Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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「壁ドン」はできない
ガリガリのガイコツから、ひとこと言わせていただきます。

恒例の同業者との飲み会で、カロリーの話題が出た。
毎日新聞に掲載された「20代女性のカロリー摂取が少なくて危険である」という記事だった。

それは、私もネットの記事で読んだ。
20代女性の1日のカロリー摂取量が1600キロカロリー前半で、それは第2次世界大戦後の日本女性の摂取するカロリーより少なく、平均2100キロカロリーを摂取する北朝鮮よりも少ない、と警鐘を鳴らす記事だった。
これは、先進国としては、かなり特殊な数値らしい。

「何ででしょうかね? そんなに痩せたいって、病的ですよね」
「逆に、恵まれすぎているってことでしょ」
「そうそう」

いつも思うのだが、この種の記事を鵜呑みにできる人が、私は羨ましい。
戦後のGHQ(連合国総司令部)が関わったであろう日本人のカロリー摂取の統計が正確であるという保証はない。
そして、北朝鮮が公表する数値が正確であるという保証もない。

さらに、先進国としては特殊、というが、たとえば欧米社会では、モデルの細い体型に憧れて、拒食症になる女性の割合が、日本よりも多いと聞く。
それらの現実も考慮に入れたら、単純に「今の日本の若い女性は危ない」とは言えないような気が、私はするのだが。

それは、少年犯罪が報道されるとすぐ、「少年の凶悪犯罪が増えたから、少年法を改訂せよ」という無理やりな議論に似ている。
少年の凶悪犯罪は、昔と比べれば、はるかに減少しているのをご存知ですか。

インターネットがない時代と、インターネットが24時間情報を垂れ流す現代とは、情報の質が違うのですよ。

そんなことを私が言うと、「Mさんは、物事をまっすぐ見ないよね。いつも、ねじ曲げて見てるよね」と非難される。
「それにさあ、そんなに痩せていて不健康だよね。見ていて痛々しいよ」という非難が続く。

痩せている、イコール不健康。
実に、愚かで短絡的だ。

では、あなたがたは、20キロを1時間20分で走れますか。
腹筋が割れていますか。
体脂肪が10パーセントを切っていますか。

「えー! シラガの旦那、10パーセントないのお! 腹筋割れてるのお! 20キロ走れるのお! 鉄人じゃないですか! 尊敬するわ!」
馴染みになった居酒屋の店長代理、片エクボさんが、私の右肩を揺さぶった。

「外見はガイコツだけど、中身は鉄人だなんて、そのギャップに、やられたわあ!」

そうですか。
やられましたか。
私は、やったおぼえはないんですがね。

「まあ………やったやらないは別にして、尊敬はしますよね」
また、右肩を揺さぶられた。

もしかしたら、片エクボさんは、私の右肩が好きなのかもしれない。
今度からは、右肩を重点的に鍛えることにしようか。

「でも、Mさん、どう見たってガリガリですよね。もっと食べたほうがいいですよ」
人類史上、最も馬に激似の「お馬さん」が、ヒヒーン、と言った。

しかしですね。
冒頭の毎日新聞の記事の中で、若い女性の一人が「一汁三菜を作って食べるような時間や気力があるなら、それを別のものに使いたい」ということを述べていたのだが、私には、それが実によくわかるのだ。

フリーランスは、仕事が1番。
次が睡眠。
最後が栄養だ、と私は思っている。

出来上がった仕事をクライアントに渡さなければ、福沢さんや野口さんの顔を拝むことはできない。
福沢さん、野口さんをいただくことが何よりも優先される悲しくも気高い職業。
毎月同じ日に、ほぼ同じ額の福沢さんたちとお会いできる職業には憧れるが、今の職業を選んでしまった以上、羨ましがってばかりでは、前に進めない。

だから、安定した状態で、福沢さんを拝みたいがために、オンボロアパートにこもって、液晶画面に食らいついてキーボードと格闘している。
そして、疲れたら眠る。

腹が減ったとしても、眠ってしまえば、腹が減ったことなど忘れる。
私にとって、食い物は「友」ではなく、眠りこそが「友」である。

そんな暮らしを16年間続けてきた。
あんたらは、そんな俺の16年間を否定するのか!

ああ! 上等じゃないか、表へ出ろ!

……というようなお茶目な三文芝居を演じてみたのだが、同業者は、それを本気に受け取ったらしく、誰もが青ざめた。

いつもは冷静な最長老のオオサワさんでさえ、口から泡を吹きそうな顔をしていた。

ジョ、ジョーダンでございますのに………。

「ま、まあ……あれですよね。本来なら俺たちみたいなメタボが不健康ってのが普通なのに、運動もしてスリムなMさんが、アレコレ言われる謂れはないですもんね、ハハハ」
若い頃は相当のワルだったカマタさんが、怯えた目をしながらフォローしてくれたので、同業者も怯えながら、互いの顔を見ながら頷きあい、理解してくれた。

そこで、この話は、一件落着かと思われた。

しかし、居酒屋の片エクボさんが、みんなの顔を見回しながら、無邪気に言ったのだ。

「でもさ……シラガの旦那、最近アルコールやめてるよね。それって、不健康ってことじゃないの? ねえ、違う? 違う? ん?」


(一同) …………………。


おお! 上等じゃないか!

壁を背にして立ってみろ!

「壁ドン!」してやろうじゃないか!

両手で壁ドンしてやろうじゃないか!



「はい、いいですけど……」

本当に、壁に背を向けやがった。



そこは、拒否するところでしょうに……。

申し訳ありません。

私が悪うございました。


2015/03/24 AM 06:22:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

社長の圧力
東京杉並の顔デカ社長と仕事の打ち合わせをした。

顔を合わせるなり、「血色が戻ったな。目にも力が戻って、まあまあじゃねえか」と言われた。

ボチボチでんがな。

打ち合わせは、午前10時に始まって、11時20分には終わった。
仕事は、リフォームのキャンペーンチラシだ。

これは、新聞の折込ではなく、ポスティング用だ。
5万部作って、アルバイトに配らせる。
2度目だから、戸惑うことはない。

「腹減ったな」と顔デカ社長。
「すぐ近所に、ラーメン屋ができたんだが、ラーメンは嫌いか?」

でかい声で、いらっしゃいませー! と怒鳴らない店ならいいですね。
あと、厨房のお兄さんの眉間にシワがよってないこと。
ラーメン以外にもメニューがあること。
客が会話もせず、飼い慣らされた豚のようにラーメンにかぶりついてるラーメン屋でなければ、好きでございます。

「なんか、面倒くせえな。ようするに、嫌いってことか?」

いえ……ようするにですね……客にテメエの価値観を押しつけないラーメン屋は、大好きということです。

「ああ、それなら、俺もわかる」
ラーメン屋ではないが、顔デカ社長には、外食に関して、トラウマがあるのだという。

昔、上野のカレー屋に入ったところ、その店は客に水を出さないのをポリシーにしていたらしい。
水を要求したら、無言で壁の注意書きを顎でクイッと示されたものだから、「この野郎! 初めての客にそんなことわかるか! 入口に書いておけ!」と抗議したら、「うるせえ! だったら帰れ!」と喧嘩になったという。

寿司屋に入って、カウンターで握りを食っていたら、店主から「あんた、食べるの早すぎだよ」と文句を言われて喧嘩になった。
料理屋の個室で一人でメシを食っていたら、まだ15分も経っていないのに、女将がやってきて「混んできたので、早く食べて他の人に譲ってくださいよ」と催促されて喧嘩になった。
料理屋で「おまかせコース」を頼んだら、4品出てきたところで、「材料が傷んでいるから、今日はもうおしまい」と宣言され、「じゃあ、白米だけでも食わせて欲しい」と頼んだら、「うちは米屋じゃなくて料理屋だから、それはできない」と言われて、喧嘩になった。

他にも色々と修羅場を演じて、顔デカ社長は、外食を控えるようになった。
家で食うのは、中華料理屋とピザ屋、ガストのデリバリーだけ。
朝はコンビニ弁当、昼は仕出し弁当だ。

「もう5年以上、外でメシを食ったことがないな。悪いが、久しぶりの外食に付き合ってくれねえか」

いいともー!

昼メシ前なので、店は空いていた。
15人程度が座れるカウンターに、客が3人。

しかし、怒鳴り声の「いらっしゃいませー!」。
顔デカ社長と顔を見合わせた。

厨房のお兄さん2人を見ると、ハチマキの下の眉間に、見事なシワがよっていた。
ご苦労様でございます。

券売機はなく、口頭で注文するシステムだ。
メニューを見ると、醤油とんこつが主流らしい。
それに、野菜やら煮玉子やらチャーシューをトッピングする形式のようだ。
しかし、メニューは文字だけで、商品画像がないから、具体的なイメージがわかない。

壁に大きなポスターが貼ってあって、「爆盛りラーメン」という文字とともに、モヤシがテンコ盛り、チャーシュー8枚、煮玉子プラス海苔が乗っていることが理解出来るだけで、普通のラーメンが、どんな表情をしているか想像することができない。

そこで、顔デカ社長が、フロアの店員を呼んで、「普通の醤油とんこつは、どんな感じなんだい?」と聞いた。

すると店員が、「チャーシュー、ネギ、メンマ、海苔」と答えた。
実に簡潔なお答えであった。

「麺は太いのかい? 細いのかい?」
それに対して、店員は素っ気なく「普通」と答えた。
これも、実に簡潔だ。

つべこべ言わずに、早く注文しろよ、ということかもしれない。

では、ワタクシは、その普通の醤油とんこつで、とお願いしようとしたとき、厨房の眉間しわ寄せ男が、店員に向かって「おい、ミゾグチ、そろそろ混み始めるから、気合い入れていけよ!」と怒鳴ったのである。

目の前の客が注文しようとしているときに、話の腰を折って、いきなり、気合い入れていけよ? 
注文しようとしたのに、店員さんは、気合いを入れるために、我々から離れていったのです。

気合いと客と、どっちが大事なのでしょう?
客も注文するときは、気合いを入れなければダメだということなんですかね。

顔デカ社長が、舌打ち混じりに、「普通のラーメンと無料のライスでいいか?」と聞いてきたので、怯えながら、ハイでございます、と答えた。

顔デカ社長が、店員さんを呼んで、「あのよ、醤油とんこつとな……」と言った。
それに対して、店員は、「ニンニクの量は、どうしますか」と注文を全部聞かずに言葉をかぶせてきた。

ニンニク?
さあ、聞いてませんよぉ。

「ニンニクってなんだ? メニューに書いてあったか?」

店員が、これも素っ気なく「常連さんは、ニンニク多めを頼みます」と答えた。
おそらく、店員さんは、親切心から教えてくれたものだと思われる。

それを聞いて、「俺たち、初めてだから、わかんねえわな。面倒くせえな」とつぶやいてしまった顔デカ社長。

それに対して、店員は、ぶっきらぼうに「面倒くさいのなら、他に行けば?」と、顔デカ社長と同じトーンでつぶやいた。

あんらまー、すごい店に来てしまったようだ。

面倒くさいのなら、他に行けば。

この言葉を聞いた人の67%は、店員が客に喧嘩を売っていると思うだろう。
世の中には、客に言ってはいけない言葉が3万種類はある、と私は思っている。
この言葉は、間違いなく、その中に入っているのではないだろうか。

顔デカ社長が、爆発する前に、私が手を挙げた。

スミマセン。
店長さんは、いらっしゃいますか?

厨房内のハチマキ眉間しわ寄せ男が、「はい」と答えた。

では、店員さん。
私たちに言ったのと同じことを、いま店長さんに仰ってください。

「や……あのー」
店員から立ち上る空気が、先ほどとは明らかに違っていた。
170センチの身長が、17センチに萎んだように見えた。

「あ………そ……の」

「何だよ、ミゾグチ、おまえ、なんて言ったんだ!」

小さなため息とともに、下を向く店員。

おやおや、店長さんの怖い顔を見たら、自分の言ったことを忘れてしまったようですね。

スミマセン。
お手間を取らせました。
普通の醤油とんこつと無料ライスの大盛りを二つずつお願いします。

ラーメンが運ばれてくる間、13秒に1回、顔デカ社長が、店員と店長に向かってガンを飛ばしていたのだが、これが営業妨害になるかどうか、インターネットで調べてみたのだが、そこまで親切に書いてあるサイトは見つからなかった。

無言で運ばれてきたラーメンは、美味かった。
マルちゃんの正麺・とんこつ味より、麺は5ポイント点数が低いが、スープは10ポイント上を行っていた。
つまり、プラス5ポイント正麺より美味かった。

店員の非常識な対応については、店の名前を晒すことでお仕置きをすべきかとも思ったが、顔デカ社長の存在を忘れてはいけない。

かつて数々の武勇伝を演じてきた顔デカ社長の目に見えない「圧力」が、今回もマイナスに作用した可能性もありうる。
「無言の圧」ほど、怖いものはない。

ここは、むしろ、店員さんに、同情すべきなのかもしれない、とも思った。

なぜか店長さんから、代金の支払いを拒否されるという仕打ちを受けて、店の外に出た顔デカ社長が、こう言った。
「きっと俺が原因なんだろうな。俺の何かが店員をいつも刺激するんだよな。楽しくメシが食えない空気を俺が出してるんだよな。そう思わないと、説明がつかないもんな」

打ちひしがれている、というほどではないが、顔デカ社長の顔は、どこか寂しげだった。

しかし、ですね、社長。
人に絶えずプレッシャーをかける人間は、今の時代、必要だと思いますよ。

所属議員の半分以上が世襲の自民党おぼっちゃま集団が主流の社会では、ネットウヨクさえも世襲になって、世間の空気がヌルくなっています。

ウン……ホントですよ。

俺は、社長の顔を見るたびに、眠気が飛びますからね。
眠気覚ましにスルメを噛むより、はるかにシャキッとしますよ。

だから、ありがたい存在なんですよね、社長って。


「つまり、俺は、スルメよりはマシってことかい?」

はい、まあ……少しは……ああ、ごちそうさまでございます。


ケツをグーで殴られた。


親父にも、ぶたれたことないのに!



2015/03/18 AM 06:26:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

いっぱいいっぱい
カプセルホテルのハシゴ旅は、なかなか面白かった。

ただ眠っただけだったが、現実生活とは異質の空間にいるという高揚感が味わえたのは、心体のリフレッシュにはよかった。

カプセルホテルを利用したことがある知人からは、「音が丸聞こえなんだよね。いびきも聞こえるし、テレビの音や足音も聞こえるから、落ち着かないぞ」と脅されていた。

それは困るな、と思ったが、私にとって、それは無駄な心配だった。

寝つきが良すぎる私は、目を瞑れば、大抵10秒以内には眠れる。
眠ってしまえば、騒音など聞こえない。
朝8時過ぎまで、何の邪魔もなく眠ることができた。

カプセルホテルは、寝つきの悪い神経質な人には辛い宿泊場所かもしれないが、私のように「睡眠能力の高い」男には、安い分だけ快適だ。

やる気のないフロントスタッフの態度だけ我慢すれば、1ヶ月居続けてもいいくらいだ。

どれくらい快適だったかといえば、行く前の体重56.7キロが、帰ってきたときは58.5キロだったという事実が、それを証明している。

最近の私は、朝メシの割合5、昼メシ3、晩メシが2という配分で、食い物を摂取している。

今回の旅もそうだった。
朝メシ付きのホテルなら、朝メシを食ったあと、外で吉野家さんの納豆定食か焼魚定食を食う。
あるいは、松屋さんの定番朝定食。
(どうでもいいことだが、私は付属の味噌汁はいつも断っている。水分を摂りながらメシを食う習慣がないので)

朝メシが付いていない場合は、喫茶店のモーニングを食ったあとで、立ち食いソバ屋で月見そばを食う。
昼メシは、500円前後のランチを食う。

そして、晩メシは、イートインできるコンビニを探して、オニギリ2個とサラダを食うか、小さめのスーパーを見つけて、50パーセント引きの弁当を買って、カプセルホテルで食う。

それの繰り返しだった。

消費するカロリーより、摂取するカロリーの方が多いから太った。
実に単純な数式だ。

八百屋さんで、きゅうり3本を買って、それを洗ってもらい、歩きながら齧ったこともあった。
地味な商店街の肉屋さんで、コロッケを1個買って、「あっつあっつ」と言いながら歩いたこともあった。
ノンアルコールビールを飲みながら、焼き鳥を頬張って、鼻歌まじりに歩いたこともあった。

すべてが、新鮮だった。

そして、8軒の都会の銭湯を満喫した。
どれも最低1時間半は浸かっていた。
最初は、都会の銭湯の湯温の高さに驚いたが、すぐに慣れた。

サウナや露天風呂、ジェットバスがあるところもあって、そのコストパフォーマンスの高さに感激した。
お風呂屋さん、これで、儲かるんですか?

そして、熱い湯に浸かった風呂上りは、ビールよりも水の方が美味いことも発見した。

熱い湯が、体の老廃物を体外に排出してくれたからか、朝の目覚めは、いつも爽快だった。
いつもは絶えず目に疲れを感じていたが、5日の間、目の疲れを感じたことは一度もなかった。

ただ、家庭の湯を、いつもより熱くして入っても、同じような爽快感を朝感じなかったのは、開放感の質が違うからだろう。
家に帰ってから2日目には、いつもの疲れ目に戻っていた。

さらに楽しいことに、カプセル旅行の間は、まだ多少なりとも機能していた右目が、家に帰ってからは、光を感じる以外、ほとんど機能しなくなった。

右耳がお亡くなりになった次は、右目ですか。

気が向いたら、眼科に行くことにしよう。
(気が向くことは、おそらくないだろうが)


いつものことだが、私は外に出ると、必ず人様から道を聞かれる。
今回も、6日間で、17組(!)の方々から道を尋ねられた。
そのうちの4組は外人さんだった。

5日目の横浜では、野毛山動物園の坂の下あたりで、道を教えている最中に、その人たちの後ろに、もう1組が列に並ぶように待っていて、「俺は歩く交番か!」と心の中で突っ込んだ。

横浜市さん、お願いがあるのですが、みなとみらい・馬車道近辺専属の道先案内人として、雇っていただけないでしょうか。

おそらく私のお尻あたりから「道を聞いてくださいよ」オーラが、出ているのかもしれないと思った。
今度からは、お尻を隠して、街を歩くことにしようか。
少なくともパンツとズボンは履いたほうがいいだろう。


今回は、道を聞かれる以外、人様との会話は全くなかった。

会話は、大学1年の娘との電話だけ。

社会との根絶って、意外と快適なんだと思った。

しかし、その快適な根絶状態も、最終日に突然断たれることになった。


「あのよお、仕事があるんだけど、明日きてくれるかな?」

いいともー!
(いや、違う違う)

杉並の顔デカ社長からだった。

申し訳ありません。
わたくし、ただいまバカンスの真っ最中でございまして、すぐにお伺いするわけには参りませぬ。

「珍しいな、あんたが休むなんて。まあ、しかし、休んだほうがいいわな。この間なんか、病人みたいな疲れた顔してたしな」

いえいえ、私など、休んでばかりですよ。
人生の95パーセントは、休日でございます。

私がそう言うと、社長は、思いのほか上機嫌な軽い口調で、「もう、あんたとの付き合いは4年以上になるから、俺には、あんたの性格がわかるんだが、あんたが軽口を叩くときは、心も体も余裕がないときだよな。大丈夫か? 本当に休んでいるのか? 無理すんなよ」と言ったのである。

まさか、あの傍若無人、顔デカ星人の社長から、そんな優しい言葉をいただけるとは思っていなかった。

感動で体が震えた………ということはないが、鳥肌は立った。

そして、その鳥肌が、ケツの面積まで侵食しようとしていたとき、顔デカ社長が、さらに優しい声で言ったのだ。

「あんた、いっぱいいっぱい、じゃないのか。新しい仕事を頼もうかと思ったんだが、一ヶ月伸ばすことにしようか」


いっぱいいっぱい。
いっぱいオッパイ。


とても下品な光景を想像してしまったので、私は、それを打ち消すために、大丈夫です! いっぱい仕事をください! いっぱいいっぱい仕事をください! いっぱいいっぱい! と叫んだ。


それを聞いた社長が、呆れた空気を吐き出すように言った。

「なんか、『いっぱい』が、『オッパイ』に聞こえるんだが、気のせいか?」


(いえ、気のせいでは、ございませぬ。下品な私をお許し下さい)



昨日、顔デカ社長と仕事の打ち合わせをしたのだが、このおもろい話は、次回に続きます。




4年の歳月の重みに思いを巡らせて・・・・・黙祷。


2015/03/11 AM 07:59:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

カプセル旅行
2日前から放浪中。


贅沢な悩みだが、仕事が忙しかった。


甘えていると取られそうだが、休みたかった。


今年はまだ「おふろの王様」には行ってないし、ランニングもしていない。


餃子パーティをする暇もない。


そろそろ、心の内蔵電池の取り替えどきだ。


ウジウジと話が堂々巡りするのが嫌いな私は、休むことにした。


だから、急ぎの仕事は、稲城市の同業者に丸投げした。


そして、5回生まれ変わっても、私への恩が返せないほど、「恩義の負債」を抱えたタカダ君(通称ダルマ)にも、丸投げした。


そのなかの一部は、極道コピーライターのススキダに回して、借りを作ってやった。


酒が飲みたいなあ。


目の前に酒があって、誰にも見られていなくても、決して私は飲まないだろうが、酒が飲みたいな。


いかん! 堂々巡りをしてしまった。


そこで、心のスパイラルを断ち切るために、私は一度利用してみたいと思っていたカプセルホテルのハシゴをする計画を立てた。


カプセルホテルでは、ただ寝るだけ。


何もする気はないし、建設的生産性のあることは何一つやらない。
(繁華街を徘徊した。都会の銭湯のハシゴもした。今日もする予定)


期間は、5日間だ。
(ヨメには、長期出張と言ってある)


決して、私を探さないでください。


とは言っても、どこかのカプセルホテルには、必ずいますけどね。
(神田、新橋、赤坂、川崎、横浜あたり)


家族の5日分の晩メシを作って、冷凍庫へ格納。


月曜の朝、コッソリと出発した。


(*^ω^*)パンツ忘れた!


