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● 伝聞はチンプンカンプン |
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独立当初から長いお付き合いをさせてもらっている印刷屋さんから、時々仕事を貰います。
その印刷屋さんのA3対応のスキャナを時々使わせてもらう義理もあって、よほど無茶な納期でなければ、大抵は仕事を受けます。
今回の仕事は、ラブホテルの室内に置く資料の作成。 料金表や備品などのサービス品をカタログ形式でデザインするというものです。
この依頼人は、以前からこの印刷屋さんにホテル関係の仕事を出していましたが、今回独立して、同じような仕事を出すことになりました。 以前も何回か関わったことがありますが、この依頼人、ひとことで言うと「お天気や」です。
例えば、「こういうイメージでサンプル(カンプ)を作ってほしい」という依頼があるとします。 ある程度イメージ通りのものを作って提出しても、次には気が変わって、「いや、違うパターンがいいな」と、すぐに方針を変えます。
ただ、これは他のクライアントにもよくあるパターンですから、ここまでは当方としても許せます。 今回も「若い客層をターゲットにしたホテルだから、ポップでヒップホップなイメージで、お願いしますよ」と言われて、連休明けにサンプルを出しました。
出来上がりを見て、「じゃあ、この感じでロゴをはめ込んで全体を作ってください」と言われ、気が変わらないうちに一気に作って、翌日クライアントに見せました。 そうすると、「う〜ん、軽すぎるな、もっと重みが欲しい」と言ってきました。
一番最初に打ち合わせをした「ポップでヒップホップなイメージ」と「重みが欲しい」というのは、どう繋がるのだろう?
そして、彼はこうも言ったらしい。 「やっぱり、ホテルはある程度重厚感があった方が、信頼されるんだよね。客が若造ばかりだからと言って、軽いばかりではダメだよ」
それなら、最初からそう言って欲しかった! 全体を作ったあとで、方針を180度変えられても困る!
ただ、この場合、すべてをクライアントのせいにするのも、フェアとは言えません。
自分が直接請け負った仕事でない場合は、いつももどかしさがあります。 直接話をしていない分、間に立つ人の「聞く能力」が、仕事を左右する場合があるからです。
クライアントが本当に「ポップでヒップホップなイメージ」と言ったとしても、それだけを伝えたかったとは限らないからです。 どこか言葉の隅に、「でも若干のゴージャス感が欲しい」というニュアンスをほのめかしていたとしても、間に立つ人がそれをこちらに伝えてくれない場合が往々にしてあります。
そこで昨晩、仲介人なしでクライアントと話をしました。 その方が相手の意向がストレートにわかりますから、時間の短縮にもなり、仲介人にとっても手間が省けます。
会って話をしてみると、デザインに対して意外と造詣が深いのが判ります。 書棚を覗くと、経営学やコンサルティングの本の他にデザイン関係の本が散見されます。 この人、色々な知識がありすぎて、すべてを試したくなるタイプの人のようです。 だから、デザインの方向性がコロコロ変わる。
こういうタイプの人には、断定的に意見を押し通した方が、うまくいくことが多い。余計な選択肢を与えてしまうと、迷いが生じるからです。
「ポップでヒップホップな〜」というのはわかりづらいので、若者の視点で重厚感を表現してみたらどうか。 そう言って、全体を濃緑色のトーンで、ワインパーティの雰囲気を表現したものをサンプルとして見せました。 そうすると、「ああ、これこれ、これが言いたかったんだよねぇ〜」と大きく頷きました。
「センセイ、それで行きましょうよ」(知らぬ間に、呼び名が「センセイ」になっていた)
方向性さえ決まれば、半分出来たも同然。
何でもそうですが、客の細かい要望というのは、話してみなければわからないことが多いもの。 伝聞の場合、間に立つ人の理解力と表現力が乏しいと、50パーセントも伝わってこない。
最初から直接話をしていれば、時間を無駄にしないで済んだのですが、それを言ったら仕事が来ない。 ここが、フリーランスのつらいところです。
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2006/05/12 AM 11:04:00 |
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