長編(619ページ)で、しかも重たい本であったが、充実した楽しい時間にたっぷり浸れた作品でした。 それぞれの人物の視点で各章(「利枝子」「彰彦」「蒔生」「節子」)が書かれており、時間軸は交錯せずに、洒落た会話や目に浮かぶ屋久島の情景描写で物語は進んでいきます。
 
 読後、この物語の最初と最後の文章をつなげて読んでみました。 屋久島の森が、黒と茶の幻想をいだかせているのでは。
 
『森はいきている、というのは嘘だ。 いや、嘘というよりも、正しくない、と言うべきだろう。 森は死者でいっぱいだ。 あたしたちはそれぞれの森を歩く。 決して重なりあうことのない幾つもの森を、ついに光が消え木の葉がみえなくなるその日まで。』
 
 屋久島の森、足腰が丈夫なうちに行ってみたくなりました。