百円ショップで買った。



(初めて、iPad Air で投稿してみました。文字化けしないことを祈ります)



さて、10時のチェックアウトまで、また眠りまする。


おやすみなさい。



2015/03/04 AM 06:26:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

おバカ・リターン
中央線に乗っていたときのことだった。

30代半ばと思われるお母さんと10歳前後の男の子が、西荻窪から乗ってきた。
私の左隣の席が二つ空いていた。

その席めがけて、二人は脇目もふらずに、相当な風圧をまき散らしながら席を取った。
そのとき同じように入ってきたご老齢の女性を無視するかのように。

そして、お子様は、長年の疲労をあからさまにアピールするかのように、まるでご老人が前に立つのを防ぐように、足をだるそうに伸ばした。
母親は何も言わない。

私はご老人を見て、席を譲ろうと立ち上がったが、私より先に、20代と思われる女性がご老人の手を引いて、自分の席に座らせたので、私は棒立ちになった。

いつまでも、でかくて貧相な白髪頭の男が立っていても鬱陶しいと思い、座り直した。
そのとき、隣りの男の子から、挑戦的な目で見上げられた。

私は反射的に、男の子に、あのさ、キミ、と言った。
今度、お年寄りか、お腹の大きい女の人が入ってきたら、席を譲る競争をしないか。

それを聞いた男の子は、10歳くらいの子でも、これほど人を見下した目ができるのか、という侮蔑の目を一瞬私に投げかけてから、母親の方に顔を向けた。

母親は、私の方を見ないようにしていた。
「バカには付き合うな」と態度で示したようだ。

中野駅に着いて、ドアが開くと、妊婦さんが入ってくるのが見えた。
私は横を向いた少年に、行くぞ、と声をかけて、高速で立ち上がった。

妊婦さんに席を譲ったあとで、母子の方を見ると、二人は顔を伏せて、完全に無関心のポーズをとった。

まあ、当たり前だとは思う。
迷惑なバカオヤジに付き合っていたら、恥をかく。
バカは放っておくのが一番だ。

おそらく、百パーセント近い人が、そう思うに違いない。

バカは、新宿駅で降りた。
母親は、我が子に向かって、「大人になったら、あんなバカになってはいけませんよ」と教えたかもしれない。

話は変わるが、テレビの世界では、「おバカタレント」なるものがいて、たまに、世間様から批判されている。
「バカを商売にできるって、楽でいいよな」

しかし、考えてみてほしい。
普通は、バカを職業にすることなどできない。
おそらく世界中を見渡しても、それほど多くはいないと思う。

しかし、現実に、それを売りにしている人が存在するのである。
それは、とてつもなく凄いことではないだろうか。
我々は、どんなに頑張ったって、バカのプロにはなれない。

しかし、彼ら彼女らは、それで収入を得ているのである。
人々の優越感をその身に吸収して、毅然とバカを演じているのだ。
それは、素晴らしい能力だとは言えないか。

少なくとも私は、「俺はバカやってるけど、本当は頭いいんだよね」という勘違い芸人よりは、おバカの方が共感できる。

具志堅用高師匠は、おバカタレントではないが、その超越ぶりは尊敬できる。
唯一無二の人だと、断言できる。
あそこまで到達できる人は、なかなかいない。


さて、バカの目的地は、新宿御苑の編集会社だ。

今年初めころのブログに、桶川の会社のレギュラーの仕事を失くしたことを載せた。
そのとき、桶川の会社社長が、粋な計らいを見せてくれて、新宿御苑の会社から仕事を頂けるように、根回しをしてくれたのである。

話は、多少複雑になるが、かつて桶川の会社には、フクシマさんというおバカさんがいた。
しかし、このおバカさんは、繊細で真面目なおバカさんだった。

東日本大震災後、宮城県出身の社長のお供をして、復興のお手いをし、現場を見ているうちに、フクシマさんの心は、徐々にひび割れ、欝になった。
その後、社長の勧めもあって、フクシマさんは、ほどなく休職した。

そして、3年近い療養生活を経たフクシマさんは、医師の勧めもあって、昨年の夏、社会復帰を果たすことになった。
ただ、いきなり前線に復帰しても心身ともに負担になるので、桶川の会社ではなく、新宿御苑の会社に「ゲスト」のような形で勤めることになった。

御苑の会社社長・澁谷氏は、会社を興す前は、桶川の会社にいたこともあり、桶川社長ともフクシマさんとも懇意の間柄だった。

フクシマさんにとって、その環境は何よりも得がたいものだったのではないだろうか。

友人のフクシマさんが、御苑で働いているのは知っていたが、負担をかけたくないので、私は会いにいくことも連絡することも控えた。
働けるくらい回復したのだから、心配ないだろうと思ったのだ。

ただ、澁谷氏から仕事をいただくとなると、同じ会社にいるフクシマさんと顔を合わせるのは、必然のことだ。

仕事を頂きに行った、1月中旬。
澁谷氏から、「フクシマさんを呼んできましょう」と、新年の挨拶もそこそこに言われた。
だが、なぜか私は慌てて、いやいやいや……それは、ちょっと、あのその……、と言って、フクシマさんに会うことを辞退した。

会社に伺う前の電話で、澁谷氏から「フクシマさんは、みんなと普通にコミュニケーションがとれてますよ」と聞かされていた。
それを聞いて、砲弾と爆弾を持たなければ安心できないテロリストより臆病者の私は、みんなとコミュニケーションがとれているフクシマさんが、私に対してだけは、よそよそしい態度をとったらどうしよう、と思ってしまったのだ。

その恐怖が、私の心を満たした。

あのあのあの……今回は、遠慮いたしますでござりまする。

結局、その日は、会わなかった。
二回目のときは、フクシマさんが通院日だったので、会うことができなかった。

三度目の正直。

昨日、カタログ編集の2稿を持って行ったとき、澁谷氏に「会いますか」と聞かれた。
いつまでも逃げているわけにもいかないので、お願いいたしまする、と答えた。

応接室で、ドキドキしながらケツを掻いていたら、背後から「Mさん、立って!」という妖気な、いや、陽気な声が聞こえた。
立ち上がって振り向いたとたん、抱きつかれた。

「俺、帰ってきました! Mさん、カムバックですよ。リターンですよ。リサイクルですよ!」
見下ろすと、4年前まで、当たり前のように見かけたおバカな顔が、そこにあった。

老けた、という感じはまったくなく、純正おバカのフクシマさんのタレ目が私を見上げていた。

その目を見たとき、ああ、本当に帰ってきてくれたんだ、と思った。
目から水が出そうになったので、窓の外の景色を11秒見ることで、流出を抑えた。

おバカに涙など見せたら、一生イジラレるのは、日本国憲法9条が戦争放棄を宣言しているのと同じくらい、確固たる事実だ。

そんな私を見て、フクシマさんが、「あれ? Mさん、いま泣いてました?」と、おバカ全開の笑顔で言った。

いや、ベイマックスの感動的なシーンを思い出していただけだよ。

「え? Mさん、ベイマックス観たんですかぁ? いいなあ、俺も観たいな」

勘違いしないでほしいな。
俺は、感動的なシーンを思い出した、と言っただけで、観たとは言ってないからね。

私がそう言うと、嬉しさを弾けさせたおパカ顔で、フクシマさんが、また抱きついてきた。

「Mさ〜ん、Mさんは、そのまんまだなあ! まんまのMさんは、嬉しいなあ!」

抱きつかれ、しがみつかれ、体を揺さぶられた。

そして、心も揺さぶられた。




あのおバカが………本当に帰ってきた。




2015/02/20 AM 06:26:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

レッスンゴリラ
東京神田のイベント会社からお声がかかった。

こちらとは7年くらいのおつき合いになるが、今までよく担当者が代わった。
長くて1年ちょっと、短い人は3カ月で代わった。

しかし、今の担当者の歌舞伎役者・中村獅童氏似の担当者とは、2年間のお付き合いが続いていた。
もちろん、おつき合いだとは言っても、本当につき合っているわけではない。
私に、そんな趣味はない。

獅童氏に代わって、何が変わったかというと、仕事量が増えたことだ。
それまでは、年に2回程度の仕事量だったのが、去年は6回もあったのだ。

もしかしたら、獅童氏は、私のことを愛しているのかもしれない。
打っている途中で、吐きそうになった。

その日の打ち合わせは、いつもより長引いた。
今回は、珍しく獅童氏が、自分でアイディアを出してきたからだ。
今までは、1時間程度で終わるのが普通だったが、今回は午前11時に打ち合わせを初めて、ランチタイムを過ぎてしまった。

わたしは、そのまま打ち合わせを続けてもよかったのだが、獅童氏が「ほっともっと」と突然つぶやいた。
もっと熱くなろう、ということだろうか。

しかし違った。
そのあとに「腹が減ったから弁当買って来ましょう。奢りますから」と続けたのである。

たとえ年下だとしても、奢ってやる、という人の意思を私は最大限尊重するのを生きがいにしてきた。
だから、ノリ弁、プリーズと言った。

それに対して、獅童氏は、「ロースカツ弁当にしましょうよ。同じものを食べましょう」と気持ちの悪いことを言った。
しかし、私は、赤の他人様と同じものを食うと、激しく下痢をする変態体質をしていたので、ノリ弁、プリーズ、と頭を下げた。

「もっと、いいものの方が・・・どうせ、奢りなんだから・・・」と口を尖らせた獅童氏だったが、上着も着ずに、外に買いに行ってくれた。

応接室で、二人向かい合って、ロースカツ弁当とノリ弁を食っている図は、とても気持ち悪いものだった。
居心地が悪い、ケツがかゆい、心が寒い。

お茶を入れていただいたのだが、私は飲み物に頼らずにメシを食う訓練を長年続けてきたので、申し訳ないが、お茶は無駄になった。

そんな風に、メシを口にブチ込んでいたとき、獅童氏が、突然鼻歌を歌いだした。
「レッスンゴリラア〜」と聞こえた。

ゴリラの歌のようだ。
興味がないので、受け流した。

2度3度と獅童氏は、ゴリラの歌を歌った。
どちらかと言うと、私は動物の中で、ゴリラは好きな方である。
好きな動物ベスト6の6位か7位に位置していた。

しかし、昼メシを食っているときに、ゴリラの歌を聞きたいとは思わない。

だから、無視した。

もうほぼ食い終わろうかというとき、「あれ? Mさん、これ、知らないんですか?」と言われた。

ゴリラの歌ですか?
「いや、レッスンゴリラですよ〜、いま流行っているんだけど、知らないんですか?」

ゴリラが、ですか?

「いや、ゴリラじゃなくて、レッスンゴリラですよ!」

さっぱり、わからん。

これ以上、関わり合いたくない私は、メシを食い終わると、すぐ仕事の話に方向転換し、1時過ぎに打ち合わせを終えることに成功した。


その日の晩メシ時、大学1年の娘に「レッスンゴリラって知ってるか」と聞いてみた。

すると、娘は「知ってるよ」とアッサリと答えた。
「ただな・・・それは、『レッスンゴリラ』ではなく、『ラッスンゴレライ』と言うらしいぞ」

「後期の試験が終わったとき、試験から開放されて浮かれた男が、突然『レッスンゴリラ』を歌いだしたんだよ。ボクも最初は『レッスンゴリラ』に聞こえた。でも、そのゴリラの歌をみんなが知っていたらしくて、講義室に残っていた50人くらいが、一緒に歌いだしたり、手拍子をし始めたんだな。なんか、合いの手も入れてたな。まるで胡散臭い宗教の集会を見ているみたいで、鳥肌が立ったぞ」

「そのあと、友だちに聞いたら、お笑い芸人のネタだって言うじゃないか。それも『レッスンゴリラ』じゃなくて『ラッスンゴレライ』だよって、笑われたよ」
(親子の脳と聴力は、奇跡的に似るものらしい)


中学3年までは、お笑い番組やバラエティ番組を好んで見ていた娘は、高校に上がってからは、トリンドル(トリリンガル?)になるために、韓国語と英語の習得に時間を費やし、大学に上がってからは、社会福祉とバイトにも時間を費やしているので、テレビを見ている暇がない。

そんなこともあって、流行には疎い。
三代目ナントカを、代々続くコミックバンドと思っていたくらいだ。

『ラッスンゴレライ』が『レッスンゴリラ』に聞こえても無理はない。

誰も彼女を責めることはできない。
決して彼女を責めたりしないでください。


ただし、私のことも責めないでほしい。

私の場合は、ただ、脳と耳が老化しただけですから。




2015/02/14 AM 06:33:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

踊れない二人
貧乏ネタは、もう飽きたかもしれませんが•••。

ただ、これは私のネタではなく、私の同業者2人に突然訪れた「冬の時代」のお話でございます。
これは、たった2人のサンプリングで、アベノミクスの真実を追求するという無謀な試みでもあります。

私の友人に、埼玉浦和在住のニシダくんという一流デザイナーがいる。
何をもって一流というかは、人によって基準が違うだろうが、大手企業のクライアントを持っているということで、私は彼を「一流」に分類している。

12年ほど前、私は彼にMacを教えた。
大変、筋のいい教え子だった。
文字をデザインするセンスが、特によかった。

そのセンスのいい男は、3年後に独立し、すぐに私を追い越した。
それは、彼の能力が優れていたからだが、同時に彼は人生のパートナーにも恵まれた男だった。

その当時、ニシダくんが同棲していた人は、並外れた酒豪だったが、仕事も出来る人だった。
そのひと、チヅルさんは、都内のいくつかのコンサルティング会社から仕事を請け負っていた。

仕事は、調査とデータ収集、分析だった。
その仕事から派生する大手企業との付き合いの中で、ニシダくんに適合する仕事をチヅルさんは選別し、割のいい仕事を彼に割り振った。

ニシダくんは、そのチャンスを見事に生かして、「一流」の階段を上った。
比較するのも申し訳ないが、貧民デザイナーの私の5倍近い年収を稼ぐ時もあった。

ニシダくんは、順風満帆の人生を歩いているように思えた。
しかし、2年前から、彼の仕事量が激減したのである。
全盛期の半分以下になった、という。

アベノミクスが、日本経済を再生したと言われた時期だ。

ニシダくんのクライアントは、今も健在である。
どれもが会社として、健全に機能していた。

しかし、なぜか仕事は減った。
仕事が、今までのように流れてこなくなったという。

なぜだ? という、当たり前の疑問を投げかけてみたが、ニシダくんにも、わからないと言っていた。
「他の仕事はあるんだよ」と、クライアントに言われたらしい。
「でも君に回す仕事がね•••少なくなったんだ」

ニシダくんが、特別ヘマをしたわけではない、とクライアントは言ったともいう。
「だけど、なくなったんだよね」

その結果、年収はピークの半分以下に減り、最貧民の私の年収との差が、この2年で一気に縮まった。
二人の子どもの子育て中だった奥さんのチヅルさんは、予定よりも早く社会復帰して、以前と同じように、コンサルティング会社から依頼される調査やデータ収集、分析の仕事を復活させざるをえなくなった。

「不景気と言われた4年前より、景気が上向いたと言われる今の方が仕事が減っているって、どういうことでしょうか? 僕の得意先には、去年、過去最高益を上げた会社もあるんですよ」
ニシダくんのその疑問は、私の疑問でもある。


もう一人、稲城市の同業者をサンプリングとして、とり上げることにする。

極端な人見知りの稲城市の同業者は、恵比寿に事務所を構える年上の奥さん経由で、多種多様の仕事を請け負っていた。
ただ、人見知りのデザイナーにできる仕事の量は、限られていた。

彼は、睡眠時間を削って仕事を処理していたが、そんな状態が3年も続くと、まともな人間は、たいていは壊れる。
彼も壊れる寸前だった。

しかし、完全に壊れる前に、私という「天使」に出会う幸運を彼は手に入れた。
「天使」が、彼をサポートしたのである。

他の人とは、まともにコミュニケーションがとれない彼は、なぜか私とは、人間の会話をすることができた。
「シゴト、タスケテ」というリクエストがあるたびに、私はママチャリを東京武蔵野から稲城市まで飛ばし、溢れた仕事をいただくことを繰り返した。

その仕事が途絶えることは、昨年の春まではなかった。
だが、春からは、激減した。

私は奥ゆかしい臆病者なので、その理由を私の方から聞くことはなかったが、先日彼の方から電話で、ため息とともに愚痴が吐き出された。

「仕事が減りました。半分以下ですね。僕が仕事を始めて、この6年間、こんなことはなかったです。カミさんも理由がわからないって言ってます」
「Mさんには、忙しい思いをさせて今まで申し訳なかったですが、それが遠い昔のことのように思えます。いったい、どうしたんでしょうか。明らかに、景気、悪いですよね」


大手企業の株価は、順調に高止まりしているようだ。
急激な円安は、大手輸出産業を肥え太らせ、実体経済に反映しない金の大量移動が、一部企業と富裕層の間で行われている。

原油価格の下落はあるが、それが実際の庶民生活に恩恵を与えている気配は薄い。
それが、数字上のGDPを押し上げることがあったとしても、おそらく無くなったニシダくんや稲城市の同業者の仕事が戻ってくることは、今のところはない。

それに対して、昨年のクリスマス前から、アメリカの消費は、原油価格の下落によって、目に見えて回復してきているという。
GDPの上げ幅は、極端に上向いているわけではないが、「消費マインド」は確実に景気上昇の方に振れているようだ。

それは、日本とアメリカの国民性の違いもあるかもしれない。
「悲観的」と「楽観的」。
あるいは「貯蓄をする国」と「消費する国」の違いと言ってもいい。

日本は、人も企業も、余裕があったら貯めることを美徳としてきた。
その反対に、アメリカは、余裕があるときは使う歴史を繰り返してきた。
その結果、街にはドルが溢れる。
しかし、日本は円をタンスにしまい込む。

大儲けの大手企業は、社員の給料を上げるより、またいつか来るかもしれない大不況のために、儲けは内部留保に回して、街に円を溢れさせることを控えている。
庶民も、バブル後の自民党政権の無策を痛いほど感じているから、大事な円は小出しに使う癖がついている。

極端なことを言えば、アベノミクスの成功を信じているのは、自民党の一部政治家と日本銀行総裁、自民党機関紙の讀賣新聞、株価が上がりやすい輸出産業だけだろう。

アソータロー氏が、「儲かっている企業は、設備投資を惜しむな」と吠えたことがあったが、これなど典型的な「言うだけ番長」だ。
言いっ放しでいいなら、誰でもなんとでも言える。

私の感覚では、儲かっている日本企業は、蛇口を締める傾向が強いように思う。
アソー氏の言葉だけでは、蛇口を緩める効果はない。

そして、堅実な企業は、それほど儲かっていないときは、蛇口を締めても効果が薄いので、蛇口は締まってもいないし緩くもない状態だ。
そのときは、二人に、仕事が普通に落ちてきた。
しかし、私の友人二人のお得意様方は、儲かったが故に、金が漏れないように蛇口をギュッと締めた。

その結果、出口の細まった蛇口から、二人に仕事が落ちてこないようになった、と私はゲスらしい勘ぐりの仕方をしている。

いずれにしても、ゲスの極み乙女感覚では、ちまたに円が溢れていない状況を「不況」という。

株は踊っているが、現実の紙幣は踊っていない。

そして、アメリカの消費は踊るが、日本は踊らない。
(景気回復を信じている人が少ないからだと思う)

要するに、アベノミクスが躍らせたのは、株とエグザイルとエーケービーだけで、紙幣もニッポンジンも、彼らのファン以外踊っていないということになる。

そして、ニシダくんと稲城市の同業者は、いま躍らせてもらうことさえできない状態だ。
ただ、奇しくも同じモーニング娘。'15ヲタクのニシダくんと稲城市の同業者は、道重ラブを貫いて、自主的に踊っていないだけかもしれないが。
(このモーニング娘。'15に関しては、私の大学1年の娘が詳しいのだが、娘はバイトが忙しくて説明することができないのが残念だ)


ここで、唐突に結論。

アベノミクスは、エグザイルとエーケービーと自民党の息がかかった大手企業ファンを躍らせることはできても、モーニング娘。'15ファンは躍らせることはできなかった。

向こう岸・峯岸から、「違う!」という声が聞こえそうだが、私は両手を耳に当てながら、聞こえないフリをする。

踊りたくても踊れない人が多くいる世の中を、「景気が悪い」という。

アベノミクスは、ステージ上で、ホログラムのダンサーが踊っているようなものではないだろうか。

それを、ごく一部の富裕層だけが、手を叩いて見ている、というのが私の妄想だ。




もちろん、シャレのわかる方は、この文章が、エグザイル様とエーケービー様ファンの方々を中傷するものでないことは、おわかりだと思います。



2015/02/08 AM 06:39:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

人間っていいかも
新年早々、嬉しいことがあった。

新年の挨拶回りに行ったときのことだ。
挨拶回りは毎年行くが、すべてを回るのは大変なので、最近は一年に3社と決めていた。
それを年ごとのローテーションで回る。

東京、神奈川、埼玉、静岡のすべてを回っていたら、時間を取られて仕事にならないからだ(今は体力的にもきつい)。
今年は、桶川の企画編集会社に真っ先にご挨拶にお伺いした。
2年間、行っていなかったので、最優先に伺った。

桶川の会社の最初の担当者は、フクシマさんだった。
おバカなフクシマさんは、同じようにおバカな私と気が合って、年は20歳ほど違うが、楽しい時間を過ごさせていただいた。

仕事の打ち合わせ時間が15分なのに、バカ話は1時間以上。
毎回、幸せ気分を感じて、帰りの高崎線に乗った。

しかし、3年前に、そのフクシマさんが病を得て、長期休職を余儀なくされた。

そのあとの担当者は、女優の麻生久美子さん似の美人事務員さんだった。
フクシマさんが元気だった頃は、3人でよくトリオ漫才を演じたこともあった。

だから、麻生久美子似が担当者になったときも、打ち合わせ15分、バカ話30分、という楽しいときを過ごした。

しかし、その麻生久美子似が、ご懐妊されて、一旦会社を辞めるという事態が唐突にやって来た。
昨年末に、麻生久美子似は、退社。

その後を継いだのが、ワタベさんだった。

彼の年齢はわからない。
聞く気もない。

30歳を過ぎているとは思うが、それを知ることに意味があるとは思えない。
だから、これからも聞かないだろう。

担当者が変わるにあたって、麻生久美子似から、私に関するデータを渡されたらしい。
白髪頭のおバカなオッサン。
そして、酒飲みだということも言い継がれたようだ。

しかし、このデータは間違っていた。
今の私は、事情があって、サケとは無縁の生活をしている。

親しい知人や同業者の一部は、そのことを知っているが、得意先には伝えていない。
そんなどうでもいいことを得意先に伝える人は、この宇宙では、いないだろう。
だから、得意先の人は誰も知らない。

そんなどうでもいい事情を知らないワタベさんが、新年の挨拶回りで、一番搾りの500缶を勧めてきたのだ。
「Mさんは、これが好きなんですよね」
満面の笑みである。

この会社での年初の仕事では、私は一番搾りを飲むことが行事になっていた。
8年間続いた行事だ。

これが私に対する「お・も・て・な・し」だと思っているのだ。

しかし、私は空気を読まない男だ。

飲まないものは、飲まない。
たとえ、神と崇める柴咲コウ様、椎名林檎様に勧められたとしても、絶対に飲まない。
(いや、美脚をちらつかせられたら飲むかもしれないが)

困ったことに、ワタベさんは、美脚ではない。
だから、「俺、禁酒中なんで」と断った。

その一言で、修羅場になった。

「なんで?」とワタベさんが目をむいたのだ。

「俺が出したのに、飲めないの? だって、今まで飲んできたんでしょ? なんで、俺の飲めないの?」

いや、ですから、俺、禁酒中なんですよ。
禁酒禁煙キムジョンウン。

「はぁ? 何、キムジョンウン? 関係ないでしょ!」

はい、確かに。

新年の一番搾りが、私をこんな風に搾るなんて、想像していませんでしたよ。

「こんなんじゃ、Mさんとこれから、仕事上で友好関係を築けませんね」と言われた。

その様子を愛犬マルチーズをこよなく愛する社長が、マルチーズのユイカちゃんを頬ずりしながら見ていたのが、私の視界の端に映った。
しかし、もちろん、社長は何も言わない。

社員を信頼しているからだと思う。

しかし、その信頼する社員は、「これを飲まなければ、話が進まないんですけど」とお怒りである。

表現方法は少し違うが、「俺の酒が飲めないのか!」という昭和的なパターンだ。

私は、「俺の酒が飲めないのか!」と言われたら、躊躇せず、飲めねえよ! と答えてきた男だ。

話が進まなくても、俺は飲めませんね。
禁酒禁煙キムジョンウンなんで、と答えた。

その二度目のキムジョンウンが、ワタベさんの怒りに火をつけたようだ。

「何だよ、それ!」

もちろん、ここでキムジョンウンを持ち出す私が悪い。
スミマセン、と謝った。

しかし、それでも私は、一番搾りは飲まない。
ここで飲んでしまったら、私が私でなくなる。

申し訳ないですが、飲めません、ともう一度頭を下げた。

「じゃあ、どうすんの? 俺の気持ち」と、お怒りのワタベさん。
(彼が、何故これほど一番搾りにこだわるのか私にはわからないのだが、人の感情を推測しても意味がないので、流れに任せた)

この流れに一番沿う答えは、私が、この仕事は他の方に、と提案することだと思った。

「ああ、そうしますわ」とワタベさんが、ご自分で一番搾りを飲んだ。

融通の利かない男でゴメンナサイ、と心で唱えながら、社長に挨拶して、会社をあとにした。

高崎線に乗って新宿に到着。
中央線を待っているとき、桶川の社長から電話があった。

「今回のはワタベが悪いよ。酒の無理強いは俺も嫌いだからね。社員への教育が行き届かなかったことは、謝らせてもらいます。でも、俺は社員を守らなきゃいけない立場だから、今回はワタベの味方をするよ、悪いけど。また仕事をお願いするときがあると思うけど、そのときは、よろしくお願いしますよ」

わかりました。
そのお言葉だけで、充分です。

納得した。
(私の経験上、このようなケースの場合、百パーセント次の仕事は来ない。そして、私の性格として、額が床につくくらいの誠意を見せて、謝り倒すということもしない。なぜなら、自分が悪いとは思っていないから。つまり、この9年間続いた得意先は残念なことだが自然消滅になる)


家に帰ったあとの7時過ぎ、新宿御苑の企画編集会社社長・澁谷氏から電話があった。
「お願いしたい仕事があるので、近日中に来ていただけませんか」

澁谷氏は、新宿で会社を立ち上げる前は、桶川の会社で営業マンとして敏腕をふるっていた。
つまり、桶川の社長とは懇意な間柄だ。

推測するに、桶川の社長が澁谷氏に、私に仕事を回してくれるように根回しをしたのだろう。
だから、「O社長に頼まれたんですか」と聞いた。

「何のことですか?」とトボケる澁谷氏。

桶川の社長から口止めされたのだろう、と察した。

ありがとうございます、と答えた。

ありがとうございます、と言いながら、なんとも言えない温かい感情が私の心を満たした。



人間って、いいな、と思った瞬間だった。



2015/01/09 AM 06:22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

サブちゃんゲーム
あけまして おめでとうございます

今年は、ヒツジな一年になりますように。
(ちなみにヒツジな年とは、ヒ=緋村剣心のように冷静沈着、ツ=月に向かっておしおきよ、のセーラームーンのような華麗さ、ジ=ジャック・スパロウのように変幻自在、波瀾万丈の一年ということ?)


