Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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雪と甘酒
関東地方に雪が降った日、子どもと一緒に雪かきをしました。
夕方6時過ぎ、まだ少し雪は降っていましたが、団地の階段の前や駐輪場の前を、子ども二人と私の三人でスコップを持って、10センチ以上積もった雪を掻いて、道をきれいにすることにしました。

10センチ程度でも、面積が広いと雪はそれなりに重いから、10メートルくらいの距離を均すだけでも、息が切れます。
子どもにとっては、久しぶりの雪なので、楽しくて疲れを忘れているようですが、二日酔い気味のこちらは、子どもと同じペースでは動けません。

「おい、パパ、さぼるなよ、全然進んでネェぞ!」
娘の容赦ない声が、だらしなくしゃがんだ親に浴びせかけられます。
息子は、マイペースで自分のできる範囲で、雪かき作業を進めています。

あたりは暗くなり、駐車場にも人影はありません。
三人で決めた団地の階段前と、駐輪場のまわりと団地前の駐車場までの道をきれいに均すには、どれぐらいの時間がかかるのか。

二時間では終わらないかもしれない。
子どもたちは、楽しみにしていた「IQサプリ」も見ないで雪かきをするほどリキが入っていますから、途中で投げ出すことは、親としてはできません。

誰か手伝ってくれないかな、という甘い考えが頭に浮かびますが、そばを通る人すべてが知らんぷり。
「ご苦労様」のひと言もない。
「物好きな親子が、なにやってんだ、ヒマな奴らめ」という感じでしょうか。

明け方まで、仲間と酒を飲むというのは、何年かに一回しかないのに、その日にこんなに雪が降るなんて。
しかも、雪が降ったら必ず団地前の雪かきをするなどと、子どもたちと約束事を作った自分は、なんて愚かなんだろうと、自分を呪うしかありません。

そして、団地の人間というのは、なんて無関心なんだろう! と見当違いの怒りが沸き上がります。

雪がやんで、道路がカチカチに凍って、困るのはお互い様なのに、「ここの道はどうせMさんちがキレイにしてくれるから、我々はやらなくていい」なんて思ってるんじゃあるまいな!
「大変ですね。少し手伝いましょう」と何故言えない!

ほとんど八つ当たりです。
そんなとき通りかかったのが、2ヶ月ほど前に引っ越してきた、わが階の斜め上の住人。
家族構成がどうなっているかは知りませんが、たまに顔を会わす二十歳前後の男性が、買い物袋を下げて、我々の横を通りました。

どうせ、知らんぷりだろう、と思っていたら、「ご苦労様です」とにこやかに言ってくれました。
そして、「手伝いましょう」という、信じられない言葉も。

「いや、大丈夫ですから…」と一応は断りましたが、三人とも知らず知らずのうちに「期待する目」で見ているのがわかったのでしょう。娘の持っているスコップを「ちょっと借りるね」と言って受け取るや、見事なスコップさばきで、雪を掻き始めました。

単純な長男は、「おお、すげえ、すげえ、スゴスギル!」と言って、大声で喜びます。
手際よくスコップを使いながら、息子に「飛騨って知ってる?」と気さくに話しかけましたが、地理の苦手な息子は、「???」間抜けなハテナ顔。

そんな息子に「岐阜県の豪雪地帯だよ。オレ、そこの生まれだから、こんな雪は雪とは言わない」と言って、スイスイ、スイスイ、名人芸。
負けず嫌いの娘は、兄からスコップを奪い取って、同じように掻こうとしましたが、「ウグッ、グググッ」と奇妙な声を漏らすだけで、なかなか前には進めません。

それを見たら、私も二日酔いとは言っていられません。駐輪場まわりを掻き始めました。
経験者がいるといないとでは大違い。彼が参加してから、ほぼ20分ぐらいで、予定の箇所を均し終わりました。

「助かったね」
わが子どもたちは、ひねたガキではありませんから、単純に喜びや感謝の言葉を表します。
長男などは、「ありがとう、ありがとう」と言って、飛び跳ねながら彼の周りを回っています。(これで15歳。将来大丈夫か?)

彼の方は、「ははは」と笑いながら、そんな長男を眺めています。
そして、駐輪場の傍らに置いた買い物袋の中から、缶入りの甘酒を出して、我々にくれました。
「こんなにもらったら、そちらの分が無くなっちゃうでしょ?」と私が言うと、「この買い物袋の中は、全部甘酒です。雪の日は家族でこれを飲むことに決めてるんですよ」と爽やかに笑います。

子どもたちは、嬉しそうに彼の缶と自分たちの缶をふれ合わせて、乾杯をしていました。

そして、家に入ると早速、その缶にマーカーで今日の日にちを書いて、本棚の空いているところに置きました。

この子たちはきっと、次に雪が降ったら、「甘酒が飲みたい!」と必ず言い出すことでしょう。


2006/01/24 PM 01:41:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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