「時の町の伝説」 (ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 田中薫子訳 徳間書店 417ページ)
正直に言おう。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの本は苦手。というか、イギリス文学自体が苦手。やたらに長い登場人物のモノローグとか、まるで反復横跳びをしているようなストーリー展開とか。一言で言えば「テンポが悪い!」(そうじゃない本ももちろんたくさんあります。) ま、これは独断と偏見に満ちた判断なんだけど。 ところがこの本。時間移動によって同じ時間同じ場所が3回も出てくるというのに、回りくどさがない。同じシーンに戻っているにもかかわらずストーリーはしっかりと1本の線になっている。だから、読みやすい。読みやすいから余計なことを考えずに楽しく読める。 物語の舞台は1939年イギリス。第2次世界大戦まっただ中のロンドンから田舎に疎開する途中のヴィヴィアンが「時の奥方」と間違えられて「時の町」へさらわれるところが物語は始まる。最初は「時の町」を救うための「時の奥方」とフェイバー・ジョンを探す冒険だったはずなのに、いつの間にか「時の町」を崩壊から救う「極」を探す話に。4つの「極」のありかはどこなのか? 「極」どろぼうは誰なのか? 「時の町」を救う方法とは? などなど、謎解き要素満載。一気に読めます。 ところでこの本、時間移動というのをテーマに持ってきているにもかかわらず、タイムパラドクスをまったく扱っていない。歴史が変わってしまったらという心配をする以前に、変わりまくってる。ジョーンズお得意の魔法は一切出てこないし、出てくる時代は現代よりも科学が進んだ世界ばかりで、一瞬SFかと思うけど、こういう部分で、この本はやっぱりファンタジーなんだなと思う。 |
PM 05:17:34 |
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