昨日、新年の挨拶に、呼びもしないのに、極道コピーライターのススキダが奥さんを伴ってやって来た。
新年早々、ゴキブリの顔は見たくなかったので断ろうと思ったが、ススキダの醜い泣き顔を見るのも気持ち悪いので、仕方なく入れてやった。

昨年のクリスマスに、娘さんの嫁ぎ先、カナダ・バンクーバーに行って来たといって、お土産にサングラスをくれた。
カナダ土産がサングラス?
名物なのか?

普通は、バンクーバー・バナナではないのか。

しかも、「俺とブライアン(娘さんの旦那)とお揃いだ」と鳥肌が立つことを言うススキダ。
このサングラスは、お蔵入り決定。

バンクーバーでは5日間の滞在中、職務質問を2回受けたという。

しかし、カナダの警察はたるんでいるな。普通なら、1回でブタ箱行きだろう、と言ったら、ススキダの奥さんが、手を叩いて喜んだ。
新年早々、気持ちがいい。

息子と娘に、と言って、お土産とお年玉をいただいた。
大学1年の娘はわかるが、24歳になる息子にお年玉?

最近は、お年玉も拡大解釈をするのか。まるで、集団的自衛権のように、と言ったら、また奥さんが手を叩いて、「面白いナッシー!」と喜んでくれた。
ちょっと、引いた。

「正月も酒は飲まないのか?」とススキダが聞いた。

正月に酒を飲む必要が、どこにあるのだ。
新年を祝うだけの日だろう。
そこに酒はいらない。
勘違いをするな。

「まあ、俺は酒が飲めないから、どうでもいいが」

そうなのだ。
ススキダは、極悪人顔をしているくせに、サケが飲めないのである。
看板倒れ、とは、このことを言う。

「一応今年の抱負を聞いておこうか」とススキダが偉そうに言った。

おまえをひざまずかせることだな。
Kneel down and lick me shoes .

「ニールのエルの発音がダメだな。あとのダウンは必要ないかもな。それに、リックミーの発音も怪しい。それじゃ通じない」
ドヤ顔でダメ出しですよ。

すいませんねえ、ワタシ ニッポンジン なんで。

自家製イタリアンおせちと安物の緑茶を出してやったら、2人で全部食いやがった。
私は、ひと口も食っていないのに。

「(おせちは)インターネットの取り寄せか」と聞かれたので、ドッグフード、キャットフード、ゴキブリフードをアレンジして作ったんだ、と答えた。
また、奥さんが、手を叩いて喜んでくれた。

まるで、「エンタの神様」で、少しも面白くないのに大笑いするサクラのようなお客様ですな。
まあ、新年に笑いがあるのは、悪いことじゃないが。

そして、ススキダが、ふんぞり返って「箱根駅伝を見せろ!」と吠えたので、そんな関東の駅弁に興味はない、石川の百万石弁当や佐賀のかしわめしを食わせろ! 関東の弁当ばかりじゃただのローカル駅弁じゃねえか、でも、箱根の「たつ田弁当」は、子どもたちが気に入っていたな、と答えた。

「駅弁じゃねえ、箱根え・き・で・んだ!」という芸も工夫もないススキダのツッコミ。

悪いな、うちのテレビは、この時期だけ日本テレビにロックがかかっているんだ。
関東人の誰もが箱根エキベンに興味があると思うなよ。
食いたかったら、箱根まで行ってくるんだな。
(小さい声で、母校ファイト!

さすがの奥さんも、何も反応してくれなかった。

スネ夫ヅラしたススキダが、「じゃあ、腹ごなしに、何か面白いことはないか?」と言った。

ある。
世界一面白いゲームだ。

「それは、面白いナッシーな」と、ススキダの奥さんが、まだ説明してもいないのに、乗り気になった。
今年から、奥さんを「エンタのサクラッシー」と呼ぶことにしようか。

これは、大学1年の娘と私が考えたゲームで、頻繁に我が家に晩メシを食いにくる娘の高校時代のお友だち6人とやると、大いに盛り上がるゲームだ。

通称「サブちゃんゲーム」と言う。

曲のタイトルは知らないのだが、北島三郎氏の歌に「は〜るばるきたぜ、はっこだて〜」というのがある。
これを使うのである。
「はっこだて〜」を違う地名に置き換えるのだ。

たとえば、「きっちじょーじ〜」とか「しっながわ〜」のように。
とりあえず、地名は東京限定で。
地方や海外だと地名を言われても全員がわかるわけではないので。

まず、じゃんけんで勝った人が、立ち上がる。
そのとき、みんなが「どっこ行くの? どっこ行くの?」と手拍子をする。

「は〜るばる来たぜ、いっけぶくろ〜」
立ち上がった人が、鼻を膨らませて歌いながら地名を言い、次の人を指名する。
歌は、ノンビリ歌うと相手に考える間を与えてしまうので、地名のところはアップテンポで歌うのが原則だ。

それを20回も繰り返すと、前の人につられたり、東京以外の地名を言う人や、もう出ているのに、2度同じ地名を言う人が出てくる。
そこで、アウト!

アウトになった人には、二重の罰ゲームが待っている。
最初は、親しい人に電話をかけさせるというもの。

そして、その人に、こちらがリクエストした言葉を誘導して言わせるのである。
たとえば、アミちゃんなら、彼氏に電話をして、「愛してる」という言葉を言わせる。
直接、「愛してるといっとくれ」はNGだ。
誘導して言わせなければいけない。

ミッチーのお母さんに、「バカ娘」と言わせたり、モネちゃんの弟に「ウ○コ」と言わせたり、という意地悪なリクエストもある。
この第1罰ゲームがクリアできなかった人には、第2の罰ゲームが待っている。

あらかじめ聞いておいた、嫌いな食べ物を食わせるのだ。

我が家に来る子の多くは、キノコ類、トマト、納豆嫌いが多い。

そのすべてが嫌いな子には、ナメコとトマト、納豆をブレンドして食べてもらう。
その悶絶する様子を見るのも楽しいものだ(マゾヒスト? ただ、この罰ゲームのおかげで食わず嫌いが治って、納豆が食えるようになった子がいたから、アホなゲームでも役に立つということだ)。

このゲームは、5〜8人でやると盛り上がるのだが、3人でもできないことはない。
だから、新年早々、ススキダ夫妻と3人でやった。

ただ、今回は、新年から怪しい電話をかけたら相手の方が怒るだろうと考え、第1罰ゲームは省略した。
嫌いなものを食うだけにした。

ススキダが嫌いなものは、マッシュルーム。
奥さんが嫌いなのは、ススキダの顔…ではなく、ススキダの顔によく似た(?)ツナ缶だった。

ちなみに私の嫌いなものは、コンニャクだ。
いつ飲み込んだらいいかわからないという曖昧さが嫌いなのだ。
それに、私は基本的に柔らかい食い物が苦手だということもある。

10回やって、ススキダが7回、奥さんが3回間違えた。
奥さんが、ツナ缶は「ゼッタイにダメナッシー!」「ダメよ、ダメダメ〜ナッシー!」と完全拒否したので、すべてをススキダが代わりに食った。

これでは罰ゲームにならないのだが、奥さんが可愛いから、許した。
(それに、予想外なことに、ススキダが『マッシュルームって、意外と食えるな』とマッシュルーム嫌いを克服したのは収穫だった)


終わって、どうだった、楽しかったろ? と聞いたら、マッシュルーム・ススキダが、「新年からバカに付き合わされるのも疲れるな」と大変褒めてくれた。

醜い顔で憎々しげに言われると、余計に憎悪が募った。



今年は、2歳下のコイツを絶対にひざまずかせてやる、と心に誓った、そんな平和な正月だった。




2015/01/03 AM 06:35:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

2014年の反省文
今年の反省点を一気に。
(順不同)

9月。
杉並の建設会社の顔でか社長に、「近くにカフェができてよお。あんた、コーヒーが好きだったよな。2千円のコーヒーがあるんだが、ごちそうするぜ」と言われて、ついていった。

一杯2160円のコーヒー。
「味はどうだい?」と聞かれて、値段ほどでは、と答えてしまった私。

顔でか社長の反応ですか?
「あんた、正直すぎるわ」と苦笑いしておりました。


5月。
担当者が変わったため、静岡の広告代理店に、ご挨拶に伺った。

そのとき、40代半ばと思われる新しい担当者・Tさんに、「僕、チェッカーズが好きなんですよね」と言われた。

突然言われたので、何を言っているのか、わからなかった。
「カラオケでは、チェッカーズばっかりですよ」と言われて、むかし活躍したグループではないか、と見当をつけた。

そこで、言わなくてもいいことなのに、俺、チェッカーズは避けて生きてきたので、まったく知らないんですよ、と言って、相手を白けさせた。
私は、正直すぎる男だ。


12月。
吉祥寺のサンロードを歩いていたら、前から歩いてきた若い女性に声をかけられた。
「あれっ、髪の毛、染めたのぉ〜?」と馴れ馴れしい態度だった。

無礼者、と思って、お辞儀だけして通り過ぎようとしたら、「あたしですよ。気づいてないね」と両肩を揺さぶられた。
なぜ、この年になって、若い子に肩を揺さぶれなければいけないのか、と自由民主党公明党政権を呪ったら、相手が自分の左頬を指さして、エクボを強引に見せた。

それで、気づいた。
同業者との飲み会に利用する居酒屋の店長代理だった。

店では作務衣と前掛けだが、不思議なことに、外では私服を着ているようだ。
これでは、わかるわけがない。
しかも、長い髪を下ろしているし。
ミニスカートにショート・ブーツだし(恥ずかしながらヨダレ)。

店では評価6.9点くらいだが、外では8.4点をあげてもいいほどの変わりようだ。
おじさん、ちょっとドキドキしましたぞ。

そして、片エクボさんは、さらにドキドキさせることを言うのだ。
「あたし、ノド渇いてるんだけど、ガスト行きませんか?」

何を言ってるのだ。
我々は、そんなに気安い仲ではなかろう。
オジさんをからかって、何が楽しいのだ。

うろたえまくった私は、いそ、いそ、いそ………いそでるので、と「い」を2つ飛ばして、逃げるようにサンロードを早足で通過した。

惜しいことをした。


2月。
印刷をいつも頼んでいる東京立川市の印刷会社の社長から、仕事を依頼された。

この社長は、私が推測するに、年功序列が好きなようだ。
4年前の初対面から、「Mさんは、何歳なの?」と17回以上、私に聞いてくるのだ。

年齢を聞いて、自分より若ければ、先輩風を吹かせようと思っている気配が、濃厚にある。
だが、私は、その手には乗らない。
だから私は、その都度キッパリと、273歳です、と答えている。

最初だけは笑ったが、2回目からは、毎回舌打ちしそうな顔をされた。
それからの社長は、私にタメグチをきくようになった。

まあ、それは、理解できないこともない。
私が、悪い。

そして、社長は、こんなことも言うのだ。
「Mさん、仕事以外何もできないでしょ。趣味もなさそうだし、不器用そうだもんね」
明らかに、蔑んでいらっしゃるようだ。

そして、こうも言った。
「俺の趣味は、カラオケと囲碁と温泉だね。この三つさえあれば、老後も退屈しないからね。Mさん、今のうちに、老後に楽しめるものを考えておいた方がいいよ」

心の中で、料理、ランニング、パソコンで作曲、スーパー銭湯でマッタリ、ママチャリ超高速サイクリング、路上の犬猫可愛がり、美脚鑑賞、おでこフェチ、鎖骨凝視と唱えたが、馬鹿にされそうなので、言わなかった。

そして、その社長は、私が仕事を頼むと、「え? そんな早くできるわけないでしょ! うちは、Mさんの仕事ばっかりしてるわけじゃないんだから! 我がまま言わないでよ!」と、びっくりマークを3つ付けて、私が頼んだ納期より、必ず1日プラスして仕事を請けるのである。
そして、最後に「これだけ早くできるのは、うちだけだからね」と恩着せがましく言うのを忘れない。

そんな社長が、「お客さんに頼まれたから、フライヤーのデザイン、やってよ」と言ったのである。
しかし、そのときは、仕事が重なっていたので、残念ながら、今週中には無理ですね、と答えた。

すると社長は、「いつもMさんの無理な注文を請けてるんだから、ここは聞くのが常識でしょう! 仕事は義理と人情(死語ですな)じゃない!」と、びっくりマークを2つ付けて、怒ったのだ。

そのときは、社長の顔を立てて請けたが、私も、あんたの仕事ばかりしているわけじゃないんだからね、と啖呵を切れなかったことをマリアナ海溝くらいの深さで後悔している。


10月半ば。
小金井公園をランニングした。

そのとき、よく同じコースを走っている2人組の男に声をかけられた。
2人とも、30代後半くらいだろうか。
4、5回、同じ時間帯に遭遇したので、2回目からは会釈をした。

その2人は、陸上競技経験者ではないと思う。
健康のために走っているような、フォームが一定しないブレた走り方をしていた。

偉そうに言うのだが、陸上競技経験者かそうでないかは、足の蹴りと呼吸でわかる。
その安定の仕方で、わかるのだ。

その2人の内の一人が、「経験者ですか?」と聞いてきた。
そして、そのあとに続いて、もう一人が「そんなわけないですよね。ノンビリ走ってますもんね。スピード全然出てないですし」と言った。

私の場合、ランニングはポテンシャルの7割〜8割で走るようにしていた。
しかし、今は事情があって、55パーセントくらいで走った。

そのノンビリ振りが、「そんなわけない」という結論になったのだと思う。

だが、最初に聞いてきた方が、「でも、走っているとき、足音がほとんど聞こえないんで、経験者じゃないかって思ったんですよ」と言った。
それに対してもう一人は、「痩せてるからだよ」とナメたことを言った。

経験者の走る足音が小さい、ということはない。
バタバタと走る人も多い。

私の場合は、人より足首が柔らかい(足首が350度回転する)ので、足音が小さいというだけである。
ただ、経験者と見られたのは、単純に嬉しい。

しかし、もう一人はまた「痩せてるからでしょ!」と喧嘩を売ってきた。

わかりました。
では、1キロのレースを今からしましょう、と提案した。

歩測で約1キロを計って、私をナメた男と競争した。
最初は、男を先行させて、私は5メートルほど後ろを走った。

そして、最後の百メートルで一気に抜き去ろうと思った。
その方が、相手に与える精神的なダメージが大きいだろうという、性格の悪い走りをした。
それは、見事に当たって、男に簡単に勝つことができた。

どんなもんだい!

しかし、私の体に異変が起きた。
体から血の気が引いたのだ。

見栄っ張りの私は、2人の前では平気な顔をしたが、肉体は限界だった。
帰りは、タクシーで帰った。

その後、3時間、私は死んでいた。
とても後悔した。


12月22日。
冷蔵庫を掃除していたら、冷蔵庫の2段目の一番隅っこ、脱臭剤の隣に、クリアアサヒの500缶があるのを発見した。

私は、ある事情があって、8月7日の「バナナの日」以来、酒を飲んでいない。
主治医の優香観音様が、白塗り頬紅で、「ダメよ、ダメダメ〜」と言うからだ。

「まったく飲んでいけないということはないですけど、飲まない方が回復は早いかもしれませんね」

はい、ゼッタイに、飲みません!

それを守ってきた。
しかし、そこにあるクリアアサヒ。
(トム・クランシーの『そこにある危機』は名作だが、『そこにあるクリアアサヒ』も名作だ)

悲しいことに、人間にもクリアアサヒにも「消費期限」というのがある。
私自身とクリアアサヒの期限が切れるまでに飲んでしまわなければ、コイツが可哀想だ。
人様の胃袋に入るために産まれてきたのだから、不憫だ。

飲んだ。

美味しくいただきました。

12月23日から、また禁酒を続けているが、罪悪感が消えない。
優香観音様に、合わせる顔がない。

俺は、ダメな男だ。




ということで 少々早いですが みなさま よいお年を





2014/12/28 PM 04:59:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

年末にオレ流
「これが俺流ですから」

神田のイベント企画会社の担当者とは、2年近い付き合いになる。
外見は、俳優の中村獅童氏に似ていて、本人もそれを意識して、ヘアスタイルやヒゲを獅童氏寄りにしている気配がある。

年齢は興味がないので、聞いたことがない。
25歳から39歳までの間だと思う。
(聞いたことがあっても忘れた場合がある)

その獅童氏は、原稿の用意の仕方が雑である。
いっぺんに揃ったことが一度もない。
真っ先になくてはならない原稿が後回しということがよくある。

これでは、アイディアは浮かびません、と抗議すると「これが俺流ですから」と、よく言う。

都合のいい「俺流」だ。
この言葉を使えば、すべてが許されると思っているのか、獅童氏は、それをドヤ顔で言う。

だから、「俺流」って、何?!

「俺、名古屋出身なんで、まさしく俺流ですよね!」

さあ………意味不明なコトバが来たぞ。
名古屋出身だから、「俺流」?
つまり、名古屋人は、皆こんなにも仕事が雑だってことか。

「いや、違いますよ。オチアイじゃないですかァ!」

これも意味不明。
私がオチアイで思い浮かべるのは、新宿区上落合に住む、ヨメのお友だちのエンドウさんだ。

彼女は、今年50歳になったが、外見は49歳にしか見えないくらい若々しく、しかもスィーツ作りの天才である。
アップルパイの見事さは、行列のできる店並みだ。

「いや、違いますって! 中日のオチアイですよ!」


軽いパニック!


中日のオチアイって……要するに、名古屋にもオチアイという地名があるということなのか。
千種区落合とか。
……と、ボケのスパイラルに陥りそうになったとき、突然、野球界の「オチアイ選手」の顔が浮かんだ。

まさか、あの三冠王のオチアイ氏ですか?

「そうですよ。やっと気づいたんですか!」

しかし、その大打者と「俺流」は、あなたの仕事と何の関係があるのでしょうか。
この会社のオーナーが、実はオチアイ氏だったとか。

獅童氏が、突然無口になり、斜め下から私を睨んだ。
からかわれている、と思ったのかもしれない。
あるいは、「俺流」に、ただ私を蔑んだだけなのか。

しかし、考えてみてくださいよ。
名古屋出身で、中日で、オチアイ、俺流って、獅童氏の仕事とのかかわり合いが、私にはまったくわからないのです。

すべてが「雑」という答えにしか行き着かないのだが。

完全に意思の疎通を欠いたまま、第一回目の打ち合わせは終了した。

大丈夫だろうか、この仕事。
年内に、無事終わるのだろうか。


家に帰って、インターネットで「俺流」を調べてみたら「オレ流」だった。

オチアイ氏が、回りの意見に惑わされずに、自分の意見や行動を押し通すことを「オレ流」と表現しているようだ。
知らなかったのだが、「オレ流」はオチアイ氏の代名詞のようなものらしい。

「オレ竜」と表現しているものもあった。
もちろん、ドラゴンズに引っ掛けた表現なのだろう(ハハハ)。

ただ、いくつか記事を読んでいて気になったのは、オチアイ氏のやることは、すべて「オレ流」と表現して、筆者が肯定していることだ。
「オレ流」のオチアイ氏の流儀を、「オレ流」と表現することで、なにか特別なことをしているようなニュアンスで、「オレ流」と言えば何でも許容して、そこから先の結論や意見が抜け落ちていた。

要するに、盲目的な「オレ流崇拝」。
野球界には、「オレ流」という宗派があるのかもしれない。

これは、楽だな、と思った。
要するに、オチアイ氏は、「オレ流」(彼が実際にそう表現したわけではないだろうが)と言うことで、事の是非は別にして、まわりの人の批判を「オレ流」で跳ね返す能力を持っているようなのだ。

アベソーリと言えば、すべて「アベノミクス」に集約されて、政治家としての資質を問われないのと同じこと?
(違う?)

何をしても「オレ流」で受け入れられる人。

さすが、大打者。
さすが、三冠王だ。

その絶対的なポジションは、うらやましいと思う。
それは、実績があるから、できることだ。

しかし、一般人が、それを同様の意味で使うには、違和感がある。

誰だって、今まで生きてきた中で、「オレ流」を主張して個性を磨いてきたと思うのだ。
つまり、私も「オレ流」だし、あなたも「オレ流」。

しかし、一つだけ、オチアイ氏と違うのは、一つの分野で一時代を築いた人と、自分史しか持たない人とでは、「オレ」が持つ重みがまったく異なるということ。

私は、オチアイ氏の現役時代を知らないし、監督になってからも知らない。
ただ、Wikipediaで彼の業績を見たとき、「真のプロフェッショナル」という言葉が真っ先に浮かんだ。

仕事をして金をいただいている以上、獅童氏も私も「プロフェッショナル」だが、オチアイ氏と同列を気取るには、おこがましすぎて、ケツが痒くなる。


2回目の打ち合わせの昨日。

「オレ流」の意味はわかりました。

でも、ケツが痒くなりませんか。
おこがましい気がしませんか、とストレートに聞いてみた。


すると、獅童氏が、鼻を膨らませながら言ったのだ。

「ケツなんか、痒くなりませんよ。下品ですね、Mさん。幻滅ですよ」

「それに………『おこがましい』って、何? どういう意味ですか?」



私は、「オレ流」を気取って、「おこがましい」の意味を獅童氏に説明したが、獅童氏はきっと「オレ流」に、それを理解したに違いない。



ただ、獅童氏と私は意外にも気が合うので、私も「雑」で「オレ流」なのかもしれない。



2014/12/16 AM 06:32:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

友人が昼顔
「最近、ビール泥棒が来ない」

友人である京橋のウチダ氏が、メールで嘆いていた。

異論のある方はおられるでしょうが、ビールは、この世界の飲み物の中で、最大級に魅力的な飲み物だと私は思っている。
ただ、飲まなくても生きていける、という事実もある。

若干の矛盾が入るが、今の私はノンアルコール・ビールを愛している。
日本の「龍馬1865」とオーストラリアの「ブローリー」だ。
ブローリーは厳しい解釈ではノンアルコールではないが、麦芽とホップだけでできているローアルコール・ビールとして私は気に入っている。

日本には優秀なノンアルコール・ビールがあるが、風味やコクを出すためにカラメル色素、果糖などを使っているので、私には馴染めない。

人様からしたら、どうでもいい話だろうが。

そのどうでもいいことを受け入れてくれたウチダ氏は、今まで彼の事務所の大型冷蔵庫に大量に格納していたクリアアサヒとスーパードライを他の人に分け与え、冷蔵庫の中を「龍馬1865」と「ブローリー」で満たしたことをメールで私に報告をした。

そして、こんなこともメールに付け加えたのだ。

「Mさんの誕生日に、俺は仕事でいないですけど、いつでも『泥棒』は歓迎しますから、好きな時間に侵入してください。何をしても文句は言いませんから」

京橋のウチダ氏は、私より5歳下だが、一人でイベント会社を切り回している有能な男である。
7年前に独立した彼は、彼自身の能力を縦横無尽に発揮して、いつも数個の企画を抱え、忙しい日々を送っていた。

要するに、「できる男」なのだ。

しかも、イケメン。
身長以外の要素では、私に勝負を挑ませる隙を与えず、独走状態を続けている。

そのイケメン社長の京橋の事務所の鍵を、「恋人」でもない私が持っているという衝撃の事実。
そういう事実があるので、年に2回程度、京橋の事務所に侵入することを私は趣味にしていた。

そこでの私は、冷蔵庫にあるビールを飲み、各種チーズを胃の中に盗むのを職業にしていた。
しかし、今年は1回しか侵入していないので、ウチダ氏から「愛のメール」が来たということだ。


中央線武蔵境駅から快速で東京駅まで一本で行ったのち、八重洲の地下街を歩き、地上に出てから6分で事務所へ。
立地条件はいい。
家賃は、相当高いに違いない。
興味がないので、聞いたことはないが。

