Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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怖い話 第五話
そんな姉には、14歳年下の彼氏がいた。
一大決心をして、パートタイムで働きだしたときに、知り合ったという。
パートはすぐクビになったが、姉にとっては短い間ではあったが、生涯の一大イベントだったろう。そして、彼氏もできるというおまけが付いた。
携帯を持ち、メールができるようになった。
外に出れば、それなりにいいこともある。普通は、そう考えるが、姉にとっては、苦痛以外の何ものでもなかったらしい。
酒量が増える、という「おまけ」も付いた。

私は、彼氏に会ったことはないが、電話で話をしたことはある。写真も見たことがある。
母が見せてくれて、そのとき携帯電話の番号も教えてもらった。
姉にとって自慢の彼氏なので、皆に知ってもらいたかったのだろう。

写真を見ると、清潔感のある整った顔立ちの男で、電話で話をしても、少し頼りなさ気だが、言うことはしっかりしていて好感が持てた。
付き合いは四年くらいか。

彼氏との付き合いが順調にいっていた昨年の3月、「姉がおかしくなった」と母から電話があった。

聞くと、突然泣き喚いたり、霊が見えるとか言って父母を困らせているらしい。
もっと詳しく聞くと、ワインを飲んだ後に必ずそんな状態になるらしい。

少し考えて、それは演技だよ、と私は答えた。
姉が「本当におかしくなること」は、絶対にない。
これは断言できる。
異常な怖がりで、傷つくことを極端に恐れる姉の性格が、自ら壊れることは絶対にありえない。

姉は、今まで人を傷つけることを言ったり、したりしたことは、私の知る限り一度もない。
怖いからだ。人に嫌われるのが怖いからだし、人が怖い。
だから、人を傷つけることができない。
ひとを傷つけたり、自分を傷つけるような状態になったとき、彼女は親にそれをぶつける。
ただ、暴力はふるえない。それも怖いからだ。
ではどうするのか。自分の気持ちを親に知ってもらいたいために、謎をかけるのだ。

泣き喚くのは、いつものこと。これは何十年も続いた、姉の声なき訴えだ。
それだけでは伝わらないと思ったとき、普通の人なら言葉で自分の感情を表現するのだが、姉にとっては、それが伝わらなかったときが、また怖い。
そこで、「霊が見える」という「謎かけ」になる。

14歳年下の彼氏のことが、心配で心配で仕方がない。
それを言葉で表現できなくて、屈折した表現で訴えている。
私は母にそう話した。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「自分で恥ずかしくなったら、やめるさ。話を聞くだけ聞いて、そばにいるだけでいい」

そして、そんな私の予想は当たった。
「ワインを飲んで、泣き喚いて霊が見える騒動」は毎日続いたが、いつも突然静かになって、突然寝てしまうらしい。ワインを飲まなければ、泣き喚くことはないという。

「霊が見える騒動」の後は「過呼吸で入院騒動」、「熊が憑く騒動」、「ガムしか食べない騒動」などが続いた。
さすがに、「熊が憑く騒動」は異常なので、川崎の実家に様子を見に行った。


2006/01/21 AM 11:37:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | [怖い話]



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