Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








トラブルふたたび その(2)
前回の続きです。

1年半前にトラブルのあった人から、仕事の依頼が来て、会うことになりました。

彼は、私の子どもたちの好物を覚えていたらしく、中目黒の「ヨハン」のチーズケーキをおみやげに持ってきました。

1年半ぶりに合う彼は、5キロぐらい太った感じで、首筋のたるみが目立つ不健康な印象に変わっていました。以前は、どことなく学者然としていて、低音でゆっくりと話す姿が、どんなつまらないことでも、説得力を感じさせました。
今は、声や話し方は昔のままですが、何となく疲れた感じで、50代後半の年齢そのままの疲れが全体から窺えます。

たった1年半という言い方もできますが、彼の姿を見ると1年半もたったのか、という感慨を強く持ちました。

世間話もそこそこに、仕事の話に入りました。
内容は、かなりボリュームのあるものでした。
A4(2色)のファイルフォルダーのデザイン、A4(4色)の会社案内、B4(4色)の折り込みチラシ、B3(4色)の折り込みチラシのデザイン、名刺サイズのカードの作成などです。

これを全部頼んだ場合の見積をすぐ出して欲しいということでした。
念のため、会社の概要を聞くと、7月創業予定のアウトソーシングの会社だそうです。
これだけの仕事をまとめてするのは久しぶりですが、こんな時、何といっても一番の気がかりは、支払いの件です。まだ立ち上がっていない会社の仕事をこれだけ大量にする場合、最悪ただ働きの危険があります。
前金で何割かを払ってもらわないと、安心して仕事はできません。そのことを彼に言うと、彼は突然態度を変えました。

「俺が、持ってきた仕事だから、俺が責任を持つ。俺が信用できないのか」
と唇をゆがめて、すごむのです。

大きな声に驚いて、中学3年の息子が仕事場を覗きに来ました。私は努めてにこやかな顔をして「仕事の話だから、心配しなくていいよ」と言って、息子の肩を軽く叩いて、仕事場のドアを閉めました。

私は昔から、相手が興奮すると冷静になる性格です。
50代後半の印刷ブローカーにスゴまれても、たいして怖くはありません。虚勢だということは、見え見えです。黙って、彼の前に座り、彼を見つめました。

彼はそんな私を睨んでいます。3分以上、睨んでいたでしょうか。私の方は、ただ何となく彼を見つめていただけで、彼を睨んだりはしませんでした。ただ、彼の目を見ていただけです。
すると、突然彼の目がうろたえたように、まばたきを繰り返しました。

「いや、とにかく見積もりを先ず出してよ。支払いの件は、向こうと折衝して、何とかそちらの意に添うようにするからさ」
彼は、慌てて早口でそう言いました。
私が、なおも黙って彼を見つめていると、彼は突然立ち上がって、「今日は忙しいところ悪かったね。とにかく見積だけは早くメールで知らせてくれ」と言い、こちらが何も言わないうちに、背を向けて、ドアを開けました。
廊下にまだ立っていた息子に驚いた彼は、「あ、ああ、おじゃま……」と言いながら、慌てて靴を履き、そのまま外に出ていってしまいました。

「どうしたの? こらしめてやったの?」
息子が聞いてきました。
「パパは何も言わなかったよ。黙って顔を見ていただけだよ」
二人は顔を見合わせて、同じように玄関ドアを見ながら、首を傾げました。

いまだに、彼が突然態度を変えた理由がわかりません。

今朝、見積をメールで送りました。保険の意味もかねて、いつもより2割高い額で、見積もりましたが、この仕事、どうなるでしょうか。興味津々です。



2005/05/31 AM 11:13:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.