事務所に入った。

ウチダ氏の事務所は、20畳ほどのスペースに、応接セットと仕事机、液晶テレビだけという殺風景なものだったが、今回一番先に目に入ったのは、壁際に置かれた簡易ベッドだった。
そのベッドの上には、高級そうな羽毛布団が折り畳んで置いてあった。

つまり、この事務所に愛人を連れ込んでいるということだ。
愛妻家のウチダ氏が、まさか「昼顔」を実践しているとは思わなかった。

人は見かけによるものである。

………と思ったら、羽毛布団の上に、私へのラブレターがあるのを見つけた。

A4一枚に、ヒラギノ明朝体ProW3で打ち出された長文の恋文だった。


要約すると、ホテルほど綺麗なベッドではないが、イベントなどで使っているレンタル会社からベッドとシーツ、羽毛布団は借りたとのこと。
今日は事務所に帰る予定はないので、心置きなく休んで欲しい。
冷蔵庫にあるものは、何を食べてもいい。殻つきの生ガキがたくさんあるが、全部食べてもいい。
帰りは、後払い式のタクシーチケットを同封しておいたので、それで帰ってほしい。
誕生日おめでとう。
ちなみに、僕に「愛人」はいない(本当に書いてあったのですよ)。


お言葉に甘えて、エアコン温度を適温にして、ベッドに横になった。
いちいち断らなくてもいいことだが、全裸で寝た(ウチダ氏がパジャマを忘れるという痛恨のミスをしたから)。
時間は、午前11時05分。

快眠後、目覚めたのが午後4時37分。
窓の外の景色は、暗くなり加減だった。

全裸で起き上がったが、礼儀として全裸で応接セットに腰掛けるのは申し訳ないと思ったので、シャツとパンツだけは着けた。
冷蔵庫から発泡スチロールの丸皿に盛られた生ガキを取り出し、応接セットのテーブルに置いた。
そして、ブローリーと龍馬1865を交互に飲みながら、10個の生ガキを完食した。

極めて大変に、厳かに清々しくも、美味しくいただきました。

寝て食って飲んだら、もう他に、やることはない。

帰ろうと思い、封筒の中のタクシーチケットを取り出したとき、もう一つチケットが入っていることに気づいた。

「柴咲コウ 椎名林檎直筆サイン引換券」

その上に大きな付箋が貼ってあった。

「申し訳ないが、まだサインは手に入れていません。
 努力中ですので、いましばらくお待ちください。
 敬愛しないM先輩へ」

数年前、ウチダ氏に、君の人脈と経済力を駆使して、オークション以外で柴咲コウ様、椎名林檎様の直筆サインか生写真を手に入れろ、可及的速やかに手に入れろ、そうしないと、愛人がいることを世間にバラすぞ、と優しい言葉でお願いしたことがあった。

律儀なウチダ氏は、それを憶えてくれていたようである。
ありがたいことだ。

ただ、それ以上に私の目を奪ったのは、「M先輩」という文字である。

実は、ウチダ氏と私は10年以上の付き合いだが、2年前まで、ウチダ氏が私の大学の後輩だということを知らなかった。
5歳離れているから、大学生活が重なってはいないということもある。
しかし、親しい付き合いをしている以上、大学が同じだということは言うのが自然だ。

そのことを私は、共通の友人である私の大学時代の同級生、コンサルタントのオオクボから聞かされたのである。
そして、そのときウチダ氏がした弁明を聞いて、私は耳を疑った。

「だって、Mさんのこと、先輩って呼ぶのイヤなんだもん!」

唖然ボーゼン。

まあ………わからないではないが。

何となく納得して、私は、先輩ヅラする機会を失って、今に至っていた。

それなのに、ここで「M先輩」ですよ。
「敬愛しない」という言葉は無視するとして、彼の心に、私に対する何がしかの変化が訪れたのは間違いがない。
まあ、どうせ、私に、愛人の存在をバラされるのが怖い程度の変化だとは思うが。


深く考えるのが面倒くさいので、食い散らかしたものをレジ袋に放り投げてデイパックに格納したのち、身だしなみを整えてから、ウチダ氏の事務所をあとにした。
時間は、午後6時04分。

電話でタクシーを頼んでいたので、ピックアップ先のブリヂストン美術館前まで急いだ。
タクシーは、すでに待っていてくれた。

日比谷公園を左に見たところまでは覚えていたが、あとは意識を失った。

優しく揺さぶられて起きたら、オンボロアパートのピッタリ前だった。

7時を少し過ぎていた。

目をこすりながら深く頭を下げて降りたあとで、ウチダ氏に感謝のメールを送ろうとiPhoneを取り出したとき、メールが6件届いていることに気づいた。
中に、ウチダ氏からのメールがあった。

「俺、本当に愛人いませんから」



これからウチダ氏のことを「昼顔ウチダ」と呼ぶことにする。




2014/12/04 AM 06:26:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

7時間の活用法
ホテルのデイユース・プランを利用するのは2回目だ。

武蔵野のオンボロ・アパートから約2 . 5キロ。
徒歩25分程度のところに、そのホテルはあった。

12時から19時まで部屋を借りて、6千円。
もちろん、普通の感覚で言えば、高い値段だ。
休むなら、家で休めばいいではないか、という非難を浴びせる野次馬が大勢いるのは知っている。

だが、本当の安らぎを買えるのなら、私はそれが高いとは思わない。
そして、私は、その場所で、その時間、確実に安らいでいるのだ。

「しかし、寝るだけなら、インターネットカフェでもいいだろうし、そっちの方が安くないか」と余計なことを言うノナカのようなアホもいる。

もちろん、安さと手軽さを考慮したら、インターネットカフェは魅力的である。
寝るだけなら、安い方を取った方が合理的だ。

それは、わかる。

ただ、空間の独占感というのがある。
インターネットカフェは、そこが希薄だ。
拒否できない音が、無遠慮に押し寄せてくる場合がある。

ホテルでは、その拒否できない音が最小限に抑えられている。
つまり、そこでは確実に、一人分としては充分に広い空間を私的に平穏に所有できる。

それは、充実した睡眠を得るために、今の私が一番必要としているものだ。
私は相当にビンボーだが、充実した休息のために、この空間に高い対価を支払うのは、やむを得ないと思っている。

7時間のうち、おそらく5時間以上を睡眠に使った。
それは、質の高い睡眠だった。

そして、残りの時間は、ソファに座って窓の外を眺め「無」になった。

何も食わない。
家から持ってきたマグ・ポットに入れたホット・コーヒーを飲むだけである。

無ではあるが、自分の心臓の鼓動や呼吸は意識している。
ときどき脈が飛ぶが、これはいつものことなので気にしない。
息苦しくならないので、呼吸は正常なのだと思う。

つまり、生物として機能しているということだ。

家で仕事をしているときは、当たり前のことだが、鼓動も呼吸も意識しない。
仕事を遅滞なく進行させることだけに集中している。

だが、以前の私なら、疲れなどは、ほったらかしにして、ぶっ続けで仕事をしたものだが、今の私は別人である。
疲れを感じる前に、仕事場の隅に置いた独り用のテントに入り、毛布にくるまって20分ほど仮眠を取るのだ。

医者から「働くのはいいですけど、適度な休息を毎日必ず数回とってください」と圧力をかけられているせいだ。
それに、わざわざテントで寝るのは、私が、疲れて眠りこけている姿を家族に見せたくない、という変態体質から来ている。

あからさまな「睡眠不足自慢」はしないが、おそらく同年代の同業者の話から推測すると、半分くらいだと思う。

ただ、これにも変態的な理由があって、私は自分が極端な「ナマケモノ」だという認識が強い生き物なので、一度休んだら、死ぬまで休み続けるのではないかという恐怖心を絶えず持っている。

それを避けるために、同業者から、どんな仕事のおこぼれでも毟り取ることを私は最大の趣味にしている。
そうしないと、私は本当のナマケモノ亜目化するとの強迫観念から逃れることができないからだ。

その結果、この夏のはじめに、突然の不調に襲われて、優香さん似の女医さんとの運命的な出会いをすることになったのだが、残念ながら、ベタなドラマのような展開にならなかったのは、私にシナリオを作る能力が欠けていたからだろう。
(どうでもいい話?)


早足で帰宅して、すぐ晩メシづくり。

遅いので、凝ったものは作らない。
以前作って冷凍しておいたシチューを温め、シーフードミックスのアヒージョと庭のプランターで作ったレタスのサラダに、自家製低塩バターを使ったガーリック・トーストを付けたものだ。
これを30分以内に作って、8時前に、家族で食った。

家族にとっては、「普通の一日」だろうが、私にとっては、極めて楽しい一日だった。


12時50分まで仕事をして、温かい甘酒を飲んで寝た。

目が覚めたのは、5時36分。
驚いたのは、自分がテントで寝ていたことだ。

1階の和室で家族揃って寝たことは覚えている。
しかし、起きたのは、2階の仕事部屋に置いたテントの中だった。

いったい、私の身に何が起きたのだろうか。

単純に考えれば、私が「異常なほどの孤独なテント好き」であるという結論に落ち着く。

それ以外に、理由があるだろうか。

あるいは、ただ寝ぼけただけ?
もしくは、夢遊病?
アルツハイマーの可能性も否定できない。

おもろいオッサンになったものだと、つくづく感心する。



また今日も、楽しい一日が始まりそうだ。




2014/10/29 AM 06:30:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ナカメとカミメとアオバ
機械音痴の同業者が、東急東横線中目黒駅から徒歩10分程度のところにいる。

パソコンの調子が悪くなって、手に負えなくなるとヘルプ・メールが来る。
2年半ぶりに来たので、中目黒まで行って来た。

デスクトップタイプのMacが頻繁に落ちるというので、調べてみたらファンが動いていなかった。
本体の内部温度を測ってみたら、極端に高温というわけではない。
だが、「落ちる」という現象がある以上、ファンが原因と考えるのが自然だ。

新しいファンを取り寄せると時間がかかるので、あまり使わなくなった古いMacのファンを取り外して、メインマシンに付けてみた。
ビスの位置が微妙に違うので、ファンの下側のビスは固定しないで使った。

間に合わせではあるが、一応動いているし、異音もしない。
1時間ほど動かしてみたところでは、落ちる現象は出てこない。

あとはファンの規格品を探しておいてくだされ。
品物が来たら、またメールをチョンマゲ、と言って、事務所を出ようとした。

すると、前を塞がれた。
「いやいや、Mさん。お茶でも飲んでいってくださいよ。いや、Mさんは、ビールの方がいいか。ハイネケンがありますけど」

私は「ハイネ犬」という犬は知りません。
ハスキー犬なら、大好物ですけど。

………白けたぞ。

渡辺さんが飼っている犬は、「ワタナベケン」でいいと思いますが、オオバさんは、そのことについて異論はござるか?

………白けたぞ。

大型スピーカーから放出される、ヴァン・ヘイレンの「JUMP」のベース音が、心臓に響いて、心が痛い。

オバさん、申し訳ないが、スピーカーの音量を絞ってくださらぬか。

「Mさん、俺、オオバですけど……」

ボケが通じなかったか………。

ヤケクソになった私は、事務所の窓寄りにあるソファセットに腰を下ろし、コーヒー、プリーズ、とお願いした。

「珍しいですね。Mさんが、ビールを断るなんて…何か、理由でも?」

コーヒーは、ブラックで。
できれば、薄めでお願いいたす。
それに、昼間からビールを食らうやつなんてのは、クズです。
私は、クズじゃありませんから!

雨の日の翌日、太陽の光を強烈に浴びて干涸び、スルメ状になったカエルの死骸を見るような目で見つめられた。


コーヒーは美味かった。
間違いなくインスタントだったが、満足できる味だった。

オオバさんは、オレンジジュースを飲んでいらっしゃった。
そして、インスタントコーヒーを飲んでいた私は、オレンジジュースを飲んでいたオオバさんから驚愕の事実を知らされた。

彼は、中目黒のことを「ナカメ」と呼んでいたのだ。

最初は、何を言っているのか、わからなかった。

「ナカメは、多国籍料理がたくさんあって、何を食べようか迷いますよ」と言われて、「ナカメ」というのは、国連の多国籍軍のことなのかと思った。

「ナカメ」=「ナんでもカんでもメのかたきにする軍隊」

冗談で言ったのに、本気で「違いますよぉ!」と怒られた。

「ナ・カ・メ・グ・ロ! でっす!」

では、聞きますが、祐天寺は「ユウテ」で代官山は「ダイカ」と呼ぶのですか?
中央線に乗っていたら、「ムサコで買い物」と言ってる奥様方がいましたが、「武蔵小金井」のことを言っていたようだ。
しかし、それでは「武蔵小杉」や「武蔵小山」の立場をどうなさる?
東急目黒線「武蔵小山」の方が、武蔵小金井よりポピュラーだと私は思いますが。

「いや、愛着の問題ではないですかね。『ナカメ』は、『中目黒』に愛着を持った言い方だと思いますよ」
オレンジジュースを飲む手を止めたまま、オオバさんが言った。
果汁百パーセントを自慢したいようだ。

しかし、愛着なら、皆さんそれぞれの場所がおありでしょう。
無理やりに、「ナカメ」などという省略言葉を使われたら、神童と呼ばれた1歳から、この地に住みはじめ、結婚のため28歳で中目黒の実家を出るまで、ここに住み続けた私としては、馬鹿にされているとしか思えませぬが。

「そうですか、愛着はないですか?」

中目黒の地に愛着はござるが、「ナカメ」という名に愛着などござらぬ。
今でも中目黒に住み続けている小・中時代の友人の中で、「ナカメ」などという、ふざけた呼び方をしているやつは、一人もいませんよ。

中目黒は、中目黒。

ナカメ駅で降りて、東京三菱UFJ銀行ナカメ支店で金をおろし、東急ストアナカメ店で買い物をして、ナカメ小学校前を通って家に帰る、などという下品な会話をするやつは、絶対にいません。

きっと頭の中身がスカスカの雑誌編集者か不動産屋か、あるいは中目黒を特別な場所だと思い込みたい勘違い人間が、得意げに呼びはじめたのでしょう。
しかし、その表現は下衆すぎて、耳元で演歌を歌われるのが上品に思えるほど、ゲスの極みと言っていいものです。

私が、そこまで怒るとは想像していなかったのだろう。
オオバさんは、ずーーーっとオレンジジュースを持った手を止めたまま、小さい目をパチクリさせていた。
そんなに果汁百パーセントを自慢したいのだろうか。

そのオオバさんに、私は、こんなことを言った。

そもそも、中目黒駅の本当の住所は、上目黒3丁目なんですよ。
わかりますか?

「ナカメ」は、「カミメ」なんです。
そして、グルメな皆さんがお好きな中目黒駅近くのカフェは、ほとんど目黒区青葉台にあります。
つまり、「アオバ」にあるんです。

「ナカメ」に降りたつもりが、実はそこは「カミメ」で、「ナカメ」ではなく、「アオバ」で、メシを食ったり、スィーツを食ったりしているわけです。

バカバクンカ?

「え? いま、なんと?」

いや、バカバカしくありませんか、を略したのですが、伝わりませんでしたか。

「はい、まったく」

つまり、私も、そうなんです。
中目黒を「ナカメ」などと言われたら、伝わらないんですよ。

私が、そう言うと、オオバさんが、初めてダークな部分をさらけ出して、言った。
「じゃあ、マッキントッシュをマックというのも伝わりませんか?」
言葉の響きに、冗談口調ではない意地の悪さが透けて見えた。

もともと「マック」というのは、アップル側が言い出したのだから、伝わりますよね。
それで伝わらなかったら、相当に頭が悪い。

逆に、もし、マッキントッシュを「マック」と略さずに使い続けている人がいたら、その人は、相当な武士(もののふ)です。
そんな人がいたら、きっと私は、その人と大親友になれるでしょう。


これ以上、オオバさんのダークな部分を見たくなかったので、私は、ごちそうさまでした、と言って、「中目黒」2丁目のオオバさんの事務所をあとにして、「上目黒」3丁目の道を歩き、東急東横線「中目黒駅」の自動改札を「パスネットモア」を使って、通り抜けた。



ちなみに、「パスネットモア」とは、「PASMO」のことでございます。





2014/09/17 AM 06:29:03 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

無能な歯車
今年の夏は、あっけなく終わったような気がする。

我が家では、私以外は暑さに弱いので、酷暑の年は皆のテンションが下がる。
今年のように、夏が短いとテンションの下げ幅が少ないので、疲れも溜まらないようだ。
みな、元気だ(私以外は)。

得意先の杉並の建設会社社長は、「俺は暑いのは大好きだぜ」と言っていたが、一昨年から2年続きで熱中症にかかったこともあって、去年の8月からは、暑さへの対応がかなり慎重になった。

現場では、作業員に、朝と3時の休憩前に体温を測らせ、朝より1度以上高くなっていたら、強制送還させるというシステムにした。
水分、氷、保冷剤を大量に現場に持ち込み、携帯ファンも1個ずつ持たせるという気の使いようだ。

その効果もあって、今年の夏は、現場で気分が悪くなった作業員は一人だけだったという。

顔がでかくて声がでかくてガサツで短足の割に、気配りのできる人のようだ。

その顔でか社長が、機嫌よさをイリコだし、いや丸ダシにして言った。
「分譲地の評判がいいな。7区画のうち6区画が成約できるかもしれん。あとは、自由設計の上物(うわもの)の細かい詰めだけだ。2回やった内覧会のとき、涼しかったのがよかったのかもな。暑いと外に出ようって気にならないナッシー! からな」

これを「上機嫌」と言わずして何と言おう。

心なしか、事務員の顔も穏やかに見える。
常習的な落雷率が減ったのかもしれない。
東京杉並地方の社員の方々にとっては、初めての平穏な夏と言えるでしょう。

お察し申し上げます。

という流れのあとで、新しい仕事をいただいた。

会社の看板である。
看板と言っても、ロゴをビルの壁に設置するだけのことだ。

貸しビルなので、今まで何度お願いしてもビルのオーナーが首を縦に振らなかったが、今年の春にオーナーの代が替わったこともあって、「看板いいよ」ということになったらしい。

計画としては、外壁の窓と窓の間のスペースに、70センチ四方のロゴを固定させる。
設置は、自分のところでやるから、看板だけ作ってくれるか、と威嚇された。

ロゴは3年前に、顔でか社長に頼まれて作ったものだ。
ただ、それをデザインしたのは、私ではない。
私は、ロゴなどという高尚なものをデザインする能力がないので、一流デザイナーのニシダ君に丸投げしたのだ。

その丸投げデザインを社長は気に入ってくれて、名刺や会社概要、チラシ、封筒などに使っていた。
丸投げしたものだから、私自身は、そのロゴに対して愛着はないのだが、表向きは喜んだふりをしていた。

この地球(ほし)には、仕事を外注した場合、自分は何もしなくても手数料をいただく、という風習がある。

だが、私はこの星の人間ではないので、丸投げした場合、手数料はいただかない。
私の口座に振り込まれた金額をそのまま外注先に振り込むだけである。

つまり、振込料金分だけ赤字になる。

今回の看板に関しても、丸投げ方式を採用するので、振り込み料金分だけ赤字になる。

我がヨメは、私の稼ぎが少ないと「鬼」になるのが常だが、それはどこのご家庭でも同じだろうから、別段珍しいことではない。

ただ、我がヨメのいいところは、私の仕事にまったく興味・関心がないことである。
とにかく稼いでくればいい。
どんな手段であろうが、目の前にゼニがあれば、干渉はしない。

だが、東京武蔵野に越してきた最初の年、よほどヒマだったのか、私が営業に出ているとき、私の仕事場の机に置きっぱなしだった帳簿を見たことがあった。

そこで、丸投げした仕事で、手数料を取っていないことがバレてしまったのだ。
そのとき、ヨメは怒らなかったが、ため息を吐きながらこう言ったのだ。

「我が家が貧乏なわけがわかったわ。年に何回も慈善事業をしていたら、買えるものも買えないわよねえ。もう一つパートを増やそうかしら。ハァーーーーーーーーーっ(長いため息)」

説明しても理解されないだろうと思ったので、「すまないねえ」としか言わなかった。

幸いにも、東京に帰ってきて、仕事量が埼玉時代より増えたので、ヨメのパートが増えることはなかったが、ときどき「慈善事業さえなければもっと……」と言われることは数度あった。

その話を今回したら、上機嫌だった顔でか社長の顔が突然険しくなった。

「なんだあ! あのロゴで、あんた、一銭も儲かっていないってのか! 今回も、儲けるつもりはないのか!」
ものすごい目で睨まれた。

下60上120の血圧が、下100上200まで上昇したような、血走った目だ。

相当に、怖い。

チビリそうになった。

この会社とのお付き合いは、ほぼ4年。
その間、私は、顔でか社長に怒られたことがない。
社員や請け負い業者の全部が、下僕扱いで罵倒されているのに、私だけは、被害に遭っていないのだ。

それは、この会社のミステリーの一つにまでなっていた。

そのミステリーが、とうとう終焉を迎えるのか。

私は、覚悟した。

謎解きはディナーのあとでなくてもいい。
ミニストップでオニギリ二つとホットコーヒーを飲んだあとでも、何の問題もない。

さあ、どんな雷が落ちるのだろうか、と身構えた。

血走った目で射られること33秒。
顔でか社長が、唸るように口を開いた。

「あんたの家族は、可哀想だな。こんな無能な夫、無能な父ちゃんを持って、可哀想としか言えねえ。
大学中退の俺が言うことじゃないが、あんた、経営学を勉強した方がいいぞ。
仕事ってのはな。儲けて儲けさせてで、お互いうまく回っていくんだよ。
儲けるのは恥じゃない。たとえ自分で仕事しなくたって、仕事を回しただけで、そいつは歯車の一つになるんだ。
その歯車の一つが金をとらない無能じゃ、他のやつは無能に使われている無能ってことになるんじゃねえか。
自分の無能を人に押しつけるなよ。
今回の仕事。もしあんたが、自分の取り分を受け取らないってのなら、この話はなしだ」

怒っているわけではない。
途中からはむしろ穏やかな表情で、私の目を覗き込むように、話しかけていた。

そして、穏やかな表情のまま、トドメを刺した。

「3割儲けてくれ。それが、この仕事をあんたに出す条件だ。俺は、無能な歯車が嫌いなんだよ。俺に……あんたのことを嫌いにさせないでくれ」

自分が無能なのは認めるとしても、顔でか社長に嫌われるのは嫌だ。

だから、私は、わかりました、3割儲けさせていただきます、と答えた。



3割儲けたとしても、私は無能なままだと思うが、それで家族が少しでも豊かになるのなら、無能じゃない振りをするのもいいかもしれない、と思った。




2014/09/11 AM 07:59:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

おバカなままで鉄が臭い
とっくにサッカー・ワールドカップは終わったが、収穫がいくつかあった。

選手の名前を憶えたことだ。
今までは、メッシ選手とロナウド選手しか知らなかった。

今回、ネイマール選手とスアレス選手の名を憶えたのだ。
ただ、メッシ選手などもそうだが、顔は知らない。
あまり興味がないから、憶える気がない。

とりあえず名前だけ知っていればいいのではないか、と思っている。

プロ野球も興味がないから、ほとんど選手、監督のことを知らない。
ただ、最近では、ベイスターズの筒香選手を憶えた。
名前の読み方は知らないし、顔も知らないが、とりあえず、名前だけは憶えた。

ドラゴンズの和田選手の名前も憶えた。
ファイターズの大谷選手の名前も知っている。
顔は、あれではないか、と推測しているが、当たっているという自信はない。

この程度の知識だから、プロ野球の話題には、加わらないようにしている。


最近、驚いたのが、横綱が3人もいるということだ。
いつ3人になったのだろう?
浦島太郎になった気分だ。

白鵬関は、名前も顔も知っている。

しかし、日馬富士、鶴竜関は、見たことも聞いたこともない。
読み方もわからない。

ヒバフジ、カクリュウ、と読むと想像しているが自信はない。

ヤホーのトップページに「遠藤」関の名がよく出てくるので、きっと番付上位の人なのだろう(大関、横綱の呼称は付いていない)。
普通に読めば、「エンドウ」だが、しこ名だから、「トオフジ」と読むのかもしれない。
あるいは、「トオミフジ」か。


得意先に、「面」さん、という人がいる。
「めん」さんでもなく「おもて」さんでもない。

名刺に「ほほつき」と、ふりがなが振ってあった。
ただ、ご本人は、「ホオツキ」と発音している。

ご本人が言うのだから、「ホオツキ」さん、なのだろう。

どこの出身かは知らない。
聞けば教えてくれるだろうが、そこまで興味がないので、聞かない。
知らなくても、何の問題もない。

そのようなことを友人たちに言うと、全員が、「え? 俺だったら、絶対に聞くぞ!」と声を揃えて非難した。

すごいな、おまえら!
好奇心、知識欲、旺盛だな!

