですよ」
松井の骨折は周りを落胆させたが、君の場合は、笑いの種にされるだけだろう。

「いや〜、もう、痛くて痛くて、我慢できません
痛み止めを飲んでいるが、切れると、小指が心臓になった気がするくらい、痛いらしい。

しかし、左手の小指なら、それほど仕事にも日常生活にも、支障をきたすことはないだろう。

「でも、痛くて痛くて、我慢できません。仕事にも集中できないし、叫びたいくらいですよ」
じゃあ、叫べ。
「イッタァーイ!」

気が済んだろう。じゃあ、切るぞ。
「いや、とにかく、仕事がはかどらなくて、困ってるんです。俺痛みに弱いから」

確かに彼は、異常なほど、痛みに弱い。
以前、草野球の試合をしたとき、一回の表の守備で、送球が彼の尻に当たったことがある。
たいしたスピードで当たったわけではないのだが、「痛い痛い」と叫んで、そのまま他の人と交代してしまった。

他にも、指に「ささむくれ」ができただけで、大騒ぎをする。
彼のセカンドバッグには、携帯電話は忘れても、必ず「バンドエイド」は入っている。
だから、彼にとって、骨折は「この世の終わり」のような気がするのかもしれない。

そんなにつらいなら、仕事を外注に出して、痛みが取れるまで休めばいいじゃないか。なんなら、俺がやってもいいよ。

「あっ、言いましたね。待ってました。実は急ぎの仕事が2件あるんです。両方とも途中までは出来てますけど、チョー急ぎです。お願いしますよ」

要するに、仕事を頼むために電話をしてきたのか。
人の「泣き言」に弱いこちらの性格を読んで、「痛い痛い」と言って、同情を買おうとしただけか。

簡単な手に引っかかってしまった。

泣き言のお付き合いをすると、ろくなことがない。


2006/05/24 AM 10:26:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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