私が驚いた振りをすると、バカどもは、得意げに「当たり前だろ! 好奇心をなくしてしまったら、もうおしまいだよ」と鼻を膨らませるのだ。

そうか。
で………、その旺盛な好奇心で、パソコンの腕は上達したのか?

それだけ好奇心があれば、上達も早いだろうな。
むかし教えたエクセルのマクロは、憶えているよな?
活用しているか?

全員の目が泳いでいた。

50代の男たちのパソコン技術の上達は、亀のあゆみだ。
好奇心がどれほどあろうが、苦手意識が強いと、好奇心と知識欲は、あまり役に立たないらしい。

私も、陸上短距離の選手は、有名どころは、名前、顔、国籍、最高タイムまで把握しているが、他のスポーツは、MLB以外は、ルールは知っていても、選手のことはまったく頭に入ってこない。
知らないままでも、何の問題もないと思っているからだと思う。


同年代の人に比べたら、パソコンのスキルと知識は、はるかに上をいくと思うが、若い上級者には、確実に負ける。
負けを認めざるを得ない。

むかし、埼玉で暮らしていた頃、大学生のイトウ君という人に、Macの操作を教えた。
イトウ君は、性格がおバカだから、私とはすぐに気が合って、和気あいあいとパソコンを挟んでじゃれることができた。

そのイトウ君は、大学を卒業したあと、名の知れた企業に就職し、結婚もした。
子どももできた。

そのおバカなイトウ君だが、会社で、社員にパソコン操作を教える部署の責任者をしていると言うのだ。
弱冠26歳。

責任者とは言っても、社内的な待遇は「ヒラ」。
教えている人のほとんどが、彼より年上で役職も上だという。

恵比寿のドトールコーヒーで、イトウ君に、気を使うだろ? と聞くと、おバカに似合わない答えが返ってきた。

「あそこでは、ボクがテッペン。テッペンというのは、頂上ということですよね。ピラミッドの頂点にいるボクが卑屈になっていたら、生徒たちが戸惑うでしょう。だから、ボクは、教えることに集中しています。相手の役職が上でもビシビシやってますよ」

イトウ君。
成長したのか、それとも熱でもあるのか?


「そうなんですよ。この間、熱中症一歩手前までいって、熱を出してしまいました。子どもの公園デビューに付き合ったら、ボクの方が一生懸命になってしまって、水分補給を忘れていたんですね。危なかったです」

それから、イトウ君は、急に、困り眉の男になって、私を凝視した。

「あのー………Mさん。えーーと………、あのー、Mさん、身長、伸びました?」

どういうこと?
俺は、2百年前から変わらずに、180センチだけど。

「えっ、そうでしたっけ? ボクの記憶にあるMさんは、170センチそこそこのイメージなんですけど……顔が小さいからかな…」

3年ぶりの再会。
その間に、彼の記憶の中の私は、背が縮んでしまったようだ。

「今年50いくつでしたっけ?」

全然違うな。
272歳だが。

「ああ、そうでしたよね。272歳。ハハハハハ、そうだった………面白いですね、ハハハハハ」

気持ちのこもらない笑いを引きづりながら、ミニ・ノートパソコンを取り出したイトウ君は、恐ろしく速いスピードでキーボードを叩きだした。

すごいスピードだ。
私のタッチの3倍以上のスピードだ。
しばらく見ない間に、エキスパートになったものだ。

イトウ君。
何をしているのかな?

「ボク、忘れっぽいんで、パソコンで日記をつけるようにしてるんですよ。今日のことを忘れないように、Mさんの言葉をいま打ち込んでいるところです」

日時と私の名前、会った場所、話の内容、食ったものまで打ち込むのだという。

そして、「自称272歳」、「Mさん、ややお疲れ」とまで、記録していた。

俺って、そんなに疲れて見えるか?

「そんなに……ではないですよ。だから『やや』なんです。
便利な日本語を使ってみました。
でも、次に、これが役に立つんですよね。
今度会ったとき、Mさんが、少しでも元気そうだったら、嬉しいじゃないですか。
そんな小さなことの積み重ねが、人生ってもんじゃないですかね」


まるで、哲学者だな。


私が、そう呟いたら、イトウ君が「え? 鉄が臭い? ああ……先週、出張で造船所に行ったからですかね。リンちゃん(イトウ君の奥さん)にも『なんか鉄臭い』って言われましたから」と真面目な顔で言った。


よかった。

イトウ君が、おバカなままで。



2014/08/24 AM 06:22:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

強がりを太らせる
仕事が一段落したので、休もうと思った。

ただ、我が家には、私が家で寝ていると機嫌が悪くなる心配性の人間がいるので、体を休めるなら他の場所を考えなければならない。
花小金井のスーパー銭湯という選択肢もあったが、今は小金井公園を走る気力がないので、それは考えから外した。

今までなら、眠る場は、杉並在住のWEBデザイナー、タカダ君(通称ダルマ)の仕事場の隅のソファだったのだが、ダルマに2人目の子どもが産まれてから、行きづらくなった。

頼めば快く受けてくれるかもしれないが、子育てが大変なときに、自分の欲求を押しつける勇気と図々しさは、私にはない。

では、どうしようか。

以前テレビで観たのだが、都心のホテルでは、デイユースと言って、昼間だけ部屋を貸してくれるサービスがあるらしい。
それなりにご立派なホテルが、最大7時間、5〜6千円で利用できるというのだ。

ホテルなら、誰気兼ねなく、惰眠を貪ることができる。
さらに、ホテルの機能は、ほとんど使っていいという。
これは、いいぞ、と私は、右ひざをパチンと叩いた。

私が住んでいる東京武蔵野にもあるらしいので、問い合わせてみようかと思った。

しかし、そのとき、iPhoneが震えた。
極道コピーライターのススキダからだった。

無視しようかと思ったが、たまにはボランティアも悪くないと思い、慈悲の心で通話ボタンを押した。

「教えて欲しいんだが」という威圧的な声が、受話器を通って侵入してきた。

おめえに教える情報はねえ、と言いたかったが、今日の私は慈悲深いので、なんだ、と答えた。

「客から貰ったPDFが読み込めないんだが」

本当に、貰ったのか? 盗んだんじゃないだろうな。
ベネッセか? リクルートか?  パソナか?

「無駄話はいいから、早く教えろ!」

それが、人にものを教えてもらう態度かとムカついたが、今日の私は慈悲深いので、教えて賜うた。

開こうとすると、「ファイルが壊れている」と出るらしいので、Acrbat Readerの環境設定で、「PDFをブラウザに表示」のチェックを外すように教えて賜うた。

そうしたら、開けるようになった。

「そういうことか」

そういうことでございます。
おわかりでございますか。

「どうした、おまえ、熱でもあるのか」

ああ、36.4度ある。
俺の平熱が、33度だから、かなりの高熱だな。

と極道を相手に、コントをしようとしたとき、ひらめいた。

おまえの事務所に、腹立たしいほど立派なソファがあったよな。

「ああ、香港から直輸入したイタリア製だ」
(何のこっちゃ)

あれを俺に貸せ。

「冗談だろ」

冗談ではない。
今日の俺は、猛烈に疲れていてモーレツに眠い。
そこで、寝かせろ。

「いいだろう」

おや?
アッサリと引き受けたな。
私の慈悲深い心が、極道の悪の心を揺り動かしたのだろうか。

「俺とレイコ(ススキダの奥さん)は、今日、インターコンチネンタル・ホテルのランチを予約してあるんだ。帰ってくるまで、留守番させてやる」

ということで、鍵の隠し場所を教えて頂いたので、潜入することにした。

中央線武蔵境から新宿、山手線で渋谷、東急東横線で大倉山。
駅から徒歩7分。
トータル1時間20分。
1DKの事務所向きの物件だ。

午前11時18分に着いた。

疲れた身には、長旅だったが、高級なソファに横になれることを考えたら、長旅も悪くない。
肌触り抜群のタオルケットも置いていってくれたので、すぐに横になった。

熟熟熟熟熟熟熟……爆爆爆爆爆爆爆……睡……zzzzz。

目が覚めたとき、体に揺れを感じた。
目を薄く開けると、外の景色が動いていた。

そして、車の後部座席に縛り付けられている自分に気づいた。

誘拐か!

俺を誘拐したって、金目のものは、行水用の金だらいくらいしかないぞ。
バカな誘拐犯だ。
人を選びなさい。

ジタバタしているとき、「目が覚めましたか」という天使の声が左耳に届いた。

目を通常の大きさに開けたら、ススキダの奥さんが隣で微笑んでいた。
ということは、運転しているのは、当然ススキダだ。

そこで、私の頭に、一つの疑問が浮かんだ。

俺は、どうやってこの車に運ばれてきたのだろう。
まったく記憶にない。

恐る恐る聞いてみた。
俺は、自分で歩いて、この車に乗ったのでしょうか。

すると、ススキダの奥さんが、恐ろしいことを言ったのだ。
「ススキダが、お姫様抱っこをして運びました」

唖然呆然孤影悄然巴御前〜〜YO。

ススキダに、お姫様抱っこをされるなど、屈辱以外の何者でもない。
だから、私は現実逃避をするため、まだ食っていなかった持参の弁当を食うことにした。

車の時計を見ると、4時43分を明示していた。
ずいぶん遅い昼メシだが、ススキダの事務所のソファが、あまりにも気持ちよかったため、食い気より眠気が勝ってしまったのだ。

通常の3個分以上の大きさの握り飯。
中の具は、豚肉の生姜焼きだ。
おかずは、ポテトサラダとナスの漬け物。

おい、ビールはないのか、と運転手に聞いた。

すると、運転手が偉そうに「やめとけ。お茶にしとけ」と命令したのである。
ススキダの奥さんも「やめておいた方がいいですよ。寝ているとき、少し呼吸が苦しそうでした。仕事は仕方がないにしても、あまり遠出はしないで、仕事の合間は、休まれた方がいいと思います」と言った。

元ナースの言うことは、素直に聞かなければいけない。

麦茶を恵んでもらいながら、弁当を食い終わった。

そうこうしているうちに、オンボロアパートに着いた。

礼を言って降りようとしたとき、ススキダが「おまえは、強がりだけで生きてきたやつだから、わからんでもないが、自分の体のためにならない強がりだけはやめておけ。手伝えることがあったら、俺とレイコが手を貸す。だから、休めるときは、休め」と、怖い顔をさらに怖くさせながら睨んだ。

不覚にも、こみ上げてくるものがあった。
しかし、私は強がった。


しかしな、俺から強がりを取ったら、ただのガイコツだ。
俺は、ただのガイコツにはなりたくないんだよ。
プライドを身にまとったガイコツの標本でいたいんだ。

ススキダの奥さんが、手を叩いて、笑ってくれた。
「今のジョークを聞いて、安心しました。では、強がりをもっと太らせて、元気になってください」


はい、わかりました。


これからのガイコツの目標。

強がりを太らせること。




2014/08/14 AM 06:33:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

もしかしてだけど
居酒屋では、最近のニュースの話題が必ず出る。

理化学研究所の優秀な科学者が亡くなったり、高校一年生が残虐な事件を起こしたなどというのは、居酒屋のテーブルの至る所で食される「ツマミ」だ。

木曜日、恒例の同業者との飲み会の席でも、眉間に皺を寄せた赭ら顔のオッサンたちが、自分のご意見を述べていた。

ああでもない、こうでもない。

もちろん、酒を飲みながら議論したとしても、その結論が出るわけではない。
おそらく、彼らも結論を求めているわけではないのだろう。

ただ、興味があるから、話をする。
それは、酒の場として、当たり前の光景である。

そして、それを逆に考えると、興味がなければ、話さなくてもいいことになる。

だから、私は、話さなかった。

しかし、お馬さん(人類史上最も馬に激似の男)は、それがおかしい、と私を責めるのだ。
「あんな大事件に興味のない日本人なんていませんよ。Mさん、絶対、どこかおっかしいですよ。人間として、何か大事なものが欠けています」

馬に、日本人論、人間論を説教されるとは思わなかったが、彼の言いたいことはわかる。
自分でも、色々なものが欠けていると思うからだ。

足りないものの一番は、才能とお金。
欠けているものの一番は、現実感と想像力だろうか。

科学者が亡くなっても、高校一年が猟奇事件を起こしても、私には現実感がない。
その事件によって、何を想像すればいいのか、わからない。

科学者が亡くなったことによって、科学や医療分野での進歩が止まるかもしれないが、私には、その姿を想像する能力がない。
そもそも、科学や医療分野のことをほとんど知らないのだ。
何もない知識の中で、想像するのは無理だ。

猟奇事件に関しても、殺した人殺された人のことをよく知らない。
他の人たちは、知らなくても想像できるかもしれないが、私には想像ができない。
むかし、色々な猟奇事件があったが、そのときも私は、その事件が持つ意味を理解できなかった。

私のまわりには、その種の人が、いなかったからだ。
いたら、現実問題として怖いが、いなかったために、そのシチュエーションがわからない。
小説に書いてあることなら理解できるが、詳細のわからない現実の事件を想像する能力が私にはない。
(ニュース解説を見ればわかるかもしれないが、見る習慣がないので)

科学者が亡くなったことや猟奇事件のことが、ノンフィクションとして世に出たら、私は読むかもしれない。
そうすれば、ある程度は、理解できる。

それまでは、無理だ。

それよりも私が気になっているのは、四国や列島各地の大雨被害である。
大雨の被害なら、私も昔、旅行先の長野県で経験したことがあるから、それは想像できる。

特に今回は、娘がボランティアに行く場所に近いので、余計気になっている。
インターネットにニュース映像がアップされたら、必ず見るようにしている。

映像を見ていると、いつもは大げさに思える「記録的な大雨」を、現実感を持って理解することができる。
台風接近によって、これからも被害が続く場合もあるという。

あの「自然の暴力」が、まだ続いたとしたら、もっと大きな被害を受けることは、想像できる。
だから、私は四国や列島各地の大雨被害の方が怖い。

私が、そう言ったら、お馬さんが、「なんだ、結局、Mさんは、自分の身の回りのことしか想像できない、勝手な男じゃないですか」と、鼻息荒く言った。

まあ、そうですけど……と言おうとしたら、馴染みになった居酒屋の片エクボの店員が、お餅ピザ、汁なし担々麺をテーブルに置きながら「何を言っているんですか、顔の長いお客さん! 日本のことを心配しているのに、自分勝手って、何ですか!」と私をかばってくれた。

ナイス・フォロー。
ありがとう。

ウィンクされた。
最近、このウィンクの回数が増えた。


もしかしてだけど〜 もしかしてだけど〜


その片エクボさんが、私に「ねえ、今日は何でいつものジョッキじゃなくて、缶のノン・アルコールを飲んでいるの?」と顔を近づけた。

近すぎですよ。

「もしかしてだけど、どっか具合悪いんですか?」

いや、ここに来る前に、ワインを3本飲んできたから、ここでは、抑えた方がいいかと思って……。
それに、昨日も、フルマラソンを5回走ったくらいだから、間違いなく元気ダス、と言いながら、椎茸ステーキを一気食いした。


「いいね、その強がり、嫌いじゃないですよ」と、またウィンクされた。
そして、「お大事にね」と私の肩を叩いたあとで、「もしかしてだけど〜」と歌いながら、軽くステップを踏んでフェイドアウトした。



もしかしてだけど〜 もしかしてだけど〜



2014/08/09 AM 06:22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

かみ合わない
取引先の50代の男性が、「今年の夏は、一番暑いんじゃないの?」と言っていた。

体型を見ると、推定163センチ、80キロ。
「俺は、スポーツなんか、やらないよ」というポリシーを体で主張していらっしゃる方だ。

しかし、まだ夏は始まったばかり。
今までで一番、と決めつけるのは早いのではないだろうか。

ただ、この人は、毎年、夏になると、「今年の夏が一番」と言うから、これは年中行事と考えればいいのかもしれない。


先週半ば、小金井公園をランニングしたあとで、恒例のスーパー銭湯を利用した。

大汗をかいたあとに、サウナは不健康だと思ったので、今日はサウナはパス。
「不感の湯」という、体温以下の温度の温泉に、心をとろけさせて浸かっていた。

そのとき、「おお、久しぶりだな」という声が聞こえた。
まさか、私に対して言っているとは思わなかったので、心をとろけさせたままだった。

しかし、50歳前後と思える、出川哲朗師匠似の男が、私の隣に腰を下ろして、「大変だったな。この年で離婚はきついだろう。まあ、またいい人に巡り会えるよ」と私の顔を覗き込んだのだ。

そして、「今年は、いいトウモロコシがたくさんできたから、帰りに俺んちに寄って、持っていかないか。元気つけろよ」と言うのである。

完全なる、ひと違い。

だから、聞いた。
どなたのことを言っているんですか。

「どなたって、あんた、タニグチだろ?」

いや………違いますよ。

「本当かい? 声も全体の感じもタニグチなんだけどな。ただ、脱衣場に眼鏡を置いてきたから、よくは見えないんだけどな」
両手で両目をこすりながら、男が言った。

「そうかあ、タニグチじゃなかったのか……そっくりなんだけどな」

話が長くなると思ったので、ちょっと露天風呂の方に、と言って、私は逃走した。

ひと通り、風呂を楽しんでから、ロビーの近くにある畳敷きの休憩所で横になって、テレビを見ていた。
そのとき、先ほどの男性が入ってきた。
今度は、眼鏡をかけていた。

知らんぷりは、いけないだろうと、「先ほどはどうも」と上体を起こして挨拶した。

すると、男は、「あんた、誰? なに? ひと違いだろ」と眉をしかめたのである。

要するに、この男は、私とコントをしたかっただけのようだ。


話が噛み合ないといえば、14歳年下の友人、テクニカルイラストの達人・アホのイナバだ。

イナバは、常識知らずで、敬語を使えない。
そして、人の話の半分も聞いていないから、いつも会話が不完全燃焼で終わる。

会話が、燃え尽きたことがない。

先週金曜日、東京調布市のバーミヤンで、イナバとデートをした。

私は、ここでは、いつも「ダブル餃子」と「ライス」、「生ジョッキ」を頼んでいる。
それが、私のルーティンだからだ。

だから、この日も、それを頼もうとした。
しかし、イナバも、それを頼むというのだ。

チョット待ってくれ、イナバ君。
俺は、人と同じものを食うと、激しく下痢をすることを、君は知っているだろう。

俺のポンポンをピーピーにして、君は楽しいのか。

「ああ、そうでしたね」と、冷静に答えるイナバ。
そのあとすぐに、ピンポーンと店員を呼んだ。

「『ダブル餃子』2つと『ライス』2つ、あと、生ビールと『春巻き』をお願いします」

チョット待ったぁ!
それでは、全く同じものではないか。
俺のポンポンが…………。

そう抗議したら、「違いますよ。だって、生ビールと『春巻き』をつけたじゃないですか。それはMさんが食べればいいんだから、『春巻き』分だけ、違うことになりますよね」とイナバが言った。

確かに……理屈は合っていると思うが……。

なんか………。
俺、初めて、イナバに言い負かされた気がする。

打ちひしがれながら、餃子と春巻きを食った。

私は、メシの間は、仕事の話はしない主義なので、イナバに、面白い話をしろよ、と催促した。

イナバは、アホの家族4人で、「アホ(アナ?)と雪の女王」を観に行った話をした。
本人は、一所懸命話しているつもりだろうが、話が下手くそすぎて、餃子がまずく感じられた。

さらに、アナのことを「アンナ」と間違えたり、雪を「月」、女王を「女神」と言い間違えることがあったから、こいつは、いったい何を観たのかと思った。

「アンナと月の女神」?

どんな話じゃ!

不完全燃焼のまま、餃子、春巻きを食い終わり、仕事の話になった。

イナバが、私のために持ってきてくれる、東京多摩西部ご在住の郷土史蒐集家、歴史愛好家、旅行愛好家たちの同人誌の仕事だ。
これは、もうすでに6回やっているが、いつもまともに原稿が揃ったことがない。

そこで、足りない分を、私がご本人たちのご了解を得て、その内容に沿った文を創作するのである。
(ねつ造ではありませんぞ。都合のいい言葉で、ゴーストライターと言います)

「Mさん、今回は9個揃いました。画期的ですよ。だから、ねつ造は、1つで大丈夫です。ただ、9個のうちの2つは、5ページ分しかありませんから、2ページずつのねつ造をお願いします」

イナバ君。
ねつ造ではなくて、「ご本人了解の創作」ですから。

原稿を数えてみたら、7個しかなかった。
イナバ君、7個しかありませんねえ。
あとの2つは、どこに?
まさか、家に忘れた?

「いや、だから……そのうちの2個の文章を2つに分けてぇ………、そうすると文章が足りなくなるので、その分を穴埋めしてもらおうかと」

え?

2個の文章があって、それを2つに分けて、4つ?
それぞれの文章は、分断してもいいものなのか?

「いいです」

しかし、たとえば、Aという文章は同じ内容だから、それを二つに分けるのは、不自然なのでは?

「そこを何とかするのが、Mさんの仕事です。相手には了解をとってありますから、好きにやってください」

一つの文章を2つに分けて、違う内容の2つにする?

それを、日本古来からある言葉で、無茶苦茶、というのではないだろうか。


「えー! 無茶苦茶ではないですよ。だって、本人が了解しているんだから!」

意味不明。


つまり………アホには、アホの知り合いを吸い寄せるパワーがあるということか。

アホの同人誌集団。

アホは、怖いな。


こんな仕事に7回も付き合わされるなんて……一所懸命生きてきたのに、ウァー!(号泣) 真面目に…仕事してるのに、ウァー!(号泣、しかも机を叩く)



私も、アホ………………か?


2014/08/04 AM 06:26:01 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ガラパゴスの死に方
恥ずかしながら、「ガラケー」の名称由来がやっとわかった。

ガラパゴス・携帯のことだったのですね。

つまり、進化の止まった携帯のことを指していると知った。
こんなことがわからなかったとは、私の頭も、進化が止まったようだ。


今年読んだIT関係の記事の中で、「日本のスマートフォンもガラパゴス化している」というのがあった。
そのタイトルを見て、日本のスマートフォン技術の進歩は、もう止まってしまったのか、と思った。

しかし、読み進んだら、世界のスマートフォンの分布図では、iPhoneの使用比率が少ない(お膝元のアメリカでも少ないらしい)のに、日本だけが、突出してiPhoneの使用率が高いという記事だった。

そこで、日本のスマートフォンユーザーは、世界から孤立して、「ガラパゴス化している」という論理だった。

だが、本人は、得意げに書いたつもりだろうが、iPhone自体が、今でも進歩し続けていて、OSも順次アップデートしている機種のユーザーを「ガラパゴス」というのは、論理的に無理がある。

孤立していたとしても、取り残されてもおらず、進歩が止まっているわけではないからだ。

要するに、比率だけを取り上げて、「世界はAndroidの時代だよ」を、流行りの(?)「ガラパゴス」という言葉に、かけたかっただけだろう。
単純に、統計の使い間違いですね。
論理が破綻しています。

たとえば、占有率を考えたら、WINDOWS OS と比べたら、Mac OSなどは遥かに占有率が低い。
つまり、筆者の論理から推察すると、Mac OS を使っている人も「ガラパゴス化」していることになる。

すごいな、俺。

世界で使用比率の少ないスマートフォンを使い、使用比率の少ないパソコンを使っているなんて、稀少生物ではないか。
なんか、嬉しい。


話は違うが、我がオンボロアパートこそ、ガラパゴスの象徴かもしれないとも思った。

我が家では、ガラパゴス化(部品生産終了)した洗濯機やオーブンレンジが元気に動いている。
絶えず異音を発しながら、空気をかき回してくれる扇風機などは、ガラパゴスそのものかもしれない。

そして、アパートの壁の所々にヒビ。
防音性が低いから、我が家のにぎやかな会話は、一時期、外に筒抜けだったらしい。
だから、いま、家族で話すときは、6浪生を抱えた受験前のご家庭みたいに、小声の会話が当たり前になった。

4軒となりの家のピアノが下手くそだ、などと言ったら、すぐに届いて、村八分にされるに違いない。

シャワーの音も外に漏れるので、我が家のシャワーヘッドは、一番出の悪いものに交換した。
錆びかけた鉄の階段を上るとき、普通に上ると、音が「ドンドン」とうるさいので、みな、ソーっと上る習性がついた。

大きなくしゃみが出そうになったら、押し入れが一番防音性に優れていることに気づいたので、押し入れまで我慢して、くしゃみをすることも覚えた。

家族みんなが、世間様に気を使うことを覚えたから、これは、決して悪いことではない。

ガラパゴスの効能と言っていいだろう。


ここに、キヤノンのインクジェット・プリンターがある。
A3まで出力できる、昔のものとしては、優れたものだ。

10年以上前、オークションで5千円で手に入れた。
製造年は、おそらく2000年頃。

数年前から、部品の生産が止まり、インクの生産も止まり、ドライバーのアップデートもなくなった。
それでも、インクが生産中止になる前に、オークションで5セットを手に入れて、今まで使っていた。

ただ、新しいOSには対応していないので、古いMac G4に古いOSを入れてプリントしていた。
我が家のカラーレーザーはA4対応なので、A3を出力するなら、このプリンターを使ってJPEGで出力するしかない。
今どきのプリンターに比べたら、色は荒いが、色の雰囲気とレイアウトがわかればいいから、不足はしていなかった。

ただ、インクジェットの欠点は、プリント音がうるさいところだ。
特に、このプリンターは、元サッカー日本代表監督を呼び捨てにする、という暴挙に、毎回出るのである。

ジーコジーコジーコジーコジーコジーコジーコジーコ・・・

サッカー界のカリスマに対する尊敬が、全くない。

さらに、このプリンターは、年を経るごとに、その音がでかくなってきたから、近所迷惑なやつでもある。
夜間には、絶対に使えない。

その呼び捨てを夜間に聞いたら、元サッカー日本代表監督のファンが、殴り込んでくるはずだからだ。

2週間前、いつものように、そのプリンターに働いてもらった。
彼は、A3を4枚、綺麗な色で吐き出してくれた。

ジーコジーコジーコジーコジーコジーコジーコジーコ・・・

だが、一昨日、使おうと思ったら、電源がつかなかった。
ACコードを何度抜き差ししても、彼は起きてくれなかった。

2週間前、私は、彼に、こう呟いた。

もう、このインクが最後のセットなんだよね。

私のそのつぶやきを彼は、重く受け止めたのかもしれない。
それで、寿命を悟ったのかもしれない。

だから、動くのを諦めたのだ。

そんな彼の生き様を見て、私は思った。

寸前まで、あんなに懸命に働いてくれたのに、逝くときは、あっという間の潔さ。


すごいなあ、と思った。


そんな「ガラパゴスの死に方」ができる人が、この世の中に、何人いるだろうか。

私もそんなガラパゴスになりたいと思った。



ご苦労さまでございました(頭を垂れつつ合掌)。



2014/07/30 AM 06:25:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

合コンで舌打ち
大学1年の娘は、合コンには行かない。

誘われたこともないらしい。

え? 大学生は、合コンをするものだと思っていたが、と言ったら、「それは、偏見。新入生歓迎コンパはあるが、ボクは行かない。それに、合コンなんかに行っているやつは、クラスに1人か2人だよ。1年生は、特に忙しいからな。もし行っているやつがいたとしたら、そいつは、大学生活を投げたやつだ」と蔑まれた。


私は、精神年齢が幼稚なので、同じ世代より、若い世代の人の方が、話が合う。

だから、聞いてみた。
得意先の若い人のほとんどが、「合コンは、行きませんねえ。一度もないです」という答えが圧倒的だった。

そうですか。
若い人は、みな合コンに行きたがるものと思っていたオジさんは、ちょっと意外でした。

そのとき、こんな意見を述べた得意先の人がいた。
「きっと地方の人は、東京の人はみな合コンをする、という印象を強く持っていて、大学に入ったら、あるいは、社会人になったら、即合コン。それを当たり前のように受け入れて、きっと合コンに参加する人は、そんな地方出身の人ばかりなのかもしれないですね」

かなり偏見が混じっているようだが、1割くらいは当たっているかもしれない。
娘に聞いてみても、「家族と暮らしている人の合コン参加率は、おそらくゼロに近いよ」と言うのである。

「それに、ボクは、20歳までは、酒は飲まないと決めているからな。タバコは、一生吸わないぞ。合コンなんかに行っていたら、人生設計が狂う」

娘は、高校のときまでは、自分のことを「オレ」と呼んでいたが、大学に入ってからは「ボク」に変わった。
その理由は、わからない。
きっと理由があるのだろうが、面倒くさいので、聞いたことはない。

私は、6歳の頃から「赤玉ポートワイン」を飲んでいた不良だが、娘は、禁欲的である。
性格や体質は、私によく似ているのに、私の不真面目なところは受け継がずに、娘は生真面目を貫いている。

私は、いつ地獄に堕ちてもいい生活をしているのに、娘は、この夏休み、お友だちと四国にボランティアに出かけるのだという。
お年寄りしか労働力のない農家に住み込みで行って、2週間、農作業を手伝うというのだ。

それを聞いて、こいつは天使か、と思った(親バカ?)。

そんな発想は、私の灰色の脳細胞の中には、1ミリもないぞ。
人の役に立ちたい、という思いはあっても、ビール会社の売り上げを上げるお手伝いをする発想しか、私には浮かばない。

今回、うまくいったら、来年以降も続けるつもりだというから、その純粋さに、私は打ちひしがれた。

こ………この子は、本当に俺の子なのか。

いて座矮小楕円銀河からやってきたエイリアンではないか、と思った。

ただ、くすぐったいことに、娘は、こんなことも言ったのである。

「おまえは、酒を飲んでも絶対に乱れないよな。人に迷惑をかけないよな。あれは、すごいぞ。酒に呑まれないのは、感心するぞ。18、19のガキが、酒に呑まれるのは、みっともない。酒にも修行が必要だ。おまえの姿を見ていると、酒の行者を見ているようだ。だから、ボクは20歳過ぎて、どれだけ自分が修行できるかを見極めて、酒を飲もうと思う。そうしないと、安心できないからな」


親バカ話は、これくらいにして。
同業者との飲み会の話に移る。

いつもの吉祥寺の居酒屋で、お馬さん(人類史上最も馬に激似の男)が言った。
「あの席の6人、合コンなんじゃないですかね」

見ると、20代半ばと思える男3人が、前に座る3人の女性のご機嫌を伺っているのが見えた。

しかし、こんなしょぼい、ダサい居酒屋で合コンをするだろうか、と言ったら、「何がしょぼくてダサいだ!」と、馴染みになった片エクボの女店員さんに、デコピンをされそうになった。

(しょぼくてダサい上に、危険で、暴力的な居酒屋だな)

怖くて、ウ○コを漏らしそうになったぞ!

ウ○コを漏らす寸前に、片エクボさんに聞いた。
「シモコーべさんも、合コンをするの?」
(彼女の名前は、笑えるかもしれないが『下河辺』というのだ)

片エクボさんは、胸を反らして、「アタシは、合コンには行きませんよ。誘われたこともないし、自分から行くつもりもございませんから」というのである。

片エクボさんの年齢はわからない。
聞く気もない。
ただ、若い、ということだけはわかる。

お馬さんが、鼻息荒く、「彼氏はいるの?」と聞いた。

それに対して、片エクボさんは、「彼はいるかもしれないし、いないかもしれない。アタシが『彼』だと思っていても、相手は思ってないかもしれないから、わからないですよね。アタシは、そこまで恋愛の達人じゃないし」と、なぜか私の目を見て、答えた。

その答えはいいな、という意思表示に、左手の親指を立てて、頷いた。

片エクボさんも、それに答えるように、左手の親指を立て、ウィンクをしながら去っていった。

「何ですか? その親指は?」と、同業者の中で最長老のオオサワさんに聞かれた。

これは、人間の持っている指の中の一つで、たいていは一番太い形をしています。
私は、拇印を押すときに、この指を使うのですが、隣の人差し指さんを使う人も多いようですね。
キーボードを叩くときは、「B」と「N」の位置が、ポジションでしょうか。
まあ、私は、無茶苦茶なブラインドタッチなので、関係ありませんが……。

ハハハハハハ…………。

「何がおかしいの?」と、にこやかな笑顔を作って、片エクボさんが、揚げ餃子と焼き鳥を持ってきた。

ハハハハハハ、と高らかに笑ったら、またデコピンをされそうになった。

店長を呼んでください。
暴力に訴える店員がいます。
これは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる恐れがあります。

すると、片エクボさんが、驚くべきことを言った。
「この店の店長は、今は不在です。私がいま『店長代理』です。何かあった場合は、私が全責任を負います。なんでも、お申し付けください」

そうですか。
では、お聞きします。
この居酒屋のメニューに載っていない「デコピン」を強要する店員さんが、いらっしゃるのですが、これは「あり」ですか?

片エクボさんが即座に答えた。
「あり、です。デコピンをされたがっているお客様には、そのサービスを行っています」

つまり、私が、デコピンをされたがっているという判断でよろしいでしょうか。

「はい、やんどころなく」

やんどころなく、とは、難しいロシア語を使ってきたな。
あなたは、ロシア人ですか、と聞いた。

冗談のつもりだったが、片エクボさんが、「母親がロシアです」と答えた。
確かに堀北真希、いや、彫りの深い顔と色白の肌には、ロシア系の「かほり」がないこともない。

ブラーヴダ?(本当ですか)

「プラーヴダ」と、毅然として片エクボさんが答えた。


「え? え? え?」
お馬さんが、パニックに陥ったように、片エクボさんと私の顔を交互に見て、鼻を鳴らした。


お馬さんが「ひひ〜ん」と鳴く前に、片エクボさんと私が「ヒッヒ〜ン!」と、ロシア語で、いなないた。


合コンをしていたらしい男女6人が、私たちの方を見て、「チッ」と舌打ちをした。



お邪魔をしてしまったようである。



2014/07/20 AM 06:26:59 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

牛丼、カレー、ホットドック
私は、協調性の欠落した男だ。

友人たちは、そのことを理解してくれているから、私がひねくれたことをしても、「またか」で済ましてくれることが多い。

しかし、お得意様相手に、ひねくれていたら、商売にならない。
だから、不本意ではあるが、努力をして、なるべく相手に合わせようとしている。
それが、大人社会の常識だと思っているからだ。

そして、3日前の出来事も、私が悪いのは、強く自覚している。

ただ、相手の価値観を認めない人に対しては、私は断固戦うという言い訳だけは、させて頂きたい。

唐突な話だが、私は牛丼を食わない。
吉野家さんに一度入ったことがあるだけだ。

松屋さんやすき家さんには、カレーを食うために、数回入った。

理由は、牛丼は、自分で作った方が、確実に原価が安いからだ。
牛丼は、安い食い物としては定番だが、家族4人で牛丼を食ったら、1200円は、かかるだろう。
自分で作れば、半分以下で済む。
そして、自分好みの味で食える。

それは、すべての外食に言えることなので、私は、なるべく外食を控えている。
貧乏でケチだからだ。

そのことは、色々な人に話している。

今回、仕事をいただいた牛丼好きの神田のイベント会社の担当者にも、「俺、牛丼食わないんですよ」という理由を一度だけ説明したことがある。

だから、相手は、納得してくれたものだと思っていた。

だが、打ち合わせが終わったとき、お昼近かったせいか、「Mさん、お昼まだですよね。近くの松屋で牛丼食べましょうよ。奢りじゃないですけどね」と誘われた。

そこで、私は、松屋さんのメニューは牛丼だけではないことを知っていたので、「俺は、カレーにしますよ」と答えた。

すると、私にとっては、かなり意外なことだったのだが、担当者は「え? 俺と牛丼食べるの嫌なの?」と、露骨に嫌な顔をしたのだ。

チョット待ってくれ。
私は、松屋さんに行くことは同意した。
しかし、そこで私が何を食おうが、自由ではないか。

なぜ、「つれ牛丼」をしなければいけない?

松屋さんには、そんなルールがあるのか?
同席した人は、同じメニューを食わなければいけないとか?

私は、大人げなくも抵抗した。
俺、牛丼は食わないって、前に言いましたよね。

そうすると、担当者は不機嫌なまま、「知ってますけど、ここは、相手に合わせるのが礼儀でしょ!」と口を尖らせるのだ。

確かに、一般社会の中では、お得意様の言うことを聞くのが礼儀だというのは、ヒネクレ度359度の私にもわかる。
お客様の要望を素直に聞いていれば、すべてが丸く収まることが多い。

でもですね………、厄介なことに、私は外で牛丼は食わないって決めているんですよ。

食わないと決めているのに、食うのは嫌なんですよ。
そして、人から背中を押されて食うのは、私が最も嫌いとするところなんですよ。

「たかが牛丼ごときで」と、世の中の99.61パーセントの方々は、思うでしょう。

だけど、食わないと決めているものを食うのは嫌なんだもん!
(こどもか)


「本当に、牛丼は嫌なんですね」と、20代半ばの、ほぼ息子と同世代の担当者に、眉をひそめて言われた。
そして、「じゃあ、席は別々にしましょう」とも言われた。

それでは、一緒に松屋さんに行く意味はないと思うのだが、抵抗するのが面倒くさいので、行きましょう、と答えた。

お互い、カウンターの端っこに席を取って、若い担当者は、牛めしの大盛りを食い、私はトマトカレーの並を食った。

美味しくいただきました。
適度な酸味とアッサリしたスパイスの融合。
かなりクォリティが高かったですぞ。

長年の修行を積んでおられる「カレー通」の方々には、「ケッ!」という味かもしれないが、370円で、この味が出せる企業努力は、たいしたものだ。

松屋さん、すごいですよ。

尊敬します。


そして、席は離れていても、同時に食い終わった、若い担当者とホネホネ白髪おやじ。

出口のところで、「美味かったすか?」と聞かれたので、美味かったす、と答えた。

「じゃあ、機会があったら、今度は、俺も一緒にカレーを食いたいすね」
店の外で、そう言われた。

いや、俺は、今度はビビン丼がいいスね、と言ったら、担当者は、眉をひそめて、無言で去っていった。


もちろん、私が悪いのは、わかっていますから。



そして、昨日、大学時代の友人と新橋駅近くのドトールコーヒーに入ったときのことだった。

私は、マクドナルドやスターバックスコーヒーより、ドトールコーヒーを愛している。
コーヒーが美味いから、というのではなく、マクドナルドほど雑然としたファミリー感を強調せず、スターバックスほど意図的なおしゃれ感を出していないところが好きなのだ。

ジャーマンドックを食いながら、ブレンドコーヒーを飲んだ。

そのとき、ドイツに5年間在勤したことがある友人が、「何がジャーマンドックだよ。本場のソーセージは、もっと美味いぜ。パンも比べ物にならないくらい美味い!」と、ほざいたのだ。

おまえは、バカだろ!

なぜ、いま、本場を持ち出す?
いま、俺たちが食っているのは、日本の店のホットドックだ。
ドイツの食い物が、どれだけ美味かろうが、ここは日本だ。

これは、ジャーマンドックというカタカナで表記されている。
つまり、日本の食い物だ。

ドイツの食い物がそんなにいいなら、今すぐ全日空のフランクフルト行きの便で、ドイツに飛べ。
本場のソーセージと本場のビールをたらふく腹に入れて、死ね。

日本に、帰ってくるな。

おまえに食わせる、ジャーマンドックはねえ!

私はそう宣言して、友人の食いかけのジャーマンドックを引ったくって、食い散らかした。

そんな私を見て、友人が言った。
「おまえ、絶対に、ドイツでは生きていけないな。きっと警官に捕まるよ」

褒めてくれたようだ。


だが、警官ではない。
ドイツでは、ポリツィスト、だろうが。


「・・・・・・・・・・・まあ、どうでもいいから、俺のジャーマンドック代は返せよな」
まるでドイツ人のように、眉間に皺を寄せ、ケチ丸出しの生真面目な表情を作って、友人が言った。
(ドイツ大使館からレクラマツィオーン(クレーム)が来ても困るので、ヴィッツ(冗談)だと言い訳をしておきます)


その顔を見て、私は、ドイツには一生行かない、と心に誓った。




だが、飛行機代を出してくれて、ホテル代、メシ代も出してくれて、お小遣いもくれて、ガイドにエイミー・アダムス似の若いドイツ人女性をつけてくれるのなら、行ってやることに、やぶさかでない。



2014/07/10 AM 06:26:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ゴキブリの優しさ
ネット用語は、極力使いたくないのだが、最近、「寝落ち」することが増えた。

まったく眠るつもりはないのに、気がついたら、寝ていたということが多い。

先日は、ドトールコーヒーでジャーマンドックをひと齧りしたあと、自覚なく眠ってしまった。
55分も、右手に齧りかけのジャーマンドッグを持ったまま、眠りこけてしまったのである。

自分が、目を閉じたという記憶さえないのだ。

当たり前のことだが、ホットコーヒーは、一口も飲まないまま、冷めていた。
美味しくいただきましたが、ジャーマンドッグは、齧り口が乾燥して、妙な歯触りだった。

何の記憶もない自分が怖くなった。


その他に、小金井公園を10キロほどランニングしたあとで、恒例になったスーパー銭湯に入ったときのことだ。

1時間ほど、種々の風呂を楽しんだあとで、小腹が空いたので、帰りに、コンビニでおにぎりとクリアアサヒを買って、小金井公園のベンチで食おうと考えながら、スーパー銭湯のレストルームのリクライニングシートで横になった。

そのときも、目を閉じた意識はなかった。
しかし、深い眠りに突入してしまったのだ。

リクライニングに横になったのが、1時前。
目が覚めたときは、5時を過ぎていた。

やりしまた!(やってしまった、の略。おそらく誰も使わない)

今までは、急ぎの仕事があったときは、眠ったとしても心にブレーキがかかって、1時間程度で起きられたものだが、この日は急ぎの仕事があったにもかかわらず、爆睡してしまったのである。

体の中の何かが、狂っているのかもしれない。


こういうこともあった。
静岡の広告代理店に打ち合わせに行ったときのことだ。

東京駅から、新幹線に乗った。
そのとき、自由席で隣り合った40代前半と思える男性と話が弾んだ。

歌舞伎揚げを頂戴しながら、ホットコーヒーを飲んだ。
相手は、東京での出張が終わったせいか、ビールを飲んでいやがった。

しかし、私は、お客様の前で酒臭い息を吐くわけにいかないから、我慢した。
成長したものだ。

隣の人は、京都で降りると言っていた。
私は静岡。

そんなことを話しているうちに、私はまた、眠ってしまったのである。
話している最中に寝たものだから、相手はビックリしたろう。

しかし、彼は、私の眠りを妨げない紳士だった。
静岡駅寸前まで、そっと爆睡させてくれたあと、彼はマグニチュード6.6の震動で、私を揺さぶったのである。
それがなかったら、私は仕事をしくじるところだった。

にゃあ、ぢょうも、なりぎゃとうごだいまふ
(ああ、どうもありがとうございます)

丁寧なお礼を言って、私は、ふらつく足で静岡駅のホームに降り立った。
右手には、仕事用のバッグ。
そして、左手の親指と人指し指には、歌舞伎揚げ一粒をつまんだままだった。
きっと、彼が持たせてくれたに違いない。

それは、人の優しさが、身に滲みた瞬間だった。


そして、昨日だ。

極道コピーライター、ススキダの横浜大倉山の事務所で、打ち合わせをしたときのことだった。

そのときは、ススキダの奥さんとの打ち合わせだったので、ススキダはいなかった。

あの極道顔がいないというだけで、私の心は、梅雨空を忘れるほど晴れやかだった。
永遠にこの環境が続けば、世界は、どれだけ平和なことだろう。

sekai no owari は、永遠に来ない。

目の前にいるススキダの奥さんは、40代半ばとは思えないほど、可愛らしい雰囲気を出していた。
無理に若作りをしているわけではないのに、若々しいのだ(ほとんどスッピン)。

ススキダの奥さんの顔を見るたびに、私はススキダに対して殺意が芽生えるのだが、その理由は知らない。
絶対に嫉妬ではないと思う。
強いて言えば、「正義感」の方が近い。

可愛い奥さんの他に、BGMには、ウィントン・マルサリスのトランペット、そして、コーヒーはブルー・マウンテン。
打ち合わせが、和気あいあいと順調に進むのは、当然だった。

6回目の仕事だったので、打ち合わせは23分ほどで終わった。
短すぎて、物足りないくらいだ。

打ち合わせが終わったあとで、ススキダの奥さんが、「Mさん、少しだけお時間をいただけます?」と言った。

デートのお誘いですか?

「それは、またの機会に」

お互い赤面。

「20分ほど席を外しますが、帰らないでくださいね」

わかりました。
留守番は、お任せください。
私を、留守番太郎、と呼んでくださっても構いません。

「では太郎さん、少しの間、お願いします」


テーブルの上の皿には、私のために用意された、大量の柿ピーが山盛りになっていた。

その何個かを口に入れたところまでは覚えていた。

ゴキブリの夢を見た。
人相の悪いゴキブリが、私を食おうとしているところだった。

だが、私は、かなり前から、新聞紙たたきの奥義を究めていたので、ゴキブリを一叩きで仕留めることができた。

ゴキブリの顔が、誰かに似ていたような気がしたが、気にしないことにした。


突然の眠りから覚めたとき、仕留めたはずのゴキブリが目の前にいた。

新聞紙を探したが、見当たらないので、他の武器を探そうとした。
団扇があれば代用になったのに、団扇さえもなかった。
しょぼい事務所だ。

「おまえ、何時から眠っていたと思う」とススキダに聞かれたので、眠っていたのではない、落ちていたのだ、と胸を張った。

たいしたことは言わなかったはずだが、ススキダの奥さんが、手を叩いて喜んでくれた。
今のは、笑いを取ろうとしたわけではないのに。
本当に可愛い奥さんだこと。

落ちていたのは、20分。
奥さんとの約束が20分だったからな、と言ったとき、ピーナッツのカケラが、口から出た。
ピーナッツのカケラを口に入れたまま、落ちてしまったようだ。

危ないぞ!

「1時間半近く、落ちていましたよ」とススキダの奥さん。

そ、そうですか。
そんなに、落ち過ぎていましたか?

「はい、落ち過ぎていました」

「おまえら、下らねえ会話をするんじゃねえよ。用が済んだのなら、さっさと帰れ」と、ススキダがスゴんだあとで、私に大きな箱を渡した。
箱には、ラッピングが施されていた。

俺を、買収しようというのか。
この程度のもので、俺は買収されないぞ。

「バカ! カホちゃん(私の大学一年の娘)の誕生日プレゼントだ。レイコ(ススキダの奥さん)が、買ったんだ」

ああ、だから、席を外したのだな。
プレゼントを買いに行ってくれたのか。

それは、かたじけない。
私は、四方八方三十二方に頭を下げた。

「結構でかいものだから、電車じゃ無理だろ。だから、車で送ってやる」とゴキブリが言った。
今日のゴキブリは、いいゴキブリのようだ。

おお、送らせてやってもいいぜ、と胸を張ったら、またススキダの奥さんが、手を叩いて喜んだ。
この人の、笑いのツボが、わからない。


そして、エスティマの後部座席。

もうおわかりかと思いますが、私はまた落ちてしまったのである。

武蔵野のオンボロアパートにつくまで、頭が宇宙をさまよっていた。

着いたとき、ゴキブリが、マグニチュード6.8の揺さぶりで起こしてくれた。


にゃあ、ぢょうも、なりぎゃとうごだいまふ


降りるとき、ゴキブリが優しい声で「気をつけてな」と言った気もしたが、きっと空耳だろう。



プレゼントは、三面鏡の付いた豪華な化粧ボックスだった。
誕生日のメッセージカードもついていた。


「あなたが生まれたことを 喜ぶ人が あふれています
 僕たちは あなたの友だちだ いつまでも
 おめでとう」

(さすが、コピーライターだ)




ゴキブリと美女の優しさに、娘とふたり、涙した。




2014/07/05 AM 06:25:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

上司の人格と部下の人格
神田のイベント会社で、担当者が怒られていた。

「2日間も休みやがって! 
熱を出すなんて、精神がたるんでいるんだよ。
まだ微熱があるって? 甘ったれるな!
今日は、残業で穴埋めしろ!」

それを聞いて、ずいぶん前時代的な時代錯誤上司だなと思った。
これでは、次に高熱が出たとき、この部下は、休むことを躊躇するだろう。

上司は、人間として部下より偉いわけではない。
会社から仕事で重要な役割を与えられているだけだ。
上司が、体調を崩した人を無理に働かせる権利を与えられているというのは、勘違いであり、思い上がりだ。

会社の機械が壊れたら、誰でも修理を呼ぶだろう。
罵倒する人はいるかもしれないが、無理に働かせる人はいない。

人間も同じだ。
修理が必要なときは、休むか医師に見てもらえば、治りが早くなる。
それを頭ごなしに怒鳴るなど、パワー・ハラスメントに近い。

この叱咤は、上司が部下の頑張りを促したんだよ、言わば「愛のムチ」だ、と好意的に取る人もいるかもしれない。

しかし、私の感覚では、高熱後の「微熱」を健康体とは言わない。
それを「甘ったれている」という言葉で抑圧する感性が、私にはわからない。
私は、一方的な叱咤激励に、部下に対する愛情を感じなかった。

ただ、この上司は、叱責のあとでフォローしたかもしれない。
そう願いたいものだが、いずれにしても、自分の会社の社員以外がいる状況での部下への叱責は、見苦しい。
部下への尊敬が感じられない。

上司の人格と部下の人格は対等。

勘違いをしている上司が多すぎる。


変わって、一昨日の杉並の建設会社社長。

彼も、青い顔をした社員を怒鳴り散らしていた。
だが、その内容は違っていた。

「いつも言ってるだろうが!
具合が悪いやつは休め! 
完全に治してからでないと仕事させねえぞ。
おまえ、自分の代わりはいないって、うぬぼれているんじゃないだろうな。
勘違いするなよ。
サカモトとネギシだって、おまえの代わりはできる。そして、同じように、おまえはサカモトとネギシ、トオヤマの代わりになれる。
だから、安心して二人に仕事をさせてやれ。
とっとと帰れ!」

要するに、具合が悪かったら、休めと言っている。
おまえの仕事は、後輩の二人がカバーするから、治るまで休め…と。
そして、こんど後輩が具合悪くなったら、おまえがカバーしろ、という当たり前のことを言っているのだ。

私は、この言葉に部下への愛情を感じる(部外者の前で、社員を怒鳴る行為は減点対象)のだが、もちろん感じないという人もいるだろう。
そういう人は、上司の人格と部下の人格は対等だと思っていないのだと思う。

そういう方は、どうぞ、心置きなく、そっちの方の道を歩いてください。


最後は、新宿御苑の編集・企画会社。

この会社との付き合いは長いのだが、頻繁に仕事をいただくわけではない。
年に1〜2回程度である。

得意先としての密度は薄いかもしれないが、私はこの会社の空気感が好きだ。
社員・アルバイト20人未満の会社で、誰もがお互いを尊重している意識が、確実に伝わってくる。

それは、社長の澁谷氏の全方位的な気配りのできる性格によるのではないか、と私は思っている。

澁谷氏の奥さんは、私が埼玉で仕事をしていたときに、パソコン操作を教えた人だ。
彼女は、勉強熱心で礼儀正しい女性だった。
その彼女が、5年後、澁谷氏と結婚するという思いがけない縁に接して、私は、いいシナリオを書いてくれた「誰か」に感謝した。

余談だが、彼女の旧姓は「渋谷」さん。
渋谷さんが、澁谷氏に嫁いだということだ。
このシナリオも面白いと思う。

そして、ここから話は飛躍するのだが、私のお得意様であり友人に「桶川のフクシマさん」というのがいる。
30代半ばのおバカさんである。

ただ、このおバカさんは、几帳面で人思いのおバカさんだった。
彼の会社は、広告代理店だった。
そこの社長が、宮城県出身だったので、震災のボランティアで毎週のように被災地に出向き、復興のお手伝いをしていた。
そして、フクシマさんも、その社長の熱意につられるように、週末ごとに復興のお手伝いをした。

過剰なほど人思いのフクシマさんが、震災数ヶ月後の被災地で何を見たかは知らない。
そして、何を感じたのかもわからない。

ただ、言えることは、月日が経つごとに、フクシマさんの表情が無くなっていったという現実だ。
桶川に打ち合わせに行くたびに、バカ話のレベルが、どんどん低くなって、最後には笑顔が消えた。

当然、社長はフクシマさんの変化に気づいて、彼に休養を言い渡した。
それからの彼は、年上の奥さんと医師のサポートを受け、社会復帰に向けてリハビリを続けた。

私は、年に3回程度、フクシマさんに電話をして、私の声を聞いてもらうことを繰り返した。
その行為が、いいことなのかはわからなかったが、フクシマさんの奥さんが必ずつないでくれたので、フクシマさんに話しかけた。

時間は長くても2分程度だった。
フクシマさんからのリアクションは返ってこなかったが、奥さんが「大丈夫、伝わってますから」と言ってくれたので、それを信じた。


そして、また話は飛ぶのだが、澁谷氏が新宿御苑で会社を興す前に勤めていた会社が、桶川の広告代理店だったのである。
これもまた面白いシナリオだと思う。

今月はじめに、桶川の社長が、澁谷氏にフクシマさんのことを相談した。
澁谷氏は、フクシマさんと面識があった。
澁谷氏もたまに、ボランティアに参加していたから、フクシマさんの姿を現場で見ていたのだ。

「医者が、リハビリを一段階あげた方がいいって言うんで簡単な仕事をさせたいのだが、俺の会社では、色々なことを思い出すだろうから、向いていないと思う。だから、お願いがある。短い間でいいから、フクシマを預かってくれないだろうか。給料は俺のところが出すから」と桶川の社長。

それに対して、澁谷氏は、即座に「いいですよ」と答えたという。

3日前から、フクシマさんが、澁谷氏の会社で働いているという報告をフクシマさんの奥さんから受けた。
そのすぐあとに、桶川の社長からも電話があり、澁谷氏からはメールが来た。

澁谷氏のメールには、「会いにきますか」と書いてあった。

いま会いにいけません、と返信した。

行ったら、バカ話がしたくなる。
しかし、いまのフクシマさんに、それは逆効果ではないかと判断した。

フクシマさんには、穏やかに、極めて緩い坂道を上るかのごとく、快方に向かって欲しい。
その風景の中に、私はいらないと思う。

上司である桶川の社長。
そして、仮の上司の澁谷氏。

この二人ならきっと、対等の人格で、フクシマさんをサポートしてくれるだろう。



人格の壊れた私は、新宿御苑から5万光年離れた武蔵野の地で、クリアアサヒの500缶を飲みつつ、合間に貰い物のシーバーズリーガルのストレートと格闘しながら、「フクシマさん復活祈願」を毎日のように続けている。


Stupid guy , go and come back !
Fukushima , come back !
(おバカさん、帰ってこいや〜!)



2014/06/15 AM 06:33:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

いい人悪い人馬の人
人間は、悪い人ばかりではない。

しかし、いい人ばかりでもない。

私のまわりには、いい人が多いが、だからこそ、自己中心的で強引な人を見ると、私は「このひと苦手」と思ってしまうのだ。
前回のエントリーで、埼玉から中央線武蔵境駅まで仕事を持ってきた人に対して、私は冷たい態度を取ったことを書いた。

それに対して、批判の声が、いくつかあった。
何人かの方が、私の態度が失礼である、と思ったらしいのだ。

しかし、開き直るようだが、私は失礼と取られることを承知で書いた。

この件に関して言うと、事前に何の連絡もせずに、いきなり近所まで来て、仕事をして欲しい、という考え方は、私の脳の中にはない。
親しい間柄でも、あり得ない。
相手の都合を想像するのが、最低限の礼儀だと私は思っている。

相手が、その時間何をしているかを私はまず想像する。
しかし、想像できないから、相手の都合を恐る恐るメールで伺うのである。

必要な出来事なら、なおさら「自分本位」ではなく「相手本位」に考える。
相手の協力がなければできない仕事で、自分の都合を最優先するのは、精神的な「幼児」だ。

だから、「いきなり」は、あり得ない。
お得意様だとしても、あり得ない。

私はあのとき、オンボロアパートのオーナーに頼まれた手帳サイズのヘア・カタログの編集をしていた(オーナーは美容院・理髪店を経営している)。
その時間、小太りで少々髪の毛の薄いオーナーが、私の狭い仕事場にいらっしゃったのである。
そんなことは、ひとは想像できないだろう。
だからこそ、事前に状況を聞くべきだ、と言っている。


それに、底意地の悪い私は、6年前、唯一の仕事をいただいたときに、スミヤさんに「同じ仕事を頼んでいるデザイナーにページ1500円しか払ってないから、同じでいいですよね」と言われたことも引っかかっている。

そのとき、実際に彼に支払われていた報酬は、ページ2000円だった。
私は、こういう駆け引きが嫌いだ。

いや、駆け引きに参加させてもらえるならまだいいが、この場合は、明らかに「嘘」である。
1500円しか払えないのなら、それをそのまま言えばいい。
彼とあなたでは、付き合いが違うのだから、あるいは、スキルが違うのだから、とハッキリ言えばいい。
それが、交渉というものだ。

そんなやつは、信用できない。
嫌いだ。

心が狭いやつだ、と罵られようが、私は、そんなやつと同じ場所にいたくない。


「お馬さん」(人類史上最も馬に激似の男)の方が、はるかにいい。

お馬さんは、基本的に無神経な男だ。
お馬さんは、いきなり「ヤホー・オークションに欲しかった電子辞書が出ているんですけど、俺、ヤホーID持ってないんですよね。Mさん、落札しておいてもらえます?」と、メールで、いななくことがある。

大変迷惑な話だが、彼の要望に応えると、彼は必ず新宿で酒を奢ってくれるのだ。
ビールをワンケース送ってくることもある。
そして、直筆のお礼のハガキが届く。
恐ろしく乱れた「馬並み」の字だが、読めないことはない。
それを見て、私も「ヒヒン」と笑う。

そのほかに、「ノートパソコンの調子が悪いんで直してください」と、宅配便で送ってくることがある。
馬は、機械が苦手らしい。

直して送り返すと「ヒヒン、ヒヒン(感謝感謝)」というメールが寄せられ、やはりお礼のハガキが届く。
そして、酒の接待をしてくれる。


お馬さんには、孫がいる(馬三世)。
その2回目の誕生日に、手作りのケーキがあったらいいな、とお馬さんが、いなないた。
馬は、料理も苦手らしい。

「だから、俺んちの台所で、ケーキを作ってくれませんか」

お馬さんが住んでいる団地は、私が東京武蔵野に越してくるまで住んでいたメガ団地である。
だが、私は、その団地にいい思い出がない。
(子どもたちのお友だちとは仲良くなったが)
15年近く住んで、いい思い出がないというのは、相当な喜劇だが、詳しいことを述べると150巻の大河小説になってしまいそうなので、省略する。

悪いんだけど、団地に行くのは、チョッチュネ〜とためらっていたら、「ああ、じゃあ、俺の知り合いのキッチンスタジオで作ってくれません? スタジオは今年の4月末で閉めたんだけど、機材はまだ使えるから」と、意外なことを言われた。

キッチンスタジオと言えば、テレビの料理番組などで使われる、小洒落た小綺麗な小憎たらしいセットではないか。

そうか、俺も、とうとう速水もこみち氏になる日が来たか。

身長は少し足りないが、ルックスはパグ犬とボルゾイ犬の違いくらいしかない。
料理の腕も、ダルビッシュ有氏と全国幼稚園児対抗選手権優勝投手の差しかない。

作りましょう、と答えた。

そして、昨日、東京赤羽の閉店したキッチンスタジオで、バースデー・ケーキを作った。

ここで、レシピを書いて真似をされても困るので、詳細は割愛する。

ケーキを食う趣味がない私は、あまりケーキを作ることがない。
(お菓子……スィーツゥ? のレパートリーは、それなりにある)
だから、失敗してもいいように、具材をたくさん用意してもらった。

レシピ通りに作ったら、時間はかかったが、失敗せずにできてしまった。
そこで、調子に乗って、二つ目も作った。

「二つ目は、Mさんが持ってかえってよ」と言われたが、ケーキを持ち帰るとヨメが太った上に、それを私のせいにするので「イヤ!」と答えた。

うまい具合に、お馬さんが大型の保冷ボックスを持ってきていたので、それに2つのケーキが喧嘩しないように、お互いを箱に入れ、並べて格納した。
なかなか準備のいい馬だこと。

「武蔵野のアパートまで車(ボルボ。馬がボルボォ!)で送りますよ」と言われたが、マゴ(馬子?)ガキのためにも早く帰った方がいいと思ったので、愛人が赤羽にいるから、顔を出さないと怒られる、と断った。

ヒヒン、と笑われた。


帰りに、赤羽の「日高屋」で、透明な愛人(イメージは真木よう子さんか、恐れ多くも椎名林檎様)と餃子を食いながら、一番搾りを飲んでいたら、お馬さんからメールが来た。
「きょう自宅に届くように、クリアアサヒを1ケース頼んでおきましたから」

私は、こういうお馬さんの性格を愛している。
これこそが、立派な馬、というものだ。

馬に悪人はいない。
私は、この「うま悪人不在論」をいつかイギリスの科学誌『ネイチャー』に寄稿するつもりだ。

このような馬がぜひ、ダービーに勝って欲しい、と切に願う。



あ……ダービーって、もう………終わりましたか?



2014/06/10 AM 06:26:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

バイナラ
スミヤという男から、突然電話がかかってきた。

従業員2人の埼玉の印刷会社社長だ。
過去一度だけ仕事をいただいたことがあった。

そのスミヤさんの声を聞いて、私は不思議に思った。
私は埼玉から東京武蔵野に越してくるとき、携帯番号を変えた。
そして、新しい番号は親しい友人と馴染みの同業者、お得意様にしか伝えていなかった。

スミヤさんには、新しい番号を教えていなかった。
これから先、彼とお付き合いすることに、メリットがあると思えなかったからだ。
だから、私のiPhoneにも彼の情報は全く入っていない。

なぜ私の番号がわかったのか。
それは、誰かが教えた、と考えるのが自然だと思う。

しかし、誰に聞きましたか、と問いつめるのは、犯人探しをするようなものなので、私は、その欲求をアッサリと捨てた(実は犯人の見当はついていた)。
むしろ、なぜ電話をかけてきたか、を探るべきだろう。

だが、私はスミヤさんに対して、舌打ちをしたい感情しか持っていなかったので、それを聞くのもやめた。


スミヤさんから最初で最後の仕事を請けたのは、おそらく6年前だったと思う。
いつも頼んでいるデザイナーが、急病にかかったので、代わりに仕事を頼めないか、ということだった。

それは、さいたま市の高校の校内新聞だった。
フォーマットはすでにあるし、画像も文章も用意されていたので、1から作る仕事よりは楽だった。
面倒なのは、人物を切り抜く作業とオリジナルの罫線を作ることだったが、そのときは急ぎの仕事がなかったので、請けた。

最初の会話で、「悪いんだけど、いつも頼んでいるデザイナーさんと同じ額しか払えませんよ」と言われた。
私は、普段は底意地が悪くて金に汚い男だが、よそ様が困っているところに付け込んで、大金を巻き上げるほどの善人ではない。

だから、仰せのままに致すでござる、と答えた。

仕事は、2回の校正を含めて、1日半で終わった。
楽ちんだった。

そして、約束した通りの額を請求して、それは後日無事に支払われた。


その一ヶ月後、偶然にもスミヤさんが仕事を頼んでいるデザイナーさんと知り合うことになった。
鴻巣の同業者の事務所で出くわしたのだ。

「あの節は、お世話になりました」
いやいや、お体は大丈夫ですか、という鳥肌が立ちっぱなしの不毛の会話のあと、デザイナーのソガさんが、「あれは、手間がかかる割に、ギャラが安い仕事ですよね」と外人のように肩をすくめた。

「ページ2千円なんて、ボランティアみたいなもんですよ。そう思いませんでしたか」

スミヤの野郎!

「いま頼んでいるデザイナーさんと同じ額しか出せませんよ」
その言葉を信じて、私は、ページ当たり1500円しか請求しなかったのに。

スミヤ………大悪人じゃないですかぁ。


そんなやつだから、私は愛用のメリット・シャンプー……ではなくて、彼と付き合うメリットを見いだせなかったので、それ以来連絡を取っていなかった。

しかし、いま突然の電話だ。
しかも、冒頭からスミヤさんは、私を驚愕させることを言った。

「Mさん、武蔵境駅の近くに住んでいるんですよね。俺、いま武蔵境駅のロータリーに車を止めてるんですよ。やってもらいたい仕事があるんで、出てきてくれませんか」

はい?

事前に連絡もいれず、いきなり埼玉から武蔵野まで出てきて、私を呼び出すとは。
しかも、6年ぶり。
断られることは、想定していないのか。
あるいは、武蔵境に愛人でもいるのか。

彼のお父様お母様は、彼にどんな教育をしたのだろう。

いや、彼のご両親を責めてはいけない。
ご両親が、どれほど立派な教育を施したとしても、受ける側に理解力がなければ、呪文にしか聞こえないことは、最近とみに理解力の衰えた私には理解できる。

だから、私はこう考えた。

目には 目を
歯には 歯を
アンフェアには アンフェアを

わかりました。
でも、私はいま所用で、さいたま市の団地に来ているので、お会いできません。
申し訳ないのですが、団地の方に来てもらえませんか。

「ああ、そう。じゃあ、行くから」と、スミヤさんは、上機嫌で答えた。
(おそらく、愛人に逢ったあとだったのだろう)

落ち合う場所は、さいたま市の同業者「お馬さん(人類史上最も馬に激似の男)」の仕事場にした。

だが、もちろん私は埼玉にはいなかったし、行くつもりもなかった。
ただ、私は常識人なので、あらかじめ、お馬さんにスミヤさんが行くことを電話で報告することにした。

ワンコールで出たお馬さんは、甲高い声で「あれ、スミヤさんは、Mさんに仕事を頼むって言ってたけど」と、いなないた。


やっぱり、私の携帯番号を教えたのは、おまえだったのか!


馬刺しにして、おろしポン酢つけて食ってやろうか。
いや、食あたりしたら困るので、それはやめよう。
夏は食中毒が怖い。

私は、健康に気を使う男なのである。

そこで、私は、お馬さんにこう言った。

私は、スミヤさんという人を知らない。
ニオイを嗅いだこともなければ、食べたこともない。
知らない人の仕事を請けるのは、私のポリシーに反する。
ほな、バイナラ。


「バ、バ、バ、バ………バイナラ?」


その後、私は即座に、スミヤさんの携帯番号を「ナンバーブロック(着信拒否)」した。


1時間後、お馬さんから電話がかかってきたが、バイナラ、ラナイバ、と言って電話を切った。




ちなみに、バイナラ、とは「バイバイ」と「サヨナラ」を掛け合わせた言葉である。

もちろん、私のオリジナルではない。




2014/06/04 AM 06:26:01 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

えっくすぴーの終わり
根が真面目なので、毎回常識的なことしか書けない。

しかし、今回に限っては、バカバカしい話を書こうと思う。


ここ1ヶ月16日ほど、私には気になっていることがあった。
テレビ朝日の「報道ステーション」の話題だった。

「報道ステーション」は、年に一度、見るか見ないかなので、詳しい内容はわからない。
古館伊知郎氏が番組アンカーを務めているのは知っているし、私はリベラルなニュースショーが好きなので、「報道ステーション」の、そのニュース番組としてのスタンスは嫌いではない。

だが、「報道ステーション」をしている時間、私は風呂に入っているか、皿洗いをしているか、オンボロアパートの庭に住み着いた野良猫・セキトリの相手をしなければいけないので、大変忙しい。
(ときどき仕事もする。そして、宇多田ヒカルお嬢様、安室奈美恵先生、椎名林檎様、柴咲コウ女神、浜田省吾先輩、斉藤和義エロ親父、ガンズ・アンド・ローゼス暴れん坊、マイルス・デイヴィス皇帝、サカナハックション大魔王のライブ映像を観ることもある)

これらの大切な行事を放棄してまで、「報道ステーション」を見る価値があるかと言えば、「ない」と思うので、ほとんど見ない。
ついでに言えば、NHKのニュースも見ないし、保守主義、全体主義を押しつけすぎる日本テレビやフジテレビのニュースも見ない。
東京には、あと一つテレビ局があったと思うのだが、ど忘れした。

たまに見るのは、ひと仕事終えたあとの夜11時過ぎ、テレビ東京の「ワールド・ビジネス・サテライト」くらいだ。
この番組には、この4月から、私がお気に入りのお笑いコンビ・さまぁ〜ず師匠の元相方・大江麻理子才女が出ているので、真面目な番組なのだが、いつも頬を緩めながら見ている。

なぜか癒される。


で………「報道ステーション」の話は、どうなった?

続けます。

ネットを見ていたら、今年4月8日の「報道ステーション」内で、Windows XPのサポート終了について報じたという記事を見つけた。
その中で、小川彩佳アナウンサーの発言に批判が殺到したと書いてあった。

小川彩佳アナウンサーの「(新しいOSと)無料交換して下さればいいのにって思いますよね」のコメントに、一部のネットユーザーが噛み付いたらしい。

「企業にかかるコストを考えていない」「マイクロソフトは慈善事業ではない」「前々から終了は告知されていたのに」「報ステは今後、労働問題を扱う資格はない」

最後の「労働問題を扱う資格はない」は全く意味不明なので放っておくが、私には、小川アナウンサーの発言が批判される理由がよくわからなかった。

極めて、素直な発言ではないかと思うのだ。
私は自分がひねくれ者なので、逆に素直でピュアな人を好む。
だから、この発言にも「胸キュン」(死語?)した。

私は、パソコンと遊びながら、個人で仕事をしている。
パソコンは、ウィンドウズではなくマッキントッシュだ。

だから、ウィンドウズXPのサポート終了に関しては、他人ごとだ。

ただ、得意先のほとんどは、ウィンドウズを使用しており、OSは、圧倒的にXPが多い。

6人のお得意さんに聞きました。
6人全員が、「サポートの終了は困る」と口を揃えてマイクロソフトの一方的な終了宣言に憤っていた。
「大企業のエゴですよ」とまで言う人がいた。

世界的な大企業様のやることに従順な方たちは、前述のごとく「慈善事業ではない」「相当前から告知していた」と、いかにも正論に思えるご意見で擁護している。

確かに、もちろん大企業様は「慈善事業」をやる必要はないし、「事前告知」という親切なこともしている。
マイクロソフトに、落ち度はないように思える。

だが、それは現実を見ない意見・批判だと思う。

少なくとも、私が知っている範囲内(得意先6社)でのXPの占有率は、極めて高い。
所有パソコンの7割くらいがXPだった。

もちろん、もっと広い範囲で統計を取ったら、それほど圧倒的な結果にはならないだろう。
だが、少なくとも、どのOSよりも企業では、4月前半の段階で、XPが使われていたことは疑いがない。

XPの脆弱性を考えたら、安全なOSに移行した方が、安全を確保できるという論理はわかる。
しかし、ではXP以降のOSは、安全なのか、という疑問が私にはある。

まさか、XPよりは、ましだ、という言い訳を盾にして、サポートを終了するのではないとは思うが、私にはその疑問が捨てきれない。

私が問題にしたいのは、これほどユーザーの多いOSをサポートできない企業側の怠慢のことだ。
もしかしたら、XPユーザーは日本だけが突出して多くて、外国では少数派なのかもしれない。
その場合は、世界でのXPユーザーの絶対数は少数派ということになるから、マイクロソフト側から見れば、切りやすいとも言える。

ただ、そうだとしても、マイクロソフトの日本法人が、独自のサポートをするという選択肢はあるのではないか。

企業は「慈善事業ではない」という考え方には、一理あるように思えるが、それは詭弁にもならない盲目的暴論だ。
現実に多数いるユーザーを蔑ろにする企業の論理は、責められて当然だと私は思うのだ。

多くのパーセンテージを占める製品ユーザーに無理を強いておいて、「慈善事業ではない」というご意見は、私にはトンチンカンに思える。
慈善事業でないからこそ、マイクロソフトは過去「莫大な利益」を上げてきたのではないのか。
その莫大な利益の元は、ユーザーの財布だ。

莫大な利益を上げておいて、ユーザーを蔑ろにする行為は、都合よすぎませんか。
現実に多くの製品を売った行為は、もちろん「慈善事業」ではなく、純粋な商行為だ。
その商行為に付帯する責任は、どう説明なさる?

もう一度言いいましょう。
どう説明なさる?

「もうサポートは無理!」という幼稚で身勝手な泣き言は、大儲けした大企業様の口から聞きたくはないですぞ。


得意先のひと6人全員が、「ふざけてるよね」「いくら前から告知したと言っても、こっちにだって事情がある」と言っていた。

そうなのだ。

マイクロソフト様にも事情はあるだろう。
しかし、ユーザーにも事情がある。

そして、お互いに事情があった場合、ユーザーに合わせるのが、「企業の良心」だと私は思っている。

そもそも、そんな脆弱性まみれのOSを作って、見切り発車で売った方が悪い。
それをまるで、買った方も同罪かのように、一方的にサポートを終了する行いを、私の辞書では「横暴」というのだが、この件(くだり)に関しては、お得意様6人はみな頷いてくれた。


ネットでは、こんなご意見もあった。
「なんでも『無償で』と要求する消費者がブラック企業を生む」

これも全く意味不明なご意見なのだが、「無償で」ができないなら、「お安い価格で」サポートを継続することはできなかったのだろうか。
それを一般社会では「企業努力」「歩み寄り」というのではないか。

もちろん少しでも金を払うくらいなら、新しいOSにするよ、という人も多いかもしれない。
それは、その人の自由だ。

事前に告知したから責任を果たした、というものではない。
ユーザーに少しでも多くの選択肢を提示するのが、「企業良心」「企業努力」だと私は思っている。


「無料交換して下さればいいのにって思いますよね」という小川彩佳アナウンサーの発言は、私が知っているお得意様6人の言葉を代弁してくれたものだ。

もっと広い世界では、「マイクロソフトは慈善事業ではない」「前々から終了は告知されていたのに」「企業にかかるコストを考えていない」というマイクロソフト・シンパのご意見が占領しているかもしれないが、私は6人中6人が言っていた意見を信じる。


信じるか信じないかは、あなた次第です。


ところで、私はマッキントッシュで仕事をしていると言ったが、悲しいことに、お客様から預かるデータが、ウィンドウズの場合がある。
それに対処しなければいけないので、悲しすぎることだが、実は私もウィンドウズ・ノートを持っている。

そして、もっと悲しいことに、あまり私の仕事では役に立たない「事務所」という統合機能集も、そこには入っている。
「事務所」の年次改作が異なると、文面の体裁が崩れることがあって、その度に私は「事務所」に対して、美しい罵りの言葉を浴びせかけている。


ちゃんと仕事をしろや!
ボケっ!
この忙しいときに 手間をかけさせるんじゃねえ!
カスっ!



取り乱してしまいました。
申し訳ございません。


私が使っている「電脳管理機能」の年次改作は、「窓七つ」です。

援助が終了した「窓経験」よりも順番は、あとだと思う。

「窓七つ」で私が使う機能は、「事務所弐千拾」を開くだけ。
「世界的情報閲覧機能」は開かないし、「電子郵便機能」も全く使わない。

だから、おそらく「電子病毒」にかかる心配はない。
「電子病毒駆除装置」もついていない。

お客様からいただいた「電子的符号」のなかに「電子病毒」がひっついていたら、と思うとゾッとするが、「電子的符号」をお客様からいただく度に「うぃるっすぅ〜」は大丈夫ですよね、とくどいほど念を押す(私は失礼な男だ)ので、いままで病にかかったことはない。

私のお得意様は、いいお客様ばかりだ!
(これは、本当のことでございます)


ちなみに、我がヨメは、ウィンドウズXPユーザー。

XPのサポート、終了するらしいよ、と私が半年前に言ったとき、「えっ! じゃあ、その日から消えちゃうの? どうしよう! どうしよう!」と、慌てふためいていた。

そして、今年の4月10日。
ヨメが言ったのである。
「消えてないじゃない! やっぱり、嘘かぁ!」


こういうユーザーもいることを、最後にお伝えして、このふざけた文章を終わろうと思います。


(なお、この文章は、ウィンドウズに関して無知な白髪オヤジが書いたもので、その無知な内容に関しての責任は、すべて白髪オヤジにあります。でも、最初からサポートはしておりませんので、悪しからず)



2014/05/25 AM 06:34:01 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ブッキヨウ
不器用だと困ることが、たくさんある。

私は、家族の髪を切るのを使命としている。
自分の髪も切る。
もちろん、理髪店、美容院の経費をケチるというのが、目的だ。

しかし、不器用なので、最初は苦労した。
家族からは、ブーイングの嵐だった。

いま大学一年の娘は、子どもの頃、外見に無頓着だったので文句は言わなかったが、ヨメと息子は切るたびにクレームを付けた。

だから私は、そのクレームに対処するため、友人から貰った新聞紙(我が家では新聞を取っていなかったので)を細かく切って髪のような形を作り、それを大きなプーさんのぬいぐるみの頭にかぶせ、髪の毛に見立ててカットの練習をした。

最低限の技術を習得するのに百年の年月を要した。
とは言っても、それほど上手くなったわけではない。
まあ、詐欺的なほど下手クソな理髪師、美容師と同レベルと言っていいだろうか。

しかし、まわりは、その仕上がりを見て、ヨメに「おたくのご主人、お器用ですね」と、嘘くさいことをほざくのである。

それを聞くたびに、けんか売ってんのか、と思った。


他に……………私は寺子屋で学業に励んだので、毛筆は巧みだが、ペン字は、おぞましいほど下手だという現実がある。

だから私は、ペン字の上手い人は、無条件で尊敬することにしている。
たとえ、その人が極悪人だったとしても、字が上手ければ、私は尊敬する。
悪魔のようなジャイアンツ・ファンだったとしても、尊敬する。

彼らは器用な人なんだろうな、と羨ましく思う。

私は、普通に自分の字が読めるのだが、人からは、ときどき遠慮がちに「あのー、これって?」と聞かれる場合がある。

そのたびに、私は、アラビア語を勉強していまして、と答える。

それを聞いた相手は、ダイオウイカ、リュウグウノツカイを間近に見たような顔になって、固まる。
その繰り返しである。


昨日、同業者との飲み会の席で、「Mさんは、器用でいいですよね」と言われた。
殴ろうと思って、右手でグーを作った。

「いや、Mさんは、字は下手だし、2回に1回は、ボタンを掛け違えていますけど、総合的に見たら、器用ですよね」

人やイヌ、サル、キジとの付き合いが上手いことを器用の判断材料にしているようなのだ。

同業者の中で最年長のオオサワさん(カピバラとブルドッグの混血)が、「ボクたちは、この中で特定の人としか話しませんけど、Mさんは、みんなと等間隔で話していますよね。それって人間として、すごい器用ってことじゃないですか」と言う。

確かに、皆様の行動を見ていると、話す相手は、固定されているように思える。

ただ、私の場合、度の過ぎた人見知り、対人恐怖症、赤面恐怖症、顔面崩壊、さらに極端な臆病者なので、人と深く関わることが苦手である。
だから、人とは、絶えず広く浅く接することにしている。

その臆病さを、器用と言われるのは、不本意だ。

だから、そんなことは、ござらん! 拙者は、不器用でござる! と、おしぼりをチョンマゲに見立てて頭に乗せ、異を唱えた。

すると、同業者全員が「またまたぁ! 謙遜はイヤみですよ」と非難するのだ。

こいつら、全員、グーで殴ってやろうか、と思った。
なんで、おしぼりチョンマゲを突っ込まないのだ?


そのとき、焼きソラマメと生マグロのぶつ切り、長なすの浅漬けを持ってきた、最近馴染みの片エクボの女性店員が、私の前のアジの開きの残骸を見て言った。

「おサムライさん、ブッキヨウだわねえ。これでは、アジが可哀想でございましょう!」と私のボケに乗っかってくれた。

そして、片エクボさんが、実践した。
「よろしい? 魚は、身を解しながら骨と頭を分離し、そのあと身を解しながら小骨を取り除き、身をいただくのが基本でございますわ。まだ、こんなに身が残っておりましょう。これでは、アジが可哀想でございます。このように、分けて食べてくださいな。おサムライさん」

確かに、骨と身が分離して、食べやすくなった。

最後まで、美味しくいただきました。

だが、私の割り箸を見て、片エクボさんが、態度を豹変させた。

「なにィ! その割り箸? 割り箸もまともに割れないのぉ!」
心地よい罵り(マゾ?)。

そうなのだ。
私は、10回に9回、割り箸を綺麗に割れない人種なのである。

そのときも、割り箸の片方が、片方の残骸を引きずって、「おまけ」がついた状態だった。

「普通に、二つに割れないの?」

申し訳ございません。
割れないのでございます。

片エクボさんが、実践してくれた。

「体の近くで、割り箸を横にして、上下を同じように引っ張れば、普通は綺麗にまっ二つに割れるよ」

確かに、綺麗に二つに割れていた。

それを見て、私は同じ感覚で実践したのだが、また、下の箸に「おまけ」がついていた。

それを見た片エクボさんが、「ブッキヨウだねえ! お客さん、大丈夫? 今まで、よく生きて来れたね」と呆れた口調で、足を仁王立ちにさせ見下すように言った。


その「ブッキヨウ」は、とても心地よかった。


そのとき、俺って、もしかして「M」なのかもしれない、と本気で心配になった。

でも、不器用よりも、「M」の方がいいな、と思ったのも事実だ。


そんな私に、片エクボさんは、追い討ちをかけるのだ。

「何をヘラヘラ笑ってるの? 真面目にやろうよ! 私は真剣なんだから!
ほら! もう一回、箸割ってみせて!」


お、俺、客なのに………普通、そんなに怒ります?


しかし、その罵倒が気持ちいい私は、やっぱり…………?


ところで、結局3回やって、すべて失敗。

そのブッキヨウさに呆れた片エクボさんは、「もう、いいわぁ。お箸の無駄だわ。今度お箸を使うときは、私を呼んでくださいな。『キレイに』割ってあげるから」と言ったあとで、「Let it go ブッキヨウ〜」と歌いながらお皿を片付け、去っていった。

そんな私たちのコントを見ていた同業者たちは、「不器用さをダシにして、若い子と仲良くなるなんて、Mさんは、やっぱり器用じゃないですかぁ!」「そうだ、そうだぁ!」と口々に、批難した。


まあ、確かに、3回目のときは、箸がキレイに割れそうになったので、微調整をしましたがね。

それが、なにか………?



ああ………頭におしぼりを乗せたままだった。




2014/05/10 AM 06:26:03 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

やる気スイッチ
第一印象では、人間は、わからないものだ。

5月2日、杉並の建設会社で、打ち合わせをした。

打ち合わせで、分譲地の広告の話が出たので、うちのアパート、今年中に取り壊されて分譲地になるんですよね、という話をした。
すると、建設会社の顔でか社長が、「え? あんた、大丈夫なのか? なんだったら、そのアパート、俺が買い取ろうか。そうすれば、住み続けることが出来るぞ」と言った。

もちろん、それは冗談か、場を盛り上げるために、思いつきで言ったことだと判断したので、私は、ご好意だけ、ありがたく頂戴します、と答えた。
こんな話を真に受けたら、人格を疑われる。

しかし、顔でか社長は、「ほんとに、いいのか? ほ〜〜んとに、いいのか?」と、大きな顔を近づけて言うのである。

近すぎまする、お代官様。


そのとき、社長あてに、電話がかかってきた。

歯医者からの電話だった。
歯医者の治療を受けることを、顔でか社長が忘れていたらしい。

「次に伸ばして欲しい」と社長が言ったが、相手は、だいぶ先の日にちを指定したようだ。
「え? そんなに先になるのかよ」

そこで、社長は、今日(5月2日)行くことを決意した。

「ほ〜〜んとに、悪いんだけどよお、ちょっと、30分くらいだと思うんだが、脱けさせてくれないか。ほ〜〜んとに、悪いんだけどよお」

頭を2回下げられた。

この日は、急ぎの仕事がなかったので、どうぞ、と答えた。
すると、顔でか社長は、「ほ〜〜んとに、悪いな」と言いながら腰を上げた。


顔でか社長が、いない時間。

事務所を見回した。
数カ所パーテーションで区切られた中で、整列した机が30ほど。
あとは、隅に応接室と玄関ドアから一番遠いところに社長室があるだけ。

この会社の従業員が何人いるのか、私は知らない。
興味がない。
お金がない。

私が来たときに絶えずいるのは、40代の女性事務員と30歳前後の男性ふたりだ。
他の人たちは、いつも現場に張りついているか営業に出ているのだろう、と推測する。

そのいつもいる男性二人が、私のところにやってきた。
そして、言った。

「社長は、なんでMさんと話をするときだけ、穏やかなんですかね」

知らんわ。

「俺なんか、毎日怒鳴られてますけど、Mさんは、俺の知る限り怒鳴られたことないですよね。この3年間、社長に怒鳴られなかった世界記録を更新中ですよ。下請けの壁紙屋のオッサンや改修工事のオッサンなんか、来るたびに怒鳴られていますよ。社長より年上なのに」

おお! 世界記録ですか。
それは、すごい!
自慢できますね。

さらに、「なんで、社長は、Mさんには甘いんですかね」と女性事務員。

知らんわ。

顔でか社長は、社員、請け負い業者を怒鳴り散らすことを日課としているという。
悪いことをしていなくても、少しでも態度が気に食わないと怒鳴り散らすというのだ。
血圧が心配だわ。

しかし、私は、その被害を受けたことが一度もない。

だから、「不思議なんですよねえ」と3人に、首を傾げられた。

それは、私が天使だからじゃないですかぁ、と言ったら、3人の眉間に皺が寄った。

冗談ですのに………。


強面の顔でか社長。

「母ちゃんに逃げられちまってよお」
「俺の子どもは、俺を避けてるんだよな。一つ屋根の下に住んでるのに、もう3年以上、口をきいてくれないんだ」
「先週は、キャバクラ通い皆勤賞だぜ!」
「Eカップのセリナちゃん、なかなか落ちねえなあ」
「俺はバカが嫌いだからよお。大卒はたいていバカだから、俺は、中卒、高卒しか雇わねえんだよ」

ファンキーすぎる社長だ。
彼は、直球しか投げない。

それが、いい、と最近になって思うようになった。

私が、世の中で4番目に嫌いなのが、駆け引きだ。
駆け引きをされると、テンションが下がる。

たとえば、見積書を出すとき、私は、これ以上下げようがない価格を顧客に提示する。
「もっと負けてよ」という駆け引きが嫌なので、最低限の見積もりを出すのだ。

多くの人は、これで納得してくれるが、稀に、「もっと下がらない?」と駆け引きをする人がいる。
その場合は、心では舌打ちをするが、笑顔で、申し訳ありません、この仕事は他の方に、と頭を下げる。

私のこの歪んだ性格を知っている友人は、私に対して駆け引きをすることはない。
しかし、年に一回程度は、駆け引きをするやつがいる。

そんなとき、私は、いつもグーで左肩(左利きのやつは右肩)を殴ることにしている。

バカは、グーで殴らなくてはダメだ。
思いっきり、殴る。

しかし、お客様をグーで殴るわけにはいかない。
だから、駆け引きをする相手には、ストレスが溜まる。

だが、顔でか社長は、いつも直球だから、ストレスが溜まらない。
怖くて、私はいつも緊張しているのだが、ストレスは溜まらない。

その心地よさに、最近気づいた。


聞きもしないのに、男の社員二人が話を始めた。

「俺たち、高校時代はバカで、会社に入ってからもバカで、社長に毎日怒鳴られていましたよ」
「何にも知らないで社会に出て、八方ふさがりの中、怒られて怒鳴られて、毎日泣いていましたよ」
「いまも怒鳴られて、殴られることもあって、毎日が緊張の連続です」
「働くことが、こんなに大変なんて、オレ、ガキの頃は想像もできなかったですよ」

口を衝いて出るのは愚痴ばかりだったが、社員は、こうも語るのである。

「でも、俺たち、バカなのは自分で知っているし、社長に怒られることで、仕事を覚えてきたんですよね」
「怒鳴られなかったら、オレは、いつまで経ってもバカなままでしたよ」
「社長は怒鳴るときは鬼のようだけど、そのあとは、何事もなかったように接してくれました」
「ようするに、社長は、俺たちのバカに、いつでも付き合ってくれるんですよ」


会社のホームページを作り、チラシを数々作った。
はじめのころ、「あんたの言っていること、オレ、全然わからんわ。勉強するからよお。なんか本があれば教えてくれよ」

自分が無知なことを隠さないのである。
その直球は、今にして思えば心地よい。


そして、最後に、社員はこうも言った。

「俺たちは、バカだから、社長に怒鳴られることで、いつも『やる気スイッチ』を押されて、ここまで来たんですよ。オレみたいな半端者は、他の会社では、絶対に勤まらなかったですよ。この会社だから、あの社長だから、オレを一人前にしてくれたんです。いや、まだ半人前だな。だから、どんなに怒鳴られても、何度殴られても俺たちは、一人前になるまで我慢できます」


怒鳴ることで、社員の「やる気スイッチ」を押すというのには、私は共感できない。

私が尊敬している浦和のドラッグストアの社長が、以前こんなことを言っていた。

「社長は、会社を潰さないのが、最大の仕事。そして、その他は、ボランティアですよ。社員に対する奉仕精神。社員、パートさんが、気持ちよく仕事が出来る環境を整えるのが小企業の社長の仕事です。僕はそこにだけ神経を使っています」

それは、共感できる意見だ。


顔でか社長とドラッグストア社長の考えは、真逆。


しかし、第三者にはわからない、その会社の「社員の思い」というものがある。
結局は、社員の「やる気スイッチ」を押せる人が、有能な経営者ではないのか、と最近の私は思うようになった。

顔でか社長とドラッグストアの社長は、どちらも有能なのだ。
彼らは、その方法が違うだけで、実は同じ人種なのではないだろうか。


そんな風なことを思っていたら、顔でか社長が帰ってきた。

「悪かったな、悪かったな。ほ〜〜んとに、悪かったな」

また頭を下げられた。


打ち合わせが終わったあとで、顔でか社長に、聞いてみた。

私の「やる気スイッチ」は、どこにあるんでしょうね。

すると、社長は、鼻で笑うように、こう言った。


「本気で言っているのかい、あんた?
あんたは、人から『やる気スイッチ』を押されるのが、一番嫌いなタイプじゃないのかい?
だから、いつも『やる気スイッチ』を隠しているんだろ?」



は………はい、まさに図星でございます。

お代官様。




2014/05/05 AM 06:25:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

誕生日サプライズ
半年ぶりの中央区京橋。

ここには、友人のウチダ氏の事務所があった。
ウチダ氏は、イベント会社を個人で運営し、いつも忙しくベーエンベーを乗り回している男だ。

そして、私は何故か、その事務所の鍵を預けられていた。

だから、当たり前のように、侵入できた。

今回も侵入して、冷蔵庫に格納されたスーパードライを手に取った。
さらに、ウチダ氏の事務所には、40インチの亀山モデルがあった。

そこで、私は録画した「安堂ロイド」のブルーレイを観るのだ。
6話まで観たので今回は7話を観た。

柴咲コウ様、お美しや………(拝)。

本心を言えば最終回まで観たいのだが、この日は他にやらなければならないことがあった。

去年の11月25日。
私の誕生日に、ウチダ氏が、彼の事務所でサプライズを仕掛けてくれた。

そのお礼に、ウチダ氏の誕生日である4月28日に、サプライズを仕掛けようと思ったのだ。

ウチダ氏は、出来る男だ。
一人で何種類もの仕事をこなし、確実に仕上げることが出来る男を世間では「出来る男」という。
彼はまさしく、その典型だ。

ウチダ氏は、私より5歳年下だが、私は彼のことを尊敬している。

同じように「出来る男」に、極道コピーライターのススキダがいるが、私はあいつのことは1ミリも尊敬していない。
むしろ早くブタ箱に行ってくれないか、と思っている。

あんなやつを世の中に飼っておくのは、腐ったカルピスを2日続けて飲んだあとのような不快感しかない。
早く駆除して欲しいと思う。

その点、ウチダ氏は、イケメンで性格もいい。
ウチダ氏と福山雅治氏を比べたら、もちろん福山氏の方が総合力では勝るが、私が抱かれたいのは、ウチダ氏の方だ(ホ、ホモ?)。

しかし、ウチダ氏の最大の欠点は、私に仕事を回さないことだ。

以前、ウチダ氏が、こんなことを言っていた。
「ボクは、仕事のできる人にしか仕事を回さないんですよね」

直球過ぎるご意見に、私は、ハハハ、と笑うしかなかった。


そのウチダ氏の誕生日。

私は、あるサプライズを考えた。
だから、彼の事務所に侵入したのだ。

まず、冷蔵庫にあるクリアアサヒ16本とスーパードライ14本を取り出した。
そして、それをベランダに置いてあった大きいクーラーボックス2つの中に格納した。

このクーラーボックスは、おそらく釣り用のものだろう。
若干の生臭さが残っていたが、そんなことは、知ったこっちゃない。

ビールを格納した後、冷蔵庫にあった数種類のチーズをボックスにバラまいた。
そして、その上に、コンビニで買ってきた大量の氷をバラまいた。

これで、腐ることはないはずだ。

冷蔵庫が空になった。

それだけでは、たちの悪い嫌がらせになるので、その冷蔵庫に、私は、1967年産、1998年産、2001年産のワインを置いた(3万円近くの出費だった)。
ウチダ氏の奥さん、二人の子どもの誕生年のワインだ。
ウチダ氏の誕生年の1962年産のワインもあったのだが、高くて破産しそうになったので、これは断念した。

誕生日カードはないが、私からのプレゼントだということは、すぐにわかるだろう。
彼の事務所に侵入できるのは、私の他に、ウチダ氏の愛人50人だけだからだ。

そして、テーブルには、家から持参した空のクリアアサヒの缶(持ってくるのが大変だった)8個と今日飲んだスーパードライの缶2つを置いた。
私が飲んだのがわかるように………。


ウチダ氏は、毎日のルーティンとして、夜の6時から7時の間に事務所に戻るというのを以前聞いたことがあった。
出来る男のルーティンは変わらないはずだ。

しかし、余裕を持たせて、私は5時過ぎにウチダ氏の事務所をあとにすることにした。
そのとき、なぜかスーパードライの500缶2本がマイバッグに入っていることに気づいたのだが、それは気にしないことにした。


家に帰ったのが6時半過ぎ。
その4分後に、ウチダ氏から電話がかかってきた。

「プレゼント、ありがとうございます」と言ったあとで、「でも」とウチダ氏が言った。

「Mさん、幼稚すぎますよね。オレ10秒で、わかりましたよ」
ウチダ氏が得意げに言った。

「Mさんが、うちでビールを飲むとき、飲み終わったり食べ終わったものは、毎回必ず持ち帰りますよね。でも、今日は缶が10本残されていた。
Mさんなら、10本くらい飲めるでしょうけど、置き方が不自然でしたね。
だから、これはMさんが自宅から持ってきたものだと判断しました。
それなら、うちの冷蔵庫のビールはどこにいったのかと考えたとき、答えは簡単に出てきました。ベランダのクーラーボックス。それしか、ありませんもんね」

さすがだな。
名探偵コナン。
またの名を工藤新一。

見事だ。

「まあ、仕掛けは幼稚だけど、ワインは嬉しかったですよ。家内と味わって飲むことにします」

それは、何より。
お役に立って嬉しいですよ。

しかしね………と、私は心で呟いた。
実は、ウチダ氏が、今日の仕掛けを見破るのは簡単だと、私は想定していたのだ。

だから、もう一つの仕掛けを考えていた。

江戸川コナン君。
君も、そこまでは見抜けなかったであろう。
その仕掛けが、もうすぐ始まるはずだ。

そう思っていたら、TVドアフォンの音が受話器越しに聞こえた。

じゃあ、またな、と言って電話を切った。


6時50分に、ウチダ氏の事務所で仕事の打ち合わせをする、とススキダに伝えていたのだ。
打ち合わせの他に、その日は、ウチダ氏の誕生日なので、プレゼントを持ってこい、オレも持っていくから、とススキダに伝えてあった。

几帳面なススキダは、おそらく約束の時間10分前に来るであろう。
ウチダ氏が、その時間よりあとに帰ってくることも考えられたが、ここは賭けるしかないと思った。

その賭けは当たって、ウチダ氏は6時35分頃に帰り、ススキダは40分に訪問した。

事実を知って、ススキダは怒るだろうが、その辺は、ウチダ氏がうまくなだめてくれるに違いない。


夜8時過ぎ、ススキダから2回電話があったが、無視した。

2回目の電話のとき、留守電が吹き込まれていた。


「今度会ったときは、殺す!」



殺されるのは嫌なので、ススキダとは2度と会わない、と心に決めた。





2014/04/30 AM 06:25:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

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